はたらくずんだもん
最終更新：
saiyan_party 2023年01月21日(土) 02:11:30履歴
本文 作：祭屋 
「みなさんこんにちは。妖精駆除業者で元妖精のずんだもんなのだ」
「今日もぼくのお仕事、もとい同族殺しの様子をたっぷりと楽しんでほしいのだ！」
「その上で仕事のご依頼募集中なのだ！人間さんの社会で生きていく上ではお金が必要なのだ！！」
「動画はあくまでも副業なのだ！よろしくお願いしますのだ！！」
最近動画サイトで話題沸騰のこのチャンネル。
本人が大々的にウリにしているが『元妖精』が駆除業者を営んでいて屠殺シーンまできっちり見せるという、面白半分で見ていいのかどうか判断に困る内容になっている。
妖精被害の規模は増える一方で、ところによっては個人で駆除するのも不可能となっていると聞く。
現地に赴き徹底的に狩り尽くし、再発生防止のためにどんなことをすればよいか、個人に出来ることはあるのか等専門的な知識をしっかり解説してくれると評判だ。
たびたび仕事の様子を(もちろん依頼主に許可を取り、場所の特定等に対する配慮をしながら)動画化しているのが特徴で、臨場感のある駆除・捕獲シーンは見どころ満載となっている。
「というわけで、ここが今回の現場なのだ！おそらく動画化の際は周りモザイクだらけなのだ！！」
「実は今回の依頼者様は知り合いで、ご存じの方もいらっしゃると思うけど『〇×△』のおにーさんなのだ。実質コラボ動画なのだ！」
「あの人には仕事を回してもらったり、私生活や動画編集の件でもお世話になりっぱなしで頭が上がらないのだ。今度なにかいいものを贈っておくのだ」
「依頼内容は所有される山の見回りなのだ。前に動画でご本人がされてる回があったけど、定期的に見回らなきゃいけない関係でぼくにお仕事を振っていただいたのだ。動画化の許可も快く出していただいてありがたい限りなのだ。いつか登録者数を抜いてやるのだ！」
ザクザクと草木をかき分けて山道を進んでいく。特段手の入っていない緑の様子が目に優しい。
「ここに放し飼いにされているのは大体善良ずんなんだけど、時たまロクデナシが産まれたり余所者が侵入ってきちゃうのだ」
「開けっぴろげの山への侵入を防ぐのは難しい話だし、逆にここ住まいの善良ずんは危険な外に出向く理由がないから入ってくるに任せっぱなしなのだ」
「善良ずんは(妖精にしては)賢い個体が多いけど、争いを好まないせいか同族の中での腕っぷしはそうでもないのだ」
「いや妖精自体のフィジカルがクソ雑魚なのは言うまでもないけど、運悪く出会ったクズ個体や下半身直結連中にいいようにされたり、無理矢理望まぬ仔を仕込まれたりしているのは想像に難くないのだ」
「まあぼくもか弱い『元妖精』なので腕っぷしより知恵で勝負するのだ。その方が人間さんっぽいのだ？」
「と、そうこうしているうちに第一妖精発見なのだ。話を聞いてみるのだ」
「善良個体なら様子を聞けばいいし、クズなら締め上げて余罪と住処を吐かせるまでなのだ」
[あれぇ、にんげんさんなのだ？]
[いつものおにーさんじゃないのだ。どちらさまなのだ？？]
物陰から現れた妖精ずんだもん。暴言を吐いてこない辺りでクズずんではなさそうだが警戒心が薄い気がする。
人間の保護下に置かれているので完全に野生とは言えないが、生物としていささか不安に思う。
「驚かせてしまってすまないのだ。ぼくは君たちの知ってるおにーさんの知り合いなのだ」
「ぼくもおにーさんにはお世話になっているのだ。君たちと同じなのだ」
[おにーさんのおともだちならあんしんなのだ！]
[にんげんさん、きょうはどんなごようなのだ？]
ぴょんぴょんと跳ねて笑顔を振りまく妖精たち。彼らのような個体ばかりなら害獣として駆除されることもないのかもしれないが・・・。
「実は忙しいおにーさんに代わって見回りに来たのだ。周りで変わった様子とか、トラブルは起こってないか教えてほしいのだ」
[うーん・・・ぼくたちのむれでは、とくにないのだ！]
