じめんのした 中編
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thegreenway_46 2023年02月06日(月) 12:07:13履歴
火曜日-AM11:30-
厨房スタッフが休憩室に入ると緑髪の人物が店長と話していた。
「わかったのだ。では明日、作業に入らせてもらうのだ」
「お願いします。」
緑髪の人物は軽く会釈をすると休憩室から出て行った。
「店長、今の人は？」
「野田芽製薬の豆図さん。妖精が湧いて出て困るから上に相談したらここの食料品店向けの駆除サービスを手配してくれたんだよ。明日の夜にはやってくれるらしいから」
「まじかあ〜先週やって欲しかったな〜。自分で20匹くらい処分したんですよ？」
「そりゃ災難だったね。まあ、食品扱ってると仕方ない面もあるよねえ」
「しかも地下ですしね〜」
そうか、明日にはあの虫達も全滅か。よかった。しばらくおぞましい光景を見ずに済む。
あ、そうだ。あのことを店長に報告しなくては…
「店長そう言えば…」
ー 時は遡り厨房冷蔵庫裏 ー
ぱぱずんの外出禁止令により、子ずんもままずんも人間に見つかって潰されるようなことはなかった。周りの家族も「餅」のおかげで前ほど頻繁に命をかけて外に出る必要は無くなった。が、自由に外に出られない事は活発な子ずんにとってはストレスとなっているようだ。
「おとーちゃ！おそとさんにでたいのだ…」
「おぎゃーのだ！おさんぽのだ！」
「ごめんねおちびちゃん…まだおそとはあぶないからおうちであそぶのだ…」
しきりに外に出たがっている。その度ぱぱずんは子ずんを諌めるのであった。そんなある日、隣の雄ずんがぱぱずんのもとを訪れた。
「こんちわのだ…」
「こんちわのだ！どうしたのだ？」
「じつは…このこをみてほしいのだ…」
「えっ？」
雄ずんが示す先には子ずんが3匹いた。しかし、普通の子ずんではない…
「おぎゃーのだ！はう…はう…」
「あうー…」
「ない…ないのだ…てもあしもみみもしっぽも…」
「そうなのだ…ごはんさんもしっかりたべてるし、えいようさんがたりないとかではないのだ…」
何故？どうして？ぱぱずんにはわからなかった。
「で、でもかわいいおちびちゃんにかわりないのだ！おもちさんもあるし、みんなでがんばってそだてていくのだ！」
「のだ！」
しかし、これを皮切りに次々と周りの家族でも「たりない」が産まれるようになった。流石に何かおかしいということになって話し合った結果、ぱぱずんの家族でもへこへこをすることになった。
「はぁ、はぁ、へこへこ、きもちいいのだ！」
そして結果は…
「おぎゃーのだ！はう…はう…」
この家庭でも産まれたのはたりないずんだもんであった。
「どうして…ないのだ…てもあしも…みみもしっぽも…」
「どこのおちびちゃんもてあしがないのだ…こんなのぜったいおかしいのだ！」
「ごはんさんをたくさんたべればきっとてあしがもどってくるのだ！」
「そうにちがいないのだ！」
「まいにちいーっぱいたべてもらうのだ！」
「「「のだ！」」」
そしてずんだもんたちは一つの結論に達した。たりない子ずん達は栄養が足りないだけであり、沢山食べ物を食べれば「普通」のずんだもんと同じように手足耳尻尾が生えてくるのだと。
「そうときまればおちびちゃんたちのためにまたおもちさんをもってくるのだ！」
「のだー！！」
子ずんの成長のため親ずん達は積極的に「餅」を子ずん、赤ずんに与えた。自分たちの食事を我慢して。
「おもちさん！」
「ぼりぼり！おいち！おいち！」
「はうー、あう…おいち！」
「もぐもぐもぐもぐ！おいちーのだ！」
「おとーちゃとおかーちゃもたべるのだ！」
子ずん達はやはり食べ盛りだからかよく食べた。たりない赤ずんもしっかり食べるからか少しずつだが言葉が出てくるようになった。ぱぱずんは嬉しかった。
「みんなよくたべるのだ！げんきなのだ！」
「あしたはまたおもちさんとってこなきゃだね」
