img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:ドルイド・ミステール ブラッドハンター

「はぁ…はぁ…!」

暗闇を駆けるドルイド・ミステール。
魔法少女となり超常の力を得た彼女であるが、今の彼女は狩人に追われる哀れな獣だった。
全力でブラッドハンターから逃げようとするも、二者の距離は全く開かない。
一般人を遥かに凌駕する身体能力を持つ魔法少女だが、魔法少女の間にも格差は存在する。
後ろを見るとブラッドハンターは息ひとつ切らしていないようだった。


「こうなったら…!」

もはや振り切ることは不可能と判断したミステールは意を決して狩人に向き合うと、その手に持つ杖に力を込める。

「悪く思わないでください…!」

杖に絡まる蔦が淡い緑色の光に包まれ、ブラッドハンター目がけて急激に成長を始める。
触れた植物を自由に操ることのできるドルイド・ミステールの魔法の力だ。
彼女は伸ばした蔦で相手を拘束しようと試みる。
しかし、ブラッドハンターが鉈を二度、三度振るうと、蔦は全て切り払われてしまった。

「っ…!だったら…!」

ミステールは彼女のそばにある街路樹に駆け寄り手を触れる。

「お願い…力を貸して…!」

次の瞬間、蠢く木の根がアスファルトを割り出現した。
街を破壊することには気が引けたが、今はそのようなことを考えている場合ではない。
魔法の力で強靭に成長した根は、簡単に切り落とすことはできないだろう。
さらに先ほどの蔦よりも本数を増やし、確実に相手を捕らえようとする。

だが──

「嘘…!?」

ブラッドハンターは右へ、左へ、鋭くステップを踏み、迫りくる木の根をすり抜けるように回避する。
必死で根を操作するミステールだが、狩人の動きを捕らえることができない。
目前に迫るブラッドハンターに彼女はついに悲鳴を上げる。

「いやああっ!こないでぇっ!!」

闇雲に木の根を暴れさせるミステール。
その中の一本がブラッドハンターの目がけて打ち下ろされるが、
彼女はこれを鉈で弾き、軌道を逸らす。
さらに地面にぶつかり一瞬動きが止まった木の根を踏み台に跳躍する。

空中から自分を見下ろすブラッドハンターと視線が合う。
恐怖に体が凍り付く。
一切の感情を宿していないかのようなその瞳は、今まさに振り下ろされようとする刃よりも恐ろしく思えた。


ガキン!

ブラッドハンターの空中からの一撃が地面を叩く。
ミステールはほとんど倒れこむような形で攻撃を躱していた。
あと一瞬動くのが遅ければ間違いなく真っ二つになっていたところだったが、
ギリギリで動くことができたのは恐怖より生への執着が勝ったからだろうか。
彼女は足をもつれさせながらも必死で逃げようとする。

(魔法少女になって…外に出ることが出来て…誰かの役に立てるようになって…!)

まだまだやりたいことは沢山ある。
だから、魔法少女たちの争いも止めたいと願った。
それは望みすぎだったというのか。

「私はまだ死にたくない…!死にたくな──ぐうっ!?」

背中一面に走る衝撃に倒れるミステール。
追い詰めた獲物をみすみす逃がすほど狩人は甘くない。
ブラッドハンターがどこからか取り出したもう一つの武器、"獣狩りの散弾銃"から放たれた水銀弾がミステールの背を抉り、真っ赤に染めた。


ブラッドハンターは仕留めた獲物のそばに歩み寄ると膝をつき、流れ出た血に手を触れる。
触れた血を自分の力に変えるブラッドハンターの魔法により、血は紅い光となり、彼女の体へ吸い込まれていった。
自身の血を奪われるということに得も言われぬ恐怖と嫌悪感を感じるミステールだが、もはや逃げる力は残っていない。

「誰か…助けて…」
完全に心の折れたミステールは弱々しく呟く。
その声はとうてい誰かの耳に届くようなものではなかったが──

バシュン!!

彼女を救うかのように、1発の銃弾が風を切り飛来した。
ブラッドハンターの脳天を正確に撃ち抜く弾道。
止めの一撃振り下ろそうとする彼女だったが、バックステップでその場を離れ回避する。


「悲鳴を聞いて来てみれば…随分と物騒ですね」

限界を迎え、途切れつつある意識の中でミステールは声の方向に目を向ける。

(一体…誰が…)

彼女の目に映ったのは、雲の切れ間から射す月明かりに照らされて浮かびあがる、赤いシルエットだった。


ブーナッドと赤い頭巾に身を包む彼女もまた、この街の魔法少女である。名はウルフファング。
その名を表すように、狼の耳が赤頭巾の上で揺れていた。

ガスライフルの銃口を向け、狼は狩人に告げる。


「貴方にも、狩られる側の気持ちというものを教えてあげましょう」

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます