作者：かすてら 
極限環境ずんだもん外伝
前書き
実験編の外伝です。ずんだもん君が卒論研究に精を出す裏側で行われていた。教授の表に出せない実験のお話です。本編でやれなさそうなやつをやっていきます。
私は教授。寧央(ねいおう)大学生物学部ずんだもん研究室に所属している。別に教授が名前ってわけじゃあない。みんなからそう呼ばれているだけで本名はちゃんと別にある。この記録が私と一部の人間以外の目に触れることはおそらくないだろうけど一応名前だけは伏せておく。なぜこの記録が表にでないかって？理由は単純で世間的には後ろめたいと思われていることを記録しているからに他ならない。私も自分の生活があるしね。さて、早速だが始めていこう。…何を始めるか？ずんだもん研究室の教授がやることなんて一つしかないじゃないか。実験…だよ。
ずんだ電球
諸君らはずんだもんを知っているだろうか？呼び名は沢山ある。ずんだ虫、妖精、ずん妖精etc…。近年急激に数を増やして世界中で見られるようになった人語を話す謎の生物。数が増えすぎて根絶は難しく、人類は彼らとうまく付き合っていく必要がある。とはいえ自然に住む個体はともかく、人里に降りて住み着いてしまった妖精は性格に問題のある奴が多い。人語は話すが正直交渉なども不可能に近い。まあ彼らも生きねばならんし、野生動物っぽいと言えばそれっぽい。が、そーゆーのを許せない人間というのは一定数存在する。現に殺妖精スプレーなどで有名な製薬会社大手の野田芽(のだめ)製薬をはじめとした妖精駆除グッズが売り上げを伸ばしているのはその証拠だろう。私個人はここまで進出してきた彼らを元の森へ戻すのは難しいと思っている。生活水準というものは一度あげてしまうと下げられないものだ。妖精もそうなのだろう。毎日与えられる残飯、室外機の裏など暖かい寝床。彼らはもう森で食べ物を必死になって探す必要も冬に備える必要も無いのだ。学生たちに聞いてみると大抵のだのだ這い回ってすぐ増えるとか、Gみたいで気持ち悪い、とかどこでも交尾して不愉快だとか否定的な意見を聞く。しかし、ずんだもんの素晴らしさがそこにはある、と思う。彼らはいくら死んでも代わりがきく。それに我々にわかる言葉で出来事を説明し、驚異的な生命力を持ち通常生物なら致命傷となりうるダメージを受けても生存でき、唾液やずんだもちによって驚異的な回復を見せることも確認されている。こんなにも優れた実験動物が他にいるだろうか？1匹でも長く愉しめるし大量に使っても補充が効く。そして何より彼らはとてもいい悲鳴(こえ)で鳴く…。
だいぶ前置きが長くなってしまったが始めよう。コレが今回使うずんだもん研究室の飼育部屋から選んだ森ずんだ。
「ずんだもちおいしいのだ！」
「おちびちゃんたち！なかよくわけてたべるのだ！」
「はーいのだ！」
「おとうちゃ！おかあちゃ！いっしょにあそぶのだ！」
「のだー…のだー…」
「ずーん…ずーん…」
彼らはストレスを与えるとそれだけで旨みをため込んでいくのだという。私は食べる気がないから餌やりと定期的なメディカルチェック以外では極力彼らに干渉しない。その方が自然のままのずんだもんの生態を観察でき、彼らの謎の解明にも繋がるからだ。さて、この一家は幼体から飼育して現在3ヶ月、元々2匹だったが2ヶ月目に子どもを作り、つい先日も新しい子ずんが生まれたばかりだ。赤ずんの方は飼育ケースを移してある。健康診断のためだと言って
「にんげんさん！こんばんわなのだ！」
「こんばんのだ！」
「のだ！」
はい、こんばんわ。
「おちびちゃんたちのけんこーしんだんはどのくらいかかりそうなのだ？はやくげんきなおちびちゃんたちにあいたいのだ！」
「ぼくもなのだ！みんなでがんばってそだてていくのだ！おちびちゃんたち、これからはおにーちゃ、おねーちゃになるのだ。しっかりしなくちゃね！」
