img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:ドルイド・ミステール ブラッドハンター

「…今日はこのくらいでしょうか」

緑色のローブを纏い、鹿のような耳と尻尾を持つ魔法少女、ドルイド・ミステールは一人呟いた。
彼女が行っていたのは街の花壇の手入れ。マジカルキャンディー集めの一環として日課にしている行為だった。
今時花壇なんて誰も見ていないのではないかという不安もあったが、キャンディーはちゃんと増えていた。
きっと誰かがこの花に癒されているのだろうと思うと喜ばずにはいられなかった。
ずっと病床にいた彼女は、魔法少女となり誰かの役に立てることをとても嬉しく思っていた。

「はぁ…」

しかし彼女の表情は暗い。まるで今宵の空のように曇っていた。原因は先日から始まってしまった魔法少女同士の争いである。

「私は魔法少女として…誰かの役に立てればそれで良かったのに…」

すでにいくつかの魔法少女のチームが出来上がっているらしく、これから争いは激化していくことだろう。
魔法少女としての経験が浅く、戦いなどしたこともない彼女が争いに巻き込まれた場合にどうなるかは明白だった。

ミステールはしばらくその場にしゃがみ込み、夜風に揺れる花を見つめていたが、ついに決意を固めたように立ち上がった。

「やはり争いなど、間違っています!思いを伝えればわかってくださる方もきっといるはずです!」

今の状況で他の魔法少女に会うのには勇気がいるが、だからといってこのまま何もできないのは嫌だった。

「じっとしていても始まりません。もう何もできない以前の私ではないのです!」

とにかく自分と同じように争いを好まなそうな魔法少女に話しに行こう、誰が話を聞いてくれるだろうかと思案するミステールだったが、

「だ、誰!?」

背後に気配を感じ振り返った。



いつから居たのだろうか、暗闇の中に一人の魔法少女が立っていた。
彼女の名はブラッドハンター。黒いロングコートに羽のような装飾の付いた帽子。マスクに覆われた顔からは目だけがこちらを見つめている。

感情の読めない視線に戸惑っていると、その魔法少女はこちらに向かって一礼をしてきた。
予想していなかったその動作に不意を突かれたミステールは、慌てて一礼を返す。
魔法少女のチャットルームで見かけたことがあったが、正直その見た目と名前から怖いイメージを抱いていた。
しかし、

(礼儀正しい方なのですね…。見た目で判断したことを反省しなくては)

敵意はないと判断したミステールは、警戒を解き話しかける。先ほどの決意を実行する良い機会だ。

「あ、あの…ブラッドハンターさん…ですよね?私のこと、ご存じでしょうか?ドルイド・ミステールと申します」

ブラッドハンターからの返事はなく、彼女はただこちらを見つめている。それでもミステールは精一杯自分の思いを伝えようとする。

「もしかして、さっきの独り言をお聞きしていたでしょうか…?あ、あの!私思うのです!人々の助けとなる魔法少女同士で争うなど…?」

ひらり、と何かがミステールの言葉を遮るかのように飛んできた。
ブラッドハンターがこちらに飛ばしたそれはメモのような古い紙切れであり、そこには一文、このように書かれていた。


"狩りの時間だ"


首筋に寒気が走る。ミステールは感じたそれを否定する回答を乞うかのようにブラッドハンターに問いかける。

「あの!これは一体・・・!?」

顔を上げたミステールは、いつの間にかブラッドハンターの右手に握られていた"それ"を見て言葉を失った。
歪曲した柄に大きな刃を持つ"それ"は、鉈と言うべきか。刃の背に当たる部分はノコギリ状になっており、余計に恐怖を掻き立てられる。
その凶器と、狩りというワードから、ミステールが想像することのできる自身の運命はたった一つだった。



暗闇に少女の悲鳴が響く。夜はまだ終わらない。


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