ブログ「日々是千早」もよろしくね!

[SSメモ] 072 (BLOG:2011/6/24&10/23) 


それは甘美な悪夢だった。
ある夜、舞い降りてきた黒い影が、夢の中で千早を押し倒す。
そして千早にのしかかり、強引に唇を奪うと闇の中へ溶けていった。

目覚めの気分は最悪だった。
夢の中でのこととはいえ、抵抗も無くそれを許した自分に対する憤り。
今なお残る、重ねられた唇の生々しい、それでいて不快ではない不思議な感触。
経験を持たない千早にとって、そんな矛盾する感覚は戸惑うばかりである。
だから千早は、その夢の記憶を不要なものとして捨ててしまうことにした。
数日前プロデューサーと交わした他愛の無い会話がきっかけにすぎないのだから。



事務所でのミーティング時、プロデューサーから渡されたテレビドラマの台本。
春香演じるヒロインの親友役、とだけ聞いてはいた。
「キスシーンはカットしてもらった」
プロデューサーが開いたページには赤ペンでバッテン。その下に(代役)と書いてある。

「ドラマ出演をカットしてもよかったのですが」
無論これは千早なりのジョークである。
精神的にも成長した千早は、仕事の種類にこだわらなくなっている。
今回も主演の春香を差し置いて主題歌を獲得したこと以上に、演技力=表現力の向上だと
このドラマという仕事に大きな期待を向けているのである。

「ところで脇役なのにキスシーンですか。どういう感じなのでしょう?」
「千早でも興味あるんだ?」
「でも、というのはどういう意味ですか。ただ参考までに聞いてみただけです」
一番身近な存在であるプロデューサーに対して、千早は小さい嘘をついた。
ファーストキスすら未経験だが、全く興味が無いわけではなかったから。
歌に身を捧げている今、そんな暇は無いけれど、将来に備えるのは悪いことではないはず。
そんな言い訳じみた考えに、つい心の中で苦笑を浮かべる。

「春香の恋人が綺麗で可愛い親友に心を奪われて、思わず強引にチューって流れだ」
「恋人がいるのに、その友達に手をだすなんてイヤな男です」
「ふむ……千早の恋愛観は一途のようだな」
「一途ですか。私にはよくわかりませんが」
確かに一途と言われてもピンとこない。浮気する男は許せそうにないが。

「それより、遠目なら代役でなくても、キスのフリでよかったのでは?」
「そうなんだが、万が一ってのがあると困るからな」
「万が一?」
「たまにいるんだよ。指示を無視してほんとにキスしちゃうバカが」
「そうなのですか……」
「そうなのですかって。千早だって困るだろ、そんな風にキスされたら」
「えーと、それは、まあ……そうですね」
「それに俺だって困るしな」
「何故プロデューサーが?」
「何故って千早は俺のものだからな。勝手にキスとか絶対に許さんぞ」
「はいはい、わかりました。そのような場合は予め申請書類を出しますから」
そこまで言って、我慢できずに千早は笑い出してしまった。

<千早は俺のもの>というのはプロデューサーお決まりの台詞なのだ。
最初<千早は俺の大切なアイドルだから>だったのが、いつの間にか<俺のもの>なっている。
それが彼お得意の冗談であっても、大切にされている実感はやはり嬉しいものだ。




果たして、影は数日をおかず、再び千早の夢に舞い降りる。
この前と同じように、荒々しく千早を押し倒しそうするのが当然のように唇を重ねて来た。
千早は抵抗せずにそれを受けとめ、唇の感触を改めて確かめてみる。
生々しく、それでいて胸の高鳴るこの感覚はこの前と何も変わらない。
違いといえば、前よりも遥かに長い時間、唇を重ね合わせていたことと、
前は固く閉じていたはずの唇を、今度は自分から開いて応えていたこと。
だが千早が覚えていたのは、夢の中でキスを交わした微かな記憶だけだった。

目覚めは前ほど悪くなかった。
影の正体が分からない事、同じような夢を何度も見る理由が分からない事。
それさえ除けば、夢でのキスは千早にとってそう悪いものでもなかった。
影によるキスが性行為の開幕に交わす類のキスであったとしても
経験が無く知識も乏しい千早にとっては、ただのキスにしか過ぎない。
そして千早が忌避する性行為の範疇から、キスという行為が除外されつつあった。


