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[SSメモ] 21 2010/09
エロパロデビュー前に書き溜めていたいくつかの練習作のうちひとつ。
看病系でいくつか書いたなかの一つを短めにアレンジしているはず。
(月夜の病室とかあのあたりからの転用である)

  • 以下本編-

ライブが終わり、楽屋でスタッフや関係者への挨拶を済ませると、
いつものようにプロデューサーの運転する車で事務所へ戻る、はずだった。
事務所のみんなが開いてくれる打ち上げという名目のお楽しみ会が待っている。
それなのに、いつもは心地良さすら感じる疲労感が、今日は違う。
体が重く、そしてだるい。思考すらまとまらない。

「少し疲れたかな。ここんとこスケジュールもきつかったから」
「すみません、どうもそのようです。少し眠っても?」
「ああ、かまわないよ」
「それとクーラー、切ってもらっていいですか……」
「つけてないぞ。寒いのか?」

少し熱が出ているのかもしれない。そう思うと余計に寒気が増してくるようだ。
車が停まり、いつもはひざ掛けに使っている小さい毛布がかけられる。

「これしかないが、無いよりましだから。どれどれ」
額にプロデューサーの大きな手が乗せられる。

「やっぱり熱があるな。打ち上げはキャンセルしてこのまま家に帰ろう」
「……だ、駄目です。わたしのための打ち上げですから」
「体調の悪い千早がふらふらで登場して、みんな喜ぶと思うか? 打ち上げは別の日でもできるから」

反論したくても、もう口を開くのも億劫なほど消耗している。
私は目をつぶったまま、事務所に電話をするプロデューサーの声を聞くだけだった。

そのまま眠りこんだようで、次に目を覚ましたのは自分のベッドの上だった。
体は相変わらず重く、あちこちの関節までぎしぎしと痛む。
汗をかいたせいか喉が渇き、何か飲み物をと思って起き上がろうとしたけど体が言うことをきかない。

「目が覚めたか」

すぐそばでプロデューサーの声がした。私は安堵を覚え顔を向ける。

「喉、渇いたろ? かなり汗かいていたからな。ほれ」

支えられて体を起こし、クッションに背中を預ける。
用意してあったらしいスポーツドリンクは、冷えすぎずぬるすぎず、乾いた喉に心地よかった。
喉を潤すのに夢中になり、つい量が過ぎたようで、口からあふれた液体がパジャマに落ちる。
「どうした、千早?慌てずにゆっくり飲みなよ」
そういって、かいがいしく私の顎を拭ってくれる。

パジャマ……?
眠ったままの私を車からベッドまで運び、パジャマに着替えさせてもらったようだ。
彼に肌を見られるのはこれが初めてではない。今までにも何度か仕事の上でそうする機会もあって。
それに、これまでにも何回か我侭をいって一緒のベッドで眠ったこともある。
キ、キスだって。一回だけだけど。外国人がするような、挨拶のような軽いキスだったけど。
私の我侭に付き合ってしてくれた、なんて考えたくない。
事実はそうに違いないのを、自分でもわかってはいるけど。

「ああ、パジャマな。悪いけど着替えさせた。ライブの後で汗もかなりかいてたしな」
「……すみません」
「謝ることないだろ。むしろ俺がお礼をいいたいくらいだ」
「お礼……ですか?」
「ああ。千早の綺麗な肌をじっくり鑑賞できたからな」
「……バカ」
「見えないよう電気は消しといた。それとパンツまでは替えてない」

見えないのなら、パンツも替えてくれてもよかったのに。
って、え、いま私……何を考えてしまったのだろう……
言えば、いつもの我侭と、呆れながらもそうしてくれるのだろうか?
それとも“からかうな”と一笑されて流されるだろうか。
でも。
言わないと、何も進まない。

「汗で気持ち悪いので、履き替えるの手伝ってください。箪笥の上から2段目に」

彼は真面目くさった顔でうなずくと立ち上がる。

「2段目だな。ふむ……これでいいな。お湯変えてくるからちょっと待ってな」
えっ……と……プロデューサー、ほ、本気……?

彼の手で再びベッドに横たえられる。

「電気はつけたままで?」
彼は返事の代わりに、下半身を上掛けで覆い隠す。
見えなければどうということはない、とでも言いたいのですか?

