9月ですね。皆様いかがお過ごしでしょうか。けもです。
前回の私の無茶ぶりに対し、多数のコメントありがとうございました。
多くは語りません。お楽しみください。
〜前回までのあらすじ〜
植物型妖精と胎生型妖精が住む村。植物型妖精の「ズンちゃん」は、人間の「おねーさん」と遊んでいたところを胎生型妖精に見つかり、自分以外の仲間を虐殺されてしまう。民族浄化の始まりであった。最後の生き残りとなったズンちゃんは必死に逃げるが、罪悪感のあまり泣き出してしまう。そこを不良高校生の男に見つかったズンちゃんは、「クズ妖精」であるとして、ナイフを突きつけられてしまうのだった……
民族浄化��
ぐさっ！！
「う……っ！」
不良男子は、ズンちゃんの首の後ろへとナイフを突き立てた。
血液が、ドクドクとあふれる。
「気が変わった！……即死なんてさせねえ、じわじわといたぶって、思いっきり絶望させてから殺してやるよっ！」
ぐぐぐ……
血走った怒りの目で宣言する男は、徐々にナイフを深く突き立てていった。やがて、ズンちゃんの首元の小さな器官へと、ナイフが当たる。
「……ここ、てメーらクズ妖精の飛行器官なんだってなあ？もう二度と飛べなくしてやる……」
「……」
「何だ？抵抗しないのかよっ？いつもみたいに、“そらまめさんだけはやめろ、くちょにんげん！！”って無様に喚かないのか？喚けよっ！！」
妖精の甲高い喚き声を真似する男に、ズンちゃんは静かに言う。
「ボクは、にんげんさん……おにーさんのことを、そんなふうによびたくないのだ……」
「おにーさんだあ！？なれなれしく呼ぶんじゃねえっ！！この害獣があっ！！」
ぶしゅっ！！
「ううっ……うああああああっ！！」
男がナイフに力を入れると、ズンちゃんの飛行器官は簡単に潰れた。激痛が走り、ナイフが抜けたズンちゃんは地面に落ちてのたうち回る。
「どうだ……絶望しただろっ、クズ妖精！！もう二度と飛べないんだぜっ！？一生、地べたに這いつくばることしか出来なくなるなあああっ！！」
ズンちゃんの頭に、また妖精の言葉がフラッシュバックする。
《ざまーないのだ！じべたにはいつくばるしかのーのないのろまなれっとーしゅが、おいえなんてたててるんじゃないのだ！！》
ズンちゃんの目に、また涙が浮かぶ。悔し涙だった。
けっきょく、あのようせいがいっていたことは、ほんとうだった。ボクは、れっとーしゅにかわりはないのだ……
血を流しながら地面で震えるズンちゃんに、男が近寄って言う。
「さあ、どうする？もう生きるのに絶望しただろ？……俺が、ラクにしてやってもいいんだぜ……？」
「……ボクは……ボクは、まだしにたくないのだ！」
男を真っすぐ見据えて、ズンちゃんが叫んだ。
絶望は、もうじゅうぶん過ぎるほど味わった。自分がもう飛べなくなったくらいが何だ。
ボクは、れっとーしゅであるとしてなかまやははうえ、おとうとをころされたときに、すでにぜつぼうしきっている！！
そして、そんなボクがまだしにたくないとおもえる、さいごのきぼう……
「……おねーさん」
「うっ……？！」
「ボクにやさしくしてくれる、おねーさんにあうまでは、まだしにたくないのだああああ！」
血を吐きながら、ズンちゃんが絶叫した。
男が今まで手にかけてきた妖精はみんな、飛行器官を潰せば絶望して、自ら死を望んでいた。しかし、確固たる信念を持ったズンちゃんは違った。
「おねーさんだって？て、てメーは、妖精のクセに人間と関わりがあるのかっ！？」
「ボクは……ボクは、にんげんさんともっとあそびたい！にんげんさんをもっとしりたい！だけど、むらのみんなが、それをゆるさない！！なにがいけないのだ！にんげんさんといっしょにくらしたいとねがって、なにが……」
「し、信じられるかああ！！クズ妖精はいつもそうだ、都合の良いときだけ、にんげんさん、にんげんさんって！内心では、てメーも俺たちのことを“くちょにんげん”だって見下してやがるんだろっ？！」
「ちがうのだ！ボクは、にんげんさんのことをそんけいしているのだ……」
「黙れ！黙れっ！黙れえええええ！！じゃあ、なぜてメーの仲間は、悪いことを平気でするんだあ！？人間を尊敬しているなら、お前が仲間の悪事を止めるなり何なりすればいいじゃねえかよおおっ！？」
「うう……」
ズンちゃんは、正義感が強かった。しかし、あの村では自分が少数派だった。多数派の妖精たちから、自分たちが迫害される理由を与えてはいけないと思って、言い出せなかった……
《やっぱりれっとーしゅはよわむしなのだ！！》
《やっぱりれっとーしゅはよわむしなのだ！！》
《やっぱりれっとーしゅはよわむしなのだ！！》
………………
妖精たちの言葉が波のように押し寄せる。ズンちゃんは、その言葉に打ちのめされていた。
血と涙を流しながら立ち尽くして震えるズンちゃんに、男がナイフを再び突き立てる。
「てメーが本当に自分をクズ妖精じゃないと思ってたとしても、俺たち人間にとってはみんな同じクズ妖精なんだよ…………見分けなんて、つきやしないんだ」
「…………」
「てメーをここで逃がしたら、大群を引き連れて攻めて来るかもしれない。大事なオフクロや妹を守るために、俺は今、てメーを殺す。それは変わらない」
「……ころすなら、ころしてほしいのだ、ていこうはしないのだ」
もともと、最初にナイフを振り上げられた時に、ズンちゃんは死を覚悟していた。れっとーしゅである自分には、それがお似合いだと思った。
大好きなおねーさんに会えないのが、唯一の心残りだった。
でも、れっとーしゅの自分には、きっとその資格もないのだろう。
ズンちゃんは、再び覚悟を決めるように、目を閉じた。
「……あんちゃん？」
透き通った声が響く。
あんちゃん、なんて、もう懐かしい響きだった。
死んだ弟が、迎えに来てくれたのか。
……ボクも、もうすぐそっちにいくよ。ごめんね、またせて。
しかし、いつまでたっても、自分の息の根を止める一撃は来ない。
どうしたっていうのだろう。ズンちゃんは、おそるおそる目を開ける。
男は、ナイフを今にもズンちゃんの脳天に振り下ろそうという姿勢で静止していた。その後ろに見えるのは……
見間違えようもなかった。
ボクが、いちばんあいたかったひと。だいすきな……
「お、おねーさん！？」
「ズン、ちゃん……？」
おねーさんは困惑しているようだった。だが、だんだんと状況がわかって来たのか、自らの血の池に浸って震えるズンちゃんと、ナイフを構えた男を見て、その顔が青ざめていく。
「……あんちゃん」
「えっ……」
「……ウチの大切な友達に、何した」
「そ、そんな、まさか、てメーの言う“おねーさん”って……」
「何したああああああああっ！？」
ばちんっ！！
「ぐうぉっ！？」
ばたん……
男は、おねーさんの渾身の一撃を受けて、ナイフを落として仰向けに倒れこむ。
おねーさんはその体の上に馬乗りになると、泣きながら男の顔面を殴り続ける。
がしっ！がしいっ！！
「うわああああああん！！どうしてっ！！どうしてウチのズンちゃんをおおおおっ！」
「うっ、いてっ！いてぇ！セツ！やめろぉ…ぐぶっ！！」
「優しいズンちゃんをいじめるなんてっ！……ウチが……ウチがアンタを殺してやるっ！！」
半狂乱になったおねーさんは、男がさっき地面に落としたナイフを探って片手を動かす。ズンちゃんは、このままだとおにーさんが本当に殺されてしまうと思い、自分の血が付いたナイフを、最期の力を振り絞っておねーさんから遠ざけた。
「お、おねーさん！やめてほしいのだ！ボクは、ボクはだいじょうぶなのだああああ！！」
「ズ、ズンちゃん……！？」
おねーさんは、一瞬動きを止める。精一杯笑顔を見せるズンちゃんだったが、出血多量で限界が来て、ついに倒れこんでしまう。
とさっ……
「ズンちゃあああああん！！待ってて、すぐに家まで連れてってあげる……あんちゃん、バイクのせてっ！」
「えっ、で、でもっ、2ケツはちょっと……」
「こんな時に何言ってるのよっ！？普段ノーヘルで乗り回してるアンタが言えることじゃないでしょおっ！？」
「わ、わかった」
ぶぉん！ぶぉん！ぶぉおおっ、ブロロロロロロロッ！！
男の改造バイクが唸りを上げ、一直線に山道を下って行った。
「はあ……はあ……」
「ズンちゃん、しっかり……大丈夫だから、大丈夫だからねっ」
ここはおねーさん……セツの家の庭。母親は仕事に出ているらしく、いなかった。
「すまん……俺、お前が妹と知り合いだなんて知らなくてよお……」
これまで100回くらい同じことを繰り返し、土下座して謝り続けるおにーさん。
「あんちゃんっ！それやってる暇があったら、水なり食べ物なり何なり持ってきてよっ！あんちゃんがこの子を傷つけたんだからっ！！」
「は、はいぃっ！」
慌てて家の中へ戻っていくおにーさん。
庭で手当てをしているのは、ズンちゃんが植物型妖精だからだ。光合成で、本当にゆっくりではあるが、徐々に体力を回復させることが出来ると、セツに伝えたのだった。
セツが中学校で習った応急救護手当ての方法と、日光のおかげで、ズンちゃんは今、死なずに済んでいると言っても過言ではなかった。
やがて、ズンちゃんの出血は完全におさまった。首に包帯を巻いたズンちゃんは、タオルの上に寝かされた。
「おねーさん、ありがとうなのだ……」
「ズンちゃん、これ」
セツが、持ってきた段ボール箱の中から大きなリンゴを差し出す。ズンちゃんは、躊躇した。