「千早、聞いてる?」
「…………えっ!?」
我に帰る、という表現がピッタリ当てはまった。
向かいの席からプロデューサーが笑いながら私を見ている。
打ち合わせの最中に迂闊だった。意見を求められ、思考を巡らせながら
ついプロデューサーの唇に目がいってしまい、そこから記憶が昨夜の夢に飛んで…………。
「す、すみません」
「俺の顔がどうかした? さっきからずっとこっち見つめているけど」
「な、なんでもありません。考えが……そ、そう、考えがまとまらなくてつい」
「ふうん。まあ程々にな。可愛い千早に見つめられると照れてしまう」
「なっ! ふざけないでください……」

なんとか誤魔化せたはず。
だが、どうしてあの夢を打ち合わせの最中、あんな鮮明に思い出したのだろう。
そして相手があの影から、目の前にいるプロデューサーに変わっていたこと。
ひょっとして、影の正体はプロデューサーなのですか?
そんなことを真剣に考えてしまう自分に、つい吹出してしまった。たかが夢なのに。
だが、千早には夢が無意識からのメッセージであることなど知る由も無い。


そして数日後、またしても黒い影は千早の夢に舞い降りる。
(あぁ、また来てくれたのですね?)
まるで影を歓迎するような自分の言葉に気づかないのは、夢の中の出来事ゆえか。

(今夜も……たくさんキス、してください)
自らシーツを剥ぎ取ると、パジャマに包まれた肢体を影の前に晒けだす。
影は千早の上に身を屈め、先夜とは違いやわらかく唇を重ねていく。

(……んっ……んんっ、今日は随分優しいのですね)
影の唇もやさしく、やわらかく千早の唇を撫でるようになぞっていく。
それはプロデューサーが、仕事がうまくできた千早の頭を撫でるときのようだった。
だから千早も懸命に唇で影の愛撫に応えようとする。

(んん…んむ……んはぁ、あむん……んんんっ)
目を閉じ、唇に与えられる繊細な快感に集中していた矢先、影はついっと唇を離した。

(んっ。……もうおしまいなのですか?)
恐る恐る目を開いた千早は、影の視線が向いた先にあるものに気付いた。

(む、胸……ですか?)
視線を下げると、パジャマに包まれた膨らみが、呼吸にそって小さく上下している。

(わ、わかりました……今夜はここにもキス、なのですね?)
何故胸を求めるのかなどと考えなかった。ただそこにキスをするだけなのだから。
千早はためらうことなくパジャマのボタンを外し、胸元を大きく開いた。
影は口元に満足げな笑みを浮かべ、千早の胸に顔を埋める。
可愛らしい膨らみの先端を影が交互についばむたびに、千早は小さく声を上げた。
唇へのキスとは比べ物にならない鋭い感覚。
それが性的な快感であることを自覚せぬまま、千早は影の愛撫を受け入れている。

昨夜の行為で得た快感に満足だった千早だが、起き上がった瞬間自らの姿に愕然となった。
パジャマの前は完全にはだけられ、寝るときブラをつけない乳房が剥きだしになっている。
あわててボタンを閉じようとして乳首に指先が触れ、疼くような感覚に気づく。
あれは間違いなく夢だった。寝ぼけただけだ。そう、私は夢を見て寝ぼけただけ。



夜の会議室で行われているドラマのリハーサル。
苦手なラブシーン、といっても春香の恋人役に抱き締められるだけなのだが、代役を務める
プロデューサーに腕を回された瞬間、思考が飛んでしまっている。
頭の中で再生される例の夢。影がプロデューサーに代わっていることに気付くことなく、
千早の思考はただ淫靡な記憶を追いかけ、ぞるだけだった。

「千早さんが今みたいにぼんやりすることもあるんだな」
プロデューサーの言葉に冷やかしのニュアンスは含まれていなかったが、いわれた本人に
してみれば、ぼんやりというより放心状態に等しい醜態だったわけである。
ましてや、その理由が理由だけに。
千早の顔が熟したトマトのように真っ赤に染まっているのは当然だった。

「すみませんプロデューサー。すこし休憩いただいても?」
かろうじて洗面所まで逃げてきた。鏡にはまだ赤面したままの自分が映っている。
おかしい。そんなはずはない。
ただの夢、気まぐれでみるキスするだけの夢だった。
どうしてプロデューサーが影の代わりになってしまっているの?
もう、駄目だった。顔を洗っても熱い珈琲を飲んでも集中は取り戻せなかった。
それだけではない、プロデューサーの顔すらまともにみれなくなった。
体調不良という苦しい言い訳をプロデューサーは疑わずその夜のリハはお開きとなった。


