img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:クレインダンス ウルフファング 四色八代子 猫ノ鈴音(ねこのすずね) ドリクラ

16/12/10(土)03:01:30 No.395678509 +
35.ウルフファング 36.八代子 37.ふめい 38.ぷっしーきゃっつ 39.ミクストメディア 40.クレインダンス 41.ノンフェイス 42.猫ノ鈴音 43.アイリス 44.美王

16/12/10(土)05:15:59 No.395685752 +
うる穴扱いされてるのを羨ましく思ってるマゾな子ぽん
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【首輪とリボン】

今回の組み分けで初めて同じ組となった魔法少女、その一人がウルフファングだった。
前から度々名前と共に噂は耳にしていたがそれに違わぬ美麗な容姿で、私は銀色の髪をしており最近では内心ソレを自慢に思う事も増えたのだが
蒼い夜に浮かぶ月、その光を降ろしてきたような彼女の銀髪を見た時には白旗を上げた。
名の知られた魔法少女が多く集った組み合わせだけに顔見知りも多かったようで、交友の広さにはさすがこの街で長く魔法少女をしている人だと感心したものだ。

…もっともこの"名の知られた"と言うのには当然悪名なども含まれており、色欲方面においてその名を欲しいままにする彼女、ぷっしーきゃっつも今回の組に在籍していた。
彼女はかつて私が一度思い違いによる襲撃を仕掛け、見事にというか無様にというか粘液まみれの敗北を喫した相手である。
以来あの時の事を思い出してしまい、毛布の中で体を丸めて疼きに耐え過ごした夜も何度かあった。
ウルフファング自身から話を聞いてみるとケモ耳魔法少女繋がりからか彼女も度々ぷっしーの被害に遭っていたそうで、
その被害件数は私の比ではなく歴戦の勇士を見る面持ちで途切れる事なく被害を訴える彼女を眺めた。

…実は先程の私が耳にしたウルフファングの噂というのにはそういった被害の話も含まれており
噂とセットで流れてくる彼女のアダ名がこれまたひどく、盛りのついたメス犬などはまだいい方で売る婦ファックだの淫魔悦狼だの、
とうとうこの前はうるあなDXといった物まで耳に届いて今や彼女の不名誉なアダ名の数は両手の指で数えて尚余るほどになっている。
おっとりとした声音を震わせるほどに頬を朱に染め熱を込めて許すまじぷっしーきゃっつと彼女は吼え猛る。

私もその事については深く頷いていた…が、どうにも彼女の籠める熱には憤激以外のモノが混じっている気がしてならない。
狼を逆に喰らって耳を生やした赤ずきんといった容姿の彼女だがその特徴的な狼耳が話す時にぴこぴこと揺れているのだ。少しもふもふしたい。
恐らく彼女は無自覚なのだろう、それだけに自分でも止められないのかもしれない。
ひょっとしたらそういった被害をどこか…噂通りに悦んでいるのだろうか?そういえば何度か顔を合わせた時に思い当たる節が無くは無かった。
これだけで疑いを掛けるのもどうかと思うが彼女が一度首輪をしてきた事があった。ただの首輪ではない、飼い犬が着けているようなデザインのモノをだ。

これチョーカーであればお洒落の一環だし魔法少女の衣装程の耐久性は無いものの気分を変えてみたいと変身後に装飾品を身につけるのは分からないでもない。
だがアレは私の見間違いでなければどう見ても人より庭先に小屋を構えたペットの犬が首に巻きリードで繋がれる類いのモノだった。
彼女はその大きな頭巾で首元まで覆って隠せていると思って着けていたようだが、どうしてもちらりと覗く時があり皆それを指摘するかしまいか悩んでいた。
今日は着けていないがあれが彼女の趣味だとするなら、やはりそれなりに蟠ったものを抱えているのではないだろうか?

私の余計な推測を尻目にウルフファングは語り終え、今度はすき焼きでもつつきましょうとお互いに言葉を交わして今日は別れた。



その帰り道で私はウルフファングの首輪の事を考えていた。犬の首輪、ペット、飼育、庇護、隷従、依存…。その様な言葉ばかりが連想される。
でも、きっとこれは彼女にかこつけた私自身の欲望なのだろう。



