作者：かすてら 
前置き
この世界のずんだもんは苦しむと旨みが増し、幸せを感じると甘みが増すという設定で行こうと思います。(もう最終回なので次回以降使うか不明ですがw)では最後まで楽しんでください。
最後の一品
板長「最後の一品はずんだもちなのだ。」
ーずんだ餅ですか？最後はとてもシンプルな料理ですねー
板長「シンプルが一番ごまかしが効かないのだ。最も料理人と素材が試される料理なのだ。」
そういうと板長はケージに入ったずんだ虫の番を持ってきた。雌の腹が膨れている…。どうやら妊娠しているようだ。
「いまおなかのこがうごいたのだ！もうすぐうまれそうなのだ！」
「おちびちゃん、もうすぐあえるんだね。とってもたのしみなのだ」
「いたちょうさんなのだ！くんくん、おもちさんやいてるのだ？」
板長「そうなのだ。君たちの子供が産まれるからね。その準備なのだ。お客さんも楽しみにしているのだ。」
「ありがとうなのだ！うれしいのだ！はやくおちびちゃんたちにあいたいのだ！」
「きっとままずんとぼくににてかわいいずんだもんなのだ」
ーこのずんだ虫、板長が育てたのですか？ー
板長「子ずんの時に選定して今日まで手塩にかけて育ててきたのだ。文句なしに仕上がったずんだ虫なのだ」
「いたちょうさんのおかげでぼくたちはいままでふじゆうなくくらしてこられたのだ！
「いたちょうさんありがとうなのだ！」
板長「これも仕事なのだ。お前達は本当に立派になったのだ。誇って良いのだ」
しかし、ずんだ餅を作るために育てたのはわかるが出産直前に連れてくるとはどういう事だろうか…？
「うぅ…おなかいちゃい！うまれる！うまれるのだ！」
「ままずん！がんばるのだ！ぼくもいたちょうさんもついているのだ！」
「「おぎゃーのだ！おぎゃーのだ！」」
元気な鳴き声とともに赤ずんが8匹誕生した。
「はぁ…はぁ…うまれたのだ！うまれたのだ！とってもかわいいのだ！」
「これからよろしくなのだ！おちびちゃん！」
「おぎゃー！おとーしゃ！」
「おかーしゃ！」
板長「おお、一度に8匹も…良くやったのだお疲れ様なのだ」
「ありがとうなのだいたちょうさん！これからぱぱずんとがんばってそだてていくのだ！
おおきくなるのがたのしみなのだ！」
板長「残念ながらそれはかなわない夢なのだ」
「「え？」」
親ずん達は板長の言葉が理解できていないようだ。笑顔のまま固まってしまった。そんな親ずんをよそに板長は産まれたばかりの赤ずん達をいつのまにか用意したすり鉢に放り込んでいく。
「のだぁ？」
「くんくん、おもちさんのにおいがするのだ！」
「うわーん！おなかちゅいたのだ！」
「おもちさん…ずんだもちなのだ？」
「ずんだもち！ほちい！ほちい！」
「おにーさんだれなのだ？」
「みんなでたんけんするのだ！」
「のだのだのだのだ！」
「「のだのだのだのだ」」
すり鉢に入れられた赤ずん達は元気に動き始めた。
「いたちょうさん、おちびちゃんたちにずんだもちくれるのだ？」
板長「お客さんこれから作るのが当店自慢のずんだもちなのだ。良く見てほしいのだ。」
そういうと板長はすりこぎ棒を手に持ちー
動き回る赤ずん達をすり潰し始めた。
「え？」
「「「「「ｵｷﾞｬｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ
！！！！」」」」
メリメリと骨が砕ける音がした。産まれたてで何の力も持たない赤ずん達はなすすべもなく潰されていく。
「ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！！おちびちゃあああああああん！」
「ほぎほぎぃ！！いちゃい！いちゃいよ！ちゅぶれるうううううううう！」
中身が明太子のように飛び出し、1匹が死んだ
「ぼくのてが…てがないのだ！かえちてよぉ…かえちてよぉ！あがががががががが！！」
頭が腹の中にめり込み2匹目も死んだ。