「で、でもこれ、にんげんさんのつくったりんごさんなのだ……ボクは、もらえないのだ」
ズンちゃんは、村の妖精たちが人間の食べ物を日々盗んでいることを負い目に感じていた。
そんなズンちゃんをよそに、セツはリンゴを剥いて強引にズンちゃんの口へ入れる。
「あむっ……？！……お、おいしいのだ、おいしいのだ……」
「ふふっ……いっぱい食べるのよ」
それは、普段自分が食べているどの木の実やキノコよりも美味しかった。ズンちゃんは、あっという間にリンゴを食べ尽くしてしまう。
「ごちそうさまなのだ、よかったのだ……？ボクがたべてしまって」
「ズンちゃん、痩せてるよ？食べないと死んじゃうところだった」
「ズンちゃん……本当にすまなかった。傷つけたりなんかして」
「おにーさん、ボクはいま、いきてるからへいきなのだ！！」
涙を流して謝るおにーさんに、ズンちゃんは微笑む。
こわかったけど、やっぱり、にんげんさんにはいいひとがおおいじゃないか！！
「ねえ、ズンちゃん」
ややあって、セツが激しい顔で問うた。
「……何があったの、あの村で」
「……いいたくないのだ」
「何で？」
「いったら、おねーさんたちに、めいわくをかけてしまうのだ……」
ズンちゃんは、あの村であったことを、自分の中にとどめておくつもりだった。今、自分が生きていることが信じられなかったこともあった。
「話してよっ！！優しいズンちゃんが、何でひとりで傷つかなきゃいけないのっ！？」
「そうだよっ。ズンちゃんは俺に言ってくれた。“種類が違う妖精がいる”って……どういうことなのか、俺も知りたいっ」
ふたりに説得されて、ズンちゃんは一部始終を話すことにした。
あの村はもともと植物型妖精の村だったが、突然、種類の違う胎生型妖精がやってきたこと。
自分たちが、“れっとーしゅ”として妖精たちから差別され続けたこと。
妖精たちは、人間から食べ物を奪うことを平然とやっているということ。
そして、おねーさんと遊んでいるところを見つかり、密告されて、自分の見ている前で仲間が、母親が、弟が虐殺され、死に物狂いでここまで逃げてきたところ、おにーさんに捕まったのだということ……
自分には、何も出来なかったということ……
涙声で、ズンちゃんは語り終えた。途中から、バイクでやってきたおにーさんの仲間の不良たち5人が庭に入ってきて、ズンちゃんの話を聞いていたが、彼ら含めて、みんなが泣いていた。
「……嘘つき」
泣きながら、セツがつぶやく。
「ズンちゃん、村のみんなが優しいって言ってたのに！！ホントは差別されてたんだ…！ひとりで辛いの抱えてたの、許せないよ、ウチ……」
「う、うそついてごめんなさいなのだ……でも、ボクにはなにもできなかったのだ……」
「いいや、それは違うぞ、ズンちゃん」
後ろで聞いていたおにーさんの仲間のひとりが言った。
「ズンちゃんは、やれることをやった。ズンちゃんが何を言ったって、妖精たちはぜってえ、行動を変えないっ。ズンちゃんは、正しいことをしたんだっ。だって、逃げて来なければ、俺たちがこの話を知ることはなかったし、ズンちゃんだって奴らに殺されてたんだっ」
「そうだそうだっ！ズンちゃん、かわいそうすぎるぜええええっ……うおおおおおん」
おにーさんの仲間は、また大声で泣き始めた。
「ズンちゃん、お前の話、信じてやれなくてごめんな……俺、妖精はみんなクズなやつばっかりだと思ってた。でも違うんだなっ。お前みたいな、優しい妖精だっているんだな……」
おにーさんも、泣きながら謝り続ける。
「そうだぞぉ、セイタロウ……てメー、こんないい子のズンちゃんを殺そうとしたんだって？信じらんねえ！！もしズンちゃんを殺してたら、俺たちがてメーを殺してたわっ！！リーダーだからって関係ねえ！」
おにーさんは、セイタロウという名前らしかった。深々と頭を下げて謝り続ける。
「おにーさん、ボクのことわかってもらえてうれしいのだ！！でも、わるいようせいがおおいことはまちがいじゃないのだ……ボク、どうぞくのしたこと、かわりにあやまるのだ……」
ズンちゃんは、妖精たちが人間を見下し続けて謝罪をしない以上、自分が同じ妖精として、責任を取らなくてはならないと考えていた。
「……優しすぎるぜ、ズンちゃんは……でも、そんなことは必要ねえっ。俺たちがこれから、直々に奴らに、自分たちのやったことを謝らせに行くんだ……なあ、そうだろうっ！？」
「おうっ！！」
男たちの叫びがこだまする。
「ど、どういうことなのだ……？」
「奴ら、クズ妖精どもがズンちゃんの種族にしたことは、“民族浄化”だ。そんな卑劣なことが許されるわけがねえっ！！ズンちゃんはここで待ってろ、俺たちが代わりにオトシマエをつけさせに行ってくるぜ……」
どるるんっ、どるん、どるんっ……ぶおおおおおおおおおっ！！
男たちは、次々にバイクにまたがって、エンジンをかける。巨大なスピーカーをつけた1台のバイクから、ガムランの軽快かつ重厚なリズムが流れ始める。
嵐！ 瓦礫！ 炎！ 破片！ 街！ 竜巻！
「待ってろよおぉ……クズ妖精ども！ズンちゃんの仇は、必ずとる！！」
力！ 光！ 奴ら！ 祭！ 空！ 輝く街！
「皆、先に行っててくれ。俺も、すぐ向かうっ」
「おう！セイタロウ！ビビりは無しだぜ？」
「ああ、わかってる」
ラッセッラ！ラッセッラ！ラッセ、ラッセ、ラッセッラ！
ラッセッラ！ラッセッラ！ラッセ、ラッセ、ラッセッラ！
「行くぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ！！」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！」
ぐおおおおおおおおおおおおおおん！ぶるるるるぅおおおおおおおおおおん！！
ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセラ！！
ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセラ！！
ガムランのうねりに、東北地方に伝わる伝統的なお祭りの掛け声のような爆音が重なり、それに勇気づけられた5台のバイクが、一斉に山道を登っていく。
「……俺のバイク・チームだ。ズンちゃん、困ったらいつでも呼んでくれよなっ」
「ただの暴走族じゃないのよ、もう……」
苦笑いしながら、セツもどこかうれしそうな面持ちだった。
しかし、一瞬でその顔が悲しみの感情で歪む。
「ズンちゃん、ウチと会っていたから、ズンちゃんの家族も、みんな妖精たちに殺されちゃったんだよね……ごめんね……ごめんね……うわああん……」
涙を流して泣きながら謝り始めるセツ。
「ウチがズンちゃんと出会わなければ……こんなことには……」
「そ、それはちがうのだ、おねーさん！！」
ズンちゃんは何と声をかければいいかわからなかったが、自分の心のままに伝えた。
「ようせいたちは、ボクたちをころすための“こうじつ”がほしかっただけなのだ。ボクがおねーさんとあってなくても、きっとあいつらはなにかりゆうをつけてボクたちをころすのだ！」
「ズンちゃん……」
「たしかに、ははうえやおとうと、なかまはころされちゃってかなしいけど……ボク、またおねーさんにあえてよかったのだ！！」
「うわああああああん、うあああああん…」
それを聞いて、また泣き始めるセツ。
セイタロウがズンちゃんに近づき、問うた。
「ズンちゃん……もう、飛べないのか」
ズンちゃんはいつものように、体に力を入れた。だが、一度潰れてしまった飛行器官は、いくら光合成をしても回復することはなかった。
「……だめそうなのだ」
「うっ……ごめん、ごめんなあ……俺、ズンちゃんに散々酷いこと言ったよなっ…おまけに、大事な飛行器官まで潰しちゃってよお！！クズなのは俺の方だったよっ！！」
「おにーさん、おにーさんは、くずなんかじゃないのだ！」
目を泣き腫らして謝るセイタロウに、ズンちゃんは、本心からそう言った。
「あのようせいたちにいままでされたことをかんがえれば、おにーさんがあんなにおこるのもとうぜんなのだ！ボクはおこってないし、とべなくても、まだてあしもあるからあるけるのだ！！」
寝ていたタオルから降りて、2足歩行で地面を歩いて見せるズンちゃん。
「いや、それでもズンちゃんに何か償いをし続けないと、俺の気がおさまらねえっ……ズンちゃん、お前さえよければよお……これから、一緒に……」
「のだのだのだのだ！！ごはんさん、ごはんさんなのだ！！」
ズンちゃんが、セイタロウの言葉を最後まで聞くことは叶わなかった。突如として飛んできたイキモノが、甲高い声を発して庭に降り立ったからである。
ズンちゃんの顔が、憎悪で歪む。
「おさずん……！！」
民族浄化の済んだ妖精の村では、胎生型妖精たちの大規模なパーティーがおこなわれていた。実際は、ただの乱×パーティーに近いものであったが……
「れっとーしゅのいないむらでへこへこ、きもちーのだ！！」
「ずんぽいいのおお！！」
「これからもたくさんへこへこして、ずんちゃたちのむらをしあわせにしていくのだ！」
「のだのだのだのだのだのだのだのだ！！」
「おさずん、ありがとーなのだ！れっとーしゅがいなくなって、このむらもへいわなのだ！」
村では、セイタロウの母親からいなり寿司を盗み出していた妖精が、新しいおさずんとなっていた。「れっとーしゅ」によって「ずんぽ」を噛みちぎられてしまった元・おさずんは、生殖能力を喪失したということで、村を追い出されたのであった。
