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デスマーチからはじまる異世界狂詩曲 時系列まとめ 書籍版各巻の概要 第21巻まで 書籍版各巻の概要 第22巻以降 Web版オンリー(書籍版未到達)のネタバレ考察



デスマーチからはじまる異世界狂詩曲 時系列まとめ


『デスマーチからはじまる異世界狂詩曲』(愛七ひろ、カドカワBOOKS)の登場人物については、著者自身がWeb版の章ごとに新登場人物の紹介分をまとめていることもあって、大量の(よく似た)解説テキストが見つかります。ところがそれに比べ、事項を時系列的にまとめたもの、あらすじなどは手薄であり、登場人物解説に時系列変化を補ったものくらいしかありません。このページではもっぱら「いつ(から)」という情報を扱いますので、それ以外は「小説家になろう」の作品ページなど他の情報源をご利用ください。

 主に書籍版について述べます。

 最近はスマホで読む方も多いでしょうから、横幅を決める形の表は使わないことにしました。必要に応じて、ブラウザのページ内検索をお使いください。

主題別時系列

ストーリーライン


 第2巻の終わりで、ミーアを故郷に返す最優先クエストが発生した。その後、ミーアが一緒に旅を続けることになったが、もともと最終的な目的地ははっきりしない。書籍版第7巻では、(約束なので)ムーノ男爵領に戻って、それから王国を出て世界一周をするつもりと書いている。

 迷宮都市セリビーラは漫遊先のひとつでしかないが、亜人差別感情の比較的薄い地域として早くから名が挙がっている。逆に貴族に列せられたことで、新年の王国会議には出なければならず、書籍版では15巻の最後で王都に到着した。[なおWeb版では「迷宮都市に行く」と決めてからセーリュー市を発っている。ミーアと出会うのはその後である。]

 新年早々、サトゥーはムーノ新伯爵の陪臣のまま観光副大臣になり、その仮の姿であるナナシは王都を空けても各地の魔王復活を防いでほしいと王の意向を示された。この時点で、多くの神殿からそれぞれ、世界の7か所に魔王が現れるという予言が出ており、書籍版第5巻に続いて第13巻の事件が起きたことで、7ヶ所それぞれに魔王が現れる可能性が案じられたからである。観光副大臣としての訪問とナナシ/クロとしての暗躍を組み合わせて、水戸黄門的な漫遊ストーリーとして始まったこの作品だが、ここからリストされた土地をひとつひとつお使いしていく展開になる。

 システィーナは国王からサトゥーとの婚約を宣言される(Web版13-38)。正式な結婚は1年後の王国会議の季節とされた。結局Web版ではこの伏線は発展せず、書籍版では婚約そのものが行われなかった。新作魔法の腕に惚れこまれて交流だけがあったが、第25巻で国王から婚約を打診され、サトゥーが断った。(独身貴族は1年以内に結婚する義務があると第19巻で語られた)

 当初サトゥーは呪文の詠唱ができないので、魔法の巻物を買い集めて使用し、メニューに登録することでしか魔法が使えない。巻物にすることを国法で禁じられている強力な魔法は使えないので「詠唱」スキルを渇望している。Web版では10-42で「詠唱」が使えるようになる「祝福の宝珠」を別のパーティが迷宮でドロップさせ、そのオークションをめぐる物語がしばらく展開していく。「詠唱」獲得によってさらに魔法威力のインフレが進んでいく。たとえば竜が竜泉酒を作り出すのも竜語の呪文詠唱によるのであり、それを耳コピすることでサトゥーにも作れるようになる。

 書籍版13巻では別の宝珠がドロップしたため、以後の展開はWeb版と異なってくる。第21巻現在、まだサトゥーは詠唱ができない。代わって黄金騎士団の活躍シーンが増えている。第29巻で、ヒカルを通じてシガ王国に「詠唱の宝珠」入手を依頼する。

 第15巻以降、Web版では扱いが小さかったビスタール公爵の嫡子による反乱が大きく取り上げられ、公爵暗殺未遂事件、王都における誘拐事件などに嫡子派がかかわり、シャロリック第3王子への嫡子トーリエルの傾倒も語られ、自由の光などとの共闘が見られるようになる。反乱は第19巻で終結を迎えた。また19巻では、Web版でうやむやになった、アリサとルルの故国を滅ぼしたヨウォーク王国への落とし前もつけられた。

 第19巻からは観光副大臣としての諸国漫遊が始まっている。第25巻でいったん本国に呼び戻され、第20巻でハヤトと共闘して魔王を倒したことなどが評価され、叙勲と陞爵内示があった。 

 Web版では7人の魔王討伐に続く神々と人間のいさかい、それに伴う戦災を経て、神々の望むところ、望まないところ(天罰の対象)を明確に知りたいと考えるようになった(Web版16-8)。テニオン神の信託を仰いだところ、直接神々と会う許しを7柱の神に請えと言われた。サトゥーは神々に談判を申し込むためのクエストを順次こなし、7柱の神々すべてから会ってもらうための証を得て、2019年3月に神々と直接話す場面が書かれた。2020年3月にWeb版が完結した。

 書籍版では7人の魔王討伐に続く諸国行脚が大きく再構成されており、戦災を経る前から神々の一部との交流が始まっている。

称号・地位・経済活動

  • 第1巻 行商人を称しセーリュー市で身分証の発行を受ける。滞在許可は10日ごとに有償で更新。
  • 第4巻 ムーノ男爵領での功績により、ムーノ男爵の家臣として名誉士爵に叙せられ、呪いが解けたことのアピールと諸侯への支援要請を依頼される。
  • 第6巻 オーユゴック公爵領蒼炎勲章を受章。
  • 第7巻 オーユゴック公爵領退竜勲章を受章。
  • 第9巻 魔導国家ララギより酒侯の位階を授けられる。
  • 第10巻 チーム・ペンドラゴンのメンバーとともに、迷宮探索者として赤鉄証を発給される。これを所持すること自体、シガ王国一円で貴族に準じた社会的地位を認められる。サトゥーの出資する、レスリーの筆槍竜商会が南方〜王都交易で利益を上げ始める。
  • 第11巻 ポプテマ(を操った上級魔族)による市内騒乱を鎮定した功によりセリビーラ聖守勲章を受章。
  • 第13巻 階層の主を倒し、迷宮探索者としてミスリル証の資格を得る。エチゴヤ商会が王都での商権を得て、飛空艇・魔剣・魔槍・回復薬・精力剤などを取り扱う。
  • 第17巻 王国会議を待たず年末のうちに、階層の主討伐を賞してサトゥーにシガ王国蒼翼剣勲章、ペンドラゴン7勇士にシガ王国紅翼剣勲章が授与される。
  • 第18巻 サトゥー・ペンドラゴンとして子爵に昇る。引き続きムーノ伯爵家臣。リザがゼフ・ジュレバーグに挑戦され勝っていたため、リザのみ名誉女准男爵、ポチ、タマ、アリサ、ルル、ナナは名誉士爵となる。「強制」のかかっていないリザ、ポチ、タマは奴隷の身分を脱する。ミーアはエルフとして他国の爵位を受けられないのでそのまま。あわせて第7巻の件でシガ王国退竜勲章を受章。Web版と違い、ヒカル(ミト)がミツクニ公爵夫人の称号と屋敷を直接返却される。ブライブロガ王国より「巫山戯(ふざけ)卿」と「ブライブロガ自由騎士」の称号を得る。
  • 第19巻 観光省副大臣に任じられる。アリサとルルが奴隷の地位を脱する。
  • 第21巻 ドーブナフ枢機卿(当時)からパリオン神国とシガ王国の公式貿易を持ち掛けられ、エチゴヤ商会で受ける。
  • 第24巻 ラティルティ、チプチャ、ブライブロガとエチゴヤ商会の交易に道を開く。
  • 第20巻で勇者ハヤトと共闘し魔王討伐に加わった功績を中心に各国からシガ王国に感状などが届いたため、第25巻冒頭で一連の行賞。宰相が兼務していた観光大臣に昇任。サトゥーに聖王青輝杖剣勲章、仲間たちにシガ王国蒼翼剣勲章授与。ムーノ伯爵を侯爵に。サトゥーを伯爵にする内示(翌年の王国会議にて)。仲間については言及なし。
    • 第24巻ですでに王都では活躍のうわさだけが広がっており、屋敷が観光名所のようになっていた(第24巻)。