「ま、まっちぇ！まつのだいたちょうさん！おちびちゃんたちがいたがっているのだ！」
「くるちそうなのだ！やめてあげてほしいのだ！」
板長「それはできないのだ。コレをやるなら今しかないのだ。」
「え？ど、どういうことなのだ？」
板長はその問いには答えず赤ずんたちをすり潰し始めた。ひたすらに。一心に。
「おぎゃああああああああああああああ！おにーちゃ！おとーと！いもーと！みんなみんなぐちょちょなのだ！いちゃ！いちゃｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ」
また1匹死ぬ。
「こわいよー！ぱぱずん！ままz」
また1匹死ぬ。
「ひゅー…こひゅー…いきができないちゃ…くるち…くるち…」
また1匹。
「ﾔﾒﾃ！おぎゃー！ﾔﾒﾃ！」
また1匹。
「たすけちぇ！たすけpぎゃ！」
すり潰されて死ぬ。
「からだけずれてるのだ！いちゃいよー！こわいよー！」
すり鉢からは大小様々な悲鳴が聞こえていたがやがて聞こえるのは湿った音だけになった。こうして産まれたばかりの赤ずん達は全てずんだペーストになってしまったのだった。
「お、おちおちおち」
「ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！おちびちゃんが、おちびちゃんが！！なんで！どうしてこんなことするのだ！」
板長は筆者に向けて語り始めた。
板長「ではここからは料理の解説なのだ。ずんだ虫は幸せを感じると甘みが増し、ストレスを受けると旨味が増すのは有名な話なのだ。そこで赤ずんの段階で選別した甘味用ずんだ虫を出産までストレスのない状態で育てるのだ。こうすることで産まれてくる子ずんは濃縮され最高に甘い状態で産まれてくるのだ。」
「な、なにをいっているのだ？」
「わ、わかんないのだ…むずかしーおはなしなのだ…」
板長「子ずん産まれたてが最も身が柔らかくとろけるような舌触りなのだ。そこで僕がかんがえたのがこの調理法。出産直前の親ずんを使って産まれたて子ずんを手に入れるのだ。産地直送より早いのだ。」
ー最高の料理にするために飼育にも手間をかけていたのですねー
板長「その通りなのだ。かき氷用のずんだ虫よりも気を使うから工場ではなく、自分で育てないといけないのだ。でも苦労に見合った最高の味を保証するのだ。」
そこようやく板長は親ずんの方に向かって語り始めた。
板長「つまりお前達を最高の状態で食べるために今までお前達の世話をしてきた。ということなのだ。わかったのだ？」
「そ、そんな…おちびちゃん…ごめんね…そだててあげられなくてごめんね…」
「ゆるせないのだ！おちびちゃんのかたきをとるのだ！ふくちゅーなのだ！」
呆然とする雌といきり立つ雄。雄の方は中々メンタルが強いようだ。この場面でまだ立ち向かおうとは、しかし…
板長「残念ながらそれも叶えることはできないのだ。」
「え？」
板長「なぜならこの料理はずんだ餅三昧。つまりお前達夫婦もずんだ餅にして初めて完成するのだ。安心するのだ、かなり苦しむがしっかりおチビ達と同じところに送ってやるのだ。」
板長は子ずんペーストを器に移すと雌ずんをすり鉢に入れた。
「や、やめるのだやめるのだ！ままずんはぼくがまもるのだ！うわっ！だめだめだめだめ！もっていかないでー！！」
「は、はなちて！はなちぇ！ぼくはごはんさんにはならないのだ！」
板長「親ずんはすり鉢から逃げ出すのを防止し、ストレスを貯めるため先に手足を潰すのだ。」
「ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！！くちょ！くちょ！ままずんをはなちぇ！この！こわれるのだ！」
すり鉢をもちもちと叩く(？)雄ずん。飛べばまだ届くかもしれないがこのずんだ虫は産まれた時から飛ぶ訓練をしていないためほぼ飛ぶことはできないと板長はおしえてくれた。