「おちびちゃんたち、そろそろ寝ようね。」
「はーいのだ！」
「はうー、のだ！」
「やっぱりおちびちゃんはとってもかわいいのだ！」
「おおきくなったときがたのしみなのだ！」
ぱぱずんはしあわせだった。ままずんと子ずんに囲まれて。
ーそして最後の日がやって来るー
「ふぁ〜…ねむねむのだ…」
ぱぱずんが目を覚ます。今日はまた人間がやって来る前に「餅」を集めなくてはならない。脳裏に以前冷蔵室の扉に住んでいた家族の最後の姿が浮かぶ。嫌なイメージを振り払おうと子ずんの寝顔を見てから出かけようとするぱぱずん。ふと気がつく…「餅」の爽やかな匂いがするー。
「おちびちゃんたち、いってくるの…だああああああああああああああ！？」
ぱぱずんが余りにも大きな声をだすので他の家族ものだのだ起き上がってきた。
「ううーん…どうちたのだ？」
「にんげんさんなのだ？」
「おちびちゃんたちがおきちゃうのだ…」
だがぱぱずんには周りの声は聴こえていなかった。
「おちおちおちおちおち」
「…ぱぱずん？どうちたの？」
「ままままままままま」
ぶるぶると声を震わせぱぱずんが子ずんの顔を指差す。
「いやああああああああああああああ！！！おちびちゃん！？おちびちゃあああああああああん！！」
彼らの宝物達は口から白目を剥き、真っ白な泡を全身から吹いていた。死んでいるとハッキリとわかった。鮮やかな緑色だった肌もまるで初めからそうだったかのように真っ白になっていた。
「どうちて！おちびちゃんきのうまであんなにげんきだったのだ！どうちてどうちて！」
他のずんだもんはぱぱずんの様子を見ていられずに目を逸らそうとした。逸らそうとしたが故に見てしまった。ぱぱずんの子ずんのように泡を吹いて死んでいる我が子を。
「ぎゃああああああああああ！おちびちゃん！！」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお！！だれか！だれかおちびちゃんたちけて！！」
「あは…あははははは！！ない！ないちゃ！！おちびちゃんのいのちないっちゃ！おちおちいagrfrntknktkmtgmsmskr!!!!!」
「わかったのだ！これはゆめなのだ！もういっかいねるのだ！」
冷蔵庫裏はあっという間に阿鼻叫喚の地獄と化した。泣き叫ぶもの、こわれるもの、現実逃避するもの。ぱぱずんは我が子の亡骸を抱えて泣いた。
「ぶくぶく…くるち…くるち…」
「！おちびちゃん！」
「ぶくぶくのだ…。はう…。ぶくぶく…」
ずんだもんの生命力は高い。まだ2匹ほど息はあった。ぱぱずんは駆け寄り、泡を取り除こうとした。しかし、泡はとってもとっても溢れて子ずんを覆い尽くそうとする。皆、泡で息ができなくなって死んだのだろう、表情は苦悶に満ちていた。
「おとーちゃ…たちけて…」
「あうー…ちんじゃう…？ちんじゃうのだ…？
」
「おとうちゃがぜったい！ぜったいたすけるのだ！」
「おとー…ちゃはうそつかないのだ…ちんじるのだ…」
「はう…おとーちゃ…くるち…」
ぱぱずんは冷蔵庫裏の水を汲み2匹に与えた。泡を水で流そうとしたのだ。
「ぶくぶくぶくぶく！ぶくぶく！」
「ぶくぶく！」
水を与えても泡は減るどころか増えるばかりだった。
手足をバタつかせ、身をくねらせながら悶え、死にゆく我が子をぱぱずんは見ることしかできなかった。
「ど、どうすればいいのだ！とまっちぇ！や！や！おちびちゃんとらないで！」
そしてなす術もなく子ずんは動かなくなった。散々苦しんでから死んだのだ。
「ないのだ…おちびちゃんたちが…ないのだ…」
「ひどいのだひどいのだ！ぼくたちなんにこわるいことしてないのだ！」
「おちびちゃんかえちてかえちて」
「ｺﾛﾁﾃｺﾛﾁﾃｺﾛﾁﾃ」
周りも似たような状況だったがもうぱぱずんには周囲を見る余裕などなかった。しばらくのだのだ泣き叫んでいるものばかりだったがとうとう心が限界を迎えたものがいた。