「“もりのけんじゃ”であるぼくたちが、れっとーしゅのてから、みごとへいわをとりもどしたのだ。これからは、くちょにんげんのむらもぼくたちのものにするのだ！！」
「おさずん！かっこいーのだ！！」
切り株の上で、いなり寿司を頬張りながら、威張るおさずん。それに感動して、周りの妖精たちが歓声を上げる。おさずんは、この村のみならず、いずれは、山の下の人間の集落を襲って自分たちの住処にしようと考えていたのであった。
その時であった。
ドゥンダーン！！ドゥンダーン！！
ぶろろろろろろろろっ！！
凶悪なエンジン音を響かせ、バイク・チームが村まで駆け上がってきた。
「く、くちょにんげんなのだ！！」
妖精たちが慌てる間もなく、バイクの群れは村の真ん中を突っ切って走り続ける。
「へこへこへこへこおおおっ！あぐううっ！」
どすっ、ぐちゃ！
「で、でるのだ！でるのだ！へこへこおおおあえおおおおおお”お”お”お”っ」
べちゃちゃ！！
地面で交尾に興じていた沢山の妖精たちが、バイクの接近に気づく間もなく、繋がったまま轢き潰された。5台のバイクは妖精の体液を尾のように引きながら、鮮やかにドリフトして村の出口を塞ぐ。
「うわあああああああああ！！おとーちゃ、おかーちゃ！！」
「くちょにんげん！どうしてここがばれたのだ…」
やっと、村中の妖精たちが、異変に気付いた。高校生たちは、手に手に武器を持ってバイクを降りる。
「……どぉしたよお、乱×かあ？俺も混ぜてほしいもんだぜ……」
「くちょにんげん、ぼくたちのしあわせをじゃまするなあああああ！！」
「……マサル」
「おうよ」
がつっ！
「おぼお”っ！」
1匹の妖精が、木の枝を持って突進する。マサルと呼ばれた男が、釘バットをひと振り。妖精は血を吹いて地面に叩きつけられた。
「へこへこ、へこへこ、きもちーのだ！！」
「タカシはこっちを頼む」
「任せろ……おらぁ！！」
ばきっ！
「きもちい……い”い”い”い”い”！？」
どごっ！
「のじぇええええええっ」
先ほどバイクで轢き損ねたために、未だに交尾を続けるつがいたちを鉄パイプで丁寧に潰していくタカシ。
「にょだにょだにょだ、にょだにょだにょだ……」
「うわ！うぇーんうぇーん！うぇーんうぇーん！！」
「おかーちゃ、おとーちゃ、たちゅけてほちいにょだああああ！！」
「ナイスだ、カイ。1匹も逃がすなよ」
「よっと……逃がすもんかよ、テツ」
先端にトリモチのついた棒で、地面を逃げまどう子ずんを次々と捕まえるカイ。ドスを持って皆に指示を飛ばす小柄な男は、テツというようだ。
「に、にげるのだ！にげるのだ！のだのだのだのだのだのだのだのだ！！」
危機を察した妖精たちが飛んで逃げようとする。だが、高校生たちには秘策があった。
「妖精が逃げるぞ！ヤマ！！」
「みんな、耳塞げえっ！！」
巨大なスピーカーのついたバイクへと戻ったヤマが、ニヤリと笑ってスイッチを押す。
ばああああああああああああああああああああああああああああああああああああん！！
「のだあああああっ！？」
ヤマが大音量で流した音源は、“A Day in the Life”のラストのコード部分であった。
飛び上がった妖精たちは、あまりの音圧で、地面へと落下して痙攣する。木の上に登って隠れていた個体も、ぼとぼとという音を立てて落下した。
「うっ……こんなにいやがった……へへッ！！妖精にはサイケの良さはわからんかねえっ！」
ヤマはニヤリと笑うと、地面で動けなくなっている妖精を次々に捕まえ、結束バンドで縛っていく。
「な、なにするのだくちょにんげん、おててさんがうごかないちゃ……」
やがて、生き残って縛られた沢山の妖精たちは、高校生たちの前に並べられた。
「やめろくちょにんげん、はなせええ！はなさないとぶっころすのだ！！」
おさずんだけは、縛られてテツの腕にがっちりと抱えられる。
皮肉にも、かつて彼らが植物型妖精たちを一列に並べて虐殺したのと同じ構図であった。
「……さああて」
まるで自分たちは悪くないかのように、目をうるませて一斉にこちらを見てくる妖精たちに嫌悪感を抱きつつ、ヤマはしゃべりだした。
「てメーら、何でこんなことになってるか、わかるな？」
「わからないのだ！くちょにんげん、ずんちゃたちをはなせええええ！！」
「なんでぼくたちがこんなことされなきゃいけないちゃ！！ころす！ころす！くちょにんげんんん！！」
「おちびちゃんをかえして、おねがい、おねがい！！」
「にょだ……おかーちゃ、べちょべちょ、くるち、くるち……」
思い思いに罵詈雑言をまくしたてる妖精たち。子ずんは、トリモチで窒息死しかけている。
「……とぼけるなっ！！てメーらがやったことは、全部こっちは知ってんだよっ！」
マサルがキレて釘バットを振り回しながら叫ぶ。
「ずんちゃたち、なにもわるいことしてないのだ！！」
「くちょにんげん、ばかなのだ？」
あくまで、妖精たちは自らの非を認めようとしない。
「てメーらは、植物型妖精の集落を荒らし、“れっとーしゅ”と呼んで差別した。挙句の果てには、偽の出来事をでっち上げて、罪もない善良な植物型妖精たちを殺した。そうだなっ！？」
タカシが丁寧に罪状を説明する。それを聞いて、妖精たちは落ち着きのない表情で顔を見合わせ始める。
「……決まりだな。何でてメーら、今さらどうしよう……みたいな顔してんだよっ？」
「心にやましいことがあるから、そうやっていつもビクビクしてんだよぉ！」
子ずんをくっつけたトリモチを振りながらカイが肩をすくめると、ヤマが大手を振ってそれに応える。
「ぼ、ぼくたちは、ぼくたちのしあわせをまもるために、れっとーしゅをころしたのだ。そのなにがいけないのだ？れっとーしゅは、れっとーしゅとしておとなしくぼくたちのためにいなくなるべきなのだ！！」
「のだのだのだのだのだのだのだのだ！のだのだのだのだのだのだのだのだ！！」
テツに掴まれたおさずんが、もがきながら叫ぶと、地面の妖精たちも一斉に賛同する。
「ぼくたち“もりのけんじゃ”が、れっとーしゅやかとーせいぶつをころすことで、しぜんをまもっているのだ！！かとーせいぶつのくちょにんげんも、ぼくたちにかんしゃするのだ！！」
「こ、こいつらああああ……」
あまりにも傲慢なおさずんの言動に、高校生たちの怒りが頂点に達する。
タカシが、鉄パイプを妖精たちに突き付けて、言った。
「てメーらのやったことは“民族浄化”って言ってな、サイテーなことなんだっ！この地球に暮らす誰もが、絶対に、やってはいけないことなんだっ！！だから俺たちは、ズンちゃんに代わって、てメーらを“民族浄化”……つまり、虐殺し返すためにここに来たんだっ！！」
「く、くちょにんげん、なにをいってるのだ？そんなこと、ゆるされるとでもおもってるのだ？」
「かとーせいぶつごときが、ずんちゃたちをころすけんりなんて、あるはずないのだああああああ！！」
信じられないという顔で、妖精たちは高校生たちを見る。
「あぁんっ？自分たちは虐殺をやって良くて、自分たちがやられるのはイヤなのかよっ！？そんな自分勝手なこと、まかり通るわけねえよなあっ？」
そう叫んだカイは、ライターを取り出すと、トリモチにくっついた子ずんに火をつけた。
「あぢゃあああああああああ！！にょだぃやあああああああああ！！」
「おがああぢゃあああああ！！おどおおおぢゃああああああ！！」
子ずんたちは、もがき苦しみながら、真っ黒焦げになっていく。縛られた親ずんがそれを見て悲鳴を上げる。
「おちびちゃああああああああああああん！！そ、そんな……おちびちゃんがくるしんでいるのだ……どうしてそんなやばんなこと……」
「野蛮なことだって？！この子ずんどもは、ズンちゃんたちのオフクロの頭をおいちおいち言いながら食ってやがったんだろっ！？信じらんねえっ！！そっちの方がよっぽど野蛮だろうがあああっ！！ズンちゃんたちの怒りがてメーらなんかにわかるかよおおおっ！？」
カイはタバコを1本取り出して咥えると、もがきながら燃え盛る子ずんに顔を近づけ、タバコに火をつけた。
「あぢゅあああああ！にょだ、にょだああああああ！！」
シュボッ！
「へッ！燃えるゴミの日だなあ〜♪」
美味しそうに煙を吐き出すカイ。もはや殆どの子ずんは、燃え尽きて炭化していた。
「くちょにんげん、ごみじゃないちゃ！かわいいおちびちゃんなのだ！！」
涙目で叫ぶ母ずんに、カイは炭化した子ずんを近づける。現実を見せつけられ、母ずんの顔が引きつる。
「ほらよ。燃えるゴミだろ、どう見ても。……てメーも燃えろ」
「あああああああああああああああ！あぢゅい！あぢゅういいいいいい！」
つまらなさそうにカイはタバコを母ずんへと放る。あっという間に火が付き、母ずんも炭化した。
「カイ！俺たちやセイタロウのぶんも残しとけよおっ！」
「すまんすまん、これゴミ袋捨てて来るわあ。出したゴミは持ち帰りましょうっ」
カイがゴミ袋を取りにバイクへと戻ると、次はマサルとタカシが前に出た。
「てメーらはズンちゃんたちをれっとーしゅ、と言ってずっと差別してたんだってなぁ？何をもってれっとーしゅ、って言うんだよっ？」
「れ、れっとーしゅはれっとーしゅなのだ！だまるのだくちょにんげん、ああああ”あ”」
ぐちゃ！ばき！！