昔からサイボーグやアンドロイドが好きだった。金属の装甲で覆われた人型機械。特に人の命令を従順に聞き従う姿に憧れた。
…いや、今にして思えばそれは憧れなどではなかったのだろう。きっと私が抱いていたのはもっと邪な感情だった。
私もああなりたい。
日常では絶対に叶わないそんな望みを抱えていた折に出会ったのが"魔法少女育成計画"というアプリだった。
魔法少女と銘打ちながらそこで作成できるアバターは豊富なパーツ群からおよそらしくない見た目の魔法少女、それこそサイボーグやアンドロイドじみたものも作成できるとあって
完全無課金という謳い文句も後押しし、私は飽きたらログイン勢にでもなればいいだろうくらいの気持ちでゲームを始めた。

創り上げたのは自分の好むサイボーグの理想像、ライトブルーのエネルギーラインが走る白銀の装甲で首から下を覆い同じく銀色の髪と緋色の目をした機械の少女。
名前は本名の鶴から取ってクレインダンスとした。ダンスの部分は私自身踊りが得意という訳ではないが気分で付け足したものだ。
思っていた以上に苦心かつ会心の作となったせいか当初の予想に反してこのゲームに私はのめり込んでいった。
おかげで眼鏡をかけているのにまた視力が落ちた気がして眼科での視力検査を受けるのが億劫になってしまった。
そうやっていつも通りに独り暮らしの一室で毛布に包まりながらゲームを進めていた時だ。あの白黒の饅頭のようなマスコットが現れたのは。

『おめでとうぽん!あなたは本物の魔法少女に選ばれたぽん!!』

攻略情報を載せたサイトを巡る内に目に飛び込んできた都市伝説、このゲームを遊んでいると本物の魔法少女に選ばれるという噂話が脳裏に浮かんだ。
あまりに非常識な状況ではあったが、だからこそ本当になれたらいいなという希望と本当になれるのではという期待を五分五分で含んで
きらきらぽんぽんと鱗粉を振りまき捲し立てる大福餅の言葉に従い―――私は、城兼鶴は魔法少女・クレインダンスとなった。

魔法少女になってまず初めにした事と言えば手持ちの鏡で己の姿を確認する事だった。当然だろう。
このアバターの容姿には自分の理想を込めたものだ、それに自身が成れたと理解した時どれ程嬉しかったか。
絶対に現実では為し得ないと思っていた夢がここに叶った、ならばいっそこの夢に耽溺するのも悪くはないと思った。

あとは他の新人魔法少女と同じく「」ァヴの振り分けによって選ばれた組に所属し魔法少女としての活動の心得を先達より学んだ。
とはいえ魔法少女としての活動といってもこの広いimg街ではほぼ無法地帯と化しており、組み分けされていても各々が自由に行動し
当然の帰結として魔法少女同士の衝突や戦闘が起こる事も珍しくは無かった。一度は街の四分の三に被害が広がる大惨事になったほどだ。
私の魔法は機械を取り込みその能力を行使できるというものであったため、自衛の意味も含めて反社会勢力の武器庫などを襲撃、銃火器などをこの身にストックしてきた。
今から考えればそういった集団と手を組む魔法少女がいないとも限らず己の思慮の足らなさに気付いた時は震えたものだ。
変身前の城兼鶴であれば絶対に取らないであろう大胆な行い、魔法少女となった高揚感がさせるものか。
武器を取り込み己が兵器として磨かれていく事に快感すら覚えていた。


私はより秘めていた夢に邁進していった。ソレは誰かに機械、道具として使われるコト。
魔法少女になる前は諦めていた、だがこうしてその夢を叶える力と状況が今は揃っている。


身を置いた組で私を兵器として扱ってくれる魔法少女に身を差し出してきた。
何の事は無い、従いながらその相手を私は自分の夢を形作るパーツとして利用してもいたのだ。
だがそうして自分は兵器、戦闘用のサイボーグだと言い聞かせて演じている時は堪らなく楽しかった。
兵器は自分で主を定めない。だから一定期間ごとに行われる組み分けでシャッフルされる度に一期一会で魔法少女に仕え、私は兵器としての時間を謳歌していた。
そんな日々の中で出会ったのだ、彼女に―――道化師姿の魔法少女、ドリームクラウンに。