諸勢力との関係

シガ王国内王族・貴族
  • システィーナ王女とビスタール公爵

 第1王子ソルトリック、第6王女システィーナ、第12王女ドリス(第19巻から登場)は同母兄妹で、母親はビスタール公爵の娘。システィーナ(名前だけは第7巻の会話中で出てくる)はサトゥーの魔法技術にほれ込むものの、Web版と違って婚約しないし、サトゥーに随行もしない(第19巻現在)。また間もなく王となるソルトリックからは直臣となるよう誘われ固辞(Web版16-1)。オーユゴックのライバルであるビスタールの政争にサトゥーも巻き込まれることが示唆されている(Web版15-幕間6.魔王殺しの噂)。

 書籍版のシスティーナは魔法技術者サトゥーにほれ込んでいて弟子を私称し、クロと同一人物とは気づいていない。王都にあるエチゴヤ商会の研究所に入り浸るようになっている(第24巻)。

 ソルトリック王子は第18巻から登場。ナナシやヒカルを詐欺師の類とみており、祈願の指輪をめぐってサトゥーに入札を降りるよう強要する。

 ビスタール公爵は第15巻でサトゥーと対面するが尊大な態度に終始。獣人嫌いということも影響したか。

 ドリスの飼う神鳥翡翠はWeb版よりやや遅れて第25巻で登場。Web版と同様、サトゥーの黒い手を浸した上級回復薬の効果で「神鳥」になる。
  • シャロリック王子

 第3王子シャロリックは第6巻でサトゥーと対立し、魔王たちとの戦いでレベルドレインを食らって「静養」を兼ねた謹慎を余儀なくされる。その監視を抜け出し、第24巻〜第25巻で発掘した聖骸動甲冑や聖骸巨神を使って、マッチポンプで王都を襲う魔族と魔物を倒して見せ、ついにはあからさまに王位を要求して王宮に迫り、サトゥーに倒され捕縛される。その母であるエディナ第2王妃は静養中とのことで(第25巻)、王族の中でサトゥーと面識がない数少ないひとり。
  • ビスタール公爵家の内紛

 Web版でも公子の手勢が(無関係なロイド伯爵の館を基地に使って)公爵とサトゥーたちの乗った飛空艇の撃墜をはかる。公子はそのままビスタール公国を称して自立を図るが、公爵の要請を受けた王国軍に押されていく。

 書籍版では第15巻でもう少し事情が詳述される。嫡子トーリエルは「乱世が来る」というシャロリック王子のあおりを受け、鼬帝国から魔獣を制御するネジを導入して公爵軍の強化を図っていた。それを獣人蔑視の意識が強い現公爵にとがめられ、廃嫡されていた。重臣モーサンと、その密通相手であるレダ公爵夫人(トーリエルの母ではない)、トーリエルの母(=第一夫人、第16巻でトホマエーナという名が明かされる)・第一夫人の弟である「隊長」が共謀して、公爵とサトゥーたちの乗った飛空艇の撃墜を狙い阻まれた。

 同乗のソミエーナ公女が持つ「小聖杯」が公女ごと、生母の第一夫人と共に脱出艇で逃げ出し、トーリエル派に確保された状態で第15巻は終わっている。第一夫人とは話がついているのであろう。Web版では「聖杯」が瘴気の充填がかなり進んだ状態で発見されているが、ここでは充填前から言及されていることになる。第16巻冒頭で、たまたま逃走経路にサトゥーがいたことから、ふたりは奪還される。以後第一夫人は登場せず、第19巻冒頭でゴウエンは孤独になったソミエーナ公女の力になってやってくれとサトゥーに託す。

 トーリエルは若いころ亜人嫌いだったという貴族たちのうわさ話をサトゥーは聞きこむ(第16巻273頁)。鼬商人たちとの結託は、何らかの強制や人格操作によるのかもしれない。この点には明確な真相が語られないまま、第19巻で反乱は終結した。

 トーリエルは助命され軟禁の身となり、ビスタール公爵家は王家に対し、いくつかの利権譲渡と戦費負担をすることになった(第20巻)。
  • 3つの公爵家

 シガ王国には(屋敷と称号しかないミツクニ公爵家を除けば)3つの公爵家があり、それぞれ陪臣たる貴族たちを従えている。

 ドゥクス公爵家は前公爵が今の宰相であり、与党的立場にある。ビスタール公爵は野心を燃やし、サトゥーに自領で活躍されて間接的に株を上げているオーユゴック公爵を煙たく思い、孫であるシスティーナとの縁がサトゥーを自派になびかせてくれることを期待しているようである(Web版)。書籍版でもややケチな報酬で懐柔しようとしたがうまくいかず、距離が縮まらないままである。
  • オーユゴック公爵

 書籍版第4巻でグルリアン市を救った活躍により、書籍版第5巻でオーユゴック公爵領蒼炎勲章を与えられた。あわせて仕官を勧めたがサトゥーは固辞。セーラを警護していたイバーサ・ロイド卿がムーノ男爵領で味わったコンソメスープとテンプラを公爵も所望し、称賛する。サトゥーの望みにより、ムーノ男爵領への人材派遣に助力し、領内貴族への運動を許可した。また勇者ナナシとして、魔王崇拝者の残党リストを提出し、公爵は処分を約束した。授与シーンが見当たらないが、巻物等の購入許可証も発行されている(以上、書籍版第6巻)。

 書籍版第7巻で黒竜を追い払った功によりオーユゴック公爵領退竜勲章を与えられた。

 孫娘のうち、勇者マサキに従うリーングランデと、その妹でサトゥーと因縁ができていくテニオン神殿の巫女セーラを通じて、大家の中では先んじてサトゥーとの縁が深まった。
  • ロイド侯爵、ホーエン伯爵

