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[SSメモ] 25 2011/05

亜美と真美をテーマにした短編的ななにか



◇前編(真美)

「兄ちゃん、最近真美と亜美を間違えなくなったね」
「君たちが内緒で入れ替わらなくなってくれたお陰です」
「おやぁ、入れ替わるのはやめてないけど、気づいてなかった感じ?」
「嘘付きなさい。それより寝転がってると髪のセットが崩れるよ」

収録が遅れ待たされている某テレビ局の楽屋。
畳の上でだらしなく寝そべっていた真美は猫のように伸びをしてから起き上がると
座卓の向かいに頬杖をついて顔を近寄せる。
「ねえねえ、兄ちゃんは亜美と真美、どうやって見分けているのだい?」
「髪留めと服しかありませんが」
「そーじゃなくて、この前の入れ替わり見破ったときとかだよぉ」
「ああ、あれは勘です。注意したのもハッタリなわけです」

微妙な仕草や口調の端から半ば無意識に判断しているはずだが、
具体的にどこかと聞かれても、実は俺自身はっきり分かっていない。

「そうかぁ……真美のことちゃんと分かってくれたと思ったけど違うんだね」
「なんでしょげるのだ。君たちが本気で入れ替わるとご両親でも見破るのは無理だろう?」
「うん……それはそうなんだけどね」
「それより来年から高校生なんだし、入れ替わりなんて子供っぽいことは卒業して
 女磨いて大人になる方がいいのではないかと兄ちゃんは思うわけですよ」
「つまり今の真美は子供っぽいといいたいわけだね?」
「その通り」

しばらく唇をとんがらせ何やら考え込んでいた真美が、飛び上がるように立ち上がり
その勢いのまま座卓を跳び箱のように越え、俺の隣に着地した。

「兄ちゃん、いいこと思いついた!」
「大人になれっていった先からこれだよ。ほんとに君って子は」
「いいからいいから。それよりさ、兄ちゃんにすごい秘密教えてあげようじゃないか」
「真美の秘密か。そうだな、暇つぶしに何か笑えるやつで頼むよ」
「んっふっふー、それは自信あるし、何より凄くお得情報だよ?」

こういう場合、たいてい悪巧みか悪ふざけと相場は決まっている。
まともに相手をするのは疲れるが、適当に流したら後の祟りが怖い。
真面目な顔で聞き流すといういつもの対応を決め、俺は真美に向かって膝を揃えて見せた。

「うむうむ兄ちゃん、その心がけはいいよいいよ。んじゃいくね」

おもむろにデニムのホットパンツの前ボタンを外し、ジッパーを一瞬で下ろすとそれこそ
止める間もなくスポーンと脱ぎ捨ててしまった。
中学生にしては背伸びし過ぎの派手なフリルのパンツ。それが目の前50センチにある光景は
非現実的でありながら、生々しさが圧倒的だった。
今に至るも俺の前で着替えて恥じることがないのは、小学生からの付き合いゆえに
俺のことを家族同然に思ってくれているからだと信じている。
だとしても、伸びやかに発育した肢体とそれを包む可愛い下着が眩しいのも事実なわけだが。

「ちょ、ま、真美、お前何脱いでんだ、誰か来る前に早く履きなさい」
「そんなことより、ほらほらここ見て」

真美は狼狽する俺にかまわず、パンツの裾をめくりあげ鼠蹊部あたりを露にする。

「ま、真美ちゃん、いい子だから早くズボンはいてくださいお願いします」
「いいから見てって。ここ、ほら、もっと顔近づけて」

理性よ、どうか飛ばないでくれ。
真美の手で頭を引き寄せられながら、俺は心の中で祈っている。

「ねえ、見える? 薄くてちっちゃいから見えにくいかもだけど」
見えてはいけない柔毛が数本コンニチハしちゃってるのはとりあえず幻覚だ無視しよう無視。
とはいえ、そろそろ生え揃いそうな陰毛は柔らかそうで撫でごたえがありそうである。
「い、いや…ちょっと影になって暗いからな。ん、これか?」
真美が引っ張り開いたパンツの裾に隠れるように、小さい黒子がひとつ。
「おお、こんなところに黒子か」

思わず指を伸ばしたのが失敗だった。

「ひゃぁん、駄目だよ兄ちゃん……急に触っちゃ」
一瞬真美の腰がぴくりと跳ね、少し潤んだ声がささやかに抗議する。
すぐ指は引っ込めたが、さっきの声が耳について離れない。
あれは確かに“女”の声だった。

