img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:ドルイド・ミステール ブラッドハンター ウルフファング

ウルフファングは銃を構えたまま、相手を見据える。
黒いロングコートの魔法少女、ブラッドハンター。
他の魔法少女のことをある程度調べ上げているウルフファングだったが、彼女については何の情報も得られていなかった。
直接目にしたのは今夜が初めて、それも他の魔法少女を襲っている最中となれば、危険人物と判定するのも当然だろう。
しかしそれだけではなく、野性の感、とでも言うべきか、ウルフファングの本能は一目見た時から彼女を危険だと告げていた。

ブラッドハンターのそばに倒れているのはドルイド・ミステール。
世の為人の為に尽くそうとする、本来の魔法少女の典型というのがウルフファングの評価だった。
自分から他者へ積極的に絡みには行かず、争いを好まないタイプであり、自分の害にはなり得ないと判断したためそれ以上のことは調べてはいない。
ただ、今の彼女は魔法少女の姿を失っている。
背丈は魔法少女の時と変わらないが、ロングワンピースのネグリジェに包まれた彼女の体は握ると折れてしまいそうなほど細い。
また肌は病的に白く、夜の闇に酷く浮いて見えた。
遠目から気絶しているだけで死んではいないことを確認しているが、明らかに健康体とは言えない彼女をこのまま放置した場合どうなるかはわからない。

(これは…あまり時間を掛けられないかもしれませんね)

ウルフファングはミステールの救出よりブラッドハンターの始末を優先し、ギリギリのところまで見に徹していた。
狩人が獲物に止めを刺す瞬間の隙を狙い確実に仕留める。仕留めきれなかった場合でも両者の戦闘から相手の能力を知ることが出来る。
ミステールには悪いが効率を重視する彼女の立てた策であった。
無論ミステールを殺されるつもりはなかったが、あの姿は想定外だ。

ブラッドハンターが自分への対処よりミステールの止めを優先する懸念もあったが、相手はあっさりと彼女に背を向け、こちらに駆け出した。
まるで殺されるだけの女鹿より、牙を剝く狼の方が獲物として相応しいと言わんばかりに。


ウルフファングはガスライフルのトリガーを引く。
1発目。放たれた弾丸はブラッドハンターを正確に貫くコースだったが、ステップにより回避された。
2発目。これも避けられた。ミステールとの戦闘でも見せたその動きはこちらの攻撃を透過している印象さえ受ける。
3発目の銃撃が回避されたところでウルフファングは得物をライフルから戟へ持ち替える。
先ほどの不意打ちすら避けられたのだ。やはり面と向かっての銃撃は無意味か。

「はっ!!」

短い掛け声とともに戟を真横に薙ぐ。
しかし身を屈めたブラッドハンターには当たらず空を切る。
続いて打ち下ろす一撃。ブラッドハンターの姿が視界から消え、戟が地面を割った。
相手は斜め前方へのステップで回避しつつ自分の側面を取っている。
速いが追いきれないほどではない。体を回転させながら戟を振り上げ、振り下ろされる鉈を打つ。
両者の得物がぶつかり火花を散らし、押し負けたブラッドハンターが弾かれ後退する。


ブラッドハンターの身体能力は高い。特に俊敏性はかなりのものだ。
しかしウルフファングは最高クラスの身体能力を彼女の魔法によりさらに強化している。

(パワーもスピードもこちらの方が上のはず…)

さらに何度か斬り結ぶも、未だ両者にダメージはない。
身体能力で勝るこちらと互角に渡り合える理由としては───

(こいつには恐怖心というものが無いのですか…!?)

ブラッドハンターはこちらの攻撃を全て紙一重のところで躱していた。
ウルフファングの力で振るわれる戟の一撃は、魔法少女といえども当たれば致命傷は免れない。
にもかかわらず最小限の動きでこちらの攻撃を避け、攻めに転じて来る。
一歩も引くことなく距離を詰めてくるのも、リーチの長い戟を振るうウルフファングが攻めあぐねている理由の一つだった。

ブラッドハンターはウルフファングの繰り出した突きを上体をわずかに反らすことで躱し、さらに距離を詰める。
急いで戟を引き戻すウルフファングはそこで訝しむ。
ブラッドハンターの鉈もかなりの大きさのため、この間合いでは攻撃し辛いはず。だが、

ガシャン!

と、彼女の疑問に答えるかのようにブラッドハンターの鉈が変形した。
刃が柄の境界部分で折りたたまれ、ノコギリの部分が前方に来る形となる。

(これは不味い…!)

リーチが半分になったノコギリはその分取り回しやすく、振りが速い。
素早い連撃を戟の柄で受け止めるも、徐々に対応しきれず腕や肩口の皮肉が裂かれる。

(とにかく一度距離を…!)

後方に大きく跳躍し距離を離そうとするウルフファングだったが、視界に相手の銃が動くのを捉えた。
形状からは判別し難いが、あれは散弾銃。一度ミステールに撃つのを見ている。
前方へ広がる散弾に対し後方へ避けるのは悪手だ。
後ろに移動しかけた体重を強引に戻し、ブラッドハンターとすれ違うように前方へ飛び込む。
散弾銃が火を噴き、水銀の銃弾が一瞬前まで彼女の居た空間を叩く。


戟で戦うのは相性が悪い。ならば素手で戦う。
ウルフファングは拳法を会得しているため素手でも十分に戦闘が可能だ。
刃物を持つ相手に挑むには少々危険だが、相手が紙一重で避けるならば自分も同じことをすればいい。
前転で飛び込みの衝撃を殺し、反転。低い体勢から一気に飛び掛かり先制攻撃を加える。
だが反転した彼女の目の前に飛び込んだのは───

(なっ…!?火炎瓶…!!)

ブラッドハンターはウルフファングの回避行動を読んでいた。
炎に怯んだ狼をノコギリで引き裂き止めを刺す。
これで狩りの決着を付けるつもりだった。
火炎瓶の割れる乾いた音が響く。

「…!!」

次の瞬間、炎に包まれていたのはブラッドハンターの方だった。
ウルフファングは投げられた火炎瓶を掴み取り、ブラッドハンターへ投げ返していた。
彼女の身体能力と器用さの成せる技だ。
完全に不意を突かれたブラッドハンターは驚愕し必死で炎を振り払う。
それは彼女が初めて見せた人間らしい感情だった。
そして光と熱に歪む視界の中で狩人が目にしたのは、

「…テメェはここで潰す!!」

銀色の毛に包まれた獣の強靭な腕と、自分の肉を切り裂く鋭い爪だった。


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