もう一通り終わったからもうすぐ返してあげますよ。
「そうなのだ？おとーとみるのたのちみなのだ！」
「ぼくがまもってあげるのだ！」
頼もしいねぇ…。まあここは外敵の心配は要らないとは思うけどそーゆー心持ちは大事だ…。精神の強さは想像を超えた事象を引き起こすからな…。
じゃあおちびちゃんたちを連れてくるから待っててね。
「「「「はーいのだ！！」」」」
「わかったのだ」
私は飼育室の隣の実験準備室に向かい、そこからケースをとりだして抱えると実験室のずんだもんたちのところへ戻った。彼らは新しい家族のことで盛り上がっていた。実に微笑ましい。
「おちびちゃんたち、もうすぐあえるんだね…」
「とってもたのちみなのだ！いろんなことをしてあそぶのだ！」
「ぼくはずんだもちをいっちょにたべたいのだ！」
「るんるん！たのちみなのだ！るんるん！」
では期待にお応えして…コレが私が丸一日かけて準備した…
私は抱えたケースを実験台の上に置いた。ずんだもんたちによく見えるように。
「え？」
ー水を打ったかのような静寂が訪れた。次の瞬間ー
「アアアアアアアアアア！？アアアアアアアアアア！」
「おちおちおちおち」
「お…ちびちゃん？」
「なんなのだこれ！」
「こんなの…こんなのずんだもんじゃないのだ！」
「おとーといもーとはどこなのだ？」
「うわーん！こわいのだ！」
あぁ…その表情(カオ)が見たかった…。準備をした甲斐もあったというものだ。
というわけで紹介しよう。今回実験に使用するずんだ電球だ！
ケースの中には赤ずん9匹が入っている。動き回らないように手足と尻尾は切り落とし、飛行器官も潰してある。コレだけであればたりないのを見たことがない彼らでもここまで驚きはしなかっただろう。彼らが驚いた理由は赤ずんの顔にあった。赤ずんたちは口に電球を咥えていた。より正確にいえば無理矢理捩じ込んだ電球を接合して一体化させていた。
「えええええええええ！！」
「おちびちゃんが！おちびちゃんたちが！」
「きのうまでとってもげんきだったのだ！」
「にんげんさん！おちびたちはどうちたのだ！」
「かえちてほちいのだ！」
返すも何も…そこにいるのが君たちのおちびちゃんですよ？
「そ、そんな…だれがこんなひどいこと…」
私がやりました
「え？」
今日の実験に必要んだったので一番タイミングよく産まれた彼らを加工した…それだけの事だ。
「う、うそなのだ！うそなのだ！だって…にんげんさんはぼくたちにやさしくしてくれたのだ！」
「そうなのだ！ずんだもちもいっぱいくれたのだ！」
「ぼくたちがびょーきになったらおくすりくれたのだ！」
コレを見てもそんなことが言えるだなんて…なんて純粋なんだ君たちは…。だが純粋であればあるほどその真っ白な心に黒いシミを付けたくなる…。
今からもっと凄いものをみせてあげよう
「え？な、なにするのだぁ？」
「うわっ」
「ぱぱずん！」
「おとーちゃ！」
私は雄ずんをケースから出すと持ってきていた漏斗をその尻に突っ込んだ。
「いちゃい！いちゃいよ！おちりがこわれちゃうのだ！ちょんなのはいらないのだ！」
「だめ！ぱぱずんにひどいことしないでほしいのだ！」
「うわーん！おとうちゃ！」
「にんげんさんやめてほちーのだ！」
やはりいい悲鳴(こえ)だ…。ここに塩水を入れていく。
「あぎゃあああああああああああああす！！おにゃかちみるのだ！やめて！」
「あっ？！おちりやかないで！あちゅ！あちゅいよおおおおおおおお！」
やがて雄ずんの体は水風船のように膨らんでしまった。体積はもとの2倍はあるだろう。とても苦しそうだ。
「おふ…おふ…くるち…くるちいのだ…」
「もうやめて！これいじょうはやめてほしいのだ！」
「おとーちゃかえちて！」
次に電極を用意し、それを雄ズンの身体に差し込んだ。
「うぎゃ！いちゃい！」
