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[SSメモ] BLOG ONLY 2011/07.02

  • 以下本編-


「律子、誕生日おめでとう」
高級ホテルの展望レストラン、ワインで乾杯したあと、おもむろに取り出す指輪。
綿密なシミュレーションの上で決めた誕生日の演出を己の凡ミスで台無しにしてしまうとは……

「暑い! 手が止まってる!!」
律子は画面を睨みつけたまま、手を一瞬たりとも止めず叫んだ。
「ごめん……」
エアコンの止まった夜更けの事務所で、失念していた大事な書類の仕上げを律子に任せ、
PCに打ち込む彼女の後ろから、団扇で扇ぐだけの簡単な仕事、それが今の俺の現実だった。

りっちゃん怒ってるだろうな。
もう深夜近い時間なのに、事務所にこもった熱気は一向に冷める気配がない。
二人ともとっくに上着を脱ぎ捨てているが、それと団扇程度では間に合うわけもなく
シャツも下着も間断なく滴る汗でぐしょぐしょになっている。
本来なら今頃夜景の奇麗なホテルの部屋で、別の意味でびしょびしょになっているはずが。
こぼしかけた溜息を慌てて飲み込んで、両手に持った団扇に集中する。
それにしても、律子の集中力は大したものだ。
俺一人なら徹夜しても間に合うか分からない仕事が、もう半分以上は片付いていて
それでもなお律子の手は止まらずにタイピングを続けている。
だが疲れが溜まってきたのか、手を止め肩や首をぐりぐり回す回数が増えてきた。
「あ、あの、良かったら……」
「後で」
肩でも揉もうかという提案は言い出す前に律子に制止される。

「ごめんなさい、あとちょっとで終わるから」
ややあって律子はそう付け加えると、さらにタイピングのペースをあげる。
扇いでやりながら見守るだけなのは仕方ない。そう決め込んだ俺は、
何気なく視線を移動させながらふと気付いてしまった。

かなり透けてる……
ジャケットを脱いだ下は白のブラウスだったが、汗のせいでその下のキャミソールはおろか、
ブラジャーの色や形状までがはっきり浮かびあがっている。
前を見ると、風を通すため外したボタンのおかげで、奇麗に盛り上がったおっぱいが半分以上
見えているだけでなく、深い谷間に溜まった汗の雫が余計にエロくみえてしまう。
そのせいで血流が一部に集まり、この場に全くそぐわない現象を励起していく。
やばいやばい。こんなのばれたら俺は律子に●される。
懸命に意識をそらしながら、でも視線は1mmも胸元からはずさず俺は律子を扇ぎ続ける。

「ふーーー、これでおしまいっと!」
暑さと妄想で飛びかけていた俺の意識が、律子の歓声で引きもどされる。
「上書き保存して、っと。はい、これで完了ですよ」
「あ、ああ……お疲れ様。なんとか今日中に終わったな」
「それよりも。プロデューサー殿にはどのように落とし前をつけてもらいましょうかね」
椅子を回して振り返った律子が俺を見上げてにやりと笑う。

「あ、あの……まずは肩でもお揉みしましょうか?」
「あら、そうね。じゃ、お願いしようかしら、肩揉み」
外した眼鏡をコトン、と机に置いて、椅子を回して俺に背中を向ける律子。
「最初、首からお願いしますね。そのあと肩と肩甲骨で」
「かしこまりました」
「結構汗かいちゃってるけど、それは我慢してくださいよ」
「むしろご褒美かと」
「あはは、馬鹿いってないの」
怒っているどころか、楽しそうな声でコロコロと律子は笑う。


その律子の額を左手で支えながら、首筋を掴んだ右手にゆっくり力を加えていく。

「んっ、くぅーーーーーーっ、効くぅーーっ」
「どうかな、力加減は」
「あぁっ……そ、いいですよ、んーーーー、気持ちいいわ……」
「本当に申し訳なかったな、律子」
「あははっ、何そんあ神妙なこと言ってるんですか。あ、そのまま肩お願いしますよ」
「了解。だが……ブラウスが滑る」
「んっ……では」

そういって律子はさっさとブラウスのボタンを外して、あっさりとそいつを脱ぎ捨てた。

「うわぁっ、一枚脱いじゃうと結構涼しいですよ」
「いや、その大胆なのはいいけど、結構目の毒というか……」
「何を今さら。仕事の間もじっと胸見てたんじゃないですかね?」
「ま、まさかそんなことはナイデスヨ」
「モニター画面に変な目つきした男の人が写ってたのは気のせいですかね?」
「……ごめんなさい」
「ま、それだけこれが魅力的、ってことにしといてあげます」
律子は肩を俺に委ねながら、器用に腕を胸に寄せて谷間を強調させている。

「もう俺は……」
「おっとぉ、何もしちゃいけないのは別のプロデューサーに任せてくださいねー」
「ぐぬっ……」
「プロデューサー殿のことですから、背伸びしたレストランとかで、凝った演出の
誕生日プラン考えていてくれてたんでしょ?」
「背伸びは余計だ」
「ありがとうございます。私は別に今日中とかには拘りませんから」
「わ、わかりました。後日予約してご連絡させていただきます」
「うむうむ。それはそれとして、今日はまだあと15分ほど残っているようですよね?」
「あ、ああ……」
「ならその15分は誕生日っていうことで、私の好きにさせてもらいますよ」


マッサージを終えた俺は、律子の指示に従って事務所の照明を落としていく。
それが済むと、これまた指示に従ってその場で律子を引き寄せて抱きしめる。
汗ばんだ律子の体。肌のにおい。
もう止まらなくなりそうな俺を制して律子が楽しそうにいう。
「はいはい、あとは好きにしていいけど最初におめでとうのキスくらいは
ちゃんとしてくださいね、プロデューサー殿?」

そう言われた俺は、渾身の思いを込め律子に唇を重ね合わせる。
律子の汗ばんでかぐわしい肢体を抱擁で包み込んだまま、日付が変わるまでの数分間
俺と律子はただただキスに溺れていた。


「さて、どうしましょうかね。なんならこのまま……?」


おしまい

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