「兄ちゃん、分かった? ちゃんと覚えててよ」
「あ、ああ」
甘いミルクを思わせる肌の匂いと微かに混じった女の匂い。
黒子を眺めるふりをしながらそれを堪能していた俺は、少し上の空で答える。

「でもな真美」
「なに、兄ちゃん?」
「確認のためここまで捲らないといけないってのは実用的じゃないよな」
「そーかな」
「そうだよ。人前ではできないし、もし相手が亜美だったら超セクハラだろ」
「真美なら平気だよ。兄ちゃんが見たいっていえばいつでも見せる覚悟できてるもん」

その真剣な声に思わず俺は顔を上げ、声と同じくらい真剣な視線とぶつかった。
思いつめた、しかしそこには確かに“女”としての表情があった。
だが真剣さがかえって幸いした。
お陰で俺はなんとか理性を取戻すことができたらしい。
真美がいつものふざけた調子だとしたら、俺だって調子にのってあの黒子にキスのひとつも
していたかも知れない。
ともかく超えてはいけない壁は、なんとか越えずに済んだ。

「ほら、真美の目印はしっかり覚えたからズボン履きなさい」
「…黒子以外でも、見たいとこあったら…いつでも言ってね」
いいながら、背を向けてホットパンツを拾おうと屈んだ真美の可愛い尻。
馬鹿いってんじゃねーよ、などと思いながら目の前の尻をポンとひとつ叩いてやる。
「真美がもっと大人になったら考えてみるよ」
「んっ、わかった! 真美のプリプリヒップが見たいんだね! お安い御用だよ!!」
「こら、違うだろ! パンツずらすな、尻隠せ尻!!」
「えー、兄ちゃんが今見せろていったじゃん」
「言ってない、言ってない、いーから早くパンツあげてくれ」
「なんならおっぱいにする? 成長いちぢるしいからねぇ、んっふっふー」



とまあ、そういった他愛のない話であるが、俺の中にささやかな悩みがひとつ生まれたのも事実。
真美にあった黒子、亜美にはどうなんだということである。
一卵性双生児とはいえ、黒子が同じ位置にあるとは思えない。だが今後の万が一を考えれば
亜美の体も確認しておかなければ、真美の目印はその有効性が確立しないのである。

スケジュール帳を開き、次回亜美と二人になる仕事はいつだったか……



◇後編(亜美)

ティーンズ誌のレギュラーも務める真美ほどではないにせよ、亜美とてお洒落には敏感なのであって
営業周りの時の服装も、本人任せでもそんなに差し支えはない。
だから今日のパンツの股上が浅目なのも、ヘソ周りの露出も可愛いからOKを出しておいた。
多少肌の露出があっても、この娘たちの場合はエロさより清潔な色気のアピールの方が大きい、
というプロデューサーとしてのスケベ心、もとい親バカなのは否定しない。

ちなみに今日は大手CDショップの営業で、何箇所も店舗を回りミニライブに握手会にサイン会を
こなすという荒行のようなスケジュールだったが、何とか亜美は乗り切ってくれた。
ただ最後のライブを終えたあと、さしもの亜美も体力を使い果たしたらしい。
控え室に戻るなり、ぐんにゃりと床に横たわった。

「しっかりしろ亜美、仕事はおしまいであとは帰るだけだから」
「にぃ…ちゃぁん…亜美もうお腹空いて動けないよぉ。なんか有名店のお菓子とか食べさせて」
「車の中に差し入れのシュークリームがある。ほら、体起こして」
「うにゃぁぁぁ、起きるの無理。にいちゃん、抱っこして運んでぇ」
「任せとけ。ほら、いくぞ」
抱え起こしてやろうと、背中に手を回そうとした直前、びょんと跳ね起きた。

「うあうあ〜冗談だってばぁ。ちゃんと自分で歩けるよ」
「なんだよ、抱っこなんていつもしてやってるから遠慮するなよ」
「あのさ、人が聞いたら誤解しちゃう発言は困るよ? 亜美はもう中学生なんだからね」
「中学生の子供抱っこして何をどう誤解すんだよ」
「熱愛報道に決まってるっしょ? それに真美だって嫉妬してリレーションで大変だよ?」
そんな俺たちを現地スタッフやスタイリストのお姉さんが微笑ましく見送ってくれる。