その夜も、やはり影は現れた。
壁一面に鏡が張られたレッスンスタジオで、何故か下着姿でレッスンを行っている千早。
鏡の奥から姿を現した影は、彼女の手をとりステップを踏み始める。
千早も影の体に手を回し、足裁きに集中して懸命についていこうとしている。
覚えのあるステップ、そう、確か苦労してマスターしたこの前の新曲の振り付けだ。
プロデューサーについてもらい、操り人形にように動きをトレースしてもらったとき。
最後までうまく出来た、と振り返った千早の体を引き寄せ、影は唇を求めた。
そして千早は抵抗もせず体をゆだね、その口づけの甘さに酔いしれてしまっている。
知らぬ間に影は背後に回り、後ろから伸ばした手がゆるやかに胸の愛撫を始める。
やがて片方の手がゆっくり体を降りていき、ショーツの中に潜り込んだ瞬間。
千早や力を抜いて目を固く閉じた。

翌朝目覚めた千早が最初にしたのは、まっすぐ浴室にいくことだった。
昨夜履き替えたばかりのショーツを洗濯機に放り込み、そのままシャワーを浴びる。
寝ている間、パジャマを全て脱ぎ捨てていた理由は考えたくもなかった。

久しぶりに顔を出した事務所だが、生憎みんな仕事に出ており休憩室は無人だった。
自主レッスンに気乗りしなかった千早は、パソコンと格闘しているプロデューサーの隣に腰を下ろす。
キーボードを走る指は意外と器用で、しなやかな指づかいはピアニストのようだ。
まるで昨夜の影のように。

(やだ、私何馬鹿なことを考えているの?)
慌てて打ち消そうとしたけれど、彼の指から視線が外せない。
夢に現れる影の正体は考えたこともなかったけど、もしかしたら……?

(まさか、プロデューサーがあんな風に私を求めるだなんて考えられない)
そもそもあれは夢なのだから。いろいろとおかしいところはあるにせよ。
仕事で出たキスの話とか、振り付けの時プロデューサーに体を支えてもらった事とか、
そういうのが夢の中で出てきただけ。そうに違いない。
プロデューサーはあくまで仕事の上でのパートーナーにしか過ぎないのだから。


その夜、お風呂から上がった私は下着もつけずにベッドに入った。
夢に現れる正体不明の影に、いつまでもいいように弄ばれているわけにいかない。
だから寝る前に影のしたことを自分で済ませてしまえば、あるいは。

左手を胸にあてがい、ゆっくりと揉んでみる。
指が乳首にこすれ、そこが気持ちいいのだとわかる。
影の代わりに、今日見たプロデューサーのしなやかな指を思い浮かべる。
(プロデューサー、私の胸触ってみてください。あっ、そ、そこです……)
(気持ちいいか、千早?)
(ふぁっ……き、気持ちいいです。もっと、もっと沢山触ってくだ、あっ、やっ)
影がついばんだのを真似て、指先で軽く乳首を摘んでもみる。
疼くようなもどかしい感覚。それを追いかけてなんども何度も続けているうち
自然と声が漏れ出してしまう。
胸を揉みながら、唇の代わりにあいている手の指を舐めて、くわえてみる。
これも、き、気持ちいい……それならこっちも……
さんざんしゃぶって唾液にまみれた指を下腹部にのばす。
陰毛をかきわけ、触れた所がぬるぬるしているのは、指についた唾液のせいじゃない。

(し、したの方も……や、ゆっくり……やだ、ここも気持ちいい……)

指をすべらせるとニチャっといやらしい音が響き、私はいつのまにか夢中で指を滑らせている。
脳裏にプロデューサーの姿を描きながら、私は夢中で胸を揉み、性器を指でなぞる。
とろりと濡れた指を胸にあて、乳首を転がしなすりつけて見たり。
その指を口にも含んでみる。とてもいやらしい匂いで、いやらしい味だと思った。

している間は夢中だったけど、ふと我に返ると、昂ぶっていた気持ちはすっかり醒め果て
あとに残っているのはただ虚しさだけだった。
確かに肉体的には気持ちよかったけれど、夢で影がしてくれたのとは比べ物にならない。
のろのろと体を起こすと、敷いていたバスタオルで、濡れた体をざっと拭う。
べとべとする体が不快だったけれど、気持ちが萎えてシャワーすら面倒だった。
パジャマだけ着てベッドに潜り込む。