「あ、あいつらはのろまで、ごはんさんもうまくとれないくせに、なまいきにもおいえさんをたててくらしているのだ！！くちょにんげんとなかよくしようとしたり、“もりのけんじゃ”であるぼくたちのえらさをりかいしていないところが、まさにれっとーしゅなのだ！！」
「てメーらが、偉い？……笑わせんじゃねえ……」
低い声でタカシが凄む。
「俺たちに言わせりゃな……てメーらの方がよっぽど“れっとーしゅ”だよっ！！自分たちの愚かさを理解していないところが、特になああああっ！！」
「てメーらは、ズンちゃんたちのような心優しい善良な妖精を“れっとーしゅ”と勝手に決めつけて、虐殺したんだろっ！？だったら、俺たちがてメーらを“クズ妖精”だと決めつけて虐殺したって、文句言えねえよなああああああああああああっ！？」
マサルも叫び、ふたりは武器を振り下ろす。
どすっ！どすっ！べきっ！！ぐちゃ！ばちゅっ！！
「ぐのだああああああああああああああああああああああああああああ！！」
「ズンちゃんは、よりにもよってこんな奴らとずっと生活していたのかよおおおおっ！？こんな酷いことって、ないだろうがあああああっ！！」
マサルとタカシは、悲しみに打ちひしがれながら、妖精を潰し続けた。ズンちゃんの苦しみを彼らが背負うことは出来ないが、妖精たちは、ズンちゃんの苦しみを何もわかっていない。
それだけがただ、悲しかった。
「はああ……はあああ……」
「マサル、タカシ、もういいだろう……」
荒く息をつくふたりに、ヤマが優しく声をかける。ヤマは飛び出しナイフを持って、妖精たちに近づいた。
「“もりのけんじゃ”だか何だか知らねーが、ズンちゃんたちを散々傷つけたてメーらに与える慈悲はねえっ！覚悟しろ……」
「う、うまれりゅ、うまれりゅ！！」
次に誰が殺されるかわからない状況で、本能が出産を促したのだろう、1匹の妖精が産気づいた。
「けッ！汚ねえ……人が話してん時に、腰振ってんじゃねぇよぉっ！！」
構わずに腰を振り続ける妖精の肛門から、2匹の子ずんが産み落とされる……と同時に、ヤマがそれを掴み上げた。
「おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！」
「にょーだ！にょーだ！にょーだ！にょーだあああ！」
「……死ね」
ズバッ！！ザクッ！！
「おぎゅいやああああああああああああああああああああ！！」
「にょぎえぅいうあええあああああああああああああ！！」
ヤマのナイフが、子ずんの腹を掻っ捌いた。臓物をだらだらとこぼし、体液を噴水のように迸らせた2匹の子ずんは、初めて感じる痛みに絶叫するも、やがて静かになった。
「しょ……しょんな……おちびちゃんが！おちびちゃんがああ！！」
「感じたかてメーらああああ！！これがっ！！家族をっ！仲間をっ！！目の前でっ！！殺されたっ！！ズンちゃんのっ！！怒りとっ！！悲しみだあああああああああああっ！！」
ぐさっ！「ぎぃいいいい！」
じゃきん！「のふぁえいっ」
ばしゅ！「ぶいぇやああああ！！」
子ずんの死骸を地面に叩きつけると、ひとこと区切るごとに、ランダムに妖精を刺し殺していくヤマ。その目からも、大粒の涙があふれて止まらない。
「くちょにんげん、ひどいのだ……かわいいおちびちゃんだったのに！これからしあわせにいきていくはずだったのにいいいいいい！！」
「てメーらにはわからねえだろうなああああっ！！てメーが今、感じているちっぽけな悲しみとは比べ物にならない何倍もの悲しみを、ズンちゃんはてメーらによって味わわされたんだああああああああああああああああああああああああああっ！！」
「ころす！ころす！くちょにんげん！！よくもおちびちゃんを！！」
「ころす！ころす！くちょようせい！！よくもズンちゃんの仲間を！！……殺せるもんなら殺してみろよこの口だけのクズ妖精がよお……っ！！」
狂ったように泣き喚く妖精の口調を真似して、ヤマが詰め寄る。
「れっとーしゅのことなんてどうでもいいのだ！あいつらがいるとしあわせになれないから、あいつらはしんでもいいし、あいつらのきもちなんてわからないのだ！おちびちゃんかえせええええええ！！」
「……そういうとこだ、クズ妖精。自分たちの欲望を満たすためだけに動いて、他はどうでもいいんだもんなあああっ！？」
「ぼくたち“もりのけんじゃ”をしあわせにするためにすべてのせいぶつはうまれてくるのだ！わかったらとっととおちびちゃんかえせえええええええええええ！！」
その一言で、ヤマの中で何かが切れた。
「……もういい。こいつらと会話しても全く意味がねえっ。こいつらにズンちゃんの気持ちなんか、1ミリも理解出来るわきゃねえんだよっ！！」
「くちょにんげん！！おちびちゃん、かえすって、いっただろおおおおおおお！！」
「言ってねえ。死ね」
グサッ！！ぶちゅっ……
「く、くちょにんげえええええっ…」
ヤマは直上からナイフを振り下ろして妖精の息の根を止めた。ズンちゃんに同情する深い悲しみが、彼の心をおおっていた。
「……おい、寝てんじゃねえっ。ちゃんと見ろ」
「ずーん…ずーん………のだっ、はなせくちょにんげん！」
テツが押さえているおさずんは、まるで現実逃避するかのように眠っていた。今までの高校生たちの、必死の怒りの言葉も全く届いていないその様子が、さらに彼らの怒りを掻き立てた。
気がつけば、彼らは、集めた妖精たちの8割を殺してしまっていた。無理もない。彼らは、ズンちゃんのことを思うといたたまれなくなり、行き場のない怒りにさらされていたのだから。
「しまった……妖精減らしすぎた」
「セイタロウのぶん、残さねえとっ」
「セイタロウまだかよおおおっ！？このままじゃ、俺、こいつらを全員ブチ殺しちまうよおおおおっ！！俺のこの燃え上がった殺害欲求をどうしてくれるんだよおおぉ……」
セイタロウは、まだ来ない。なぜなら、家の庭に元・おさずんが飛来していたからである……
すみません、まだ続きます。もう少しお付き合いくださいませ。
前回の私の無茶ぶりに対し、多数のコメントありがとうございました。
多くは語りません。お楽しみください。
〜前回までのあらすじ〜
植物型妖精と胎生型妖精が住む村。植物型妖精の「ズンちゃん」は、人間の「おねーさん」と遊んでいたところを胎生型妖精に見つかり、自分以外の仲間を虐殺されてしまう。民族浄化の始まりであった。最後の生き残りとなったズンちゃんは必死に逃げるが、罪悪感のあまり泣き出してしまう。そこを不良高校生の男に見つかったズンちゃんは、「クズ妖精」であるとして、ナイフを突きつけられてしまうのだった……
民族浄化��
ぐさっ！！
「う……っ！」
不良男子は、ズンちゃんの首の後ろへとナイフを突き立てた。
血液が、ドクドクとあふれる。
「気が変わった！……即死なんてさせねえ、じわじわといたぶって、思いっきり絶望させてから殺してやるよっ！」
ぐぐぐ……
血走った怒りの目で宣言する男は、徐々にナイフを深く突き立てていった。やがて、ズンちゃんの首元の小さな器官へと、ナイフが当たる。
「……ここ、てメーらクズ妖精の飛行器官なんだってなあ？もう二度と飛べなくしてやる……」
「……」
「何だ？抵抗しないのかよっ？いつもみたいに、“そらまめさんだけはやめろ、くちょにんげん！！”って無様に喚かないのか？喚けよっ！！」
妖精の甲高い喚き声を真似する男に、ズンちゃんは静かに言う。
「ボクは、にんげんさん……おにーさんのことを、そんなふうによびたくないのだ……」
「おにーさんだあ！？なれなれしく呼ぶんじゃねえっ！！この害獣があっ！！」
ぶしゅっ！！
「ううっ……うああああああっ！！」
男がナイフに力を入れると、ズンちゃんの飛行器官は簡単に潰れた。激痛が走り、ナイフが抜けたズンちゃんは地面に落ちてのたうち回る。
「どうだ……絶望しただろっ、クズ妖精！！もう二度と飛べないんだぜっ！？一生、地べたに這いつくばることしか出来なくなるなあああっ！！」
ズンちゃんの頭に、また妖精の言葉がフラッシュバックする。
《ざまーないのだ！じべたにはいつくばるしかのーのないのろまなれっとーしゅが、おいえなんてたててるんじゃないのだ！！》
ズンちゃんの目に、また涙が浮かぶ。悔し涙だった。
けっきょく、あのようせいがいっていたことは、ほんとうだった。ボクは、れっとーしゅにかわりはないのだ……
血を流しながら地面で震えるズンちゃんに、男が近寄って言う。
「さあ、どうする？もう生きるのに絶望しただろ？……俺が、ラクにしてやってもいいんだぜ……？」
「……ボクは……ボクは、まだしにたくないのだ！」
男を真っすぐ見据えて、ズンちゃんが叫んだ。
絶望は、もうじゅうぶん過ぎるほど味わった。自分がもう飛べなくなったくらいが何だ。
ボクは、れっとーしゅであるとしてなかまやははうえ、おとうとをころされたときに、すでにぜつぼうしきっている！！
そして、そんなボクがまだしにたくないとおもえる、さいごのきぼう……
「……おねーさん」
「うっ……？！」
「ボクにやさしくしてくれる、おねーさんにあうまでは、まだしにたくないのだああああ！」
血を吐きながら、ズンちゃんが絶叫した。
男が今まで手にかけてきた妖精はみんな、飛行器官を潰せば絶望して、自ら死を望んでいた。しかし、確固たる信念を持ったズンちゃんは違った。
「おねーさんだって？て、てメーは、妖精のクセに人間と関わりがあるのかっ！？」