 オーユゴック公爵の家臣たち(書籍版第6巻で登場)。ともに食通で不仲であったが、サトゥーの料理を共に賞味するうち仲良くなり、公爵領の関係者から感心される。その後も何かとサトゥーに便宜を図る。料理を食べるチャンスも逃さない。それぞれサトゥーが公都を去るとき、家紋入りの短剣を与えた(書籍版第7巻)。

 街の守護、都市の太守など、大貴族が握る人事権によって収入が大きく変わる下級貴族が一定数おり、有力貴族を筆頭者とする「派閥」でその人事を分け合っている様子である。ロイド閥に属する貴族が書籍版第7巻でサトゥーと争い、ロイドの威光で言うことを聞かされた。

 サトゥーの爵位を上げることを主唱(第16巻)。ムーノ家陪臣からオーユゴック公爵家に鞍替えさせて美食を楽しみたい思惑があるらしい。
  • シーメン子爵

 強いて言えばサトゥーの「花火」「幻花火」の巻物で巻物工房がフル操業したことがあり、サトゥー自身が熱心なクライアントであるが、金勘定よりも弟を助けた恩人として接しているように思われる。公都を離れるとき、セリビーラのギルド長に紹介状を書いてくれた。また書籍版第10巻では短期間セリビーラに滞在し、サトゥーにあれこれ便宜を図ってくれた。書籍版では、ロイドとホーエンの暴走を止める(止めきれない)常識人の役回りをしばしば演じる。
  • アシネン侯爵家

 迷宮都市セリビーラの太守。第9巻で次男のレスリーがサトゥーに救助されて筆槍竜商会を興し、酒侯ペンドラゴン家旗の力で有利な南方交易を始めた。その利益もあり、サトゥーの願った私立養護院建設を許可した(書籍版第10巻)。

 Web版14-2で、王国会議を経て再訪したサトゥーが公爵夫人に「欲しがっていた」ティアラとエメラルドを贈ったが、これはWeb版10-43に出てきた階層の主のドロップ品で、王国のオークションにかかったのをサトゥーが落札したもの。書籍版第19巻では、第18巻のオークションで侯爵夫人がポプテマのエリクサーに巨額を投じたので、その相当額を投資のために預けると申し出て、地域殖産興業の融資枠とされる。

 Web版6-幕間2では、先代と思われるアシネン侯爵がムーノ侯爵領の後釜候補とされ、ゼンの呪いと思われる横死をしている。

 ポプテマはアシネン侯爵夫妻の懐刀(Web版では登場しない)で、いつしか魔族に心を支配されサトゥーの敵に回った。余命わずかと思われたが、第18巻でアシネン侯爵夫人が王都のオークションで下級エリクサーを競り落とし、第19巻で元気になった姿を見せた。以後、サトゥーに何度か有益な情報を耳打ちしている。
  • エムリン子爵

 第7巻で地元の特産物「ルルの実」の加工法をサトゥーに工夫してもらい経済的窮地を脱した。その後、貿易都市スウトアンデルの太守として赴任し、難破した自分の貿易船団生存者を連れたサトゥー一行がこの都市にやってくる(書籍版第9巻)。サトゥーは難破した船団の引き上げ品を気前よく返却した。サトゥーは貿易権と巻物購入権を要求して容れられた。

 次女リナは、Web版では早くからサトゥーとの縁談を持ち出され、さらにムーノ男爵(当時)領に行儀見習いに出されて、サトゥーが太守を仰せつかったムーノ伯爵領ブライトン市で太守代理を務めている(「幕間:ムーノ男爵領にて」「幕間:ダンスとお茶会」「14-幕間2:ペンドラゴン太守の移民達」)。書籍版でも第7巻でサトゥーと出会い、イラストももらっているので、こちらはリリーナと違って生き残れたようである。第9巻では再会したエムリン子爵から、ムーノ男爵領へ侍女見習いに出たと言及される。第26巻で、Web版通り太守代理をつとめる姿が描かれる。

  • セーリュー伯爵

 出発の地の領主。マリエンテール士爵家はその家臣。書籍版第2巻で魔族から接収した迷宮の開業に向けた準備を進めていた。新年の王国会議の後でサトゥーと接触し、伯爵家相続権そのものも交渉のテーブルに乗せて、セーリュー迷宮の経営者となることを打診して固辞された(Web版13-12)。その後、やや強引な手段でサトゥーとの関係強化を契約する(Web版16-35、16-36)。書籍版第25巻ではサトゥーを王都に召喚する使者にゼナが同行していて、持ち場を離れていることをとがめたが、サトゥーに「大切な友人」扱いされているゼナを見て現在の任を解き、サトゥーの護衛に差し出す。

 国境の伯爵領で間断なくワイバーンと戦う宿命にあり、切れ者が配されているのかもしれないが、アニメ化以降のWeb版にゼナのヒロイン内序列が上がりそうなエピソードが増えた印象があり、その影響を受けているのだとしたら、あまり理詰めで考えても仕方がないかもしれない。

 書籍版では第17巻で、叙勲後の舞踏会に来てサトゥーと初めて対面した。ゼナたちの報告からスカウト対象とされていて、出世をもって誘われたが、気づいたニナに追い払われた。第27巻では、Web版に比べて武人としての性格(武門の家としてのセーリュー伯爵家の傾向)が強調されている。
  • マリエンテール士爵家

 ゼナの実家。ゼナの弟ユーケルは書籍版未収録の事件で活躍を見せ、セーリュー伯爵の娘オーナと婚約する。また、セーリュー伯爵から男爵推挙を約束される(Web版16-35、16-36)。書籍版ではやや進行が変わるものの、第27巻でオーナとの婚約を目指して奮闘する。
  • クハノウ伯爵

 第3巻で太守補佐官の不正なたくらみを暴いた功により、伯爵本人から領内で魔法書・巻物の購入を許可される。Web版でも書籍版でも、カレーを作るさい福神漬けに近いものとして「クハノウ漬け」が探し出され使われる。Web版では、コボルトたちがムーノ領からクハノウ伯爵領に侵入しサトゥーが介入するが、書籍版ではコボルトたちの問題は別のタイミングで、戦闘なく解決されている。
  • ムーノ男爵家

 第4巻で都市核の支配に成功し、翌年新年の王国会議で伯爵となることが確実になった。それに至る混乱平定の功をもって、サトゥーを貴族に列し名誉士爵とした。サトゥーが漫遊先でまとめてくる様々な援助話は領地を潤している。Web版16-1で、サトゥーが伯爵になることに伴い侯爵になった。サトゥーはムーノが耳族などに偏見を持たず、自分を自由にさせてくれる理想の上司と考えている。

 ムーノ男爵はタマとポチを孫のようにかわいがり、別れを惜しんだ。(第5巻)

 継嗣オリオンはムーノ男爵領での活躍現場を見ていなかったため必ずしも好意的ではなかったが(Web版「SS:オリオンと噂」ではもっと明確に隔意を示している)、婚約者の懐妊を契機に次期家長としての意識を強め、功臣として丁重に接するようになった。オーユゴック公爵系貴族の若い子弟を中心に、サトゥーとの縁を強めることも期待した家臣候補団が形成されている。(Web版15-幕間3)書籍版第7巻では、「姉カリナへのシスコン」から姉を出世の踏み台にする(かもしれない)サトゥーを警戒していることが強調されている。