そしてその夜、黒い影は現れず、夢もみなかった。
久しぶりに朝まで熟睡でき、気持ちよく目覚めることができた。
つまり昨夜のあの苦労は正解だったということだ。
確かに終わったあとの気分はなんともいえないものがあったけど、
シャワーを浴びて体をさっぱりさせると、それだけで気分が爽快になる。
事務所でプロデューサーと顔を合わせたときは、さすがに気恥ずかしかったけど
仕事に入ればすぐに気にならなくなった。

それから1週間ほどたつが、あの黒い影は姿を現していない。
寝る前に行うあの儀式が、私の考え通り有効だったのだと思う。
何回かしているうち、気持ちよくなるコツもわかり“最後”までいきつけるようになった。
頭が真っ白になり体中から力が抜け、終わったあと、朝まで熟睡できる。
最初のころ感じた虚しさとか罪悪感は“最後”までいけなかったせいだと思った。


泊まりの仕事はたまにあるけど、3泊というのは初めてだった。
しかもビジネスホテルやシティホテルのようにただ泊まるだけの場所ではない。
ロケ現場に近くて便利ということで、今回滞在するのは会員制リゾートホテル。
広くて居心地がよい部屋にはベッドが二つと襖で仕切れる3畳くらいの畳のスペース。

「といってもここは寝に帰ってくるだけだからな……」
「でしたら、いつかオフのときに連れてきてください」
撮影を終えてホテルに戻り、遅めの夕食を取るともうかなり遅い時間だ。
普段ならミーティングを欠かせないのだけれど、流石にプロデューサーもお疲れだから
簡単な確認事項だけチェックするとそれでおしまい。あとはお風呂に入って寝るだけだ。

流石にプロデューサーは遠慮があるらしく、ベッドを私にゆずって自分は襖で仕切れる
畳スペースの布団で寝るということになった。
「夜這いは禁止だからな」
「あの、プロデューサー。夜這いというのはなんですか?」
「し、知らないのならいいよ。じゃおやすみ」
「ちょっと待ってください。言葉から察するとなんだか怪しいのですが。あ、待ってください」

逃げられた。
とりあえず、一応別室で寝ることにはなったけれど、問題は夜のあのことだった。
1日、2日くらいなら平気でも、3日連続しないというのは試したことがない。
それが原因で例の夢が再現してしまったら、翌朝とんでもない状態を見られかねない。
自宅以外でもあの夢は現れるだろうか?
撮影で疲れ果てている現状で、あの夢は現れるだろうか?
今までのことを考えれば、可能性は低そうだけれど100%の保証ではない。
そんなことを考えながら迷っているるうち、私は眠りに落ちてしまっていた。


そしてその夜、久しぶりに影は私の夢に戻ってきた。
ベッドで眠る私のシーツを乱暴に剥ぎ取ると、パジャマのズボンを引きおろし
ボタンをいくつか飛ばしながら前が開かれる。
今までは、それでも優しく丁寧な愛撫だったのに
今夜のそれは、あたかも暴力的というかまるでレイプのようだった。
それなのにすぐそばでプロデューサーが眠っているという緊張感からくる刺激が強く、
私は懸命に溢れそうな喘ぎ声をかみ殺しながら、影の荒々しい愛撫に身をゆだねている。
溢れ出した粘液でぐしょぐしょの性器をなぞっていた影の指がすっと引いていく。

もうおしまい? そんな不満はすぐ、異様な感触でふさがれる。
明らかに指とは違うものが、私の性器にあてがわれている。それは指より遥かに太く固い。
それが私の性器におしつけられてゆっくりと前後しはじめる。

これは、もしかして。これが、男のひとの……性器!?
では、ついに今夜私は影に……初めてを、私のしょ……処女を?
次の瞬間、大きくずりあがった影が私の敏感な部分を直撃し
強烈な電撃が頭の中を真っ白に焼ききって、私は果てていた。


しばらくして意識が戻った後、もう一度そこに指を這わせてみる。
気持ちはいい。特に小さな突起のところは。
けれど、さっき影の大きくて固いペニスでこすられたときの快感とは程遠かった。
やはりあれじゃないとダメなんだ。
ほしい、もう一度あの刺激がほしい。痺れるようなあの快感を味わいたい。
そして、それはそこにある。あの襖の向こうに……





膝まで脱ぎかけだったズボンを脱ぎ捨て、パジャマの上もベッドに投げた。
下着もいらない。あっても邪魔になるだけだから。
ベッドから起き上がった私は全裸のまま、プロデューサーが眠る場所に近づく。
寝ているだろうけど、襖に耳をつけ寝息を伺おうとして

「……千早」
はっとして顔を引く。確かに今、プロデューサーが私の名前を呼んだ?

