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[SSメモ] xx 2014/10/12 EP41-059

※微妙な近親描写があります。また時系列が現在と過去で交互に入れ替わります。

  • 以下本編-


レッスンと自主トレで疲れ切っているはずなのに、ささくれた神経は今夜も眠りを妨げる。
小さくため息を漏らすと、もはや慣れた仕草で下着ごとパジャマをずりおろした。
あまりしたくはないけれど、ホットミルクや温かいお風呂が役に立たないのだから仕方ない。
今の私には睡眠による休息が必要で、そのための手段はこれしかないのだから。

寝る前に浴びたシャワーの名残りで少し湿りが残っている程度、そう指先で確かめると、
口の中にためた唾液をその指に移し性器の表面にそっと塗りこめていく。
程よいところで閉じ合わさった部分にも指を入れ中にも行きわたらせるのは
乾いた状態で触れるのは痛いばかりで効果がないと学んだからだ。
行為を始めれば嫌になるほど濡れるというのに。

「ふぅーっ……はぁっ、んっ……」

深呼吸をして体の力みを取るとゆっくりと指を動かし始める。
最初は性器の形を確かめるように、凹凸にそって撫でるような感じで。
遠い昔、あのちいさな手が恐る恐るしてくれたのを思い出しながら。
私の大切な場所に触れた、ただ一人の男の子の記憶。



「ほら優、じっとしないと洗えないでしょ」
「だってくすぐったいんだもん……」
「じゃあ自分で洗う?」
「ううん……お姉ちゃんがいい」
「なら我慢しなさい、すぐに終わるから」

お風呂に入るたび決まって繰り返されたやりとり。
椅子に座った私の前に立ち、くすぐったいのを我慢しながらクスクス笑う弟。
そして私は自分にはない器官への好奇心を洗うそぶりに隠して観察をつづける。
黒ずんで大きい父親のそれとは違い、弟のは私の小指くらいの大きさで肌色がかった
ピンクのそれは可愛いとすら思える。
性知識など皆無な年齢のくせに、小さなペニスを手に取って確かめていると
なんだかもやもやとした奇妙な気分になることは今も覚えている。

「ねえ、どうしておねえちゃんにはおちんちんがないの?」
「おちんちんは男の子にしかについてないの」
「ふーん、どうしてだろうね」

自分とは異なる異性の体に好奇心を持つのは弟も同じだった。
弟を洗い終わると、彼の目はつるんとした私のおまたに向けられる。

「おちんちんがないって変だね」
「そうかしら。女の子はこういうものだけど」
「じゃあおしっこはどこから出るの?」
「ちゃんとおまたのとこから出るのよ」
「おまたのどこ?」

女の子のそこは大切な場所だからと、母親から幾つかの決まりを教わっていたけれど
優に見せるくらい構わないはずだし、その頃の羞恥心などあってないようなものだった。
いつものように年上ぶった私は優を椅子に座らせその前に立つ。

「優には教えてあげるけど、絶対誰にも秘密よ?」
「う、うん…わかってるよ」
「じゃ、いいわ。ほら、ここよ。見える?」

覗き込む弟の目の前で足を開くと、指でそこを開いて見せる。

「ほら、見える?」
「うん。でもよくわかんないよ。どこからおしっこがでるの?」
「ここよ……それよりもういいでしょ…ひゃん! だめよ優、見るだけだから」
「ごめん、お姉ちゃんのも洗ってあげようと思ったから」
「そ、そう。でもいいわ。自分で洗えるから」
「くすぐったかった? 僕じゃ洗うの下手だからいや?」
「そうじゃないけど……ほら、体が冷えてる。また今度ね」

驚いたのをごまかしながら弟を湯船につける。
優にしてみれば何の気なし触れただけだろうけど、大切な場所を初めて他人に
触られた感触は予想外のものがあった。
くすぐったさと一緒に感じたのは明らかに気持ちよさだったのだから。



朧げな記憶をたぐりながら、弟の仕草を真似て指で性器をなぞっていくのは
このような行為を忌避する私の心をなんとか平衡に保つためだった。
夜毎の自慰がやめられない自分を正当化するため、弟の思い出をだしにする。
それなのに私の体は卑しい快感を追い求めて止まない。
弟の指が性器に触れたのは事実だけれど、それは決して性的なものではなかった。