「どうして、ですか」
聞きたいのは、明かりを消さない理由ではなく、あなたが私を受け入れてくれる理由。

「千早の望みはできる限り叶えることに決めている」
彼の手がパジャマのズボンにかかり、それをゆっくりとおろしていく。
「望めば、叶うのですか」
「俺にできることであれば、な」
ズボンが脱がされ、再び彼の手が腰のあたりに触れる。
私が腰を浮かせるまでもなく、その小さな布地はヒップを越えて太ももを通過していく。
それが完全に私から離れたときを見計らった。

「では電気、暗くしてください」
蛍光灯が消され、オレンジ色の小さな電球だけがともる。
微かな明かりだけど、顔の表情までは隠せない。
「布団をどけて、きれいに拭いてください」
いってしまってから、自分の声が震えていることに気がついた。

「俺にできることなら、といったはずだよ? それに千早の望みとは思えないのだが」
「あ、汗で気持ち悪いからです。それだけで……他意はありません」
「やれやれ、千早がこんな我侭な娘とは思わなかった」
言葉とは裏腹の、落ち着いたいつもの声色。
仕事でトラブルに見舞われたときと同じで、こともなげにそれらを片付けてしまう。
そのときとまるで変わりない。

そして、彼はまだ使っていないタオルで自ら目隠しをする。
「これならいいだろ?」
それでもいいのです。見せたいのではなくて、あなたに私の体を任せたかっただけですから。
そんな心の声は外には出さない。

バシャバシャとタオルを絞る音。
ほんのり温かいタオルがおへそのあたりに触れる。
強くもなく、弱くもない。適度な強さでタオルが下半身の汗を拭っていく。
表側をひととおり拭い終わると、閉じた足の間には入ってはこず、うつ伏せになるよう促される。
彼の手を借り、寝返りをうつ。
もう一度水音がして、タオルがお尻に触れる。
その間中、彼は無言のままだった。タオルだけが淡々と仕事をすすめているようだった。

バシャ。終わりを告げる水音。
思わず力を抜いた、そのとき。
不意にヒップに彼の吐息がかかり、ついで温かい感触が伝わって。

く、唇……キス?

バシャ、バシャ。

少し乱暴にタオルを絞る音。
彼の手が伸び、もういちど仰向けにひっくり返される。
足首がつかまれて、片足づつ、膝を立てられる。
そうしておいてから、膝を外側に押されると私の足は抵抗もできず開いてしまう。
私は目をぎゅっとつぶって、声も出ないよう手でしっかりと押さえた。
私の大切な部分に外気が触れ、すぐそこに温かいタオルが添えられる。
タオル1枚隔てた向こうにある彼の手は、ゆっくりとその部分をなぞるように……
何度も何度も……とても丁寧に往復していく。
頭の中が真っ白になり、我慢しきれずにため息が漏れる。


バシャ。

バケツにタオルが沈んでいく音が大きく響く。
彼の指が、わたしの大切な部分をそっと撫でる。
足がさらに拡げられて……そこに熱い息がかかって……

気がついたとき、私の体はもう布団の中だった。
目の前に彼の顔があった。大きな手のひらが、ゆっくりゆっくり、頭を撫でている。
「病人はそろそろ寝る時間だ。鎮痛剤、のんどくか?」
私は答える代わりに、口を開いてみせる。
彼が指先でつまんだカプセルを、私は指先ごとくわえる。
彼が水を口に含み、私の首をそっと抱き起こす。両手で彼の首にだきつき、唇をねだった。
こくりと一口飲み込むと、それでもうおしまいだった。
「……お水、おかわり」
彼は水を含み、もう一度唇が重ねられる。
今度はしっかり腕に力をこめ、わずかな水を飲み込んだあとも離さなかった。

「眠れそう?」
「……はい。でも」
「でも、何?」
「どうして……ですか?」
曖昧な質問。ずるいのはわかっている。
そうでもしないと、自分の望んだ答えではない場合、たまらなく寂しくなるから。
それが、どんなに無謀な望みであっても、彼に断られるのは耐えられないくらい悲しい。
でも。
彼は常に的確に答える。私の望むとおりに。
「千早の望むことは俺が叶えるといっただろ?」
「私の望みは、言葉にしなくても伝わるのですか」
「俺も同じことを望んだ場合。そのときだけ言葉はなくても分かる」

私は彼の言葉に安堵して目を閉じた。
「おやすみ、千早」
彼は今言った言葉の通り、もう一度私に唇を重ね、明かりを消した。

おしまい

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