「ほら見てみろ。皆思わず苦笑いだよ」
「むきー!! 違うもん! 兄ちゃんの亜美を見る目がエロかっただけだもん!!」
「そっちが誤解発言だよ。そもそも亜美のどこにエロ要素があるんだ?」
「全身あますところなくだよ! 特に今日はオヘソがエロかっこいいんだからね!!」
言いながら、ヘソを見せようとシャツをめくる仕草はまるで子供である。

「確かに形は綺麗だと思うけど、掃除してるか? へそのゴマ溜まってないか」
「ほぇ、マジ? んじゃあとで兄ちゃんに掃除してもらわなきゃだね」
「やだよ、亜美のヘソ掃除なんて」
「遠慮しなくていいよ、むしろこれはご褒美なんだよ」
そんな風にじゃれあいながら駐車場に止めてあるワンボックスに乗り込むと、
シートを倒してテーブル代わりにする。

「ほれ、ゆっくり食べれ。春香パテェシィエの一押しだそうだ」
本当は店のほうにも連れていってやりたいが、人気芸能人ともなればそうもいかないのが
可哀相だ、などと考えていると、お菓子を頬張ったまま亜美が目を上げた。

「そんなにエロイ目つきで訴えても、あげないかんね!」
「そんな目してないだろ、シュークリーム相手に。つかエロいって言うのやめなよ」
「この差し入れ、全部亜美のだから泣いて謝ってもあげないから」
「泣きはせんけど一つくらい味見させろよ。春香さんにお礼言わなきゃなんないし」
「ん〜、そんなら条件次第で分けてあげなくもないこともないよ?」
「何いってんだよ。条件つけるとか世知辛くない? 真美はもっと気前よかったぞ」
「うわぁ、真美だけヒーキするってズルイよ兄ちゃん」
「いやいや、贔屓どころか差別も区別も全くしてないですよ?」
「そんじゃあこれはどういうこと?」

携帯を取り出し、開いて見せられたのは真美からのメール。

<真美さ、今日兄ちゃんに秘密でいいことしてもらったよ♪ 亜美には内緒だよ>


あちゃぁ……真美さん、まずいよこのメール。亜美さん完全に誤解してるよ?
なんで双子同士、隠し切れない隠し事をそんな風に見せ合うのさ。
だいたい姉妹なんだから、秘密にしなくても黒子くらい亜美もしってるだろ。

あ、そうか。
知ってるなら、別に口止めされたわけじゃないから、亜美にこの前の出来事を教えてやっても
全然問題ないじゃん? なんて思っていた時期が俺にもありました。
双子のコンビプレーを甘く見てたからちかたないよね、このあとあんなことになっちゃったのも。



「とまあそういうわけで、足の付け根の黒子を見せてもらっただけだよ。納得したろ?」
「黒子はしってるけど秘密じゃないよそれ。だって亜美にだってあるもん」
おもむろにホットパンツを足首まで下ろした亜美を止める暇はなかった。
「わ、こらこら亜美も脱ぐな、なんでお前らそうやってすぐズボン脱ぐんだよ」
「黒子ってこれっしょ? 亜美にもあるから区別なんて無理だよ?」
亜美はパンツをゴムの方からずらし、真美が見せてくれたのと同じ場所を晒けだした。
位置、大きさ、色、艶、全てが完全に一致。ある得るのか、一卵性双生児って?
若干の陰毛が見え隠れしているところまで再現するとは双子って本当に凄い。

「なあ、正直にいってくれ。お前、本当に亜美か?」
「亜美だよ。携帯みたっしょ? さすがに携帯まで入れ替えたりしないし」
あ、なるほど。そういう見分け方もあったか。
「いやいや、それにしてもここまで同じ黒子があるとは、うーむ」
「ちょ、兄ちゃん…そんなに顔近づけると鼻息がくすぐったいよぉ……」
「それくらい我慢しなさい。兄ちゃんは今すごく大切なことを考えているのだから」
「うん、わかった。でも、そこ触るとくすぐったいんだよぉ?」
言われて気づいたが、薄暗い車内で思春期の少女の下半身下着姿を間近で食い入るように
舐めるように見つめているわけで、しかも両手は柔らかい太ももとすべすべしたお腹、
それぞれをしっかり掴んでいるのである。
だが、いくら目を凝らしても黒子は真美のものと寸分違わないように思えた。
爪先でこすってみたが、亜美がふにゃあと悶えただけで剥がれることもない。
ついでに匂いも嗅いでみたが、こっちは汗をかいていた分、やや甘酸っぱいだけだった。
検証のため撮影することも考えたが、流石にそれはやばすぎる。
二人並べて確かめるのが確実だが、果たして二人がそれを受け入れるかどうか。