「ぎにゃああああああああ！いちゃい！いちゃいよ！ゆるちて！たすけて！」
「かみさま！おねがい！ままずんをたすけて！このままじゃままずんが！」
「あ！だめだめだめだめ！おなかはやめて！
おなかだけは！おなかはあああああああああああああああああ！！！」
「「「おぎゃーのだ！おぎゃーのだ！はう…はう…」」」
すりこぎ棒が雌ずんの腹をすり潰すと中からたりないずんだもんが3匹ほど飛び出してきた。さっきの出産で残っていたということはまだ産まれるには早かったのだろうか？
「お、おちびちゃん…ないのだ…てもあしも…はっ！やめるのだ！ぼくはどうなってもいいのだ！このこたちはたべないで！」
「そうなのだ！このおちびちゃんはぼくたちのきぼーなのだ！このおちびちゃんたちにまでてをだしたらぶっころちてやるのだ！」
板長「食べる？バカ言っちゃいけない。さっき言ったのだ？ストレスを感じない環境で育ったずんだ虫の産んだ子ずんにこそ価値があるのだ。この子ずんは溜め込んだ甘みに対して受けたストレスが大きすぎるのだ。一緒に混ぜてしまうと雑味になるのだ。工場やファミレスならともかく、料亭ではあり得ないのだ。」
「いたちょうさん…ありがとうなのだ！おちびちゃんたち…ままずんがいなくなってもみんなでちからをあわせてつよくいきるのだ！
」
板長「コレはゴミと変わり無いのだ。賄いにもなりはしないのだ。」
そういって板長は子ずんを拾い上げると無造作にゴミ箱へ捨てた。
「「「おぎゃーのだああああぁぁぁぁ…ｸﾗｲ！ｸﾁｬｲﾉﾀﾞ！ｳﾜｰﾝ！ｺﾜｲﾉﾀﾞｰ！！」」」
「や、やｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！おちびちゃんが、ごみばこさんにいいいいいいいいい！なんでこんなひどいことするのだ！」
「あんなところにはいってたらびょーきになっちゃうのだ！ぼくたちはなにもわるいことちてないのにひどいのだ！」
板長「酷い？確かにお前たちにとってはそうかも知れないのだ。だけど、いいか。覚えておくのだ。これが生きるということなのだ。生き物は皆、他の命を喰らって生きているのだ。お前たちも今までずんだ餅や果物、枝豆を食べてきたのだ？お前たちも他の命を奪って育ってきたのだ。」
「うるちゃい！とにかくままずんをはなすのだ！このままだとちんじゃうのだ！のだのだのだのだ！」
板長の手にぺちぺちと攻撃を加える雄ずん。
しかし必死の攻撃もこれほど体格差があっては全く意味をなさない。雄ずんは板長に摘まれケージの中に入れられてしまった。
「だせだせ！だすのだ！いますぐだすのだ！くちょお！くちょお！ままずん！」
「ぱぱずん…ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！ごりごりやめちぇ！なかみださないで！いちゃいいちゃい！」
もうほとんど頭だけになっていた雌ずんもようやく死ぬことを許された。後に残ったのは鮮やかな色のずんだだけである。
「うわーん！うわーん！よくもままずんを！ぜったい！ぜったいゆるさないのだ！ふくちゅうちてやるのだ！」
板長「いよいよ最後なのだ。ここまでストレスを溜めた成ずんは甘さの中に深い苦味を蓄えた大人の味なのだ。そして雄ずんはあることをすることで更に別の味を楽しめるのだ。」
板長はケージから雄ずんをまな板に仰向けに置いた。雄ずんは短い手足をバタつかせていて固定しないと調理しにくそうだ。
板長「まずは手足を落とすのだ」
「ああ！いちゃい！てあしとらないで！はぁ…はぁ…なくなっちゃ…かえちぇ…」
板長「そしてここがメイン。ずんぽとずんたまをとるのだ。ずんたまを加えることでまるで抹茶ラテのようなクリーミーな味わいになるのだ。」
「………」
「え？」
板長「では取り出していくのだ。」
「やめるのだやめるのだやめるのだ！おねがい！ずんぽは！ずんぽだけは！ゆるちてほちいのだ！てもあしもたべていいのだ！だからずんぽだけはゆるちて！」