「もうやめてよー！どうちてひどいことちゅるの！」
電極の反対側はずんだ電球の尻に差し込む
「ﾝﾝ“ｰｯ‼︎」
喋れないながらに苦痛を目で訴えかけてくるずんだ電球。いい顔だ…。コレをあと8回繰り返す。こうして準備は整った。雄を中心に円形に広がったずんだ電球たち、塩水が出ないように雄ずんを適当な台に載せておく、まるでシャンデリアのようだ。さて、解説しながら光らせていこう。ずんだもんは電解質を取り込むことで通電性が抜群に良くなる。それを利用したのがずんだもん電池。最近はYouTubeなんかでも作り方を紹介しているので誰でも作れる。で、今回電池を応用して作ったのがずんだ電球というわけ。産まれたばかりの赤ずんの手足を切り取って塩水のプールに一日つけ、たっぷり塩水を染み込ませてから電球と接合したのだ。
さて実際に電気を通すのは初めてだ、どんな結果になるのか…。では最後に電源を差して、スイッチオン。
「アアアアアアアアアア！びりびり！ばりばりなのだああああああ！やめて！」
「「「「「ﾝﾝ”ーーーーー‼︎‼︎‼︎」」」」」
痙攣しながら悲鳴を上げる雄と光輝く赤ずんたち電球。どうやら電球にきちんと電気を送れているようだ。しかし、暴れるので光はまるでサーチライトのように様々な方向に向いている。
「いやあああああああああ！！ぱぱずん！おちびちゃーん！！！」
「おとーと、いもーとがくるちがっているのだ！」
「いたがっているのだ！」
「ぱぱずんたちをたすけるのだ！」
ケージの中のずんだもんたちはケージ攻撃し始めるが効果はない。家族の生命が光に変換される様子をただ見ていることしかできないのだ。
「ああばばばばばばばばばばばばばば！！びりびりのだ！ごべんね“おぢびぢゃんたち！！」
「もうやめて！ぱぱずんとおちびちゃんたちがちんじゃう！ちんじゃうのだ！」
「うわーん！うわーん！もうやめてよー！ゆるちてよー！」
子ずんなどはとうとう泣き出してしまった。
「ばりばりばりばり！おぢびぢゃんだぢいいいいいいいいいい！ぴがぴがやめで！！」
「ﾝﾝーーーーッ‼︎‼︎ﾑーーーーッ‼︎」
喋れないことだけが残念だ…なんていっているのかな…。
ずんだ電球は美しく光を放っている。この光は彼らの生命そのものなのだ。鑑賞に浸る私の気持ちをよそに物事には終わりが訪れる。
「ﾝﾝーーーッ‼︎ﾑッ！ﾑ！ﾝ“ﾑ”ｯ！」
1匹が一際眩い輝きを放った直後悲鳴を上げなくなってしまった。重力になすがままにぶら下がるその姿はもはや抜け殻であることは誰の目にも明らかだった。
「いや！いや！おちびちゃん！おちびちゃん！」
「アアアアアアアアアア！」
「まもるってきめたのだ…まもれなかったのだ…」
命尽きた赤ずんだが、体が無事なうちはまだ電気が流れ続ける。その証拠に電球は光続け、赤ずんだったものも断続的にぴくぴくと痙攣している。
「びりびりもうやめちぇ！おちびちゃんだけでもたすげで！あああああああああ！ばりばり！」
「ﾝﾝﾝﾝﾝﾝﾝ“ｯ‼︎」
「いやああああああああああ！！おちびちゃん！おちびちゃん！」
一家が無力感に苛まれている間に1匹、また1匹とその生命枯らしていく。最初に死んだ1匹はとうとう黒焦げになって電気が点かなくなっていた。そして私が電源を止めた時、そこにあるのは全身黒焦げの雄ずん本体だけだった。
「ぱ…ぱずん…な、なに…どうちて…」
「うわーん！うわーん！おとーちゃがー！」
「くろこげさんなのだ！ちんじゃったのだ！！」
「かえちてよー！おとーちゃとおとーと！かえちてよー！！」
「うそなのだ！ちんじないのだ！おとーちゃはつよいのだ！」
余りの惨状に現実逃避する子ずんが出てきた。次は子ずんからやるか、雌ずんからやるか…などと考える私の意識はポケットから鳴り響く電子音によって現実に引き戻される。
こんな時に電話か。一体誰だろう。