「あははははは！！なーんだ！かんたんなのだ！おちびはいなくなったらまたつくればいいのだ！ずんぽがあればいつでもへこへこしておちびつくれるのだ！かわりはいくらでもいるのだ！」
「おまえ！ぼくとへこへこしておちびちゃんつくるのだ！」
「いや！いや！まっちぇ！」
「ていしゅにさからうななのだ！へこへこするのだ！」
「だれかたちけてえええええええええええ！いやあああああああああ！」
「「はぁ、はぁ、へこへこ、きもちいのだ！」」
「たねちゃんでるのだ！！しっかりおちびちゃんにするのだ！！」
「やめちぇ！もうやめちぇええええええええ！！」
そこからはさらに地獄だった。堰を切ったように自分の番とへこへこを始める雄ずん達。拒んだり、共に狂ったり。そして自分の番がダウンすれば別のメスにターゲットが移るのは必然と言えた
「ひっ…こないで…こないでのだ！」
「うるちぇーのだ！へこへこしてあたらしいおちびをつくるのだ！」
「いや！ぱぱずんいがいのおちびなんていらないちゃ！あっちいっちぇ！」
「ききわけのないめすにはおちおきなのだ！」
「いちゃい！やめちぇ！」
「やめねーのだ！へこへこ！へこへこ！」
「たちけて！ぱぱずん！」
「や、やめるのだ！ままずんをはなすのだ！」
ままずんを守ろうと飛びかかるぱぱずん。
が、凄まじい力で弾き飛ばされてしまった。そこから地面で伸びていた時間はタネが出るまでの時間としては十分だった。
「おほぉ！いいきつきつなのだ！しめしめなのだ！」
「いやあ！いやあ！」
脱力するままずん。しかし雄ずんは満足していないようでへこへこを再開した。
「もうや！やめちぇ！」
「おまえ！だんなにみられてるときのしまりがさいこーなのだ！きつきつでしめしめなのだ！もっとみてもらってしめしめするのだ！たねちゃんとまんねーのだ！」
ぱぱずんは駆け出した。人間に助けを求めようとしたのだ。
「ぱぱずん！？」
「あはは！あいつ、ぼくにおそれをなしてにげだちたのだ！へこへこ！へこへこ！」
「たちけてぱぱずん！ぱぱずん！」
「おちりぺちぺちなのだ！しっかりしめしめするのだ！」
ままずんの悲鳴を背に感じながらぱぱずんは走った。
「に、にんげんさん！たすけてほしいのだ！ままずんが！ままずんが！」
息を切らしながら訴えるぱぱずん。しかし、返事はない。顔を上げて見上げると…
「え？」
そこにはいつも沢山いるはずの人間の姿はなかった。ぱぱずんには知るよしもなかったが今日は地下街が休館日、つまり今現在ずんだもんたち以外は誰もいないのであった。
(どうちて…どうちていないのだにんげんさん！このままじゃままずんが…)
ぱぱずんは人間を探しに厨房の外に出た。誰でもいい、助けてくれそうな人間をさがすのだ。するとちょうど厨房を出たところで緑色の髪の人型ずんだもんに出会した。何やら荷物を沢山持っている。
「そこのにんげんさん！たちけて！ままずんがちんじゃうのだ！」
「どういうことなのだ？お前、どこから出てきたのだ」
「あそこのれいぞうこさんのうらなのだ！ぼくたちのすみかがいまたいへんなのだ！おちびちゃんもちんじゃって…」
人型にぱぱずんは全て話した朝突然子ずんが死んだこと…それがきっかけで皆おかしくなってしまったこと…
「事情はだいたいわかったのだ。僕もお前の巣に用があってきたのだ。案内するのだ」
「ほんとなのだ！？よかったのだ！これでみんなたすかるのだ！」
「にんげんさんはもしかしておいしゃさんなのだ？いっぱいにもつをもってるのだ！」
「ある意味ではそうかも知れないのだ。さあ急ぐのだ。今なら皆集まっているのだ？」
「そうなのだ！」
人型を連れて厨房に戻るぱぱずんそこには恐ろしい光景が広がっていた…
「ずんずんずんずん！」
「へこへこへこへこ！」
「おぎゃーのだ！おぎゃーのだ！」
「はう…はう…」
「お…おっ…」
「へこへこきもちーのだ！」
「ｶﾜｲｲｵﾁﾋﾞﾁｬﾝｺﾝﾅﾆｳﾏﾚﾀﾉﾀﾞ！ｶﾞﾝﾊﾞｯﾃｿﾀﾞﾃﾙﾉﾀﾞ!」