 この時代には、都市や街にある都市核は再生産不可能で(Web版6-幕間6)あるが、フルー帝国期までに作られた都市核がその後の戦乱などでしばしば都市ごと存在を忘れられ、また所在は分かっていても魔物や盗賊に占拠されているものもある。未奪還の都市や街を複数持っているムーノ侯爵領は、その奪還作戦が軌道に乗ると、貴族に取って空きポストの多い新天地に見えるのかもしれない。

 ムーノ男爵(伯爵、侯爵)領はオーユゴック公領ではないが、ムーノ男爵はWeb版6-幕間2や6-幕間6でオーユゴック公爵家の縁者とされている。
  • ウォルゴック伯爵

 公爵領グルリアン市太守。短角魔族が起こした騒乱でサトゥーの貢献を認め金貨100枚を与え、船や宿泊の便宜を図った。Web版には息女リリーナが登場するが書籍版第13巻まで未登場。王都の王立学院で出会うのかもしれない。第5巻221頁に名前なしで登場し、「新キャラにフラグなんて」立たせないとアリサが毒づくだけで、手を振って別れてしまった。
  • ソビル伯爵

 派閥の主のひとりとして第16巻に登場。第14巻でサトゥーに仲間の救助(遺品回収)隊を出してもらったボーマン少年の実家。その母はリットン伯爵夫人の親友。サトゥーの爵位を上げることに好意的。
  • リットン伯爵

 夫人がアシネン侯爵夫人、ソビル伯爵夫人、ラッホル子爵夫人と親友。サトゥーの爵位を上げることに中立的(第16巻)。エマ・リットン伯爵夫人がアシネン侯爵夫人の紹介を受け、またボーマン少年の件で親友の息子への計らいに感謝して、「1度だけなら助けてやる」とサトゥーに告げる。夫君のリットン伯爵は外務大臣で、第25巻で登場する。
  • ボナム伯爵

 派閥の主として第16巻で登場(第10巻のソーケル失脚シーンで会話に言及あり)。第10巻で魔人薬製造や迷賊との癒着をサトゥーに暴かれ失脚したソーケル太守代理の実家。サトゥーの爵位を上げることに猛反対(第16巻)。その息子らしいモーシル・ボナムがリットン伯爵夫人の園遊会で、カリナに悪質なハラスメントを仕掛けてサトゥーに逆ねじを食わされ、エマ・リットンにも釘を刺されて退場する。ソーケルはセリピーラの事件で毒を盛られて処刑されることになっていたが、脱出してシャロリック王子一味に身を寄せる。第25巻でミツクニ公爵邸の襲撃に加わり敗北する。たぶん捕まった。
  • ラッホル子爵家

 ラユナ夫人がエマ・リットンの園遊会でサトゥーに引き合わされ、ルーン光珠のカフスボタンが特製品であることを気づく。後日の受注を受け入れる(納品は第25巻)。第17巻で、狂王ガルタフトに仕えた「ルタ式火球魔法」の開発者として「ルタ・ラッホル卿」という名前をシスティーナが持ち出すが、先祖かどうか明確ではない。また、第17巻で登場した王都の桜守りはアテナ・ラッホルであるが姻戚関係は未言及。
  • ケルテン侯爵家

 Web版では多少後ろ暗そうな伏線も張られていたが、書籍版の当主は精勤する軍事系貴族として描かれている。孫のチナ・ケルテンはWeb版同様、王立学院でポチやタマと仲良くなる。第19巻ではケルテン侯爵が園遊会を開き、チナを救ったポチやタマに感謝し、助力することがあれば申し出るようサトゥーに言うシーンがある。
  • ゼッツ伯爵

 諸国漫遊の途上、ヨウォーク王国への順路で通過し、表敬訪問する。伯爵夫人はサトゥーの武勲を高く評価していて、その口添えで難民対策への協力が得られる。
  • レッセウ伯爵家

 ティファリーザとネルにセクハラを働き、嗜虐的な懲罰を与えた先代レッセウ伯爵は、中級魔族がグルリアン市に出現しサトゥーに倒されたのと同時期の魔族襲撃で命を落とした。若い後継ぎは有力陪臣たちを抑え込めず、経済的にも行き詰まって多数の難民を近隣領に出している。苦し紛れに収益性の低い領内利権をサトゥーに切り売りしようとする(第19巻)。サトゥーはそれらをスキルや魔法で採算に乗せ、いくらか経済援助もする。
  • カゲゥス伯爵

 当主は女性。ヨウォーク王国に領地が隣接する。縁者の遺品を砂糖航路の難破船から回収してエチゴヤ商会経由で引き渡したことがあり、サトゥーは名を伏せたのでエチゴヤ商会に好意的。エルゥス王子の側近に、伯爵から商会に贈られたメダリオンを渡し、新生クボォーク王国に好意的な取り扱いを期待した。観光副大臣のサトゥーは領地で歓待された。
  • シガ八剣

 王国軍を代表する武人たちで、書籍版では女銃使い「銃聖」ヘルミーナと「剛剣」ゴウエンがWeb版と入れ替わっている。「聖騎士団」が所属先であり、それを支える騎士たちが未来のシガ八剣を自任しているようである。

 第20巻までにシャロリック、トレル、ゴウエンの分が空席となっていたところ、ジェリルとバウエンが選ばれ、残り空席は1となった。
  • ゴウエン一家

 第18巻で夫人(名前未登場)、娘のシェリン、メリラと面識ができる。騎士を目指して王立学院に入学するシェリンをサトゥーたち一行がバックアップする。
商人・民間人
  • スァーベ商会のホミムードーリ

 王都に着いた第16巻で、サトゥーに接触してくる鼬人族の商人。ゴーレムの中核部品「魔操肢核(マリオネット・コア)」が予約満杯の人気商品。第14巻で巻物を売り込んできた商人でもある。※デジマ島迷宮などの出土品。ゴーレム馬車やゴーレム馬は失われた技術で、過去の遺物を使うしかない。

 第17巻で王都支店を訪ねて巻物を買い入れるが、アンデッドを使役するものなどは最近の王都に続発する異変への関与を疑われかねず、アリサの助言もあり購入を見合わせる。あとでティファリーザから、スァーベ商会は禁制品も扱っていること、有力貴族の支援者がいるのでうかつに告発できないことを聞かされる。

 店で出会った魔法使いシポローホーイは、のちに死体で発見される。ホミムードーリとシポローホーイの会話から、ふたりが鼬帝国で皇弟派に属するらしいことが分かる。魔王信奉者たちの推測では、転魔丸をいくらか横取りして自分たちの目的に使っていたらしい。