しまった。今日は娘の誕生日だった。今日は早めに帰ると連絡しておいたのだが帰りが遅いので妻が連絡を入れてくれたのだった。
すまないが君達の出番はまた明日だ。
「え？」
「ちょんな！おとーちゃをかえちて！」
「みんなをたすけて！」
私はずんだもんたちのケージを飼育室に戻し、ずんだもん電球の残骸を中身が見えない黒いビニールに入れて縛ると実験廃棄物用のゴミ箱にそれを放り込み、実験室を後にした。
作者コメント
教授の実験編です。リクエスト消化の過程でどうしても善良虐をやりたくなったので教授にやってもらうことにしました。要点をまとめるのが下手なのかまた長くなってしまいました。気に入っていただけたら幸いです。他の作品も読んでやってください(直球)
前書き
実験編の外伝です。ずんだもん君が卒論研究に精を出す裏側で行われていた。教授の表に出せない実験のお話です。本編でやれなさそうなやつをやっていきます。
私は教授。寧央(ねいおう)大学生物学部ずんだもん研究室に所属している。別に教授が名前ってわけじゃあない。みんなからそう呼ばれているだけで本名はちゃんと別にある。この記録が私と一部の人間以外の目に触れることはおそらくないだろうけど一応名前だけは伏せておく。なぜこの記録が表にでないかって？理由は単純で世間的には後ろめたいと思われていることを記録しているからに他ならない。私も自分の生活があるしね。さて、早速だが始めていこう。…何を始めるか？ずんだもん研究室の教授がやることなんて一つしかないじゃないか。実験…だよ。
ずんだ電球
諸君らはずんだもんを知っているだろうか？呼び名は沢山ある。ずんだ虫、妖精、ずん妖精etc…。近年急激に数を増やして世界中で見られるようになった人語を話す謎の生物。数が増えすぎて根絶は難しく、人類は彼らとうまく付き合っていく必要がある。とはいえ自然に住む個体はともかく、人里に降りて住み着いてしまった妖精は性格に問題のある奴が多い。人語は話すが正直交渉なども不可能に近い。まあ彼らも生きねばならんし、野生動物っぽいと言えばそれっぽい。が、そーゆーのを許せない人間というのは一定数存在する。現に殺妖精スプレーなどで有名な製薬会社大手の野田芽(のだめ)製薬をはじめとした妖精駆除グッズが売り上げを伸ばしているのはその証拠だろう。私個人はここまで進出してきた彼らを元の森へ戻すのは難しいと思っている。生活水準というものは一度あげてしまうと下げられないものだ。妖精もそうなのだろう。毎日与えられる残飯、室外機の裏など暖かい寝床。彼らはもう森で食べ物を必死になって探す必要も冬に備える必要も無いのだ。学生たちに聞いてみると大抵のだのだ這い回ってすぐ増えるとか、Gみたいで気持ち悪い、とかどこでも交尾して不愉快だとか否定的な意見を聞く。しかし、ずんだもんの素晴らしさがそこにはある、と思う。彼らはいくら死んでも代わりがきく。それに我々にわかる言葉で出来事を説明し、驚異的な生命力を持ち通常生物なら致命傷となりうるダメージを受けても生存でき、唾液やずんだもちによって驚異的な回復を見せることも確認されている。こんなにも優れた実験動物が他にいるだろうか？1匹でも長く愉しめるし大量に使っても補充が効く。そして何より彼らはとてもいい悲鳴(こえ)で鳴く…。
だいぶ前置きが長くなってしまったが始めよう。コレが今回使うずんだもん研究室の飼育部屋から選んだ森ずんだ。
「ずんだもちおいしいのだ！」
「おちびちゃんたち！なかよくわけてたべるのだ！」
「はーいのだ！」
「おとうちゃ！おかあちゃ！いっしょにあそぶのだ！」
「のだー…のだー…」
「ずーん…ずーん…」