冷蔵庫裏を飛び出しそこかしこでへこへこする仲間達。へこへこしながら子ずんを産み落としていた。産まれてくる子ずんは例外なくたりない個体で空腹を訴え泣くものもいれば
子ずんとへこへこするものもあった。こんなに数がいてはままずんがどこにいるかわからない…
「あう…へこ…へこ…」
「きもち…きもち…」
「はうー…」
「ぱ、ぱ…」
微かに聞こえる声をぱぱずんは聞いた。
「ままずん！？あ、あそこなのだ！」
「ちけて…たちけて！」
「おいしゃさんのにんげんさんをつれてきたのだ！みんなもとどうりになるのだ！」
あの雄ずんに殴られて尻が腫れ上がっているのと精神的に参っているようだがまだ大丈夫だ…！
「うわぁ、これはひどいのだ…早く始めないといけないのだ。」
「おねがいにんげんさん！みんなをたちけて！もとにもどちてあげて！」
人型は頷くと鞄から緑と白の見覚えのあるもの…ずんだ餅を取り出した。
「！ずんだもちなのだ！」
その単語に反応してたのかへこへこ中のずんだもんも泣きながら這うずんだもんも全てがこちらを見た。
「「「「「「「「ずんだもち！」」」」」」」」
一斉に人型めがけて向かって来る
「！お前！でかい声出すななのだ！チィッ！」
軽く舌打ちをすると鞄の中のずんだ餅を5つほど地面に投げつけずんだもんの大群はそちらに向かって行った。
「「ずんだもち！ずんだもち！」」
「いいにおいなのだ！」
「おいしいのだおいしいのだ！」
「ｵﾁﾋﾞﾁｬﾝﾀﾁﾀｸｻﾝﾀﾍﾞﾙﾉﾀﾞ！」
「おいち！おいち！」
「はうー…おいち…」
「くんくん！いいにおいなのだ！へこへしながらたべるのだ！」
「こんなにおいしいずんだもちはじめてなのだ！」
皆が一心不乱にずんだ餅を貪り幸せそうだ、自分もたべよう。ぱぱずんはいい匂いのするずんだ餅に近づいていった。
「がああああああああああああ！？の、のどが！のどがあちゅいのだ！やけちゃ！やけちゃ！」
「あしのさきが！いちゃいいちゃいなのだ！」
「のどがかわいちぇくるちいのだ！」
「あ、あたまのなかまぜちゃや！おみず…おもずがほちーのだ！」
「その排水溝に水があるぞ」
「おみずほちーのだ！みんな！いくのだ！」
「「「のだのだのだのだ」」」
「へこりながらはいるのだ！」
「にゅいて！ちゅらい！ずんぽにゅいて！」
「かわきがぜんぜん、とれないのだ！」
「このままじゃひからびてちんじゃうのだ！」
「たちけて、あががががががががが！！」
「はうッ‼︎」
水を求め次々と排水溝に飛び込むずんだもんたち、しかし、飲めど飲めど渇きは増すばかり。赤ずんは突如痙攣して死んだ。
「こ、これはなんなのだ！にんげんさん！みんなどうしちゃったのだ！？」
「ん…お前食ってなかったのだ？まあいい。こいつらがずんだ餅だと思って食ったのはベイト材だ。」
「べ、べいと？」
「飲食店などで害虫駆除につかわれる餌型の駆除剤なのだ。お前に言ってもわからんと思うがうちの製品はお前らの死骸を残さないように強烈な渇きを与えて排水溝に移動させそこで取り込ませた水を使って死骸を分解する成分が含まれているのだ。後には痕跡も残さない優れた商品なのだ。」
「くじょざい…にんげんさんはおいしゃさんじゃなかったのだ？」
「僕は医者だと名乗った覚えはないけど、人間の住処にのさばる病原体を切除するって意味では駆除も立派な医療みたいなものなのだ？」
「別に理解しろとは思っていないのだ。お前にもわかりやすくいうと、あのずんだ餅を食ったらお前らは死ぬのだ。ほれ、お前の番ももうダメなのだ」
「え？あ…あ…ままずん！」
「ぱぱずん！たちけて！くるちいよぉ！いちゃいよ！」
「い、いまたすけにいくのだ！」
「もう遅い。アレ食ったらお前…死は確定なのだ。」
ぱぱずんは構わずままずんに向かって飛んだ
「いちゃいよー…」
「くるちいよー…」
「たちけてよー…」
「のどがかわいたよー…」
「かひゅー…かひゅー…」
途中助けを求めるもの達が手を伸ばしてきたが、ぱぱずんはそれを振り払った。そしてままずんの元に辿り着く