[さいきんはごはんさんをあつめるのでいそがしいのだ。おちびちゃんがいっぱいうまれたのだ！]
「なるほど、よーくわかったのだ。君たちが困っていなくて何よりなのだ」
[おつとめごくろうさまなのだ！]
[にんげんさん、こんどきたらぼくたちのむれに あんないするのだ！おちびちゃんやなかまを しょうかいするのだ！！]
「それは楽しみなのだ。また会おうなのだ」
笑顔で善良ずんたちと別れる。巡回でクズや侵入者が見つからなければそれでよし。
まあこうして我々の目に触れている時点で『何か』があったことには違いないだろうが。
「ひとつの群れでは何も起こっていなくても、他所では何かが起こっているかもしれないのだ」
「足を使ってしっかり確認する。群れがクズに支配されてからでは遅いのだ。ここや養殖場だと失われる善良ずんの損害がとんでもないことになってしまうのだ」
「資源として求められる一方、クズずんや街に降りてきた野良個体には価値がないどころか放っておくと迷惑極まりないのだ。なんだか複雑な話なのだ」
そうしていくつかの群れを周り情報を集めたところ、最近見慣れない妖精が離れの洞窟に住み着いたという情報を手に入れた。
見慣れない妖精・・・。ほぼ確実に他所からの侵入者であろうと確信し、ずんだもんは荷物を降ろし捕獲の準備を始める。
「というわけで、アレが件の洞窟らしいのだ」
「洞窟って言っても妖精から見ればという話でぼくたちからすれば横穴なのだ。この規模なら出入口は一つだろうから正面突破でおしまいなのだ」
「そうと決まれば煙で燻すのだ。ぼくの場合はこうして火を使うことが多いのだ。火は人間さんの知恵の象徴、色々使えて場合によっては手っ取り早い。やはり偉大なのだ」
言いながら穴の前に集めた枯草へライターで着火する。屈みこみ、巣へ向かってパタパタとうちわを仰ぐ姿が妙に可愛らしい。
[げほ！げほ！くちゃいくちゃいくちゃい！！]
「ハイ確保」
一匹の妖精がむせながら飛び出してくる。それを鷲掴みでキャッチし、カゴに放り込む。
「ひとりでいたのか？他に仲間はいないのか？？」
[げほっ・・・。どうしてくちょにんげんがいるのだ！？ぼくのすに なにしやがるのだ！！]
「わかりやすい奴だ。とりあえず中を検めさせてもらうぞ」
巣穴に手を突っ込む。穴の広さは腕一本分がちょうど収まる程度のサイズで、奥行きも大したことなくすぐに突き当たる。
[げほげほ・・・！た、たすかったのだ？おちびちゃん！？]
[おぎゃーおぎゃー！][おぎゃーおぎゃー！！][おかーちゃ！こわいのだ！！]
ずんだもんの手にはメスと思しき成ずん1匹と子ずん3匹が握られていた。
「一応聞くけど、これで全部かな？」
カゴの中で喚いているクズを無視し、救い出した個体に問いかける。
[ぼ、ぼくはあいつにつかまってむりやりへこへこさせられていたのだ・・・]
[そこでおちびちゃんをうまされて・・・おちびちゃんはこれでぜんぶなのだ]
「なるほど。君たちは一旦別のカゴに保護させてもらうね」
「さてお前に話を聞こうか。あのメスずんを攫ってきたのは本当か？」
[うるせーのだ！こたえるわけないのだあぎゃああああああああああああああああああああああああ！？]ﾌﾞﾁﾌﾞﾁ
「とっとと吐いた方がお前のためだぞ。次は枝豆じゃ済まさない」
[ちがうのだ！あいつはぼくといっしょに とかいからきたのだ！しんじてほしいのだ！！]
[あ、あああああああああああああああああああああああああ！？]ｺﾞﾝｯ
「近くの群れで聞いたんだが、つい最近一匹のメスずんが行方知れずになっている、と」
「同じくらいに見かけないオス妖精が現れて、この横穴付近に住み着いているらしい・・・とのことだがこれはどういうことだろうな？」
「偶然の一致かな？全部お前のことだと考えるのがとても自然でカタが付くとぼくは考えるんだが、どうだ？」ｷﾞﾘｷﾞﾘｷﾞﾘｷﾞﾘ
[はぎゃあ！ごめんなさいなのだ！うそをついていたのだ！！]
[ぜんぶそのとおりなのだ！ほんとうのことをいうからたすけてほしいのだ！！]