もう一度。
「ちはやぁ、はぁ、はぁ、ううっ……千早、いくぞ」
時折混じる荒い息。衣擦れの音。そして、規則正しいリズムの音。
もしかしたらと重いながら、思い切って襖を開けた。

ちいさなオレンジ色の電球が、布団の上でプロデューサーがしていたことを
余すところなく暴露してくれた。
浴衣の前が大きく広げられ、その中心にそびえているものこそ
つい先ほどまで私を快楽の海に溺れさせたものと同じもの。
プロデューサーはそれを握り締め、私の名前をよびながら上下させていた。

「やっぱりあの影はプロデューサーだったのですね」
嬉しかった。
最初に夢を見たときは驚き戸惑ったけれど、いつしか影を待つようになっていた私の体。
その正体が大切な人だったのだから。

「千早、違うんだこれは。えっ、待て」
プロデューサーに抱きついた。そのままの勢いで布団の上に二人して転がって
私は彼の体の上に馬乗りになる。

「プロデューサー、さっきみたいに……またしてください」
そのまま下半身を動かし、濡れたままの性器を彼のペニスにこすりつける。
瞬間、その先端が私の気持ちよくなる小さなボタンを押して
いきなり快感のスイッチが入った。

「あぁ、プロデューサーのが……きもちいい、もっと、いっぱい……」
「千早、どうしたんだ、まて、ダメだあ、うっ、動くと」
「いいんです、いっぱい。さっきみたいに。いつもしてくれてたみたいに」
「千早……」
やがて彼は抵抗をあきらめ、私を押しのけようとしていた手が両の乳房をぎゅっと押さえる。

「プロデューサー、好きです。いっぱい、してください」
またがった腰を動かしながら、上体をかがめて唇を重ね合わせる。
夢の中で何度もしたキスをこうして実際にしてみれば、それだけで絶頂しそうなほど心地よかった。
舌と舌を絡めながら唾液を啜り、そして彼のねだるのにまかせて流し込む。
ぺちゃくちゃと音を立てながらのキス。
そのとき不意に、彼の先端が私のあそこに突っかかった。
それまでは彼の固いペニスの幹にこすりつけているだけたっだのが
動きの拍子に、わたしのあそこを広げて中にもぐりこもうとしている感じ。
例のボタンとはまた違う、異様な感触が背筋を這い上がっていく。

「入りそう……プロデューサーのおちんちんが私のなかに」
「千早、おいで……」
もう躊躇いはなかった。腰を位置を変えながら、彼のものを迎え入れる一番いい場所を探る。
やがて太いその先端が私の開きかけた襞を押しのけるようもぐりこむ。

「千早、そこだ……ゆっくりと」

彼の声にしたがってゆっくり腰を下に向けておしつけていく。

「んっ、あぁ……ぐぅ、つぅ、あああっ」
「痛かったら無理するなよ」
「だ、だいじょうぶ、うぁあ、んんんっ!」

途中まで入ったとおもうのだけれど、そこで何かが邪魔するようにせき止めている。
だめ、痛いけれど全部いれないと。
全部いれるともっと気持ちよくなるはず。
プロデューサーと、ひとつになりたい。
しっかり繋がりたい。
だから、だからぁ……

目をつぶり、全体重を預けた。
引き裂かれるような鋭い痛みが走り、その直後からだの中の一番奥までたどりついた
彼のペニスが私の子宮に勢いよくキスした瞬間
その夜、私は二度目の失神を味わいゆっくり意識が闇に包まれていった。



その夜を最後に、私の夢に黒い影が現れることはなくなった。
まぶたをひらくと、目の前にはプロデューサーの優しい顔があって
時々意地悪そうな顔で私を焦らしたりもするのだけれど
いつもいつもとても気持ちよくしてくれるので
まったく不満はない。
あとで聞いたのだけれど、あのホテルでとまった夜は
私が影に襲われているときに立てた声があまりにもいやらしく
といって手を出しにいくわけにもいかないから、悶々としながら
一人でなんとかしようとしていたということである。

だから、仕事で彼が私に意地悪だったときは
その夜私は彼に意地悪してあげるのだけれど
結局、それが最後までできたためしはない。


私のほうが変態だから、なのかしら。


おしまい。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

管理人/副管理人のみ編集できます