板長「ここが一番うまいのだ逃すわけにはいかないのだ」
「や！や！やめちぇえええええええええええずんぽゆるちてほちいのだああああああぁああああああｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！！」
ずんだ虫の懇願は聞き入れられなかった。雄の象徴は綺麗に切り取られ、手足と一緒にすり潰されてしまった。
「ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！かえちて…ぼくのずんぽ…ぼくの…ずんたま…」
ずんぽとずんたまを失った雄ずんは今までの五月蠅さが嘘のように静かになってしまった。
板長「では身体のほうも潰していくのだ。」
「いちゃい！ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！ぼくはいきてやるのだ！ちくちょお！やめて！ごりごりしないで！」
(おちびちゃん…ままずん…みんなでたのしくいきていくはずだったのだ…なんでこんなひどいことするのだ？ひどいのだかみさま…ひどいのだ…)
こうしてずんだ虫一家はずんだと化した。板長はそれを焼いたばかりの餅にかけ、皿に盛り付けた。ずんだ独特の香りが鼻腔をくすぐる。
板長「ずんだ餅三昧の完成なのだ。命に感謝して食べてほしいのだ。」
ーいただきますー
感動した。子ずんのずんだはとびきり甘くて柔らかく、マシュマロのように口の中で溶けていった。
雌ずんは甘すぎず適度な豆っぽさがあり、雄ずんは口当たりが良くまろやかでそれでいてミルクのようなクリーミーさがあり、筆者は三つとも完食してしまった。
ー今回いただいた料理はどれも素晴らしいものばかりでした。ぜひまた取材をさせて下さい。ー
板長「お待ちしているのだ。僕も新しい料理を考えて更に腕に磨きをかけて見せるのだ。」
万能食材ずんだ虫を用いた料理は数多くあれど、ここまで考え抜かれた料理を少なくとも私は知らない。次に訪れるとき「ずんだ庵」はどのような未知の料理を見せてくれるのだろう。筆者はそんな思いを胸に帰路へとつくのだった。
ー完ー
作者コメント
一応完結です。素人書いたので読みにくい部分など多々あるかと思いますが、誰かの記憶に少しでも残れたら良いなと思います。そして優良な人が入ってきてくれると嬉しいですね。料理する時は善良ずん虐しかないと思ってるんでこれからも料理はこんな感じで書くと思います。(ヘコずん虐は実験系でやります)
コメントくれる方々ありがとうございました。励みになってます。
最後にここまで読んでいただき本当にありがとうございました。また何かの作品でお会いしましょう。
この世界のずんだもんは苦しむと旨みが増し、幸せを感じると甘みが増すという設定で行こうと思います。(もう最終回なので次回以降使うか不明ですがw)では最後まで楽しんでください。
最後の一品
板長「最後の一品はずんだもちなのだ。」
ーずんだ餅ですか？最後はとてもシンプルな料理ですねー
板長「シンプルが一番ごまかしが効かないのだ。最も料理人と素材が試される料理なのだ。」
そういうと板長はケージに入ったずんだ虫の番を持ってきた。雌の腹が膨れている…。どうやら妊娠しているようだ。
「いまおなかのこがうごいたのだ！もうすぐうまれそうなのだ！」
「おちびちゃん、もうすぐあえるんだね。とってもたのしみなのだ」
「いたちょうさんなのだ！くんくん、おもちさんやいてるのだ？」
板長「そうなのだ。君たちの子供が産まれるからね。その準備なのだ。お客さんも楽しみにしているのだ。」
「ありがとうなのだ！うれしいのだ！はやくおちびちゃんたちにあいたいのだ！」
「きっとままずんとぼくににてかわいいずんだもんなのだ」
ーこのずんだ虫、板長が育てたのですか？ー
板長「子ずんの時に選定して今日まで手塩にかけて育ててきたのだ。文句なしに仕上がったずんだ虫なのだ」