「ま、ままずん！まにあったのだ！おまえ！いつまでへこへこしてるのだ！はなれるのだ！」
「こんなへこへこ！やめられるわけねーのだ！へこへこ！のどがかわいたけどままええわ。それに、みるのだ！こんなにおちびちゃんがふえたのだ！またみんなでたのしくくらせるのだ！」
今朝までは彼もぱぱずんと変わらない。普通のずんだもんだった。あの出来事で彼は決定的に壊れてしまったのだった。壊れながら、もう戻ってこない平穏を夢見ている。
(どうちてなのだ…なんでなのだ…どうちてこんなことになるのだ…)
「ぱぱずん…ぼくはもうだめなのだ…おちびちゃんをおなかのおちびちゃんをまもって、うごごごごごご」
ビクビクと痙攣を起こし、ぱぱずんが声をかける前にままずんは死んだ。そして…
「うおおおおおおおおおおお！いままででさいこうのしまりなのだ！いくのだ！へこへこ！へこへこおおおおおおおおおお！あれえ？」
雄ずんの命にも終わりがやってきた。
「うがッ！くるち…くるち…。くちょお…どうちてこんなめにあわないといけないのだ！おちびちゃんが、おちびがもどってきたのに！ぼくがいなかったら、このむれはおわりなのだ！たすけるのだそこのおす！」
騒ぐ雄ずんに人型が野次を飛ばす。
「ははは…アレを食べたら助かる手段は無いのだ。お前も先に死んだ連中とおんなじ、あんな風に分解されていくんだよ…」
ずんだもんたちは見た。息耐えた仲間たちがグズグズに溶けているのを。もう生前の面影はなかった。
「いやだ！いや！ぼくはちなないのだ！もっとへこへこして！もっとおちびちゃんつくるのだ！しめーなのだ！わかったらぼくをたちゅけるのだ！」
「本当に壊れちまってんだな。そうやって死ぬまで叫んでおけばいいのだ。もしかしたら誰か助けてくれるかも知れないのだ？」
ぱぱずんは言葉を発することもできなくなっていた。たった1日、たった1日にして全て失ってしまった…家族も、アレだけ沢山いた仲間も…。
「やだ！や！や！いきるのだぼぐばああああああああああああぁぁぁぁぁぁ…」
ずんだもんは1匹だけになった。いや、まだ残った子ずんがいる。ままずんが最後に残した希望が…すでにグズグズのままずんの残骸のなかに蠢くものがあった。
「お、おちびちゃんなのだ！よかったのだ！たいせつにそだてていくのだ！」
「あー…、それは無理なのだ」
「え？」
「でろでろ…あ“う”…」
「ごぼぼ…でろでろ…」
「Gとかと一緒で親が死んでも中から子どもが出てきたら全滅しないのだ？ちゃんと腹の中の子ずんや卵にも効く成分が入っているのだ。」
「ああああ！！おちびちゃん！おちびちゃんがどろどろさんに…！どうちてなのだ！どうちてこんなことするのだ！」
「どうしてって、そりゃあ仕事だからなのだ。僕は…お前に説明してもわからんか。とにかく僕が生きるためにお前らを全滅させる必要があるのだ。」
「わかんないのだ…わかんないのだ！」
「お前そればっかりだな。「どうして」とか、「わかんない」とか…そうやってその先のことを考えなかったからこんなことになったんじゃないのだ？」
人型はそういうと荷物の中から何かの機会を取り出し、冷蔵庫のしたに突っ込んだ。
「冷蔵庫裏にゴミとかお前らが溜め込んだ食べ物があるとまた別の群れがやってきて住み着く可能性があるからな。きちんと掃除しておくのだ。」
「どうちてどうちて…」
「随分ゴミを溜め込んだな…。ん？これは…」
人型は冷蔵庫下から「餅」の皮を引っ張り出してきた。それを手に取り全体を見ると彼は笑い出した。
「ははははは…。おいお前、この中身が何か知ってるのだ？」
「そ、それはぼくたちがあつめたおもちなのだ！ふゆさんをこすためにいっぱいあつめたのだ！」
「ふふふはははは！やっぱりそうか！ははは…」
「な、なにがおもちろいのだ！」
ぱぱずんには人型が何故そんなにも笑うのかが分からなかった。食糧を備蓄することは当たり前では無いか。
「これ、もしかしてちびにも食わせたのか？」
