img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:ヒトミ-2 リトルリトル

 今日は久しぶりの頼まれ仕事だ。
普段は自分から魔法少女の皆の巡回に付いてお手伝いをしたりするが
名指しで呼ばれて頼まれるというのは久しぶりだ。
 言っちゃなんだがワタシの魔法は魔法少女としてのお仕事ではあまり役に立たない。
どうしようもないくらいの物理特化。災害救助なら大活躍出来ると思うが平和な街の中で披露出来る事はあまり無い。
 そんなわけで久しぶりの頼まれ事、お披露目の場。張り切って夜の街に繰り出した。

 街外れで合流した急な依頼者、最近特に仲良くしているヒトミ-2さん。
他にも誰かいるかと思ったがそういうわけでもないらしい。
疑問をそのまま口に出すと
「アンタ一人にしか声はかけてない、急だから他を呼ぶ余裕もその必要も無かったしな」とのこと。
 目的地はさらに郊外にあるらしい、詳しい場所を聞くと結構な距離がある。
 移動速度だけなら触腕6本を使って飛び跳ねるワタシの方が遥かに早い。なのでヒトミさんにお姫様抱っこでの移動を進言するも
「…そんな事出来るか」
 と、素気無く却下。さっさと自分の足で跳んで行ってしまう。つれない人、シャイなんだろう。
 跳ぶ直前に「…女にお姫様抱っこなんてされたら一生の恥だ」と微かに呟いたのが聞こえてきた。
男性なら良いってことかな?
シャイじゃなくてお姫様願望持ちだったのか、かわいい。

 目的地への移動の途中で依頼の詳細を聞いた。
簡単に言えば土木工事だ。
 探し物が地面の下にあるのだが相当深い上にちょっと厄介な土地らしく自分だけではどれだけの時間がかかるかわからないとのこと。
 なるほど、それはワタシが適任だ。
ちょっとした重機よりはよっぽど役に立つ。
 何が埋まってるのかも聞いた。ヒトミさんが絶賛探索中の行方不明少女に関連する物か女性そのもの、らしい。
 人助けの一環として今回は家出少女の探索を引き受けたはいいが昨夜は地面に阻まれ退散する事になったとのこと。
 なるほど、それは張り切らなくてはいけない。
ヒトミさんが大切な誰かを探しているというのは彼女の周りの魔法少女なら何となく気づいている。
彼女の魔法で直接探し出せないのならそれはおそらく誰かそのものじゃなくてその誰かに関する何かなんだろうとも。
 行方不明者の探索ともなればヒトミさんの気合も入るという物だろう。ワタシも頑張らなくては。

 目的の場所に到着する。
 郊外にある竹林だ、私も何度か来たことがある。
ちょうどいい季節に来た時はタケノコを拝借したこともある。
魔法少女にあるまじき盗難行為かもしれないがこんな誰も来ないような所に生えている食べごろのタケノコが
刻一刻と食べごろから外れていく有様を見過ごすわけにはいかなかった。美味しかったです。

 この下だ。と彼女が指すは竹林のど真ん中。
なるほどなるほど、ここは魔法少女でも難しい。
 多少場が荒れているのは昨夜彼女が挑戦してみた結果なのだろう。
だが幾ら魔法少女の膂力があっても道具も無しに竹が過密に入り組んだ地面を掘るのは無理だろう。
というか地面が見えない、完全に竹の密集地帯だ。こんな所にどうやって埋めたんだろう?
 疑問を口に出すもヒトミさんは肩を竦めるだけ、そりゃそうだ。

 一先ず疑問は置いて行動を開始する。
6本の触腕を伸ばし目標の地面を覆っている竹ごとえぐり取る。
根は硬いがワタシの触腕を阻めるほどではない。すごいぞ触腕、褒めてつかわす。
 そのまま地面をえぐっては投げ、えぐっては投げ。すごい勢いで掘り進める。
目標地点はざっと10m下らしい。
 誰がなんでそんな所に埋めたんだ、どうやって?
腕を組んで首を捻り考えるポーズをする。疑問が尽きないが触腕の動きは止めない。すごいぞ触腕、えらい。

 「ああ、それくらいでいい」
 一心に掘り進めていたらヒトミさんからの静止があったので掘るのを止める。
そこは直径1m、深さは10mのちょっとした井戸みたいな穴が出来上がっていた。
穴を広げながらならもうちょっと早く掘れたのだがさすがに竹林を盛大に荒らすのはどうだろう?
というヒトミさんとワタシの共通見解があったので穴の大きさは最小限に留めて作業をした。
 穴の底に伸ばしていた触腕を戻し、ヒトミさんに場所を譲ると彼女は躊躇なく穴の底に飛び降りた。
 下を覗いてみると地下水に塗れた泥に汚れる事も構わず丁寧に地面をかき分ける彼女の姿があった。

 そうして作業しているヒトミさんをぼーっと眺めつつ、ヒトミさんの為に触腕を扇風機のように回して空気を送りながら思考をまとめる。

 ヒトミさんの探索物は家出少女らしい。
失踪少女ではなく家出少女と呼ばれるからには消えたのはつい最近なんだろう。
でもこの地面にはそんな最近穴を掘ったような跡は無い。
いくら竹の成長が早いと言っても一年程度ではあんな立派に埋め尽くさないだろう。
 それにこの深さ、死体を隠す為と言ってもいくらなんでも尋常ではない。
人の手で掘れる深さを越えている。それこそ魔法の力でも借りないと駄目だろう。
 …うん? 魔法?

 何かひっかかる部分を感じたがそれよりもヒトミさんが何かを見つけたらしく動きが変わった。
彼女が掘っていた地面には白だか黄色だかの破片がいっぱい混じった泥が見えていた。
その破片の一つを拾い上げヒトミさんが集中する。魔法を使ってるのだろう。
そしていきなりこちらを見上げる、驚愕に見開いた目で。

 ああ、なるほど。

 確かにこんな仕業は魔法でも使わないと無理だ。
触腕一本分程度の最低限の大きさの穴を斜めに掘り進めて埋める。
そうすれば直上部分はまっさらな地面になる。
それどころか埋めた本人ですらどこの真下なのかとかよくわからないだろう。

 ああ、なるほど。

 ヒトミさんの魔法は元がわかるとか所有者がわかるとかそういうものだったはずだ。
確かにアレは元は人かもしれないが、丁寧に捌かれダシをとられ、砕かれた骨。
ああまでされたらもはや加工品だ。
その加工主もわかるという事なんだろう。

 ヒトミさんはまだ信じきれていないようだ。
大丈夫、ヒトミさんの魔法は正確だよ、私が保証する。

 でもおかしいな、みんながいらないと言ってるお肉を選んだはずなのに。誰かに探されてるだなんて思いもしなかった。
 完全に想定外だ。びっくり。

 でもごめんなさい。
 全くの偶発的状況。だからあやまる、ごめんなさい。
 小さい出口、穴の底との高低差、絶対的なリーチの差。
 ついでに言えばさっきまで深い穴底に空気を供給していたワタシの触腕はその動きを止めているので酸素もこれから薄くなる。
 地の利は全てワタシが得てしまっている。

 ワタシが保証する、ヒトミさんはソコで終わる。

 でも良かった、彼女は魔法少女の中で一番仲良しのお友達。きっと美味しいはずだ。

 ワタシと私で保証する。ヒトミ-2さんはとても美味しい料理になる。

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