「バカが。初めから素直に吐けば痛い目に遭わずに済んだのに」
「これから一つでも嘘をつけば命はない。クズ妖精の浅知恵が人間様に通じると思うなよ？」
[はあ・・・はあ・・・わかったのだ]
「じゃあ聞くぞ。お前以外に他所から流れてきた妖精はいるのか？」
[しらないちゃ！ぼくはひとりできたのだ！！]
「・・・そうか。とりあえずお前は放っておけない。おとなしくついてきてもらおうか」
[はぎゃああああああ！！]ﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁｨ
手足を引きちぎり、飛行器官を潰す。芋虫のような姿になったクズ妖精はそのままカゴに放り込まれた。
[こ、ころさないって、いった・・・]
「殺してはないだろ？『くちょにんげん』に捕まったのに命あるだけでいいじゃないか。めっけもんだよ」
カゴを片手に歩き出す。巡回しつつ、他の群れに情報を聞いて回っている。
有力な情報を得られなかったので、適当なところに当たりを付けて再び薪の準備をしだしたずんだもん。
[い、いいかげんにぼくをはなすのだ。もういいはずなのだ！]
「それを判断するのはお前じゃない。それにもうひと働きしてもらわないといけないからな」
そう言うと先を尖らせた串で、一息にクズ個体を貫いた。
[ご、ごぼぼっ！ぐぼぼぼぼぼぼぼ！！！？]
「嘘をついて悪かったな。ぼくははじめからお前を帰すつもりはなかったんだよ・・・」
「っと。今からこいつを火にかけるのだ。別に食べるわけじゃないのだ？ちゃんと理由があるのだ」
[ぐぼぼ！ごぼぼぼぼぼぼ！！！]
串に刺さったクズ個体を火にかけると不自由な体をバタつかせてみっともなく抵抗している。全てが無駄な行為だと考えると憐れみすら感じる。
パチパチと弾ける音がし、煙とともに香ばしい香りが上がる。
「匂いだけは一丁前なのだ。ちょっと美味しそうだなと思っている自分が嫌になるのだ」
「解説させてもらうと、こいつの焼ける香りで妖精をおびき寄せようとしているのだ。元から危機感のない連中だから食い物の匂いに釣られてやってくることがままあるのだ」
「賢い個体だったら一度物陰から様子を伺って、危険がないかどうかを確認するんだけど、欲丸出しのバカはすぐにやってくるのだ。飛んで火にいる夏の虫というやつなのだ」
「同族が焼ける匂いに釣られてやってくるとかどうかしてるのだ。考えただけで寒気がするのだ」
「ああそれと、街で捕まえた野良個体を捌いて食うのはおススメしないのだ。連中はどんな菌を持ってるか知れたもんじゃないし、よっぽど飢えてなきゃそんなもんに手を出す価値を感じないのだ」
「本当に食べたいならスーパーやお店で食用を買うのが一番いいのだ。安心や安全を買う。ぼくの好きな言葉なのだ」
[あぎゃああああああああああああああ！！]
[やめて！やめて！！][はなちぇくちょにんげん！]
[くちょう！くちょうう！！][あちゅいいいいいいいいいいいいいいいい！！！！]
ずんだもんの言ったとおりにおびき寄せられた欲丸出しのバカ共は、もれなく焚き火の燃料となった。
・・・
「さて、見回りも終わってクズ共の処分も済んだので戻ってきたのだ」
「あとは報告がてら、クズ個体に捕まっていたこの子たちを依頼者様・・・『〇×△』のおにーさんに預けて完了なのだ！」
「え、この子たちがどうなるのか知りたいって？」
「・・・ぼくの口からはとても言えないのだ。たぶん近いうちにおにーさんの『実験協力者』になるんじゃないのだ？」
「今回は勝手知ったる知り合い相手だし、メインは見回りでついでの駆除だったので軽めだったけどいつもはもっとハードにやってるのだ！」
「そういうわけでまた次回を楽しみにしてほしいのだ！仕事の依頼、本気で募集してますのだ！！世知辛い元妖精にどうか愛の手を！！」
『〇×△』のおにーさんの話１
『〇×△』のおにーさんの話２
thank you for watching
あとがき