「おちびちゃんたちはたべざかりなのだ！いっぱいたべてえいようをつけてはやくおおきくなってもらうのだ！とうぜんなのだ！」
「ははは。あーっはっはっはっは！あんまり笑わせないで欲しいのだ！お前、これは餅じゃない。コンベクション(ヒーターによって熱した空気をファンで循環させて食材を加熱する調理器具)用の洗剤なのだ！」
「え？」
「お前のちびたちがたりないだったのも」
「そ、そんな…」
「ちびが泡を吹いて死んだのも」
「うそなのだうそなのだうそなのだ！」
「ぜーんぶ！お前の所為だったということなのだ！はははは…。笑わずにはいられないのだ！くっくっく…これが「餅」ねぇ…。丸くて白けりゃなんでも餅になるのだ？はっはっはーッ！」
ぱぱずんは足元の地面が崩れて、自分が落ちていくような感覚を味わっていた。自分のせいで…？自分のせいでおちびちゃんが？自分のだけでは無い。他のみんなのおちびちゃんも自分の…。
呆然とするぱぱずんを人型は心底可笑しそうに腹を抱えて笑っている。
「ぼ、ぼくのせいじゃ…ないのだ…。にんげんさんがいけないのだ！あそこにはごはんさんしかおいてないのだ！にんげんさんがへんなものをおくからぼくたちもまちがえちゃったのだ！」
「この期に及んで責任転嫁なのだ？お、お前…ふふふっ、僕を笑い死にさせる気なのだ？面白すぎだろ！あーっはっはっは！」
「うるちゃいのだ！うるちゃい！みんなのかたきをとってやるのだ！むれをつくりなおしていつかかならずふくちゅーちてやるのだ！かくごするのだ！」
「あー、よく笑ったのだ！くっくっく…いつかは来ないのだ。お前はここで死ぬんだから。」
人型はぱぱずんを大きな手で掴んでしまった。
「いやなのだ！ぼくだけでもいきのこるのだ！はなちぇ！」
もちもちと人型の手を叩くぱぱずん。しかし、全力の力でもびくともしない。
「そんなに生き残りたいか？」
「あたりまえなのだ！」
「じゃあチャンスをやるよ。あそこの中のお前の番とちびの死骸…アレを食い切ったらお前だけは生かしてやる。」
「な、なにをいってるのだ！そんなことできるわけないのだ！」
「せっかくチャンスを与えてやってるのにそれを無駄にするのだ？では残念ながらここで仲間達の元へ向かってもらうのだ。」
ぐぐ…とぱぱずんを握る手に力が入る…。
「いちゃい！わかっちゃ！やるのだ！やるからたちけて！」
ふと力が緩みぱぱずんは地面に落ちる。
「いちゃい！う…くちょ…くちょ…」
「さっきまで可愛げがあったのに随分と反抗的になったのだ。僕は悲しいのだ。」
「うるちゃいのだ！うわーん！うわーん！ぜって！ころちてやる！」
「はいはい。わかったからとっと食うのだ」
ブーツで小突かれゴロゴロと転がるぱぱずんは亡骸の前まで転がされた。
「いちゃい！うう…ごめんねおちびちゃん、ままずん…くちょにんげんさんのせいで…ごめんね…」
「本当に被害者ヅラするのだけは一丁前なのだ。ほれほれ早く食べてやるのだ。そいつらもお前に食べられるのを待ってるのだ？「ぱぱずん〜wはやくたべてほちいのだ〜w」」
「くちょお！くちょお！もぐもぐもぐもぐ！」
涙を流しながら亡骸を食べ始めるぱぱずん。
悔しい。悔しさに震えながらぱぱずんは必死に食べた。生き残るため。いきのこるため…？
「おいしいのだ！おいしいのだ！なんなのだこれ！こんなにおいしいのはじめてなのだ！」
「共喰いの味を覚えちゃったか。こうなると知能が下がって面白くないんだよな〜」
はぁーとため息をつく人型。ぱぱずんはそれが妻子の死骸だったことを忘れて貪るのだった。
「おいち！おいち！もっとほちいのだ！」
「そこらに沢山あるのだ。食べ放題なのだ〜」
書類を書きながら適当に答える人型。
「こ、こんなにいっぱいあるのだ！ぜんぶたべていいのだ！？」
「好きなだけ食べるといいのだ。」
「うわーいのだ！おいち！おいち！」
ぱぱずんは仲間達の死骸を食べ尽くした。アレだけあった排水溝の死骸は綺麗さっぱり片付いたのだった。