「ボクは……ボクは、にんげんさんともっとあそびたい！にんげんさんをもっとしりたい！だけど、むらのみんなが、それをゆるさない！！なにがいけないのだ！にんげんさんといっしょにくらしたいとねがって、なにが……」
「し、信じられるかああ！！クズ妖精はいつもそうだ、都合の良いときだけ、にんげんさん、にんげんさんって！内心では、てメーも俺たちのことを“くちょにんげん”だって見下してやがるんだろっ？！」
「ちがうのだ！ボクは、にんげんさんのことをそんけいしているのだ……」
「黙れ！黙れっ！黙れえええええ！！じゃあ、なぜてメーの仲間は、悪いことを平気でするんだあ！？人間を尊敬しているなら、お前が仲間の悪事を止めるなり何なりすればいいじゃねえかよおおっ！？」
「うう……」
ズンちゃんは、正義感が強かった。しかし、あの村では自分が少数派だった。多数派の妖精たちから、自分たちが迫害される理由を与えてはいけないと思って、言い出せなかった……
《やっぱりれっとーしゅはよわむしなのだ！！》
《やっぱりれっとーしゅはよわむしなのだ！！》
《やっぱりれっとーしゅはよわむしなのだ！！》
………………
妖精たちの言葉が波のように押し寄せる。ズンちゃんは、その言葉に打ちのめされていた。
血と涙を流しながら立ち尽くして震えるズンちゃんに、男がナイフを再び突き立てる。
「てメーが本当に自分をクズ妖精じゃないと思ってたとしても、俺たち人間にとってはみんな同じクズ妖精なんだよ…………見分けなんて、つきやしないんだ」
「…………」
「てメーをここで逃がしたら、大群を引き連れて攻めて来るかもしれない。大事なオフクロや妹を守るために、俺は今、てメーを殺す。それは変わらない」
「……ころすなら、ころしてほしいのだ、ていこうはしないのだ」
もともと、最初にナイフを振り上げられた時に、ズンちゃんは死を覚悟していた。れっとーしゅである自分には、それがお似合いだと思った。
大好きなおねーさんに会えないのが、唯一の心残りだった。
でも、れっとーしゅの自分には、きっとその資格もないのだろう。
ズンちゃんは、再び覚悟を決めるように、目を閉じた。
「……あんちゃん？」
透き通った声が響く。
あんちゃん、なんて、もう懐かしい響きだった。
死んだ弟が、迎えに来てくれたのか。
……ボクも、もうすぐそっちにいくよ。ごめんね、またせて。
しかし、いつまでたっても、自分の息の根を止める一撃は来ない。
どうしたっていうのだろう。ズンちゃんは、おそるおそる目を開ける。
男は、ナイフを今にもズンちゃんの脳天に振り下ろそうという姿勢で静止していた。その後ろに見えるのは……
見間違えようもなかった。
ボクが、いちばんあいたかったひと。だいすきな……
「お、おねーさん！？」
「ズン、ちゃん……？」
おねーさんは困惑しているようだった。だが、だんだんと状況がわかって来たのか、自らの血の池に浸って震えるズンちゃんと、ナイフを構えた男を見て、その顔が青ざめていく。
「……あんちゃん」
「えっ……」
「……ウチの大切な友達に、何した」
「そ、そんな、まさか、てメーの言う“おねーさん”って……」
「何したああああああああっ！？」
ばちんっ！！
「ぐうぉっ！？」
ばたん……
男は、おねーさんの渾身の一撃を受けて、ナイフを落として仰向けに倒れこむ。
おねーさんはその体の上に馬乗りになると、泣きながら男の顔面を殴り続ける。
がしっ！がしいっ！！
「うわああああああん！！どうしてっ！！どうしてウチのズンちゃんをおおおおっ！」
「うっ、いてっ！いてぇ！セツ！やめろぉ…ぐぶっ！！」
「優しいズンちゃんをいじめるなんてっ！……ウチが……ウチがアンタを殺してやるっ！！」
半狂乱になったおねーさんは、男がさっき地面に落としたナイフを探って片手を動かす。ズンちゃんは、このままだとおにーさんが本当に殺されてしまうと思い、自分の血が付いたナイフを、最期の力を振り絞っておねーさんから遠ざけた。
「お、おねーさん！やめてほしいのだ！ボクは、ボクはだいじょうぶなのだああああ！！」
「ズ、ズンちゃん……！？」
おねーさんは、一瞬動きを止める。精一杯笑顔を見せるズンちゃんだったが、出血多量で限界が来て、ついに倒れこんでしまう。
とさっ……
「ズンちゃあああああん！！待ってて、すぐに家まで連れてってあげる……あんちゃん、バイクのせてっ！」
「えっ、で、でもっ、2ケツはちょっと……」
「こんな時に何言ってるのよっ！？普段ノーヘルで乗り回してるアンタが言えることじゃないでしょおっ！？」
「わ、わかった」
ぶぉん！ぶぉん！ぶぉおおっ、ブロロロロロロロッ！！
男の改造バイクが唸りを上げ、一直線に山道を下って行った。
「はあ……はあ……」
「ズンちゃん、しっかり……大丈夫だから、大丈夫だからねっ」
ここはおねーさん……セツの家の庭。母親は仕事に出ているらしく、いなかった。
「すまん……俺、お前が妹と知り合いだなんて知らなくてよお……」
これまで100回くらい同じことを繰り返し、土下座して謝り続けるおにーさん。
「あんちゃんっ！それやってる暇があったら、水なり食べ物なり何なり持ってきてよっ！あんちゃんがこの子を傷つけたんだからっ！！」
「は、はいぃっ！」
慌てて家の中へ戻っていくおにーさん。
庭で手当てをしているのは、ズンちゃんが植物型妖精だからだ。光合成で、本当にゆっくりではあるが、徐々に体力を回復させることが出来ると、セツに伝えたのだった。
セツが中学校で習った応急救護手当ての方法と、日光のおかげで、ズンちゃんは今、死なずに済んでいると言っても過言ではなかった。
やがて、ズンちゃんの出血は完全におさまった。首に包帯を巻いたズンちゃんは、タオルの上に寝かされた。
「おねーさん、ありがとうなのだ……」
「ズンちゃん、これ」
セツが、持ってきた段ボール箱の中から大きなリンゴを差し出す。ズンちゃんは、躊躇した。
「で、でもこれ、にんげんさんのつくったりんごさんなのだ……ボクは、もらえないのだ」
ズンちゃんは、村の妖精たちが人間の食べ物を日々盗んでいることを負い目に感じていた。
そんなズンちゃんをよそに、セツはリンゴを剥いて強引にズンちゃんの口へ入れる。
「あむっ……？！……お、おいしいのだ、おいしいのだ……」
「ふふっ……いっぱい食べるのよ」
それは、普段自分が食べているどの木の実やキノコよりも美味しかった。ズンちゃんは、あっという間にリンゴを食べ尽くしてしまう。
「ごちそうさまなのだ、よかったのだ……？ボクがたべてしまって」
「ズンちゃん、痩せてるよ？食べないと死んじゃうところだった」
「ズンちゃん……本当にすまなかった。傷つけたりなんかして」
「おにーさん、ボクはいま、いきてるからへいきなのだ！！」
涙を流して謝るおにーさんに、ズンちゃんは微笑む。
こわかったけど、やっぱり、にんげんさんにはいいひとがおおいじゃないか！！
「ねえ、ズンちゃん」
ややあって、セツが激しい顔で問うた。
「……何があったの、あの村で」
「……いいたくないのだ」
「何で？」
「いったら、おねーさんたちに、めいわくをかけてしまうのだ……」
ズンちゃんは、あの村であったことを、自分の中にとどめておくつもりだった。今、自分が生きていることが信じられなかったこともあった。
「話してよっ！！優しいズンちゃんが、何でひとりで傷つかなきゃいけないのっ！？」
「そうだよっ。ズンちゃんは俺に言ってくれた。“種類が違う妖精がいる”って……どういうことなのか、俺も知りたいっ」
ふたりに説得されて、ズンちゃんは一部始終を話すことにした。
あの村はもともと植物型妖精の村だったが、突然、種類の違う胎生型妖精がやってきたこと。
自分たちが、“れっとーしゅ”として妖精たちから差別され続けたこと。
妖精たちは、人間から食べ物を奪うことを平然とやっているということ。
そして、おねーさんと遊んでいるところを見つかり、密告されて、自分の見ている前で仲間が、母親が、弟が虐殺され、死に物狂いでここまで逃げてきたところ、おにーさんに捕まったのだということ……
自分には、何も出来なかったということ……
涙声で、ズンちゃんは語り終えた。途中から、バイクでやってきたおにーさんの仲間の不良たち5人が庭に入ってきて、ズンちゃんの話を聞いていたが、彼ら含めて、みんなが泣いていた。
「……嘘つき」
泣きながら、セツがつぶやく。
「ズンちゃん、村のみんなが優しいって言ってたのに！！ホントは差別されてたんだ…！ひとりで辛いの抱えてたの、許せないよ、ウチ……」
「う、うそついてごめんなさいなのだ……でも、ボクにはなにもできなかったのだ……」
「いいや、それは違うぞ、ズンちゃん」
後ろで聞いていたおにーさんの仲間のひとりが言った。
「ズンちゃんは、やれることをやった。ズンちゃんが何を言ったって、妖精たちはぜってえ、行動を変えないっ。ズンちゃんは、正しいことをしたんだっ。だって、逃げて来なければ、俺たちがこの話を知ることはなかったし、ズンちゃんだって奴らに殺されてたんだっ」
「そうだそうだっ！ズンちゃん、かわいそうすぎるぜええええっ……うおおおおおん」
おにーさんの仲間は、また大声で泣き始めた。
「ズンちゃん、お前の話、信じてやれなくてごめんな……俺、妖精はみんなクズなやつばっかりだと思ってた。でも違うんだなっ。お前みたいな、優しい妖精だっているんだな……」
おにーさんも、泣きながら謝り続ける。