もっとも唾液の代わりに粘液が満ちてくる頃には、そんな無意味な思考は消えてしまい
くちゅくちゅという粘っこい水音とせわしない喘ぎ声だけが真っ暗な部屋に満ちていく。
指の動きをより早く、より強くしながら徐々に浮かんでくる快感を追い求める。
それは波のように重なりあって私に打ち寄せ、ひときわ大きな波に体全体が
飲み込まれると一瞬意識がふわりと浮かび、力の抜けた体がマットに沈む。

行為の余韻に浸るのはほんのわずかな時間だけ。
ティッシュで汚れた指と性器をざっと拭いパジャマを戻して目をつぶる。

次ぐに気が付いたときはもう朝になっている。
散らばったティッシュをゴミ箱に放り込むとバスルームに向かう。
シャワーで昨夜の痕跡は洗い流せても、鬱屈した気分はどうにもならない。
忙しい一日に紛れて行為の記憶が薄れて消えてしまうまで……



弟のペニスが固くなること、触ると気持ちがいいと知ったのもお風呂でお互いの性器を
“洗いっこ”する時に知り覚えた、私達だけの秘密だった。

「どう、優……気持ちいい?」
「うん。お姉ちゃんの手で触ってもらうと気持ちいいよ」
「そうよかった。じゃあそろそろ交替しようっか」

単純に気持ちよさを喜ぶだけ弟と違い、私はそれをいけないことだと知っていた。
母親に教わったことに反する行為の結果、私の性器は弟の指を受け入れることで
早くも女の反応を見せるようになっていた。

「お姉ちゃん、ぬるぬるしてきたよ……気持ちいい?」
「うん……優、気持ちいい、そこ、あぁっ、もっと」

何度かの行為でどこをどう触らせれば気持ちいいかはすぐ把握できた。
弟は私を喜ばせるのが楽しいらしく、指示することはなんでも素直にしてくれた。
そのままいけば、いつか超えてはいけない一線を越えていたかもしれないけれど
私たちの秘密の行為はそう長くは続かなかった。


突然の喪失。
最愛の弟を失った悲しさと寂しさに耐えきれなくなるたび
ベッドに潜り込み弟がしてくれたように性器を指でまさぐっていた。
刹那の快感が過ぎたあと長く続く自己嫌悪にも構わなかった。
現実逃避とわかっていても、行為はやめられなかった。


思春期を迎える頃にはあの頃無かった知識もあらかた学んでいた。
男女の性器の構造、生殖の仕組み。
男性器が大きくなる理由、女性器から湧き出る粘液の正体。
男女が体を交えて愛し合う行為、セックス。
だけど私の関心が自分の体に向くことはあっても、異性に向くことが無かったのは
優の存在が大きかったと思う。
寂しさを紛らわすためだった行為は、快感を得ることと自分を落ち着かせるための
行為に変わって私の日常になっていた。



そして今。

候補生からアイドルデビューを果たした私は初めてのソロライブを前に
小さなライブハウスの狭く乱雑な個室に籠っていた。
別に緊張して催したわけではなく、集中する儀式のためだった。

ステージ衣裳のミニスカートは履いたまま、アンダースコートと下着を下すと
唾液で湿らせた指でそっと性器をまさぐり始める。
別のバンドの演奏と歓声のおかげで声と音が漏れる心配はなかった。
こういう人気がある場所でするのは初めてで、途中で何人か人の出入りは
あったけれど、それはそれで刺激にはなった。
触り始めてほどなく、奥から愛液が湧き出して指の動きがスムーズになると
私は歯を食いしばって喘ぎ声を我慢しながら、徐々に高まっていく快感に身を委ねる。
ときおり滑った指が膣に入りそうになるたび、ぼやけた頭でいっそ中までと思いながら
わずかに残った理性が恐怖心のブレーキで引き止める。
いつかはそういうことをする機会があるかも知れないけれど、今はこれで十分だから……

ベッドでするときのようにはいかないけれど、一通りの快感で登りつめてしまうと
張り詰めていた息をすっくりと吐き出し体をリラックスさせる。
何度か深呼吸したあとには、気持ちの強張りも体の力みもすっかり消えていた。
濡れた人差し指にキスするように一舐めすると、トイレットペーパーで拭い清めて
衣裳を直して舞台袖の待機場所に向かう。

「緊張してトイレなんて千早らしくない……でも落ち着いたみたいだな」
「はい、プロデューサー。いつでもいけます」
「よし。いってこい、伝説の始まりをみんなに見せてやれ!」

眩いスポットで真っ白に見えるステージに向って私は駆け出していく。



おしまい。

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