「もっと、もっとほち！ほちい！…あれえ？なんだかのどがかわいてきたのだ。おみずのむのだ！ごくごくごくごく！」
しかし、いくら飲んでも喉の渇きは癒えない。
「もっとのむのだ！ごくごく！」
「お前ら仲間の死骸も食うからな。当然食ったやつも駆除できるようにしてあるのだ」
「あ、あがががががが！てあししびれりゅ！のどがやけちゃ！たちけて！あばばばばば！」
仲間たちと同じように痙攣し始めるぱぱずん。もう助からない。
「いやなのだ！ちにたくないのだ！なんでこんなひどいめにあうのだ！なんにもわるいことちてないのだ！」
「悪い事かどうかはお前が決めることではないのだ。より力のある物が正義か悪かを決める権利を持つのだ。」
「ずるいのだ！くちょにんげんはずるいのだ！ぼくたちだってしあわせになるためにうまれてきたのに！」
「ぷっ！ははははは！知能が下がっても最後まで笑わせてくれるのだお前！はは！最高なのだお前！土産にいいこと教えてやるのだ！」
そして人型は耳を疑うような発言をした。
「お前らはね、こうなるために産まれてきたのだ。」
続く。
後書き
なんでこんなに長いんでしょうかこの怪文書。思いついたことを書き殴っているからこんなことになるのは判っているのですが、チェックも面倒くさがりなので殆どやっていません。今回のお話、実は複数ルートを考えてあったのですがとりあえずこれを発表して人気見て公開するかどうか決めようと思います。次回最終回ですが最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
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人間の食べ物を盗んで、石鹸を餅だと思って子ずんや仲間に食べさせ、なのに何かあれば責任転嫁して口汚く喚く。
所詮は知能が低く内面が終わってる害虫ずんだ虫なんですね…
ずんだ虫共が次々と苦しんで死んでいく様は小気味良さがあって最高ですね！
人型の一言はクズんだもんに言えること。
せっかく、言葉を使えてある程度、考えることも出来るのに、原因や結果をロクに考えずに常に“被害者”であるかのように振る舞う。
命の危機が迫っても避けることもせず、自己の欲望を優先させ死ぬことになったとしてもだ。
口汚さ、性欲、食欲を置いて知的生命体として終わっている。
「どうちてこんな(ひどい)ことちゅるにょ」とその短縮形「どうちて」≒「なんぢぇ」とその拡張形「なんぢぇこんにゃ(ひどい)こと」は本来の日本語の意味を失っているのだ
「やめちぇ」やその幼児形「イヤ、イヤ」と同じく、相手の感情に訴えかけて行為を中止させるための警告音声として遺伝されているのではないか
つまり彼等に原因や結果を考える者はいない、あるいは存在してもごく少数であり、今後知能が低下し脳全般が退化して如何に素早く繁殖するかのみに特化していく過程の中途半端な亜種を我々は見ているのだろう
(豆打「中途半端なくずんだもん」民明書房、20xx)
おお〜地獄地獄ｗ
「餅」の正体は洗剤でしたか
結局全部ずんだもん達自身の愚考愚行が招いたことでした、とｗ
う〜ん、言葉が通じて言うこと聞くなら店によっては奴隷として利用、いや共存も可能かとも思ってたんですが、ここまで「頭たりない（おまけにすぐ責任転嫁する）」だと無理ですね
続き（というよりエピローグ？）も期待です
感想ありがとうございます。エピローグはまあ自分の考えた設定を披露する場になると思いますw。無駄に長い文章を読んでいただき感謝です！
口とあにゃるから泡を出しまくってる姿想像すると笑えちゃう
笑いどころとして書いたので伝わって嬉しいです。コメントありがとうございます
ああ、あの【お餅】、石鹸かと思ってたけど、固形の洗剤という意味では近かったか？まあ、面白い事になってて草生える。
泡立てば何でも良かったのですが飲食店は固形よりも液体石鹸を使っているそうなので今回は洗剤にしました。ありがとうございます