初めての印象はいい子だな、というモノだった。自身が明るく周りにもその笑顔を振りまく、私のような者とは全く違う、魔法少女らしい魔法少女。
ただ私を道具として使わない人間だろうなとあまり意識はしていなかった、というよりも彼女の影響かその時の組自体が和気藹々としていて
そもそもこの身が使われるような事態にならなかったのも大きかったのだろう。ただ当時の空気は決して嫌いではなく私自身楽しんでいた事は否定しない。
彼女が発案してメンバーが揃ってどこかへ出掛ける。魔法少女活動というよりはただ友人同士連れ立って遊びに行くような一時。いや、実際友人と言っていい関係だった。
その中で私が己に定めていた無表情系サイボーグという仮面は徐々に剥がされていった。どうにも彼女たちの前では素が出てしまうらしく
笑みを溢していた事を指摘された時はそっぽを向いて隠そうとしてしまった。が、正直に言えばとても嬉しかった。ただ私に幼稚な気恥ずかしさがあっただけだ。
そうして組の皆で度々様々なレジャー施設や観光地に足を運んでいたがとある遊園地に遊びに行った時だ。
珍しく彼女が涙を溢した。
私を含めて組の全員が慌て、ドリクラの事を心配していた。一しきり泣いた後にいつもの様な笑顔を見せてくれた為、皆安堵していたが私の胸には泣いている彼女の姿が残った。
感極まって流すモノではない、もっと心の奥に蟠る何かを絞り出すかの様な落涙。
明るい笑顔こそらしいのにその彼女が泣き顔でいるのが居た堪れなかった。あんな涙は二度と見たくない。
思えばその時からドリクラの事が本当に気になっていったのかもしれない。

以後組替えの度に離れ離れになったり、再び同じ組になったりと何度も彼女と出会いを重ねた。
その中で少しずつ窺い知れた事だが彼女の過去に禍根のあるものらしい。私では解決できないし介入すべきでもない問題だろうとも知れた。
ただそれでも自分はそういう部分で彼女の力になれないのだろうなと思うと己がひどくもどかしく恨めしかった。

せめて自分なりに彼女を助けられないかと護衛役に兵器として使ってくれないかと水を向けてみたことがある。
危険の多いこの街でお世辞にも彼女の魔法は戦闘向きではない、それならいっそこちらが荒事を引き受ければいいのではないかと提案した。
今思えば少しでも傍に居たいという打算も含まれていたのかもしれない。
けれども彼女は笑顔を少し困ったようにして、それでもこちらを真っ直ぐに見据えて
「あたしはクレクレを兵器なんかにさせないよ、だって大切な友達だから」
そう言い切った。私はそれ以上何も言えずに押し黙ってしまった。ただ友達と呼んでもらえた事が嬉しかった。


私自身何故こんなにも彼女に入れ込むのか分からない、ひょっとしたらこれが惚れた弱みというモノだろうか?
まさか魔法少女になってからこのような想いを抱くとは、しかも同性相手に。いや、魔法少女同士なのだから必然同性が相手になるのだが。


帰り道の半ばで一度スラスターを止めて降り立ち、銀の左手で今も髪を結ぶ藍色のリボンをそっと撫でてみる。
イルミネーションの夜に贈られて、今では何より大切にしている物。
これを持っているとドリクラとの絆の象徴のように思えて自然と顔がほころんでしまう。
だが一度何を大切にすべきかを見誤り、愚かにも私自身がこのリボンで彼女を哀しませかけた事があった。それを止めて気付かせてくれた二人、四色八代子と猫ノ鈴音には恩義がある。
その時の組以来二人と親交があり、能力柄鉄火場に巻き込まれやすい八代子に何かあれば助力するつもりだと約束した。
鈴音の方は彼女もドリクラと友人らしく私の知らない一面を聞けて、その話の中での猫の大群で包むなど私では出来ない喜ばせ方で羨ましかった。
そんな複雑ではあるが心地好い思い出の籠っている大事なリボンだ。


そのリボンを丁寧に髪から解き、両の手に置いてじっと見つめる。
「ドリームクラウン…私の、マスター。」
ぽつりと一人、口に出してみる。彼女の前では絶対に口に出来ないこの言葉。そして出来たとしても笑って否定されるであろう言葉。
身も心も委ねて彼女のモノとして隷従し使い潰される。それはきっと私にとっては素晴らしい事だ。
そうなればこの手の中にあるリボンは彼女に掛けてもらえた私の首輪となるのだろう。
だけどそれは彼女の望まないだろう事。彼女は私の友達で、私は彼女の友達だから。私にこのリボンを首輪にはする事は出来ない。
ドリームクラウンがクレインダンスのマスターとなる事はきっと無い。
そう心に決めて私は再び髪にリボンを結び直した。
スラスターを吹かして凍みるような夜空に躍り出る。さあ家まではもうすぐだ。



魔法少女のサーカス団を創るのが夢だと笑顔で話してくれたドリクラ、私のような存在がその夢に居場所は無いかもしれないけれど、それでもいい。
せめてその時が来るまでは貴女のそばに居たい。貴女を守りたい。

私は貴女が好きなのだから。

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