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[SSメモ] xx 201x/mm

876プロの新人アイドル日高愛は、ある日社長の指示で765プロでの合同レッスンに参加することに。
遅刻しないよう早めに到着した愛が、ふとした拍子に入った部屋で見てしまったものとは……?


  • 以下本編-

その部屋は、レッスンフロアの一番端っこにあった。
他の部屋と違い、ドアに青いプレートがあるだけで、何の部屋とも書いていない。
時間をもてあましていた私は、暇つぶしと好奇心からそっとドアを開いてみた。

とても静かで落ち着く感じがする部屋だった。
床に敷いた分厚いカーペット、座り心地がよさそうなソファーのセット。
その向かいにはテレビとステレオがあり、棚には沢山のCDやDVDが並んでいる。
多分休憩室とか視聴覚室みたいな部屋なんだろう。拍子抜けして、元いた場所に戻ろうと
ドアを開けとき、廊下の向こう側から男女の話し声が近づいてきた。

部屋を出て、間違えたフリでもすれば済む話だったのに、私は部屋に戻り隠れ場所を探した。
よその事務所をウロウロし、無断で部屋に入ったのはまずい気がしたからだけど、
その判断が、結果としてあんな事態になるとは、このときには思いもしなかった。
クローゼットに隠れる時間はない。だからソファーの裏にもぐりこんで息を潜めた。

「今日は一日中ミーティングとレッスンに付き合ってもらう約束でしたが」
「すまん。埋め合わせはするからなんとか頼むよ。な、千早?」
テレビではよく見るけど、生の声は始めてだった。
さすが氷の歌姫なんて呼ばれるだけあって、怖…いや随分迫力ある声だと思った。

「それに収録には私ひとりで行けと?」
「だからそれも説明しただろ。そういじめないでくれ」
「ああ、確か876プロの新人アイドルと合同レッスンでしたっけ。楽しそうで何よりです」
「いやいや、だからね……」
「ふふっ、冗談です。それより埋め合わせの手付け、いま頂いていきます」

876プロの名前が出てドキッとしたけど、本当に驚いたのはその後だった。
さっきまでは怖い声だった如月さんが、突然甘えたようなとても可愛らしい声になって。
そのすぐあと、チュッって聞こえた! あれ、絶対チューした音だ!!
驚きのあまり、体も心臓も飛び上がりそうで、必死で声がでそうなのを我慢した。
これ、隠れてるのばれたら、私チョーやばいよ?
そんな私のキンチョーも知らず、二人は何度もチュッチュして、ようやく如月さんだけ出て行った。
残った一人も、早く出て行ってくれないとそろそろレッスンの時間も近いはずだ。


「さてと。そろそろ出てきてくれるかな?」

へっ? 今なんと?

「ソファーの裏で隠れている君だよ。ほら、早く出ておいで」

あちゃー……どうしてばれたんだろう。でも、こうなっては隠れていても仕方がない。
ソファーの裏から這い出し、男の人の前に立つと、お辞儀をしてから名前を名乗った。

「君だったか……今日レッスンにくる876の新人さんって」

男の人は私が胸につけた入構許可証となる名札を見て頷いた。

「説明しておくと、ここは千早専用のミーティングルームでね。事務所のスタッフでも
許可無しでは入れない決まりなんだ」

男の人は声も表情も普通で、怒っている感じじゃないけど目が笑ってないのがちょっと怖い。

「876のアイドルさんなら身内みたいなものだけど。
 それより君はこの部屋で誰に会った? 何か見た? 何か聞いた? 正直に言ってみな」

えっと…誰にって如月千早さんとそのプロデューサーさんですよね、
隠れてたから見えてないけど音的にはチューしていたの間違いなさそうだし。
でもなんでわざわざ?
あ、これはあれだ。うちのママと一緒で、正直に言うとむしろゴツンされるパターン。
でもガッツリ怒られたほうが気が楽になる気がした。

「あ、あの……えっと、あなたと如月千早さんが、その、キ、キ………キス?」

プロデューサーさんが待った、というように手をあげる。

「俺と千早が仕事の打ち合わせをしていた、の間違いじゃないかな?」
「はい、確かにお仕事の話もしてました。けど、チューも……」

再び手があがる。

「うん、わかった。確かに君の言うとおり。俺は千早とキスしてた」

そういって笑顔になった。今度はちゃんと目も笑っている。

「いまさら隠してもしょうがないしな。それより、そろそろ時間だからレッスンを始めよう」

なんか話が全然みえないまま、あの件はウヤムヤになってしまいレッスンが始まった。
あの如月千早さんを鍛えただけあって、レッスンは厳しいけどとても充実していた。
夕方近くまで続いて最後はへとへとだたったけど、大きな手ごたえを掴めたと思う。
シャワーを浴びて着替えたあと、今日の報告書をまとめる間待つよういわれた私は
あの部屋のソファーに座らされ、疲れもあってうとうとしかけていた。

「プロデューサー、ただいま戻りました。あら、お客さん?」
「そう。彼女が876の日高愛ちゃんだよ」
「その日高さんがここでスヤスヤ眠っている理由は?」

会話の途中で私は目を覚ましていたんだけど、なんとなくバツが悪くて寝たふりをしていた。

「ふふっ、なら今のうちに朝の続きを」
「おいおい千早……それが原因なんだけど」
「見られていたのなら、1回も2回も同じことです。それとも、踏み倒すおつもりですか?」
「いやいや、そうじゃない。ほら、おいで」