 第25巻の王都争乱への関与を疑われ、第26巻冒頭でホミムードーリは海路脱出、商会支店はお取りつぶしとなった。
  • スァーベ商会のトリミーソーリ

 デジマ店を仕切る。明記はないが本店か。また台詞にある「シガ王国にいた甥」とはホミムードーリのことか。

  • ゴォークツ商会

 第16巻の園遊会で会頭らしき人物がちらりと登場して、まだ名誉士爵であるサトゥーを馬鹿にした態度をとる。本格的な登場は第18巻から。会頭の「孫」がシガ国王の庶子、ユイの婚約者として第18巻末近くで登場。まだ名前は出て来ない。第24巻でサトゥーがブライブロガ王国を訪問し、スマーティット王子の口利きで宝石貿易を認められるが、これは従来ゴォークツ商会が商権を持っていたものだった。
  • ウッシャー商会

 要塞都市アーカティアの商会。ロロの勇者屋が評判を取ると、跡取りであるケリナグーレがたびたびロロやサトゥーに挑戦してくるが、次第に仲良くなって取引先も紹介してくれる。当主一家はレプラコーンであり、ブライブロガ王国と縁が深い。サトゥーが巫山戯卿と知ってケリナグーレが恐縮する(第24巻)。

  • ゴルゴル商会

 要塞都市アーカティアの商会。第24巻で登場。
  • ラクストン楽団の「楽聖」ケストラー

 第16巻で、公園で演奏していた子供たちにミーアが混ざった際、いっしょに楽器を合わせた。その後の園遊会でミーアの同行者として見覚えていたサトゥーに声をかけた。第17巻で演奏会を聞きに行った。
外国と独立領
  • 森巨人の里

 巨人でも割りづらい堅殻果実を多く割って美酒の原料を提供し、3人の子供を解毒することに成功したサトゥーには魔封じの鈴など報償が与えられ、さらにデミゴブリンに脅かされるムーノ市方面に援軍が送られた。 
  • ボルエナン、世界各地のハイエルフ

 世界樹から邪海月を取り除いた功績をたたえ、勇者ナナシを「9人目の聖樹(ハイエルフ)」とした(書籍版第8巻)。事情を知らないエルフはナナシ=サトゥーと知らないはずだが、他のエルフも黒髪などからサトゥーの正体を察してしまうことがある。
  • イシュラリエ王

 サトゥーから翠絹などシガ王国の産品を献じられ、「天涙の雫」の交易を許す(書籍版第9巻)。ララギに向け、身分を隠したサバーン王子を護衛してゆくよう依頼される。
  • ルモォーク王国

 オーユゴック公爵領に隣接。メネア王女が書籍版第7巻から登場。王国自体は第18巻現在書籍版未登場。Web版ではサトゥーが現地を訪問し、そこで縁のできた妹のリミア王女が、メネアのいる王都に遊学している。メネア王女は婚約者の小国王子が国をイタチ帝国に滅ぼされたため、代わりの相手を見つけることを命じられてシガ王国にきたらしい。

 ルモォーク王国がひそかに召喚した(いろいろな世界の)日本人のうち、召喚直後に魔族にさらわれたのがWeb版のシン少年であったが、そのエピソードが抜かされたまま第19巻で諸国漫遊編に入った。第25巻でWeb版とは違う設定のシン少年が登場し、8人目は別の(多分未登場)人物であることが暗示された。第26巻でこの8人目問題が扱われたが、じつは8人目と9人目が同時召喚されていたことが第27巻で明らかになる。
  • ララギ王

 竜泉酒や妖精葡萄酒を献じて激賞され、酒侯に任じられた(書籍版第9巻)。
  • パリオン神国

 Web版ではザーザリス法皇の背後にいる闇賢者ソリジェーロと戦い、都市核をサトゥーが掌握し、ソリジェーロの一味だった要人たちからスキルとレベルを奪っている。Web版では魔王信奉者の一味に「パリオン神国の枢機卿(12-29)」がいると書かれただけだったが、書籍版第17巻ではホーズナス枢機卿が登場し、Web版の神官ポルポーロの役回りも一部引き受けた。

 Web版14-7で、サトゥーはアリサのユニークスキルが「譲渡」で奪われなかったことから、アリサに「強制」をかけたのは別人物ではないかと推論していた。Web版ではこの伏線は生かされなかったが、第19巻でソリジェーロではないヨウォーク王国の関係者が、アリサに強制をかけた人物として登場し、Web版のソリジェーロと同様の方法でサトゥーに強制を解かれた。

 Web版14-2で、周囲の3か国がザーザリス法皇は魔王であると決めつけ侵攻する事件があり、はるかに少数の「神の軍勢」が侵攻軍を圧倒している。これもデッドエンドの伏線となったが、スキルの「譲渡」で強化された軍勢であったと考えるのが自然であろう。

 書籍版第20巻のパリオン神国は国境近くを広く城壁で囲み、富者と徳の高い聖職者以外は実質的に入国を拒んでいる。

 法皇ザーザリスはユニークスキル「万能治癒」を持ち、信者たちを癒して畏敬を受けている。賢者ソリジェーロも政権の重鎮ながら目立つ立場ではない。

 書籍版第22巻で、ザーザリスは引退し、ドーブナフ枢機卿が実権を掌握したことが語られる。ドーブナフはエチゴヤ商会などシガ王国との貿易拡大を打診しており、パリオンから祝福の光を受けたサトゥー一行の神殿への覚えもめでたい。第25巻冒頭、ドーブナフが法皇を継いだことが言及される。

  • ブライブロガ王国

 Web版にも登場はしていた(13-5)物品鑑定スキルを与える宝物「竜の瞳」だが、持ち主のレプラコーン少年にブライブロガ王国第8王子スマーティットと名がついた(書籍版第18巻)。第24巻で訪問した。
  • ヨウォーク王国

 アリサとルルの故国、クボォーク王国を滅ぼし併呑した。Web版では王族や王都が登場しない。書籍版第19巻では内紛を抱え、クボォーク国民をしいたげ、迷宮で邪悪な生体兵器研究をしている様子が描かれ、国王の死によって混迷する。

 ミュデと兄ギギラは第26巻で「王弟」を唐突に擁立する。それと対立するコルセアーネ王妃は騎士団長と共に対抗する。王妃のもとには成人前の王女・王子の姉弟がいる。第26巻ラスト近くで、王女の名前はケラサウーネとわかる。
その他
  • 怪盗義賊シャルルルーン

 Web版6-23の会話中に出てくる有名らしい怪盗義賊。12-7で階層の主ドロップ品を狙う盗賊の一味として、屋根の上にいるのをサトゥーに気づかれる。13-18で変装してエチゴヤ商会を訪れ、エルテリーナに支配効果のあるネックレスを身に着けさせようとして失敗。捕縛した後多事多端でそれっきり登場しなくなったが、13-24でティファリーザが「協力者を得るため」トリルという少年の所在を尋ね、サトゥーがある洞窟にいると答えてやった。13-27で初めて名前付きで登場し、サトゥーが落札した宝珠を盗んだ怪盗ピピンの捕縛に協力した時には、エチゴヤ商会の所属となっていた。盗賊一味につかまっていた弟トリルを救出して縁を切り、エチゴヤ商会のために働くようになっていたのだった。

