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[SSメモ] 26 2011/07

千早さん短編集ファイル9393から。


  • 以下本編-

屈めていた背中がゆっくりと伸び上がり、そのまま引き絞った弓のように反り返っていく。
その動きに少し遅れて小さく尖った顎が持ち上がりのけぞる。
開いた口から溜めていた息がゆっくり吐き出され、またゆるやかに息を吸い込んでいく。
穏やかに目を閉じた表情は、うっすらと微笑んでいるようにすら見える。

「またがるのが好きなんだな」
不意に声がかかり、おそらく自分の世界に浸っていたのであろう少女は、
のけぞらせていた顔を下に向け、真下に見える男の顔と真正面から向き合う。

「べ、別に好きというわけでは……」
「さっきの顔、歌っているときとちょっと似ていたな」
「そんなことありません!」
からかわれたと思ったのだろう、反射的に顔をしかめてそっぽを向く。

少女の反応は気にかけず、男はのんびりとした口調で話を続ける。
「冷やかしているのじゃないんだけどな」
「あの、いったいどんな顔、していたのでしょう?」
「そうだなぁ……うっとりとした気持ちよさそうな笑顔かな」

最初の時がそうであったように、この姿勢だと痛みが軽減されるという記憶と、
男に組み敷かれるときと違い、自分のペースで思うように動けることが、自分に主導権を
与えられた気がして気にいっているのもまた事実であった。
ただ覚えてまだ日が浅い少女にとって、男にまたがる姿勢というのがどうにも
はしたないもののように思えて仕方ないのである。
そのうえで好きだろ、などと言われたのだから心底恥ずかしかった。

「やっぱりからかってるじゃないですか!」
そういって少女は伸ばした手で、男の頬をそっとつまみ上げる。
「気持ちよくはなかったかな?」
「そ……それは、その……、あっ、やぁぁ、だめです!」

それまでじっとしていた男が不意に腰をゆすりあげたため、油断していた少女は、
突然の刺激にバランスを崩しかけ、とっさに両手をついて体を支える。
その拍子に、こめかみあたりから流れた一筋の汗が、顎をつたいぽとりと男の顔に落ちる。

「あっ……」
汗の雫は男の唇をかすめて頬に落ちる。
少女が慌ててぬぐおうとする寸前、男の舌がそれをなめ取ってしまう。
「千早、おかわり」
「なっ! 何をいってるのですか」
「何っておかわり頂戴」
「そんな……もうありません」
「じゃあ、別のでいいよ」
そういって、男は大きく口を開いて少女を見上げる。
「別のって……本気ですか?」


体を重ねるたび、男が少女にいいつける突拍子もない要求。
経験と知識を全て男から与えられるしなかい少女にとって、どれだけ恥ずかしいことでも
その行為の真偽や正当性といったものを確かめる術がない。
ただ男の指示は、いつだって…………間違いはなかった。
足を大きく広げられ、その真ん中を直接唇で覆われたときも。
深夜の事務所、窓際にたたされたまま後ろから体を重ねられたときも。
体中が燃え上がるような恥ずかしさの向こう側に、とてつもない快感が待っていた。
だから少女は、男の指示がどれだけ突飛なものであっても決して抗わないし逆らわない。
いつだってほんの一瞬躊躇ったみせるだけだ。
いま、そうしているように。

少女は唇を閉ざすと、その口内に湧く唾液を一箇所に集め始める。
「まだ?」
その様子を知りながら、男は笑って催促する。
少女は小さくうなずいて見せると、そっと唇をすぼめて透明な液体を垂らし始める。
粘り気を帯びた少女の唾液は、細い筋となって男の口とつながり、やがて消えた。
男は満足げな笑みをうかべ、少女の唾液をしばし口内にとどめていたが
やがて喉を鳴らしてそれを飲みくだしていく。

「あ、あの……?」
「うん。おいしかったよ」
男は手を伸ばして少女の腰を支えると、そのまま上体を一気に起こす。
「あぅっ……」
つながったままの男の分身が少女の奥を強くこすったのであろう、
少女は思わず男に強く抱きつく。
「おいしいものを飲ませてもらったお礼、しなくちゃな」
「あ、あの、あっ! やぁ、そ、そんな、やぁ、そこ、あぁぁ……」
「千早も飲みたいか?」
「は、はい、飲ませて……ください」
男が少女を抱き寄せ、その唇をむさぼるように重ねあわせる。
ずうずうしく侵入させた舌が、もう一度少女の口内の唾液をかき集めて
奪い取ってから。
男は口内に集めた唾液を少女の口内に送り返す。

「んっ……んくっ……んくっ」
少女の喉が何度か上下し、男に与えられた唾液を飲み干していく。
「千早……」
「はい」
「次はもっと別のを飲ませてあげる」
「別の、ですか?」
「そう。つばよりももっと、おいしいものを」
「……はい」

やがて男の動きに激しさが増し、少女の意識は快感に飲み込まれていく。
男が自分に与えてくれるのは、いつだってすばらしいものばからなのだから
次のセックスに時にのませてもらえるのは、きっと何か特別のものにちがいない。
い、いま、されているように……こ、こんなにすごくて、気持ちよくて……
だめ、もうわかんなくなる。
あぁ、き、きてる、ああああ、だめ、い、いく
いっちゃう……


おしまい

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