img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:陰陽魔装少女りおたん ロータスパック 以下名前のみの登場:グロスレッドスプライト ソード・オブ・ケイシー レヴナント リトルリトル "蜂輝星"綺羅ビィ テラーメグ



 ……私はまだここに居れるのだろうか。



 鏡の中に映った私の顔は、まだ十分やれると言っている。

 いや、どうだろうか。このことを他の人に話したってどうにかなることではないことは今までの経験上わかっていることだ。

 一人で抱え込むのはつらい。でも、これは言ったって誰がどうしてくれるわけでもない。結局のところ一人で抱え込むしかないのだ。

 私は、今生きているこの世界が大好きだ。もう、失いたくない。




 私の名前は、蘆屋梨桜。祖先にあたる人物には、蘆屋道満、一般的には道摩法師と呼ばれている者がいる。要は家はそういう陰陽道の家系らしい。

 我が家は母も祖父もその研究をしている。母に至っては、魔法少女となって陰陽道と魔法の混合化を図っているらしく、私の前にしばしば姿を現すマガツヒという人形もその一つらしい。





 現在、私はこの世界で二百六十七回目の生を受けている。



 私は、死ぬことによって魂が別の世界へそのまま移動する、そういう呪いをかけられている。

 状況を簡単に説明すると、私は死に戻るループ世界に閉じ込められている。私が死ぬことで私が魔法少女になった直後の別の世界へ魂が移動してしまう。

 しかし、全ての世界が同じ流れであるとは限らない。

 時に背景、時に人間関係など、その世界によって様々である。ある世界では仲間だった少女と、ある世界では殺し合っている。

 私も何度もそれに惑わされ殺された。




 グロスレッドスプライトに徹底的に甚振られたこともあった。鎖に繋がれ、何度も地面に叩きつけられ顔を潰された。

 ケイシーに身体を呑みこまれたこともあった。暴走状態で膨張する肉塊から逃れられず体を潰された。

 レヴナントに体を切り刻まれたこともあった。おそらく私の死体はゾンビ化されたのだろうが、私はその肉体から意識は離れていた。

 リトルリトルに首を折られたこともあった。彼女の性癖からいって私の死体は丁重に扱われたのだろうか。



 逆もまた然りである。殺されないために今でいう所の悪党につき、生き永らえようと考えたこともあった。

 綺羅ビィに師事したこともあった。最期には裏切られ殺されこそしたが、それまでは私のことを思いやってくれた面倒見のいい人だった、と思う。

 テラーメグ率いる魔法少女の暴力団らしき派閥についたこともあった。くだらない抗争で私は命を落としたが、最期の最期までよく『利用』してもらいそれなりに優遇してもらったんじゃないかと思う。



 
 私が死ねば世界が終わるとかそういうわけでもない。私一人がいなくなっても世界は終わりはしないのだ。

 私だけが、その世界から追い出されるだけ。

 だから、誰に何を相談しようとも全くの無意味だ。




 呪いを解く条件は知っている。

 私が子を成し、生まれた時に子に呪印を入れ、その子の六歳の誕生日に呪印を完全に定着させることだ。

 これで私の魂は、その世界に定着して呪いは完全に子供に移ることになる。

 それをしなければ例え私が何年生き永らえようと全て無駄になるのだ。

 子を宿して一年程度、そして二度の呪印の定着を済ませるのに六年、他の魔法少女はそんな長い間私を生かしておいてくれるはずもなかった。




 死には慣れない。

 例え何回経験しようとも、だ。

 あの自分の時間が静止していくような感覚も、暗闇の中に放り込まれるような感覚も、全然慣れない。

 いっそ狂ってしまえればどんなに楽なんだろうと思う。でも狂ったところで終わりは来ない。

 結局は、その世界で流されるだけ流されて追い出される運命なんだ。





 鏡を見る。

 酷い顔をしている。

 これまで生きてきて作りあげた、破天荒で自分勝手な我儘娘のそれではない。

 本当の自分を半分と、虚構に塗り固められた自分を半分と、混ざり合った道化の姿ではない。

 瞳の色は死んでいるようで、顔も小学生とは思えないほど引きつった歪んだ笑みを浮かべている。これではいけない。

 頬を二回叩き、何とか自分を奮い立たせる。

 鏡には、いつもの馬鹿で能天気で考えなしの小生意気な小学生の姿がある。

 これでいい。



 これで、いいんだ。








「りおたん大丈夫? お手洗い行くって言ってから全然戻ってこないから心配で……」

「あー、いえ! 全然大丈夫です! ローちゃん先輩に迷惑かけるほどじゃないですし!!」

「……そう? なんかちょっと怖い顔してるよ?」

「ふっふん♪ 乙女というものはちょっとくらいミステリアスな一面を隠し持ってなきゃいかんのですよ……」

「……ごめんちょっと私にはよくわかんないや」

「いずれわかる時が来ようというもんですよ……」

「何それ、りおたん私より年下でしょ?んもー」






 ああ、なんてこんなに――






 ――死にたくない。



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