 シャルルルーンが捕縛に協力した怪盗ピピン(男性)も[明記はないが犯罪]奴隷となり、エチゴヤ商会の一員となる。

 書籍版ではピピンとともに、第18巻で登場した。捕まって犯罪奴隷とされ、「ナナシ様の影御用要員」といったニュアンスで宰相がエチゴヤ商会に引き渡してきた(第19巻)。弟の救出や姉の仇討ちについてサトゥーが2人の望みに応え、感謝はされたものの秘密を明かすほど信用できず、ティファリーザを主人として商会の裁量で仕事をさせるようになった。

  • 陞爵・叙爵

 Web版12-10によると、准男爵以上は陪臣であっても国王によってしか陞爵・叙爵できない。名誉准男爵も同様。

神々との関係(書籍版)

  • パリオン

 愛をつかさどり、勇者召喚の中心となるとされる神。中央神殿はパリオン神国。勇者ハヤトの危機に夢でメッセージを届け、サトゥーたちをパリオン神国へ呼んだ(と思われる)。ソリジェーロを巡る一件を解決後、サトゥーたちを祝福。

  • カリオン

 叡智をつかさどる。中央神殿はカリスォーク。第22巻でサトゥーが彫った木像に降臨。事件解決の褒美に、サトゥーに朱色の知泉石を贈る。
  • ウリオン

 審判と断罪をつかさどる。中央神殿はシェリファード法国。第22巻でカリオンの食べ歩き湯けむり観光ツアーで訪問を受け、カリオンの依り代をうらやましがってサトゥーにもう1体彫らせる。事件解決の褒美に、サトゥーに紅法石を贈る。テニオンは像を塩に変えてしまったが、カリオンとウリオンは像の保管を命じ、また来る気満々。
  • テニオン

 癒しと恋愛をつかさどる。中央神殿はオーベェル共和国。カリオンとウリオンから訪問と報告を受け、結局サトゥーの像を使って顕現する。サトゥーが神に会うには7柱全員の証が必要だというが、クエストを出してもくれない。この時の像は塩と化したが、のちに再降臨に備え、公都のテニオン神殿に似た像を奉納する(第26巻)。テニオンの姿がセーラに似ていてセーラは喜ぶが、セーラに似せた像に降臨したのが真相であった。

敵勢力の系統


 第17巻で、赤縄の魔物と魔人薬についてスァーベ商会の関与を疑って審議官スキルを持つアテナが審問し、逆にシロが確定するシーンがあった。この事件は「自由の光(からの破門者)」とホーズナス枢機卿が仕組んだもので、ホミムードーリたちは部分的に協力しつつおこぼれを狙い、争って死者も出していた。

 当時パリオン神国は賢者ソリジェーロの勢力が大きく食い込んでおり、ホーズナス枢機卿、自由の光(魔王信奉者たち)はこちらの勢力に属していた。いっぽうスァーベ商会は関西弁の黒幕のもとにあり、鼬帝国に食い込んでいた。そして第20巻でソリジェーロと関西弁の黒幕の会話があったように、両社は互いに利用し合う協力関係(ソリジェーロ存命の内は、黒幕への臣従)にあった。第25巻の聖骸動甲冑騒動はスァーベ商会が鼬帝国のための陽動として起こしたものであり、逆に第17巻の騒動はそうではなかったから、アテナの審問に耐えられたと考えられる。

 第26巻の騒動では、ふたつの系統で利害の食い違いが生じて、水面下で争いになる。

 第19巻で、オルキデの日記から、黒幕の同志と思われる黄衣の魔術師から援助を受けたことが記され、第20巻の会話では「幼女魔王」育成のために黒幕が迷宮をあてがっていたが、迷宮核ごと破壊されたというセリフがある。この幼女魔王とは、オルキデとクボォークに因縁のあるアリサのことと考えられるから、黒幕とその配下は魔王候補として早くからアリサの確保を想定していたと思われる。第21巻では、今度はソリジェーロが魔王候補としてアリサを狙う。紫髪のまま勲章を受けたりしていたから、所在が知られていてもおかしくはない。

 第26巻で、オーユゴック公都に残存していた「自由の翼」がイタチ人商人と手を組んで出国したという情報がサトゥーに寄せられた。ソリジェーロの死でバラバラになった手下たちの一部を、関西弁の黒幕が吸収したと考えられる。

Web版と書籍版の相違

  • 書籍版の蒼貨にあたる古代貨幣は、Web版では紅貨。

  • Web版1-8〜1-10の悪魔との最初の戦闘は書籍版第1巻では省略され、「人心をあおるための、魔王の幹部が街上空を飛んだという流言」に変わっている(152-153頁)。腕だけになって迷宮を作り出した魔族はその後完全復活し、Web版では登場しない3-8でいったん敗れるものの、15-36で復活したらしい姿を見せてまた倒されるが、書籍版では自分自身を生贄に黒の上級魔族を呼び出し、それを倒すことが迷宮脱出のラストバトルになっている。
  • Web版に比べて、書籍版では早いうちから「魔族」という表現がほとんどになり、「悪魔」という表現はわずかしか出て来ない。Web版でも上級・中級・下級魔族といった表現が出てくると、悪魔と言う表現は見られなくなる。
  • Web版6-幕間6ではムーノ男爵が自分で領主登録をしているが、書籍版第4巻ではサトゥーが先に地下室に到達し、レオン・ムーノを領主として登録して、そのあとムーノ男爵がそれを知らずに地下室に向かっている。サトゥーが都市核と向き合ったとき、「上位領域を支配する王よ」と呼び掛けられ、称号「王」を得ている。上位領域とは竜の谷のことであろう。

  • Web版7-1ではムーノ男爵家(を代理するニナ)がサトゥーから復興資金を借りているが、書籍版ではサトゥーが旧ムーノ侯爵家の隠し財産を発見し、その相当額を匿名で提供している。

  • ウォルゴック伯爵家(グルリアン市太守)の娘リリーナが書籍版では事実上省かれた。逆に、ミゼら鼠人族の一団はWeb版ではミーアを助けて全滅しているし、ナナ以外のホムンクルスも助かっていない。ナナ以外のホムンクルスについての近況を書籍版14巻でゼナから聞き、マップ表示と「遠見」によって様子を確認している。16巻であらためて登場。
  • 幻想の森の魔女はWeb版には登場せず、魔女とクハノウ伯爵の契約を巡るエピソードもない。Web版の魔法道具屋は「公爵領での武術大会のせいで魔法薬が足りない」と魔核を欲しがる。ボルエナンの静鈴は、Web版ではずっと後で登場する(14-幕間4.サトゥーの研究(2))。
  • Web版では、サトゥーは森巨人と接触しない。第14巻でゼナにクロが渡す杖は森巨人の里の特産品を使っているが、Web版ではボルエナンの里の材料になっている。
  • 幼いころに遊んだ、不思議な髪色の幼女のことがフラッシュバックしてくる(第5巻など)。Web版8-1にある、公都の公爵邸で絵の中にいた少女の話が、入れ替わりに登場しない。第6巻177頁で博物館の絵として登場している。第13巻286頁でサトゥーはそのことを思い出している。