「いたちょうさんのおかげでぼくたちはいままでふじゆうなくくらしてこられたのだ！
「いたちょうさんありがとうなのだ！」
板長「これも仕事なのだ。お前達は本当に立派になったのだ。誇って良いのだ」
しかし、ずんだ餅を作るために育てたのはわかるが出産直前に連れてくるとはどういう事だろうか…？
「うぅ…おなかいちゃい！うまれる！うまれるのだ！」
「ままずん！がんばるのだ！ぼくもいたちょうさんもついているのだ！」
「「おぎゃーのだ！おぎゃーのだ！」」
元気な鳴き声とともに赤ずんが8匹誕生した。
「はぁ…はぁ…うまれたのだ！うまれたのだ！とってもかわいいのだ！」
「これからよろしくなのだ！おちびちゃん！」
「おぎゃー！おとーしゃ！」
「おかーしゃ！」
板長「おお、一度に8匹も…良くやったのだお疲れ様なのだ」
「ありがとうなのだいたちょうさん！これからぱぱずんとがんばってそだてていくのだ！
おおきくなるのがたのしみなのだ！」
板長「残念ながらそれはかなわない夢なのだ」
「「え？」」
親ずん達は板長の言葉が理解できていないようだ。笑顔のまま固まってしまった。そんな親ずんをよそに板長は産まれたばかりの赤ずん達をいつのまにか用意したすり鉢に放り込んでいく。
「のだぁ？」
「くんくん、おもちさんのにおいがするのだ！」
「うわーん！おなかちゅいたのだ！」
「おもちさん…ずんだもちなのだ？」
「ずんだもち！ほちい！ほちい！」
「おにーさんだれなのだ？」
「みんなでたんけんするのだ！」
「のだのだのだのだ！」
「「のだのだのだのだ」」
すり鉢に入れられた赤ずん達は元気に動き始めた。
「いたちょうさん、おちびちゃんたちにずんだもちくれるのだ？」
板長「お客さんこれから作るのが当店自慢のずんだもちなのだ。良く見てほしいのだ。」
そういうと板長はすりこぎ棒を手に持ちー
動き回る赤ずん達をすり潰し始めた。
「え？」
「「「「「ｵｷﾞｬｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ
！！！！」」」」
メリメリと骨が砕ける音がした。産まれたてで何の力も持たない赤ずん達はなすすべもなく潰されていく。
「ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！！おちびちゃあああああああん！」
「ほぎほぎぃ！！いちゃい！いちゃいよ！ちゅぶれるうううううううう！」
中身が明太子のように飛び出し、1匹が死んだ
「ぼくのてが…てがないのだ！かえちてよぉ…かえちてよぉ！あがががががががが！！」
頭が腹の中にめり込み2匹目も死んだ。
「ま、まっちぇ！まつのだいたちょうさん！おちびちゃんたちがいたがっているのだ！」
「くるちそうなのだ！やめてあげてほしいのだ！」
板長「それはできないのだ。コレをやるなら今しかないのだ。」
「え？ど、どういうことなのだ？」
板長はその問いには答えず赤ずんたちをすり潰し始めた。ひたすらに。一心に。
「おぎゃああああああああああああああ！おにーちゃ！おとーと！いもーと！みんなみんなぐちょちょなのだ！いちゃ！いちゃｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ」
また1匹死ぬ。
「こわいよー！ぱぱずん！ままz」
また1匹死ぬ。
「ひゅー…こひゅー…いきができないちゃ…くるち…くるち…」
また1匹。
「ﾔﾒﾃ！おぎゃー！ﾔﾒﾃ！」
また1匹。
「たすけちぇ！たすけpぎゃ！」
すり潰されて死ぬ。
「からだけずれてるのだ！いちゃいよー！こわいよー！」
すり鉢からは大小様々な悲鳴が聞こえていたがやがて聞こえるのは湿った音だけになった。こうして産まれたばかりの赤ずん達は全てずんだペーストになってしまったのだった。
「お、おちおちおち」
「ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！おちびちゃんが、おちびちゃんが！！なんで！どうしてこんなことするのだ！」
板長は筆者に向けて語り始めた。
板長「ではここからは料理の解説なのだ。ずんだ虫は幸せを感じると甘みが増し、ストレスを受けると旨味が増すのは有名な話なのだ。そこで赤ずんの段階で選別した甘味用ずんだ虫を出産までストレスのない状態で育てるのだ。こうすることで産まれてくる子ずんは濃縮され最高に甘い状態で産まれてくるのだ。」
「な、なにをいっているのだ？」
「わ、わかんないのだ…むずかしーおはなしなのだ…」
板長「子ずん産まれたてが最も身が柔らかくとろけるような舌触りなのだ。そこで僕がかんがえたのがこの調理法。出産直前の親ずんを使って産まれたて子ずんを手に入れるのだ。産地直送より早いのだ。」
ー最高の料理にするために飼育にも手間をかけていたのですねー
板長「その通りなのだ。かき氷用のずんだ虫よりも気を使うから工場ではなく、自分で育てないといけないのだ。でも苦労に見合った最高の味を保証するのだ。」
そこようやく板長は親ずんの方に向かって語り始めた。
板長「つまりお前達を最高の状態で食べるために今までお前達の世話をしてきた。ということなのだ。わかったのだ？」
「そ、そんな…おちびちゃん…ごめんね…そだててあげられなくてごめんね…」
「ゆるせないのだ！おちびちゃんのかたきをとるのだ！ふくちゅーなのだ！」
呆然とする雌といきり立つ雄。雄の方は中々メンタルが強いようだ。この場面でまだ立ち向かおうとは、しかし…
板長「残念ながらそれも叶えることはできないのだ。」
「え？」
板長「なぜならこの料理はずんだ餅三昧。つまりお前達夫婦もずんだ餅にして初めて完成するのだ。安心するのだ、かなり苦しむがしっかりおチビ達と同じところに送ってやるのだ。」
板長は子ずんペーストを器に移すと雌ずんをすり鉢に入れた。
「や、やめるのだやめるのだ！ままずんはぼくがまもるのだ！うわっ！だめだめだめだめ！もっていかないでー！！」
「は、はなちて！はなちぇ！ぼくはごはんさんにはならないのだ！」
板長「親ずんはすり鉢から逃げ出すのを防止し、ストレスを貯めるため先に手足を潰すのだ。」
「ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！！くちょ！くちょ！ままずんをはなちぇ！この！こわれるのだ！」
すり鉢をもちもちと叩く(？)雄ずん。飛べばまだ届くかもしれないがこのずんだ虫は産まれた時から飛ぶ訓練をしていないためほぼ飛ぶことはできないと板長はおしえてくれた。
「ぎにゃああああああああ！いちゃい！いちゃいよ！ゆるちて！たすけて！」
「かみさま！おねがい！ままずんをたすけて！このままじゃままずんが！」
「あ！だめだめだめだめ！おなかはやめて！
おなかだけは！おなかはあああああああああああああああああ！！！」
「「「おぎゃーのだ！おぎゃーのだ！はう…はう…」」」
すりこぎ棒が雌ずんの腹をすり潰すと中からたりないずんだもんが3匹ほど飛び出してきた。さっきの出産で残っていたということはまだ産まれるには早かったのだろうか？
「お、おちびちゃん…ないのだ…てもあしも…はっ！やめるのだ！ぼくはどうなってもいいのだ！このこたちはたべないで！」
「そうなのだ！このおちびちゃんはぼくたちのきぼーなのだ！このおちびちゃんたちにまでてをだしたらぶっころちてやるのだ！」
板長「食べる？バカ言っちゃいけない。さっき言ったのだ？ストレスを感じない環境で育ったずんだ虫の産んだ子ずんにこそ価値があるのだ。この子ずんは溜め込んだ甘みに対して受けたストレスが大きすぎるのだ。一緒に混ぜてしまうと雑味になるのだ。工場やファミレスならともかく、料亭ではあり得ないのだ。」
「いたちょうさん…ありがとうなのだ！おちびちゃんたち…ままずんがいなくなってもみんなでちからをあわせてつよくいきるのだ！
」
板長「コレはゴミと変わり無いのだ。賄いにもなりはしないのだ。」
そういって板長は子ずんを拾い上げると無造作にゴミ箱へ捨てた。
「「「おぎゃーのだああああぁぁぁぁ…ｸﾗｲ！ｸﾁｬｲﾉﾀﾞ！ｳﾜｰﾝ！ｺﾜｲﾉﾀﾞｰ！！」」」
「や、やｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！おちびちゃんが、ごみばこさんにいいいいいいいいい！なんでこんなひどいことするのだ！」
「あんなところにはいってたらびょーきになっちゃうのだ！ぼくたちはなにもわるいことちてないのにひどいのだ！」
板長「酷い？確かにお前たちにとってはそうかも知れないのだ。だけど、いいか。覚えておくのだ。これが生きるということなのだ。生き物は皆、他の命を喰らって生きているのだ。お前たちも今までずんだ餅や果物、枝豆を食べてきたのだ？お前たちも他の命を奪って育ってきたのだ。」
「うるちゃい！とにかくままずんをはなすのだ！このままだとちんじゃうのだ！のだのだのだのだ！」
板長の手にぺちぺちと攻撃を加える雄ずん。
しかし必死の攻撃もこれほど体格差があっては全く意味をなさない。雄ずんは板長に摘まれケージの中に入れられてしまった。
「だせだせ！だすのだ！いますぐだすのだ！くちょお！くちょお！ままずん！」
「ぱぱずん…ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！ごりごりやめちぇ！なかみださないで！いちゃいいちゃい！」
もうほとんど頭だけになっていた雌ずんもようやく死ぬことを許された。後に残ったのは鮮やかな色のずんだだけである。
「うわーん！うわーん！よくもままずんを！ぜったい！ぜったいゆるさないのだ！ふくちゅうちてやるのだ！」
板長「いよいよ最後なのだ。ここまでストレスを溜めた成ずんは甘さの中に深い苦味を蓄えた大人の味なのだ。そして雄ずんはあることをすることで更に別の味を楽しめるのだ。」
板長はケージから雄ずんをまな板に仰向けに置いた。雄ずんは短い手足をバタつかせていて固定しないと調理しにくそうだ。
板長「まずは手足を落とすのだ」
「ああ！いちゃい！てあしとらないで！はぁ…はぁ…なくなっちゃ…かえちぇ…」
板長「そしてここがメイン。ずんぽとずんたまをとるのだ。ずんたまを加えることでまるで抹茶ラテのようなクリーミーな味わいになるのだ。」
「………」
「え？」
板長「では取り出していくのだ。」
「やめるのだやめるのだやめるのだ！おねがい！ずんぽは！ずんぽだけは！ゆるちてほちいのだ！てもあしもたべていいのだ！だからずんぽだけはゆるちて！」
板長「ここが一番うまいのだ逃すわけにはいかないのだ」
「や！や！やめちぇえええええええええええずんぽゆるちてほちいのだああああああぁああああああｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！！」
ずんだ虫の懇願は聞き入れられなかった。雄の象徴は綺麗に切り取られ、手足と一緒にすり潰されてしまった。
「ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！かえちて…ぼくのずんぽ…ぼくの…ずんたま…」
ずんぽとずんたまを失った雄ずんは今までの五月蠅さが嘘のように静かになってしまった。
板長「では身体のほうも潰していくのだ。」
「いちゃい！ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ！ぼくはいきてやるのだ！ちくちょお！やめて！ごりごりしないで！」
(おちびちゃん…ままずん…みんなでたのしくいきていくはずだったのだ…なんでこんなひどいことするのだ？ひどいのだかみさま…ひどいのだ…)
