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[SSメモ] BLOG限定 2011/8/3

その後の仁義なきリレーションズなちはみき。
アダルトチックな続編構想ですが、残念なことに未完です。
いまのところ、ポッキーゲームだけ。

  • 以下本編-

「プロデューサーさん、おやつもらったからどうぞ」
「あのなぁ美希……どうして君はポッキーを口に咥えて差し出しているのかな?」
「恋人同士がポッキー食べる時はね、こうやるのが正しいの」
「正しくないし、そもそも恋人同士じゃないだろ、ったく……」
美希が咥えたポッキーを指でへし折って口に入れる。

「美希、プロデューサーの邪魔よ。それより新曲の歌詞、まだ覚えていないのでは?」
「むぅ、千早さん厳しいの……少し休憩しているだけなのに」
「それならプロデューサーの膝から降りなさい!」
「今日の千早さん、怖いの。美希自習してくるねー」
美希の後姿を見ながらついたため息がシンクロし、思わず顔を見合わせる。

「コホン……プロデューサーは美希を甘やかしすぎなのでは?」
千早が咥えかけたポッキーを奪い取って口に入れる。
「千早まで美希の真似しなくていいぞ」
「あの……いまなら誰も見ていませんし。い、一本だけ……駄目ですか?」
「だめ。美希が影から睨んでる」
「嘘ばっかり。美希がするのはOKで、私がするのは嫌なのですね」
「そうじゃないって。たかがポッキーくらいで涙目になるなよ」
「…………たかがポッキーですら、受け取ってもらえないのなら」
「一本だけだからな。それに今日だけ、それならいい」
「あ、ありがとうございます。あの、では……」

随分深く咥えているとは思ったが、まさかああいう目論見だったとは千早も隅に置けん。
二人ともポッキーを咥えていたので、キスというよりは唇が触れたという方が正確だが。
その確信犯本人もそれだけのことで顔を真っ赤にしてレッスンスタジオに逃げていった。
千早が歌以外にも関心を持ってくれるのは嬉しい。
だがその対象が異性であり、美希に対抗心を燃やしているというのは計算外だ。
仕事に差し支えなければいいが。いや、実際差し支えつつわるわけだが……

「やっと終わったの」
「お疲れさん。ほら、さっきのポッキーまだ残ってるぞ」
「プロデューサーさんずるいの。それ美希のなのに千早さんと食べたりして」
「いやいや、2本くらいしかもらってないぞ?」
「食べるのはいいけど、美希のポッキーでキスするなんて酷いよ、プロデューサーさん」
「キ、キスなんてしてないぞ……どうして出鱈目を」
「隠れてみてたもん」
「いや、あれはポッキーゲームでだな。キスじゃないし、唇触れてなかっただろ?」
「…ふーん。やっぱりそういうことはしてたんだ。美希、嘘つかれるの好きじゃないの」
「うぐ…すまん、美希。でもキスじゃないのは信じてくれ」
「……キス、じゃない? それなら証拠見せてほしいな」
「証拠?」
「千早さんとしたみたいに美希のポッキー食べて、キスじゃないことを証明するの」
「……分かった」
「あはっ、じゃ早速いくね」
美希はポッキーを咥えると、そのまま抱きついてきた。
「プロデューサーさん、美希の……食べて。ぎりぎりじゃないと駄目だよ?」
仕方が無い。もう一度あたりを見回して人気がないのを確認すると、美希が咥えて
差し出すポッキーを慎重に口に入れる。
すぐ目の前に、何故か顔を赤らめた美希が俺をみつめている。
ギリギリというと……このあたりか。俺と美希の唇の距離、約1センチ。こんなものか。
次の瞬間。
美希は瞼を閉じると同時に、すっと首を突き出し、1センチの距離が0になった。
「……んっ」
唇が重なったところでポッキーが折れても、まだ唇は重なっている。
まるで時間が止まったかのようだった。

「……キス、しちゃったね」
気がつくと、美希はもう離れていた。
「わざとだろ、美希」
「だって、ウカウカしてると千早さんにプロデューサー取られちゃうでしょ?」
「こら美希。そういうのは駄目だっていつもいってるだろ」
それには答えず、バッグを掴んだ美希は事務所を飛び出していった。


なんというか、あれは美希の気まぐれだったと思い込もうとした。
大人びているのは体だけのことで、まだ中学生だ。
そんな心配は必要ないのに、俺を千早に取られるとでも思ったのだろう。
美希が安心して仕事に集中できるよう、事務所での振舞いには気を配ったほうが
いいみたいだな。美希に対しても、千早に対しても。

全く、まだ14、5のお子様同士なのに。
そういえば、今日は千早まで美希に対抗意識を持っていたよな。
歌にしか興味がない千早が。
さて、そろそろ千早もレッスンあがってくる時間だな。
今日はどこに連れて行ってやろうか。
「お疲れさん、千早。んっ、どうした?」
少し青ざめた表情の千早が無言で近づいてきて、すぐ目の前で立ち止まり俺を見上げる。
無言のまま。いや、見上げるというより睨むというべきか。

次の瞬間。
バチン、と派手な音が鳴り響く。
千早に頬をひっぱたかれたのだと気付くのに、数秒かかった。
頬の痛みを感じる前に、俺の唇が押し付けられた柔らかさと温かさを脳に伝える。
千早の唇が離れたあとも、俺は千早の肩を抱き締めて離さなかった。

「プロデューサー、ずるいです……」
「どうして」
「分かっているくせに」
「分からん」
「なら、わかるまでもう一度?」
「ああ……」
本当は分かっていたが、ひっぱたかれるのは勘弁だった。
千早が顔を背けるより早くその唇を捕まえる。
「んっ! んんっ……」
目を見開いて抗議する千早に構わず、俺は腕に力を込めて逃がさなかった。
そのうち千早から力が抜け、瞼も閉じられる。
何度か息継ぎをしながら、俺と千早は長い間唇を重ね合わせていた。

「これで分かったろ?」
「……ず、ずるいです、プロデューサー……」
「さっき、どうして俺をひっぱたいた?」
「だって……美希と浮気していたから」
「浮気って…ポッキーを一緒に食べたら浮気か?それに付き合ってもいないのに?」
「キ、キス……してたくせに」
「今日は見られてばっかりだな。千早はあれを見て嫉妬したんだ?」
「し、しません!嫉妬なんか……」
「でも……叩いたろ?」
「ごめんなさい……つい、その……」
「分かってないのは千早の方だろ?」

俺は椅子に座ると、立ったままの千早を引き寄せ膝の上に座らせた。
「あ、あの……」
「いいから。な、千早。君がアイドルとしてデビューした時一緒にいたのは誰?」
千早が顔をあげて俺を見る。
「初めてのオーディション、合格した時に抱き合ったのは誰だった?」
俺の手を掴んだ千早の手に力が入る。
「じゃ、千早が初めてキスしたのは?」

「キスだけじゃない、千早の初めてを全部受け取るのは誰?」


蜜柑。

つづく……かもしれない。

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