「…ねえ、兄ちゃん。ソレより亜美にしかない黒子があるっていったらどうする?」
「マジ?」
「うん。真美も知らない筈。コレなら確実に亜美だってわかるけど見たい?」
「え、えと、それはその、見ていい場所にあるのだろうな?」
「んなわけないよ。兄ちゃんだから特別だよ」
「あのな亜美、下着に隠れる場所なら見ていいっていっても見ないから」
「なんでだよぉ。真美のは見たくせに」
「あ、あれは、場所的にギリギリセーフだろ」
「でも亜美、今凄くはずいんだよ? 兄ちゃんだから我慢してるんだよ?」
そういえば、今同じ場所をパンツめくってガン見してますよね、てへへっ。

「ごめん、つい夢中になっていた。もうやめよう、ほらパンツあげてズボンもはいて」
「真美のは良くて、亜美のは見るの嫌?」
「だから嫌とか好きの問題じゃないんだよ、ほんとごめん」
「そっか。それなら仕方ないよね。いいよ、兄ちゃんが亜美のこと嫌いなら」
「いやいやいやいや、そんなことは言ってないでしょ?」
「でも真美のことは大切にしてあげてね」
「すいません、もう勘弁してください」
「じゃあ見て」
「はい」



逃げる気か、ごまかす気かと暴れ凄む亜美をなんとか宥め、俺の自宅に連れ帰ったのは
いくら目隠しがあるといっても、車内というのはあまりにも無防備な気がしたからである。
自宅なら何度も遊びに来させているし、二人そろっての時はお泊りもさせている。
全ては親御さんのご理解と信頼の賜物なわけだが、いまそれをこんな風に踏みにじるのは
非常に申し訳ないけど…ちかたないよね。
さて、小さなお嬢さんはもうすぐシャワーを終えて出てくるわけだが。
いったい亜美の秘密の黒子はおっぱいか、それとも……ソコなのか?

ほーら出てきた。
静まれよ心臓。それと息子、絶対に立ち上がるなよ、いいか、絶対にだぞ?

「兄ちゃんお風呂で疲れがどっと眠くてしかたないよ」
わけの分からない事をつぶやくと、バスローブのままベッドに潜り込んで眠ろうとする亜美。
「あ、あの亜美さん、秘密の黒子の件は?」
「なにそれ?亜美わかんない。お休み兄ちゃん」
「ちょ、ちょっと亜美、寝るな、起きろ、どうすんだよ今日」
「……好きにしていいよ。あ、それってそういう意味じゃないけど、まいいか、兄ちゃんなら。
でも、するならやさしくしてね、んじゃおやすみ」

仕方が無いから自宅に電話して状況を報告したら、わざわざご両親揃って車で迎えに来てくれた。
丁寧なお詫びに対し心の中で土下座しながら、お父さんにおんぶされて帰っていく亜美を見送った。
一人になった俺は風呂に入り、多めに酒を飲み、ちょっとだけ泣いてそのまま寝た。


翌日。
「どうだった亜美?」
「完璧だよ。兄ちゃん、黒子だって信じてた」
「そっか、意外と単純だったね。いくら双子でも同じ場所に黒子なんてありえないのに」
「うんうん。でもさ、引っかいてもとれないけどお風呂は流石にだめみたい」
「んじゃ、あの胸につけたのも取れちゃった?」
「うん、亜美にしかない黒子見せるっていう第二の作戦は失敗だよ」
「残念だったね。でもまたやり直せばいいよ」
「そうだね。それとね、携帯の入れ替わりのこともちゃんと吹き込んでおいたから」
「兄ちゃん信じてた?」
「もちろんだよ、真美」
「楽しいね、兄ちゃんで遊ぶの」
「うんうん、そうだね。ほんと飽きないね」

「ところで亜美、なんで兄ちゃんちでお風呂に入っちゃったの?」
「……ぅぇぁ?」



おしまい。

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