妖精を辞めて、人間になりたいずんだもん(コンセプト)
同質の力を持った(？)者同士が同族嫌悪とか同族殺しするのっていいですよね。ナントカライダーとか大好きです。
俺にしては珍しく背景とかそういうものをちゃんと考えたキャラでした。そのせいで(？)今回の話が薄いと感じるのは気のせいではないですし本末転倒だと思います。
彼女についての話はまた別の機会があればということで。なにぶん気まぐれですし最近本気でネタが枯れてきた気しかしないのでいつになるかはホントにわかりません。
飼いずんじゃない、自立した人型って初めて書くんじゃねってワクワクしてたけどよく考えたらショッピング個体がいたわ。俺の中でフリー素材枠だったから全然意識してなかったわ。
『〇×△』のおにーさんに関しては忘れていたわけでもなんでもなく、やらせたいネタは考えてあるんですがどうにもその気にならないというのが正直なところです。
今見返すとこの路線一本でいくのはねーな！無理！！と早々に割り切ったのは我ながら英断だと思います。わけわからんものを書いて殴るくらいがちょうどいいんですよ俺は。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言いますし、いっぱい投げたら一つくらいはお虐様ぁんに刺さるもの、笑ってくれるものがあればめっけもんですね。
人型ずんだもんに対して考えていると本気でイライラしてくるくらいには意識してますし、わからせた上で泣いて許しを請わせたいくらいには好きなんですがどなたかそういう話作って頂けませんかね・・・？
同質の力を持った(？)者同士が同族嫌悪とか同族殺しするのっていいですよね。ナントカライダーとか大好きです。
俺にしては珍しく背景とかそういうものをちゃんと考えたキャラでした。そのせいで(？)今回の話が薄いと感じるのは気のせいではないですし本末転倒だと思います。
彼女についての話はまた別の機会があればということで。なにぶん気まぐれですし最近本気でネタが枯れてきた気しかしないのでいつになるかはホントにわかりません。
飼いずんじゃない、自立した人型って初めて書くんじゃねってワクワクしてたけどよく考えたらショッピング個体がいたわ。俺の中でフリー素材枠だったから全然意識してなかったわ。
『〇×△』のおにーさんに関しては忘れていたわけでもなんでもなく、やらせたいネタは考えてあるんですがどうにもその気にならないというのが正直なところです。
今見返すとこの路線一本でいくのはねーな！無理！！と早々に割り切ったのは我ながら英断だと思います。わけわからんものを書いて殴るくらいがちょうどいいんですよ俺は。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言いますし、いっぱい投げたら一つくらいはお虐様ぁんに刺さるもの、笑ってくれるものがあればめっけもんですね。
人型ずんだもんに対して考えていると本気でイライラしてくるくらいには意識してますし、わからせた上で泣いて許しを請わせたいくらいには好きなんですがどなたかそういう話作って頂けませんかね・・・？
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このページへのコメント
"天然ずんだもん"と"野良ずんだもん"の区別の仕方を用いた的確な駆除方法、素晴らしいです!!!あんな欲望の権化にして汚物同然なゴミ虫共は焼却するに限りますねぇ!!
……けど、あのゴミの愚行による｢副産物｣である子ずん共はまだしも拐われ強姦された雌ずんまでも｢実験｣に使われるとは……まぁ、元から｢そのために｣天然ずん達を山ごと管理してたんだし、次に産まれる子ずんもあのゴミクズの血を引き継いでる可能性もあるから潰すしかなさそうだな…(汗)。
ハラの中にヘコられた種がまだ残ってそうですし代わりもいっぱいいますからね。
今回のずんだもん的には恩人に対する手土産のつもりだったと思っていただければ。