「そうだぞぉ、セイタロウ……てメー、こんないい子のズンちゃんを殺そうとしたんだって？信じらんねえ！！もしズンちゃんを殺してたら、俺たちがてメーを殺してたわっ！！リーダーだからって関係ねえ！」
おにーさんは、セイタロウという名前らしかった。深々と頭を下げて謝り続ける。
「おにーさん、ボクのことわかってもらえてうれしいのだ！！でも、わるいようせいがおおいことはまちがいじゃないのだ……ボク、どうぞくのしたこと、かわりにあやまるのだ……」
ズンちゃんは、妖精たちが人間を見下し続けて謝罪をしない以上、自分が同じ妖精として、責任を取らなくてはならないと考えていた。
「……優しすぎるぜ、ズンちゃんは……でも、そんなことは必要ねえっ。俺たちがこれから、直々に奴らに、自分たちのやったことを謝らせに行くんだ……なあ、そうだろうっ！？」
「おうっ！！」
男たちの叫びがこだまする。
「ど、どういうことなのだ……？」
「奴ら、クズ妖精どもがズンちゃんの種族にしたことは、“民族浄化”だ。そんな卑劣なことが許されるわけがねえっ！！ズンちゃんはここで待ってろ、俺たちが代わりにオトシマエをつけさせに行ってくるぜ……」
どるるんっ、どるん、どるんっ……ぶおおおおおおおおおっ！！
男たちは、次々にバイクにまたがって、エンジンをかける。巨大なスピーカーをつけた1台のバイクから、ガムランの軽快かつ重厚なリズムが流れ始める。
嵐！ 瓦礫！ 炎！ 破片！ 街！ 竜巻！
「待ってろよおぉ……クズ妖精ども！ズンちゃんの仇は、必ずとる！！」
力！ 光！ 奴ら！ 祭！ 空！ 輝く街！
「皆、先に行っててくれ。俺も、すぐ向かうっ」
「おう！セイタロウ！ビビりは無しだぜ？」
「ああ、わかってる」
ラッセッラ！ラッセッラ！ラッセ、ラッセ、ラッセッラ！
ラッセッラ！ラッセッラ！ラッセ、ラッセ、ラッセッラ！
「行くぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ！！」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！」
ぐおおおおおおおおおおおおおおん！ぶるるるるぅおおおおおおおおおおん！！
ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセラ！！
ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセ、ラッセラ！！
ガムランのうねりに、東北地方に伝わる伝統的なお祭りの掛け声のような爆音が重なり、それに勇気づけられた5台のバイクが、一斉に山道を登っていく。
「……俺のバイク・チームだ。ズンちゃん、困ったらいつでも呼んでくれよなっ」
「ただの暴走族じゃないのよ、もう……」
苦笑いしながら、セツもどこかうれしそうな面持ちだった。
しかし、一瞬でその顔が悲しみの感情で歪む。
「ズンちゃん、ウチと会っていたから、ズンちゃんの家族も、みんな妖精たちに殺されちゃったんだよね……ごめんね……ごめんね……うわああん……」
涙を流して泣きながら謝り始めるセツ。
「ウチがズンちゃんと出会わなければ……こんなことには……」
「そ、それはちがうのだ、おねーさん！！」
ズンちゃんは何と声をかければいいかわからなかったが、自分の心のままに伝えた。
「ようせいたちは、ボクたちをころすための“こうじつ”がほしかっただけなのだ。ボクがおねーさんとあってなくても、きっとあいつらはなにかりゆうをつけてボクたちをころすのだ！」
「ズンちゃん……」
「たしかに、ははうえやおとうと、なかまはころされちゃってかなしいけど……ボク、またおねーさんにあえてよかったのだ！！」
「うわああああああん、うあああああん…」
それを聞いて、また泣き始めるセツ。
セイタロウがズンちゃんに近づき、問うた。
「ズンちゃん……もう、飛べないのか」
ズンちゃんはいつものように、体に力を入れた。だが、一度潰れてしまった飛行器官は、いくら光合成をしても回復することはなかった。
「……だめそうなのだ」
「うっ……ごめん、ごめんなあ……俺、ズンちゃんに散々酷いこと言ったよなっ…おまけに、大事な飛行器官まで潰しちゃってよお！！クズなのは俺の方だったよっ！！」
「おにーさん、おにーさんは、くずなんかじゃないのだ！」
目を泣き腫らして謝るセイタロウに、ズンちゃんは、本心からそう言った。
「あのようせいたちにいままでされたことをかんがえれば、おにーさんがあんなにおこるのもとうぜんなのだ！ボクはおこってないし、とべなくても、まだてあしもあるからあるけるのだ！！」
寝ていたタオルから降りて、2足歩行で地面を歩いて見せるズンちゃん。
「いや、それでもズンちゃんに何か償いをし続けないと、俺の気がおさまらねえっ……ズンちゃん、お前さえよければよお……これから、一緒に……」
「のだのだのだのだ！！ごはんさん、ごはんさんなのだ！！」
ズンちゃんが、セイタロウの言葉を最後まで聞くことは叶わなかった。突如として飛んできたイキモノが、甲高い声を発して庭に降り立ったからである。
ズンちゃんの顔が、憎悪で歪む。
「おさずん……！！」
民族浄化の済んだ妖精の村では、胎生型妖精たちの大規模なパーティーがおこなわれていた。実際は、ただの乱×パーティーに近いものであったが……
「れっとーしゅのいないむらでへこへこ、きもちーのだ！！」
「ずんぽいいのおお！！」
「これからもたくさんへこへこして、ずんちゃたちのむらをしあわせにしていくのだ！」
「のだのだのだのだのだのだのだのだ！！」
「おさずん、ありがとーなのだ！れっとーしゅがいなくなって、このむらもへいわなのだ！」
村では、セイタロウの母親からいなり寿司を盗み出していた妖精が、新しいおさずんとなっていた。「れっとーしゅ」によって「ずんぽ」を噛みちぎられてしまった元・おさずんは、生殖能力を喪失したということで、村を追い出されたのであった。
「“もりのけんじゃ”であるぼくたちが、れっとーしゅのてから、みごとへいわをとりもどしたのだ。これからは、くちょにんげんのむらもぼくたちのものにするのだ！！」
「おさずん！かっこいーのだ！！」
切り株の上で、いなり寿司を頬張りながら、威張るおさずん。それに感動して、周りの妖精たちが歓声を上げる。おさずんは、この村のみならず、いずれは、山の下の人間の集落を襲って自分たちの住処にしようと考えていたのであった。
その時であった。
ドゥンダーン！！ドゥンダーン！！
ぶろろろろろろろろっ！！
凶悪なエンジン音を響かせ、バイク・チームが村まで駆け上がってきた。
「く、くちょにんげんなのだ！！」
妖精たちが慌てる間もなく、バイクの群れは村の真ん中を突っ切って走り続ける。
「へこへこへこへこおおおっ！あぐううっ！」
どすっ、ぐちゃ！
「で、でるのだ！でるのだ！へこへこおおおあえおおおおおお”お”お”お”っ」
べちゃちゃ！！
地面で交尾に興じていた沢山の妖精たちが、バイクの接近に気づく間もなく、繋がったまま轢き潰された。5台のバイクは妖精の体液を尾のように引きながら、鮮やかにドリフトして村の出口を塞ぐ。
「うわあああああああああ！！おとーちゃ、おかーちゃ！！」
「くちょにんげん！どうしてここがばれたのだ…」
やっと、村中の妖精たちが、異変に気付いた。高校生たちは、手に手に武器を持ってバイクを降りる。
「……どぉしたよお、乱×かあ？俺も混ぜてほしいもんだぜ……」
「くちょにんげん、ぼくたちのしあわせをじゃまするなあああああ！！」
「……マサル」
「おうよ」
がつっ！
「おぼお”っ！」
1匹の妖精が、木の枝を持って突進する。マサルと呼ばれた男が、釘バットをひと振り。妖精は血を吹いて地面に叩きつけられた。
「へこへこ、へこへこ、きもちーのだ！！」
「タカシはこっちを頼む」
「任せろ……おらぁ！！」
ばきっ！
「きもちい……い”い”い”い”い”！？」
どごっ！
「のじぇええええええっ」
先ほどバイクで轢き損ねたために、未だに交尾を続けるつがいたちを鉄パイプで丁寧に潰していくタカシ。
「にょだにょだにょだ、にょだにょだにょだ……」
「うわ！うぇーんうぇーん！うぇーんうぇーん！！」
「おかーちゃ、おとーちゃ、たちゅけてほちいにょだああああ！！」
「ナイスだ、カイ。1匹も逃がすなよ」
「よっと……逃がすもんかよ、テツ」
先端にトリモチのついた棒で、地面を逃げまどう子ずんを次々と捕まえるカイ。ドスを持って皆に指示を飛ばす小柄な男は、テツというようだ。
「に、にげるのだ！にげるのだ！のだのだのだのだのだのだのだのだ！！」
危機を察した妖精たちが飛んで逃げようとする。だが、高校生たちには秘策があった。
「妖精が逃げるぞ！ヤマ！！」
「みんな、耳塞げえっ！！」
巨大なスピーカーのついたバイクへと戻ったヤマが、ニヤリと笑ってスイッチを押す。
ばああああああああああああああああああああああああああああああああああああん！！
「のだあああああっ！？」
ヤマが大音量で流した音源は、“A Day in the Life”のラストのコード部分であった。
飛び上がった妖精たちは、あまりの音圧で、地面へと落下して痙攣する。木の上に登って隠れていた個体も、ぼとぼとという音を立てて落下した。