  • レイとララキエを巡る第9巻は書き下ろし(Web版15-40で名前は出ないが勇者ナナシに救助されており、16-6で「半幽霊とホムンクルスの義理姉妹」がララキエ跡を守っていると言及あり)。筆巻竜商会、筆槍竜商会はWeb版にはない。レスリーは「交易に携わる次男」として名前抜きで存在が語られるだけ。
  • 第10巻〜第13巻は迷宮都市セリビーラでの一連の話であり、それぞれの巻に「区切り感」を出すためか、登場人物がいくらか追加され、中ボス的な存在になるなどしている。大筋はさほど変わらない。
  • デュケリ准男爵はWeb版では金欠婿養子のアシネン侯爵に献金で取り入り、魔法薬や魔法道具の利権で稼ぐ人物としてネガティブに位置づけられている(10-26)。書籍版では、錬金術師の生活を考えて価格の下支えをしていることになっている(セクハラ案件や、サトゥーの馬車を買おうとした件はそのまま)。娘のメリーアンは、アシネン侯爵の三男ゲリッツの想い人であり、ダンジョンで武名を挙げたがる少年少女貴族のひとりとして、書籍版では頻繁に登場する。
  • セリビーラで迷宮方面軍を指揮しているエルタール名誉伯爵は、Web版では現ビスタール公爵の叔父だが、書籍版ではその言及がない。第10巻230-231頁に記述がある。
  • 書籍版第13巻で、フルー帝国の滅びた都市を回り都市核と契約するシーンはWeb版にはない。
  • Web版14-34末尾で、作者が書籍版との相違をふたつ書いている。(1)「勇者」の称号がないのに聖剣を持つとペナルティを受けるのは書籍版の設定。(2)Web版のリザは橙鱗族ではない。
    • (1)については、Web版1-10でダメージを重ねた悪魔は自爆し、直後に「勇者」の称号を得たため、聖剣で悪魔に立ち向かうシーンがないまま「勇者」になったことによる。Web版1-3では聖剣エクスカリバーを竜の谷の捕獲品に見つけ、ノーダメージで振り回している。むしろ魔術師ゼンに、「勇者のふるう聖剣でないと死なない」設定があったように読める(Web版5-12)。
      • なおWeb版16-79では、「神殺し」の称号なしに神剣を持つとダメージを受けると言うシーンがある。
    • (2)については、Web版登場時からリザは「蜥蜴人(族)」となっている。Web版14-34によると、蜥蜴人族、蛇頭族、赤鱗族、橙鱗族、青鱗族などを指して鱗族と総称する。そう言われてみると、ポチはWeb版では「犬人族」、書籍版では「犬耳族」であり、タマも同様である。ビジュアル的に、アニメ版第5話に出てくるような「人間語が不自由で全身が犬っぽい」犬人族とポチのように「耳、しっぽなど体の一部だけが人間っぽくない」犬耳族を区別し、リザも「蜥蜴人族」だと人類と交配不可能なイメージになるので橙鱗族としたのかもしれない。耳族そのものはWeb版にも登場する。Web版2-8のあとがきで、姿を自由に想像してもらうため獣娘の姿はわざと描写しない旨が書かれている。書籍化で挿絵がつく話がまとまるまでは、そういうことだったのである。

  • アリサの暴走を抑制する魂殻花環をアリサが身につけた(第14巻)。Web版にはない。
  • Web版第10章「幕間:黄金の騎士と篭の鳥」に登場したシロとクロウは、書籍版第13〜14巻に登場しなかったので、このまま登場しないかもしれない。
  • Web版ではゼフ・ジュレバーグはリザに挑戦するが、書籍版15巻ではサトゥーに挑戦する。第16巻でこの挑戦は邪魔が入り、改めての場ではWeb版通りに展開する(それ以外の対決はそのままとは限らない)。
  • 上記「ビスタール公爵家の内紛」に書いたとおり、書籍版第15巻以降でビスタール公爵家の内紛にかかわる細部が書き込まれた。王都で出会う敵や事件が全体として再整理されている。鼬帝国や「自由の光」が公爵嫡子派と連携を見せる(同じものを狙っているだけかも)シーンもあったが、鼬帝国がネジなどを提供していた(と思われる)のを除き、協力し合う描写はないまま内乱が終結した。
  • オークションは新年王国会議の後。書籍版では年末と書かれたが(第16巻278頁)、著者「小説家になろう」サイトで訂正が掲示された。
  • 書籍版のヒカルはサトゥーとは違う並行世界から来ていて、当然「ヒカルのサトゥー」は別人。
  • Web版13章後半のシン少年とその父親に関係するエピソードは、一部リライトされて第25巻以降で語られる。
  • 第19巻で、ヨウォーク王国の王都訪問・国王謁見のエピソードが追加され、アリサやルルに強制スキルを使った宮廷魔導師が書籍版独自キャラとして登場した。そして、Web版パリオン神国の闇賢者ソリジェーロをめぐるエピソードが一部このキャラに移された。
  • Web版では観光副大臣としての旅行は自分の飛空艇で行うが、書籍版では王国所有のものを使うようである。その配分順序がまだ回らないらしく、第19巻では官給ゴーレム馬と装甲馬車を使っての旅からスタートする。自分の支配する空間へのユニット配置能力を活用するため、エチゴヤ商会の支店を各地に設置する動きが第21巻以降で具体化し、そのための先乗りスタッフがサトゥーに協力する場面もある。第28巻途中で、観光大臣専用の小型飛空艇が届く。
  • システィーナ王女はサトゥーと婚約させられず、随行もしない。ゼナとカリナは迷宮都市で迷宮に潜り、ヒカルは王都に残り、セーラも随行しない。詳しくは第19巻の項に。このためWeb版における「白銀組」がいなくなり、第20巻で登場した白銀装備は「より強力な公開装備」とされる。第21巻で、白銀装備のやや性能が劣るエコノミータイプを第16巻で作っていたことを思い出し、「ナナ姉妹たちやカリナたちに」(p.29)使ってもらおうと考える。なお第19巻で、「嫡子のいない未婚貴族は1年以内に結婚せよ」という一般ルールがあることが語られており、第27巻ではセーリュー伯爵から(娘オーナを嫁にどうだという申し出の後押しに)言及があった。
  • 観光副大臣になってからのサトゥーは、Web版では世界をめぐる→デジマで魔王討伐、ハヤト帰還→イタチ帝国事変→神との対話を目指し中央神殿めぐりと展開した。書籍版ではこれらが再整理され、ある意味で並行的に進む。
  • Web版のサトゥーは第13章SS「南の島」で禁呪「異界」を使った南の島状の「孤島宮殿」「酪農用区画」「砂漠区画」からなる秘密基地をつくり(14-8など)、シズカもここで暮らすこととなった。書籍版の場合、恒久的な異界をつくる魔法を詠唱できないため、第17巻で魔物区画にこしらえた秘密基地が代わりに使われる。
  • Web版ではテニオン中央神殿が登場しない。第21巻で、「花と恋の国」オーベェル共和国に存在すると示される。そのほか、Web版に登場しないいくつかの国が第21巻で言及された。
  • Web版ではパリオン神国の聖都都市核はサトゥーが掌握してそのままになるし、法皇ザーサリスは魔王信奉者ではないものの、最終的には非業の最期を遂げる。第21巻では法皇ザーサリスはユニークスキルを失うものの円満に引退でき、国家体制は崩壊しない。
  • 第22巻で、Web版にはいないジョッペンテールらの研究者をエチゴヤ商会で保護した。
  • 諸国漫遊が始まってから、魔神の落とし子が持っていた真っ黒い瘴気が敵対者の主な武器となり、サトゥーはスキルと神剣で対抗している。魔法詠唱ができない分だけ仲間との火力差が開かず、チーム・ペンドラゴンがボス戦に参加し続ける展開となっている。