こうしてずんだ虫一家はずんだと化した。板長はそれを焼いたばかりの餅にかけ、皿に盛り付けた。ずんだ独特の香りが鼻腔をくすぐる。
板長「ずんだ餅三昧の完成なのだ。命に感謝して食べてほしいのだ。」
ーいただきますー
感動した。子ずんのずんだはとびきり甘くて柔らかく、マシュマロのように口の中で溶けていった。
雌ずんは甘すぎず適度な豆っぽさがあり、雄ずんは口当たりが良くまろやかでそれでいてミルクのようなクリーミーさがあり、筆者は三つとも完食してしまった。
ー今回いただいた料理はどれも素晴らしいものばかりでした。ぜひまた取材をさせて下さい。ー
板長「お待ちしているのだ。僕も新しい料理を考えて更に腕に磨きをかけて見せるのだ。」
万能食材ずんだ虫を用いた料理は数多くあれど、ここまで考え抜かれた料理を少なくとも私は知らない。次に訪れるとき「ずんだ庵」はどのような未知の料理を見せてくれるのだろう。筆者はそんな思いを胸に帰路へとつくのだった。
ー完ー
作者コメント
一応完結です。素人書いたので読みにくい部分など多々あるかと思いますが、誰かの記憶に少しでも残れたら良いなと思います。そして優良な人が入ってきてくれると嬉しいですね。料理する時は善良ずん虐しかないと思ってるんでこれからも料理はこんな感じで書くと思います。(ヘコずん虐は実験系でやります)
コメントくれる方々ありがとうございました。励みになってます。
最後にここまで読んでいただき本当にありがとうございました。また何かの作品でお会いしましょう。
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このページへのコメント
たりないが殺す価値すらなく無造作にゴミ箱に投げ捨てられるシーンが面白い。手も足も耳もないヤツは生きる価値も無いというのがよくわかる。
そもそも豆かす自体価値ないんだからさｗ
出来損ないに当然の末路よｗｗ
最高に幸福にした何も知らない妖精を一気に絶望させるのは一貫して神回なんだわ
この妖精結構神頼みしてますね。神の概念をどこで知ったんでしょうか？
生まれた時点である程度の語彙と会話能力持ってるという、赤ん坊時点では既存全生物をぶっちぎってる知能指数&知識量の怪物なので、その辺は単に知識の一環かもなのだ
てかどこでどう学習してくるのだろう？
子供は既存生物みたいな遺伝子レベルでのコピーでなく、脳含む個体の構造自体親の劣化コピーだったりして…
ずんだ虫の前時代に虐殺されていた"糞饅頭"は母体から幸せ〜な知識や記憶を引き継いでいるとあったので、もしかしたらコイツらも同様に親の胎内で言語などの知識を引き継いでるのかもしれませんね。
(※糞饅頭に限った話だが、あくまでも引き継がれるのは｢幸せな知識"だけ"｣だから人間や外敵の恐ろしさ、自然の脅威などの生存に必要な知恵などは｢幸せじゃない｣から微塵も受け継がれない模様……)
なるほど興味深いのだ
(メタ的なことを言ってしまえばその方が盛り上がるからだろうけど)
先天的に獲得している知識や言語能力がどこまでなのか、親が後天的に学習した知識はどの程度反映されてどの程度劣化するのか、成長する過程でどう定着していくのか、そのへん研究してる人もいそうなのだ…というか多分いるよね
スーパー知能個体を生み出したり、食用に低知能個体群作り出したりするために必要な研究項目のはずなのだ
「ずんぽだけは許して！」の声を聴くと、今日も一日頑張ろうって気持ちになれる。
毎日ずんぽちぎる用の雄ずん欲しいですよね
これから毎日ずんぽ切ろうぜ(某家を焼こうぜ風に
最後の一品はシンプルにずんだ餅ですか
それも食材の育成から大層な労力を掛けて用意した最高のものを、それぞれに合わせた最高の技法で
これは餅自体も当然最高のものなんでしょうね
今回のコース、恐らくお値段のほうもそれに相応しい、かなりのお値段に（ｒｙ
タイミングも重要ですから（特に最後のずんだ餅）、予約必須、数量限定ですね