朝はドキドキしたけど、さすがに二回目ともなると、慣れてきたというのか。
熱々バカップルみたいに甘えたキスを繰り返す二人を薄目で見ていると、寝たふりが辛い。
不意にプロデューサーさんが、私を見つめていった。

「愛ちゃん、起きてるんだろ?」

今更気づいてももう遅いんだけど、これはあれだ。
目撃者の私を口止めするため、このあと、あんなことやこんなことをきっと……
逃げたくても手足に革製の輪っかがつけられ、鎖で縛り付けられ身動きできない。

「君の声は大きいけど、ここは完全防音だから叫んでも喉を痛めるだけ。わかるよね?」

声は優しいけど、自分がされていることがとても怖くなった私は、頷くだけしかできない。
こんなことになるなら、さっさと逃げ出せば……わたし、バカだ。ウェッ、ヒクッ…

「そんな泣きそうな顔するな。痛めつけたり酷いことするわけじゃないんだから」

そんなこと言われて優しく撫でられても、信じられるわけないじゃないですか。
人を逮捕するみたいに手錠して、酷いことしないだなんて。

「あれは俺たちにとっては命よりも重要な秘密でね。それを守るための保険にさせてもらう」

そういってプロデューサーさんが私に見せたのはビデオカメラだった。
いや。そんなのイヤだ。お願いします、絶対秘密守ります。口が裂けてもしゃべりません。
だから、やめてください。お願いします。お願い、いや、やめて、いやぁぁぁぁぁぁ…………

目の前にカメラがセットされ、そのまん前でブラウスのボタンが外され、胸元が広げられた。

「ふーん、まだ中学生なのに千早よりも大きいんじゃない?」

ブラのカップがずらされて、おっぱいがカメラの前にさらされてしまう。
やだ……触らないで。イヤ……やだ、やめてください……

「大丈夫。ほら、綺麗だよ、愛ちゃんの胸。俺しかしらないのがもったいないな」

ああ……もうだめだ……元はといえば、悪いのは私だけど。
こんな風にされるなんて。いや、助けて。誰か……

「さて、では下の方も脱いでもらうから」

必死で足を突っ張ったけど無駄だった。
一瞬でホックを外され、スカートはするすると下ろされていく。
いや……やだ。やめて……ぐすっ、うぇ、ひぐっ…うえ、うええええええん
もうやめて、お願いですから許してください、絶対誰にもいいません、もう脱がさないで……
でもプロデューサーの手はなんの躊躇いもなく、私からパンツも脱がせてしまう。
それだけじゃない、足の鎖が引っ張られ、大きく広げられて固定されて。
やぁ……いやぁ、見ないで……こんなのやだぁ……

「うん、愛ちゃんのあそこ、綺麗だね……見るだけってのが惜しいな」

ばかぁ、プロデューサーさんのバカぁ。
見られるだけでもいやなのに、死んじゃいそうなくらい恥ずかしいのに。

「わかるよね、愛ちゃん。どうすればこのビデオが公開されないかってこと」
懸命にうなずいた。
私は何も見ていないし、何も聞いていない。ただここにはレッスンしにきただけです……

「よくできました」

鎖が外されたあとも私は立ち上がることができず、うずくまって泣きじゃくっていた。



「プロデューサー。レッスン、厳しすぎたのでは?」
「そんなことないって。愛ちゃんしっかりついてきてたぞ。ほら、起きて、愛ちゃんてば」

「…………んぁ? ビデオは?」
「あら、可愛い。夢でも見て寝ぼけているのかしら」
「……え、千早さん? プロデューサーさん?」

本当に恥ずかしい話だけど、私はソファーにすわってすぐに居眠りを始めたらしい。
ぐーぐー鼾をかいて眠っている間に如月さんが戻ってきて、二人が起こしてもなかなか
目を覚まさず、それどころかいきなり泣き出してずいぶん戸惑ったらしい。

「あの……朝の件なんですけど」
「そういえば、聞いていただけで見てないっていってたな。お土産代わりに見ていくか」
「プロデューサー?」

いま千早さんの目がすごく怖くなったけど、プロデューサーさんは嬉しそうな顔をしている。
ていうか、こうして二人が一緒にいる様子を見ていると、とてもじゃないけど
氷の歌姫と鬼の敏腕プロデューサーと呼ばれているとは思えない。

「あの……私、口堅いですから。秘密は守ります。だから、口止めとかは、その……」
「ま、あれは事実だし、別に愛ちゃんはあちこちで言いふらしたりしないだろ」

そういって、そばにいた千早さんをぐいっと引き寄せて……

「ちょっと、プロデューサー、だめです、んんっ!」
「…………!!!」
「ま、こういうことだから」
「あ、愛ちゃん。誤解しないでね、付き合ってはいるけど、今のは無理やりされたのだから」

真っ赤な顔で弁解する千早さんが可愛いのもあったけど、初めてみたキスシーンは
衝撃的とかそういうことは全然なく、一言で言えば<ほんわか>だった。
二人がとても幸せそうで、見ているだけで気持ちが暖かくなるような気がして。
この二人って、すごく仲がいいのだな、なんてうらやましくも思った。

よし、日高愛、この秘密は口が裂けても守り通します! と固く心に誓ったのである。


ちなみに二人の熱愛が芸能界では当たり前の事実であって、秘密でもなんでもないって
知ったのはそれからわずか3日後の出来事である。

バカップルは爆発しろ!


おしまい

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