空白スキル

 Web版12-28で、魔神の落とし子(3本の髪)と戦った際、「>スキル「」を得た。」というログが流れ、それっきり何も起きなかった。16-15で「空白スキルを検証する」という記述があって、検証結果は書かれていない。

 書籍版では第17巻364頁で同様のスキル取得があり、第18巻25〜26頁に、竜の谷にユニット配置で転移した直後にひとりでにスキルが有効化され、サトゥーが自分でそれを無効化しているシーンがある。

 Web版ではそれっきり使われていないため、書籍版の独自要素となる可能性がある。
勇者ハヤト一行

 第20巻で勇者ハヤト一行が再登場するにあたり、Web版で前日談がアップロードされた。これはWeb版・書籍版に共通のエピソードと考えられる。それによると、召喚直後のハヤトにはサガ帝国が選抜した従者チームが付けられていたが、錬成中の遭遇戦で半壊した。以後ハヤトは、自分の目で認めた者だけをチームに加えることにした。

 ハヤトが故郷では高校生であること、3才の妹を溺愛していることはWeb版と同じ。

 書籍版第20巻では、ハヤトのチームに欠けている偵察役として、騎士リュッケンらがつけられている。リュッケンは功名心が強すぎて、部下をリスクにさらしても討伐に貢献しようとする行動をとった。
関西弁の黒幕

※この項目については、書籍版で記述されるまで、Web版との相違を説明することを避けます。

 闇賢者や緑上級魔族を通じて、パリオン神国に1万か所以上の入り口を持つ魔窟(魔神牢)に魔王・砂塵王を住まわせ、魅了と強制で縛り付けている。ただし闇賢者の強制はオルキデから模倣したもので、比較的弱い。

 闇賢者は第17巻でサトゥーが死闘を繰り広げた魔神の落とし子のかけらを手に入れており、呪いのアイテムとして攻撃や一時的強化に使えるようにしている。

 闇賢者は、関西弁の黒幕に「鬼人王」と呼び掛ける(第20巻)。
魔神召喚をめぐる色々

 第5巻で7人の魔王が出現するとの神託が登場した。もしその通りになると、随所で戦いになり、地上の瘴気濃度が上がったと思われる。だが、特に強力な数人の魔王をサトゥーが倒してしまった。

 第10巻〜第12巻で、緑色魔族のたくらみにより、迷宮や迷宮都市の瘴気を増やす様々な試みが繰り返されたが、サトゥーがそれを阻止したり精霊光で瘴気そのものを浄化したりしたので、瘴気濃度は低く保たれた。これは後から考えると、魔神を復活させる計画だったかもしれない。

 第17巻で、聖杯に集まった瘴気、赤縄の魔物が起こした(計画より少ない)争いで王都に満ちた瘴気を助けとして、ホーズナスはユニークスキル「神喚」を発動したが、魔神ではなく「魔神の落とし子」が出ただけだった。

 第20巻の魔王「砂塵王」は魔窟で戦闘を繰り返して死傷者の瘴気をため、魔神召喚の場とすることが目的だったが、サトゥーが通りすがりに精霊光で下げてしまったので果たせなかった。

 第21巻で、「神喚」を実行できるようになるらしいアイテムが登場し、ある程度瘴気が高まった環境で魔王化した幹部によって実行された。だが明らかにアイテムが魔神によって不良品とされたものだった。

 Web版では、魔神はこうした召喚がじつはありがたくないという事情が示されたし、ある状況では魔神自身がそれを阻止した。だから魔神は、わざと成功しないアイテムを見つけさせ、「神喚」のリスクを高めていたのかもしれないのだが、この設定が書籍版でも有効であるかどうかはわからない。

 また第21巻では、魔神牢の封印を解くと「災厄の軍勢」が復活するのだとソリジェーロが語る。つまり魔神がよみがえるというのは魔王信奉者を協力させるウソで、「災厄の軍勢」による現秩序のリセットが「関西弁の黒幕」一派の目的であるように読める。
幼女神

 この小説の著しい特徴は、「幼女神はパリオンのようにも見えるが、そうとは限らない」状態でクライマックスまで引っ張られるところである。第19巻エピローグで登場し、第21巻まで見え隠れする幼女神は、Web版の幼女神ならば言わないであろうセリフをいくつか吐いた。「あの子を助けて」というのは老幼女ユ・パリオン(あるいは教皇ザーザリス)のことだったように思われる。「幼女神はWeb版と同じ存在のようにも見えるが、そうとは限らない」という趣向でWeb版から分岐していくのかもしれない。
まつろわぬもの

 書籍版第17巻で「魔神の落とし子」が登場し、強い侵食能力を示した。書籍版第22巻で、カリオンとウリオンはそれを「まつろわぬもの」と呼び(書籍版第22巻237頁)、のちにテニオンはその言葉をサトゥーに教えたことで2神を叱責する。

 Web版のずっと後、完結直前と言ってもいいころ出てきた設定と符合する部分があり、符合しない部分もある。おそらく「まつろわぬもの」に関する設定は、魔神に関する設定と統合・変更されるのであろう。
碧領

「黄金の猪王がフルー帝国を滅ぼすために生贄に使った七つの都市」(Web版12-14)を碧領と呼び、魔物が多く継続的な保持は困難とされている。Web版ではミツクニ公爵領としてシガ王国から提示されたが断り、一部をこっそりサトゥーが確保してレベリングセンターや虜囚の拘置所などに使っている。

 第17巻で王都南の「魔物の領域」のただなかに、サトゥーは戦闘訓練ができる秘密基地を建設するが、これがすでに碧領周辺と思われる。

 第16巻で悪の手先となり囚人部隊ムラサキとともに碧領開拓に従事することになったゴウエンの傷が癒え、出発が近づいたため、第24巻で現地入りして土木工事を行い「ああなんということだろう、密林のただなかに諸施設の整った開発拠点が」という状態にする。その前後に、放置された都市跡から様々な遺物を接収していくうち、かつての対ララキエ反乱軍を顕彰する芸術品がごっそり見つかる。[どうやら拠点であったらしい。]その中に、Web版ではルモォーク王国の浮遊城で見つかる絵(Web版14-32)に相当するものがあり、話が再構成されている。

 第26巻でいよいよ開拓が始まるが、碧領の「碧七都市」は「一番近くにある都市跡」とされ、全体としてはもっと都市があるように書かれている。第24巻では最初の都市核を再訪するシーンで「残り六つほどある」と書かれており、8つ目以降があるかどうかは明確ではない。

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