彼らはストレスを与えるとそれだけで旨みをため込んでいくのだという。私は食べる気がないから餌やりと定期的なメディカルチェック以外では極力彼らに干渉しない。その方が自然のままのずんだもんの生態を観察でき、彼らの謎の解明にも繋がるからだ。さて、この一家は幼体から飼育して現在3ヶ月、元々2匹だったが2ヶ月目に子どもを作り、つい先日も新しい子ずんが生まれたばかりだ。赤ずんの方は飼育ケースを移してある。健康診断のためだと言って
「にんげんさん！こんばんわなのだ！」
「こんばんのだ！」
「のだ！」
はい、こんばんわ。
「おちびちゃんたちのけんこーしんだんはどのくらいかかりそうなのだ？はやくげんきなおちびちゃんたちにあいたいのだ！」
「ぼくもなのだ！みんなでがんばってそだてていくのだ！おちびちゃんたち、これからはおにーちゃ、おねーちゃになるのだ。しっかりしなくちゃね！」
もう一通り終わったからもうすぐ返してあげますよ。
「そうなのだ？おとーとみるのたのちみなのだ！」
「ぼくがまもってあげるのだ！」
頼もしいねぇ…。まあここは外敵の心配は要らないとは思うけどそーゆー心持ちは大事だ…。精神の強さは想像を超えた事象を引き起こすからな…。
じゃあおちびちゃんたちを連れてくるから待っててね。
「「「「はーいのだ！！」」」」
「わかったのだ」
私は飼育室の隣の実験準備室に向かい、そこからケースをとりだして抱えると実験室のずんだもんたちのところへ戻った。彼らは新しい家族のことで盛り上がっていた。実に微笑ましい。
「おちびちゃんたち、もうすぐあえるんだね…」
「とってもたのちみなのだ！いろんなことをしてあそぶのだ！」
「ぼくはずんだもちをいっちょにたべたいのだ！」
「るんるん！たのちみなのだ！るんるん！」
では期待にお応えして…コレが私が丸一日かけて準備した…
私は抱えたケースを実験台の上に置いた。ずんだもんたちによく見えるように。
「え？」
ー水を打ったかのような静寂が訪れた。次の瞬間ー
「アアアアアアアアアア！？アアアアアアアアアア！」
「おちおちおちおち」
「お…ちびちゃん？」
「なんなのだこれ！」
「こんなの…こんなのずんだもんじゃないのだ！」
「おとーといもーとはどこなのだ？」
「うわーん！こわいのだ！」
あぁ…その表情(カオ)が見たかった…。準備をした甲斐もあったというものだ。
というわけで紹介しよう。今回実験に使用するずんだ電球だ！
ケースの中には赤ずん9匹が入っている。動き回らないように手足と尻尾は切り落とし、飛行器官も潰してある。コレだけであればたりないのを見たことがない彼らでもここまで驚きはしなかっただろう。彼らが驚いた理由は赤ずんの顔にあった。赤ずんたちは口に電球を咥えていた。より正確にいえば無理矢理捩じ込んだ電球を接合して一体化させていた。
「えええええええええ！！」
「おちびちゃんが！おちびちゃんたちが！」
「きのうまでとってもげんきだったのだ！」
「にんげんさん！おちびたちはどうちたのだ！」
「かえちてほちいのだ！」
返すも何も…そこにいるのが君たちのおちびちゃんですよ？
「そ、そんな…だれがこんなひどいこと…」
私がやりました
「え？」
今日の実験に必要んだったので一番タイミングよく産まれた彼らを加工した…それだけの事だ。
「う、うそなのだ！うそなのだ！だって…にんげんさんはぼくたちにやさしくしてくれたのだ！」
「そうなのだ！ずんだもちもいっぱいくれたのだ！」
「ぼくたちがびょーきになったらおくすりくれたのだ！」
コレを見てもそんなことが言えるだなんて…なんて純粋なんだ君たちは…。だが純粋であればあるほどその真っ白な心に黒いシミを付けたくなる…。
今からもっと凄いものをみせてあげよう
「え？な、なにするのだぁ？」
「うわっ」
「ぱぱずん！」
「おとーちゃ！」
私は雄ずんをケースから出すと持ってきていた漏斗をその尻に突っ込んだ。
「いちゃい！いちゃいよ！おちりがこわれちゃうのだ！ちょんなのはいらないのだ！」