「うっ……こんなにいやがった……へへッ！！妖精にはサイケの良さはわからんかねえっ！」
ヤマはニヤリと笑うと、地面で動けなくなっている妖精を次々に捕まえ、結束バンドで縛っていく。
「な、なにするのだくちょにんげん、おててさんがうごかないちゃ……」
やがて、生き残って縛られた沢山の妖精たちは、高校生たちの前に並べられた。
「やめろくちょにんげん、はなせええ！はなさないとぶっころすのだ！！」
おさずんだけは、縛られてテツの腕にがっちりと抱えられる。
皮肉にも、かつて彼らが植物型妖精たちを一列に並べて虐殺したのと同じ構図であった。
「……さああて」
まるで自分たちは悪くないかのように、目をうるませて一斉にこちらを見てくる妖精たちに嫌悪感を抱きつつ、ヤマはしゃべりだした。
「てメーら、何でこんなことになってるか、わかるな？」
「わからないのだ！くちょにんげん、ずんちゃたちをはなせええええ！！」
「なんでぼくたちがこんなことされなきゃいけないちゃ！！ころす！ころす！くちょにんげんんん！！」
「おちびちゃんをかえして、おねがい、おねがい！！」
「にょだ……おかーちゃ、べちょべちょ、くるち、くるち……」
思い思いに罵詈雑言をまくしたてる妖精たち。子ずんは、トリモチで窒息死しかけている。
「……とぼけるなっ！！てメーらがやったことは、全部こっちは知ってんだよっ！」
マサルがキレて釘バットを振り回しながら叫ぶ。
「ずんちゃたち、なにもわるいことしてないのだ！！」
「くちょにんげん、ばかなのだ？」
あくまで、妖精たちは自らの非を認めようとしない。
「てメーらは、植物型妖精の集落を荒らし、“れっとーしゅ”と呼んで差別した。挙句の果てには、偽の出来事をでっち上げて、罪もない善良な植物型妖精たちを殺した。そうだなっ！？」
タカシが丁寧に罪状を説明する。それを聞いて、妖精たちは落ち着きのない表情で顔を見合わせ始める。
「……決まりだな。何でてメーら、今さらどうしよう……みたいな顔してんだよっ？」
「心にやましいことがあるから、そうやっていつもビクビクしてんだよぉ！」
子ずんをくっつけたトリモチを振りながらカイが肩をすくめると、ヤマが大手を振ってそれに応える。
「ぼ、ぼくたちは、ぼくたちのしあわせをまもるために、れっとーしゅをころしたのだ。そのなにがいけないのだ？れっとーしゅは、れっとーしゅとしておとなしくぼくたちのためにいなくなるべきなのだ！！」
「のだのだのだのだのだのだのだのだ！のだのだのだのだのだのだのだのだ！！」
テツに掴まれたおさずんが、もがきながら叫ぶと、地面の妖精たちも一斉に賛同する。
「ぼくたち“もりのけんじゃ”が、れっとーしゅやかとーせいぶつをころすことで、しぜんをまもっているのだ！！かとーせいぶつのくちょにんげんも、ぼくたちにかんしゃするのだ！！」
「こ、こいつらああああ……」
あまりにも傲慢なおさずんの言動に、高校生たちの怒りが頂点に達する。
タカシが、鉄パイプを妖精たちに突き付けて、言った。
「てメーらのやったことは“民族浄化”って言ってな、サイテーなことなんだっ！この地球に暮らす誰もが、絶対に、やってはいけないことなんだっ！！だから俺たちは、ズンちゃんに代わって、てメーらを“民族浄化”……つまり、虐殺し返すためにここに来たんだっ！！」
「く、くちょにんげん、なにをいってるのだ？そんなこと、ゆるされるとでもおもってるのだ？」
「かとーせいぶつごときが、ずんちゃたちをころすけんりなんて、あるはずないのだああああああ！！」
信じられないという顔で、妖精たちは高校生たちを見る。
「あぁんっ？自分たちは虐殺をやって良くて、自分たちがやられるのはイヤなのかよっ！？そんな自分勝手なこと、まかり通るわけねえよなあっ？」
そう叫んだカイは、ライターを取り出すと、トリモチにくっついた子ずんに火をつけた。
「あぢゃあああああああああ！！にょだぃやあああああああああ！！」
「おがああぢゃあああああ！！おどおおおぢゃああああああ！！」
子ずんたちは、もがき苦しみながら、真っ黒焦げになっていく。縛られた親ずんがそれを見て悲鳴を上げる。
「おちびちゃああああああああああああん！！そ、そんな……おちびちゃんがくるしんでいるのだ……どうしてそんなやばんなこと……」
「野蛮なことだって？！この子ずんどもは、ズンちゃんたちのオフクロの頭をおいちおいち言いながら食ってやがったんだろっ！？信じらんねえっ！！そっちの方がよっぽど野蛮だろうがあああっ！！ズンちゃんたちの怒りがてメーらなんかにわかるかよおおおっ！？」
カイはタバコを1本取り出して咥えると、もがきながら燃え盛る子ずんに顔を近づけ、タバコに火をつけた。
「あぢゅあああああ！にょだ、にょだああああああ！！」
シュボッ！
「へッ！燃えるゴミの日だなあ〜♪」
美味しそうに煙を吐き出すカイ。もはや殆どの子ずんは、燃え尽きて炭化していた。
「くちょにんげん、ごみじゃないちゃ！かわいいおちびちゃんなのだ！！」
涙目で叫ぶ母ずんに、カイは炭化した子ずんを近づける。現実を見せつけられ、母ずんの顔が引きつる。
「ほらよ。燃えるゴミだろ、どう見ても。……てメーも燃えろ」
「あああああああああああああああ！あぢゅい！あぢゅういいいいいい！」
つまらなさそうにカイはタバコを母ずんへと放る。あっという間に火が付き、母ずんも炭化した。
「カイ！俺たちやセイタロウのぶんも残しとけよおっ！」
「すまんすまん、これゴミ袋捨てて来るわあ。出したゴミは持ち帰りましょうっ」
カイがゴミ袋を取りにバイクへと戻ると、次はマサルとタカシが前に出た。
「てメーらはズンちゃんたちをれっとーしゅ、と言ってずっと差別してたんだってなぁ？何をもってれっとーしゅ、って言うんだよっ？」
「れ、れっとーしゅはれっとーしゅなのだ！だまるのだくちょにんげん、ああああ”あ”」
ぐちゃ！ばき！！
「あ、あいつらはのろまで、ごはんさんもうまくとれないくせに、なまいきにもおいえさんをたててくらしているのだ！！くちょにんげんとなかよくしようとしたり、“もりのけんじゃ”であるぼくたちのえらさをりかいしていないところが、まさにれっとーしゅなのだ！！」
「てメーらが、偉い？……笑わせんじゃねえ……」
低い声でタカシが凄む。
「俺たちに言わせりゃな……てメーらの方がよっぽど“れっとーしゅ”だよっ！！自分たちの愚かさを理解していないところが、特になああああっ！！」
「てメーらは、ズンちゃんたちのような心優しい善良な妖精を“れっとーしゅ”と勝手に決めつけて、虐殺したんだろっ！？だったら、俺たちがてメーらを“クズ妖精”だと決めつけて虐殺したって、文句言えねえよなああああああああああああっ！？」
マサルも叫び、ふたりは武器を振り下ろす。
どすっ！どすっ！べきっ！！ぐちゃ！ばちゅっ！！
「ぐのだああああああああああああああああああああああああああああ！！」
「ズンちゃんは、よりにもよってこんな奴らとずっと生活していたのかよおおおおっ！？こんな酷いことって、ないだろうがあああああっ！！」
マサルとタカシは、悲しみに打ちひしがれながら、妖精を潰し続けた。ズンちゃんの苦しみを彼らが背負うことは出来ないが、妖精たちは、ズンちゃんの苦しみを何もわかっていない。
それだけがただ、悲しかった。
「はああ……はあああ……」
「マサル、タカシ、もういいだろう……」
荒く息をつくふたりに、ヤマが優しく声をかける。ヤマは飛び出しナイフを持って、妖精たちに近づいた。
「“もりのけんじゃ”だか何だか知らねーが、ズンちゃんたちを散々傷つけたてメーらに与える慈悲はねえっ！覚悟しろ……」
「う、うまれりゅ、うまれりゅ！！」
次に誰が殺されるかわからない状況で、本能が出産を促したのだろう、1匹の妖精が産気づいた。
「けッ！汚ねえ……人が話してん時に、腰振ってんじゃねぇよぉっ！！」
構わずに腰を振り続ける妖精の肛門から、2匹の子ずんが産み落とされる……と同時に、ヤマがそれを掴み上げた。
「おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！」
「にょーだ！にょーだ！にょーだ！にょーだあああ！」
「……死ね」
ズバッ！！ザクッ！！
「おぎゅいやああああああああああああああああああああ！！」
「にょぎえぅいうあええあああああああああああああ！！」
ヤマのナイフが、子ずんの腹を掻っ捌いた。臓物をだらだらとこぼし、体液を噴水のように迸らせた2匹の子ずんは、初めて感じる痛みに絶叫するも、やがて静かになった。
「しょ……しょんな……おちびちゃんが！おちびちゃんがああ！！」
「感じたかてメーらああああ！！これがっ！！家族をっ！仲間をっ！！目の前でっ！！殺されたっ！！ズンちゃんのっ！！怒りとっ！！悲しみだあああああああああああっ！！」
ぐさっ！「ぎぃいいいい！」
じゃきん！「のふぁえいっ」
ばしゅ！「ぶいぇやああああ！！」
子ずんの死骸を地面に叩きつけると、ひとこと区切るごとに、ランダムに妖精を刺し殺していくヤマ。その目からも、大粒の涙があふれて止まらない。
「くちょにんげん、ひどいのだ……かわいいおちびちゃんだったのに！これからしあわせにいきていくはずだったのにいいいいいい！！」
「てメーらにはわからねえだろうなああああっ！！てメーが今、感じているちっぽけな悲しみとは比べ物にならない何倍もの悲しみを、ズンちゃんはてメーらによって味わわされたんだああああああああああああああああああああああああああっ！！」