「だめ！ぱぱずんにひどいことしないでほしいのだ！」
「うわーん！おとうちゃ！」
「にんげんさんやめてほちーのだ！」
やはりいい悲鳴(こえ)だ…。ここに塩水を入れていく。
「あぎゃあああああああああああああす！！おにゃかちみるのだ！やめて！」
「あっ？！おちりやかないで！あちゅ！あちゅいよおおおおおおおお！」
やがて雄ずんの体は水風船のように膨らんでしまった。体積はもとの2倍はあるだろう。とても苦しそうだ。
「おふ…おふ…くるち…くるちいのだ…」
「もうやめて！これいじょうはやめてほしいのだ！」
「おとーちゃかえちて！」
次に電極を用意し、それを雄ズンの身体に差し込んだ。
「うぎゃ！いちゃい！」
「もうやめてよー！どうちてひどいことちゅるの！」
電極の反対側はずんだ電球の尻に差し込む
「ﾝﾝ“ｰｯ‼︎」
喋れないながらに苦痛を目で訴えかけてくるずんだ電球。いい顔だ…。コレをあと8回繰り返す。こうして準備は整った。雄を中心に円形に広がったずんだ電球たち、塩水が出ないように雄ずんを適当な台に載せておく、まるでシャンデリアのようだ。さて、解説しながら光らせていこう。ずんだもんは電解質を取り込むことで通電性が抜群に良くなる。それを利用したのがずんだもん電池。最近はYouTubeなんかでも作り方を紹介しているので誰でも作れる。で、今回電池を応用して作ったのがずんだ電球というわけ。産まれたばかりの赤ずんの手足を切り取って塩水のプールに一日つけ、たっぷり塩水を染み込ませてから電球と接合したのだ。
さて実際に電気を通すのは初めてだ、どんな結果になるのか…。では最後に電源を差して、スイッチオン。
「アアアアアアアアアア！びりびり！ばりばりなのだああああああ！やめて！」
「「「「「ﾝﾝ”ーーーーー‼︎‼︎‼︎」」」」」
痙攣しながら悲鳴を上げる雄と光輝く赤ずんたち電球。どうやら電球にきちんと電気を送れているようだ。しかし、暴れるので光はまるでサーチライトのように様々な方向に向いている。
「いやあああああああああ！！ぱぱずん！おちびちゃーん！！！」
「おとーと、いもーとがくるちがっているのだ！」
「いたがっているのだ！」
「ぱぱずんたちをたすけるのだ！」
ケージの中のずんだもんたちはケージ攻撃し始めるが効果はない。家族の生命が光に変換される様子をただ見ていることしかできないのだ。
「ああばばばばばばばばばばばばばば！！びりびりのだ！ごべんね“おぢびぢゃんたち！！」
「もうやめて！ぱぱずんとおちびちゃんたちがちんじゃう！ちんじゃうのだ！」
「うわーん！うわーん！もうやめてよー！ゆるちてよー！」
子ずんなどはとうとう泣き出してしまった。
「ばりばりばりばり！おぢびぢゃんだぢいいいいいいいいいい！ぴがぴがやめで！！」
「ﾝﾝーーーーッ‼︎‼︎ﾑーーーーッ‼︎」
喋れないことだけが残念だ…なんていっているのかな…。
ずんだ電球は美しく光を放っている。この光は彼らの生命そのものなのだ。鑑賞に浸る私の気持ちをよそに物事には終わりが訪れる。
「ﾝﾝーーーッ‼︎ﾑッ！ﾑ！ﾝ“ﾑ”ｯ！」
1匹が一際眩い輝きを放った直後悲鳴を上げなくなってしまった。重力になすがままにぶら下がるその姿はもはや抜け殻であることは誰の目にも明らかだった。
「いや！いや！おちびちゃん！おちびちゃん！」
「アアアアアアアアアア！」
「まもるってきめたのだ…まもれなかったのだ…」
命尽きた赤ずんだが、体が無事なうちはまだ電気が流れ続ける。その証拠に電球は光続け、赤ずんだったものも断続的にぴくぴくと痙攣している。
「びりびりもうやめちぇ！おちびちゃんだけでもたすげで！あああああああああ！ばりばり！」
「ﾝﾝﾝﾝﾝﾝﾝ“ｯ‼︎」
「いやああああああああああ！！おちびちゃん！おちびちゃん！」