「ころす！ころす！くちょにんげん！！よくもおちびちゃんを！！」
「ころす！ころす！くちょようせい！！よくもズンちゃんの仲間を！！……殺せるもんなら殺してみろよこの口だけのクズ妖精がよお……っ！！」
狂ったように泣き喚く妖精の口調を真似して、ヤマが詰め寄る。
「れっとーしゅのことなんてどうでもいいのだ！あいつらがいるとしあわせになれないから、あいつらはしんでもいいし、あいつらのきもちなんてわからないのだ！おちびちゃんかえせええええええ！！」
「……そういうとこだ、クズ妖精。自分たちの欲望を満たすためだけに動いて、他はどうでもいいんだもんなあああっ！？」
「ぼくたち“もりのけんじゃ”をしあわせにするためにすべてのせいぶつはうまれてくるのだ！わかったらとっととおちびちゃんかえせえええええええええええ！！」
その一言で、ヤマの中で何かが切れた。
「……もういい。こいつらと会話しても全く意味がねえっ。こいつらにズンちゃんの気持ちなんか、1ミリも理解出来るわきゃねえんだよっ！！」
「くちょにんげん！！おちびちゃん、かえすって、いっただろおおおおおおお！！」
「言ってねえ。死ね」
グサッ！！ぶちゅっ……
「く、くちょにんげえええええっ…」
ヤマは直上からナイフを振り下ろして妖精の息の根を止めた。ズンちゃんに同情する深い悲しみが、彼の心をおおっていた。
「……おい、寝てんじゃねえっ。ちゃんと見ろ」
「ずーん…ずーん………のだっ、はなせくちょにんげん！」
テツが押さえているおさずんは、まるで現実逃避するかのように眠っていた。今までの高校生たちの、必死の怒りの言葉も全く届いていないその様子が、さらに彼らの怒りを掻き立てた。
気がつけば、彼らは、集めた妖精たちの8割を殺してしまっていた。無理もない。彼らは、ズンちゃんのことを思うといたたまれなくなり、行き場のない怒りにさらされていたのだから。
「しまった……妖精減らしすぎた」
「セイタロウのぶん、残さねえとっ」
「セイタロウまだかよおおおっ！？このままじゃ、俺、こいつらを全員ブチ殺しちまうよおおおおっ！！俺のこの燃え上がった殺害欲求をどうしてくれるんだよおおぉ……」
セイタロウは、まだ来ない。なぜなら、家の庭に元・おさずんが飛来していたからである……
すみません、まだ続きます。もう少しお付き合いくださいませ。
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このページへのコメント
言いたい事やりたい事全部不良たちがやってくれてスカッとサワヤカな気分なんだけど
セイタロウ達、絶対不良じゃねえw悪い事してんの喫煙くらいやんけ
コメントありがとうございます。彼らは、一般人ならためらう妖精の虐殺をも、仲間のためならやってくれるんです！！
喫煙＋ノーヘル無免許バイク乗り回しですかねw
俺達ァ健康優良不良少年だぜ
あえてメタルではなくビートルズ流すの好き
コメントありがとうございます。わかる人がいた……嬉しいです；；
あのピアノでどれだけのファンの心を掴んだか…
妖精にはサイケデリックの良さはわからず、雑音としか捉えられないという悲哀を表現しました！！
やりたい放題したツケが回って殺されたい放題されるのは滑稽ですねぇ！素晴らしい！
しかし人間の言葉は喋れるのに、ズンちゃんのような会話が出来ないのは、本当に胎生型の方が劣等種であり、『自然の失敗作』ですね
残ったゴミドモは死にたくても死なない生き地獄を味合わって貰いたいですね！
コメントありがとうございます。ズンちゃんの味方になってあげられるような胎生型妖精が1匹でもいれば、結果は変わったのかもしれないですが……そんなことはなく……
次回もご期待くださいね！！
>「ズンちゃん、ウチと会っていたから、ズンちゃんの家族も、みんな妖精たちに殺されちゃったんだよね……ごめんね……ごめんね……うわああん……」
>「うっ……ごめん、ごめんなあ……俺、ズンちゃんに散々酷いこと言ったよなっ…おまけに、大事な飛行器官まで潰しちゃってよお！！クズなのは俺の方だったよっ！！」
→こういう所、本当兄妹だなと感じた。
ズンちゃんの痛みを少しでも分かろうとしてるの本当優し過ぎる。
>「で、でもこれ、にんげんさんのつくったりんごさんなのだ……ボクは、もらえないのだ」
ズンちゃんは、村の妖精たちが人間の食べ物を日々盗んでいることを負い目に感じていた。
>「おにーさん、ボクのことわかってもらえてうれしいのだ！！でも、わるいようせいがおおいことはまちがいじゃないのだ……ボク、どうぞくのしたこと、かわりにあやまるのだ……」
→ズンちゃんもズンちゃんであのカス共に代わって謝らなくても良いのに･･･
お互いに優し過ぎるよ･･･
胎生の奴ら、ぜってぇ許さねぇ!!
>「ぼ、ぼくたちは、ぼくたちのしあわせをまもるために、れっとーしゅをころしたのだ。そのなにがいけないのだ？れっとーしゅは、れっとーしゅとしておとなしくぼくたちのためにいなくなるべきなのだ！！」
→駄目だな。
完全に自分がこの世界の絶対的中心で正義であり、生態系の守護者だと勘違いしてやがる。
ならズンちゃんを陵辱した"ツケ"、お前らの命で払ってもらうぜ。
>「ぼくたち“もりのけんじゃ”が、れっとーしゅやかとーせいぶつをころすことで、しぜんをまもっているのだ！！かとーせいぶつのくちょにんげんも、ぼくたちにかんしゃするのだ！！」
→その"れっとーしゅ"や"かとーせいぶつ"に『仕方なく』生かされ続けてるんだぜ、お前ら。
もう人間達の堪忍袋の緒ガ切れた時点で出遅れだけど。
「く、くちょにんげん、なにをいってるのだ？そんなこと、ゆるされるとでもおもってるのだ？」
「かとーせいぶつごときが、ずんちゃたちをころすけんりなんて、あるはずないのだああああああ！！」
→許されるし、俺達人間にはあるんだよ。
特にお前達みたいな"生態系の破壊者"を絶対に生かしておくなと、神に言われてるんでね。
>「くちょにんげん、ごみじゃないちゃ！かわいいおちびちゃんなのだ！！」
→ゴミから産まれたからゴミだろ。
それ位分かれ。
>「あ、あいつらはのろまで、ごはんさんもうまくとれないくせに、なまいきにもおいえさんをたててくらしているのだ！！くちょにんげんとなかよくしようとしたり、“もりのけんじゃ”であるぼくたちのえらさをりかいしていないところが、まさにれっとーしゅなのだ！！」
→ "井の中の蛙大海を知らず"。
･･･ズンちゃんは自然界での自分の立場と何が出来るかを分かって、
他の生き物に迷惑を掛けないように、
自分なりに慎ましくも幸せに暮らそうとしてたんだよ!!
自分の欲と野望のままに生き続ける、生態系の破壊者であるお前らの何処が
『もりのけんじゃ』だ!!笑わせるな!!
>「れっとーしゅのことなんてどうでもいいのだ！あいつらがいるとしあわせになれないから、あいつらはしんでもいいし、あいつらのきもちなんてわからないのだ！おちびちゃんかえせええええええ！！」
→化けの皮が剥がれ落ちたか。
(元からだと思う)
何処までも傲慢。何処までも自己中心。
このゴミ共を楽に死なす事すら我々の罪と言えようッ!!
最大級の苦しみを、正義の鉄槌をこの罪獣共に!!
>「ぼくたち“もりのけんじゃ”をしあわせにするためにすべてのせいぶつはうまれてくるのだ！わかったらとっととおちびちゃんかえせえええええええええええ！！」
→ふざけるなよゴミ共!!
この世界の生物全てがお前等の下僕だと思うなよぉッ!!
>「くちょにんげん！！おちびちゃん、かえすって、いっただろおおおおおおお！！」
→言ってないのだ。
(以下感想)
・胎生のクズんだ共に、キッチリ落とし前付けれてスカッとした。
・まさかの兄妹。
お兄さんの友人さん達、
種族は違うけれど、仲間の仇討ちの為に立ち上がるの、優しさと情の厚さがにじみ出てて好き。
・胎生ずんだ虫の台詞一つ一つに、
『自分達がこの世界の法であり
生態系の守護者である』感が出て、
ズンちゃんにした事と合わせて、
より欲に塗れ、醜悪な存在感を出せてて凄いのだ。
･･･さて、『元』おさずん。
懺悔の用意は済んだ、かな。
ズンちゃんを道連れにしようったってそうは行かないぞ。
例えお前がズンちゃんに何を言おうと、もうズンちゃんはお前を恐れないぞ。
(次回で完結しそう。楽しみに待ってます!!)
アイツら｢自然環境や生態系を守ってる｣とか言ってるけど、どうみても欲望のままに食い荒らしてるようにしか見えない。
そもそもアイツらが守ってる｢森や自然｣ってなんだ?一体どうやって守ってる??奴らが"生きてて"恩恵が出たことがあったか???
……奴らが守ってるのは｢傲慢に腐り果てた血筋｣と｢自分自身｣だけしかないと思うが。
コメントありがとうございます。胎生型妖精のセリフのイライラポイントを全て押さえてくれていて嬉しいです！！
「言ってないのだ」の言い回し好きですw
次回もコメント楽しみに待っております！！
FOO前半でヘイトを稼いだ後のずんだ虫の大量処刑は最高だぜ！
コメントありがとうございます。前回は、制裁の描写が不十分だったという反省があったので、今回は徹底的にやりますよ！！
びっくりするほど筆が進むんですね〜処刑描写になったら！
次回も読んでいただけたら嬉しいです！！