一家が無力感に苛まれている間に1匹、また1匹とその生命枯らしていく。最初に死んだ1匹はとうとう黒焦げになって電気が点かなくなっていた。そして私が電源を止めた時、そこにあるのは全身黒焦げの雄ずん本体だけだった。
「ぱ…ぱずん…な、なに…どうちて…」
「うわーん！うわーん！おとーちゃがー！」
「くろこげさんなのだ！ちんじゃったのだ！！」
「かえちてよー！おとーちゃとおとーと！かえちてよー！！」
「うそなのだ！ちんじないのだ！おとーちゃはつよいのだ！」
余りの惨状に現実逃避する子ずんが出てきた。次は子ずんからやるか、雌ずんからやるか…などと考える私の意識はポケットから鳴り響く電子音によって現実に引き戻される。
こんな時に電話か。一体誰だろう。
しまった。今日は娘の誕生日だった。今日は早めに帰ると連絡しておいたのだが帰りが遅いので妻が連絡を入れてくれたのだった。
すまないが君達の出番はまた明日だ。
「え？」
「ちょんな！おとーちゃをかえちて！」
「みんなをたすけて！」
私はずんだもんたちのケージを飼育室に戻し、ずんだもん電球の残骸を中身が見えない黒いビニールに入れて縛ると実験廃棄物用のゴミ箱にそれを放り込み、実験室を後にした。
作者コメント
教授の実験編です。リクエスト消化の過程でどうしても善良虐をやりたくなったので教授にやってもらうことにしました。要点をまとめるのが下手なのかまた長くなってしまいました。気に入っていただけたら幸いです。他の作品も読んでやってください(直球)
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このページへのコメント
この教授、鬼威惨は鬼威惨でもマッドサイエンティストな鬼威惨ですね
森ずんは善良なものが多く、生徒のずんだもんは森ずんには気を遣っていたのに、この教授はｗｗｗ
森ずんを使ってるのも街ずんは反抗的だからですかね？
街だと不純物が多いから、発電に向いていないから？その代わり、燃料としては優秀そう。
ああ、反抗とか以外にそっち（含有成分）の線もありそうですね
ここまでされても一匹たりともくしょにんげんと言わないとは善良ずんの中でも特殊個体なのかね？温室育ちの善良ずんでも追いつめられると大抵くしょにんげんと言い放つがこの一家は実に興味深いですな
ラストで自分の家庭を大切にする方なのが見えた教授。
鬼威惨のこういう一面見れるの好きです。
コメントありがとうございます。これは個人の考えなのですが鬼威惨は基本的には普通の人だと思うんですよね。
今まで流してきたが、ずんだもんには大いなる可能性を見た。
ＺＥＬＥＺの実験では太陽光発電が可能であることが確認され、ＨａｎｄＺでは多少の改造は必要になるがゲーミングライトなどに科学的に改造することはできる。
それって、つまり単なる発電機として使えるだけではなく、真空管しいてはコンピュータなどに使われるＰＣＵ（中央処理装置）とて応用が利くのではないか。
自家発電も可能な地球環境に優しい“ずんだもんコンピュータ”（ずんだＰＣ）。
これは新たな作品を予感させます。
生体CPUいいですね…！ロボットアニメめいた新たなる物語が始まりそうです
ずんだ虫の不自然に肥大化した脳を利用したずんだ量子コンピュータ………素晴らしいアイデア。いっちょ創作に使ってみたい……
確か、気圧を高くしても生きているから圧縮して電極などに繋げればよりコンパクトなCPUとして使えそう。
ずんだもんの商品開発をしている会社は多々あれど、今だ本格的にずんだもんを用いた電子機器メーカーはない。
新たな会社として提案するのは、“電子ずんだ株式会社”、略称は“電ず”。ずんだもんを酷使する様はさながら、現実にある黒いウワサが絶えない某企業を連想させられます。
善良ずん幸せに育てて絶望感与えるのは最高だな