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[SSメモ] 102 2013/02/25  38-359(4)

  • 以下本編-



ほら、お母さんのお腹触ってみて。このあたりよ

うん……あっ、うごいた! ぴくってなったよ!!

ふふっ、お姉ちゃんのことが赤ちゃんにも分ったみたいね。

おかあさん、あかちゃんはおとこのこ? おんなのこ?

さぁ、どっちかしらね。あなたはどっちが欲しい?

うーんと……おとうとがいいかな……

そう、この子は元気いっぱいによく動くからきっと男の子よ


ねえねえおかあさん、あかちゃんってどうしたらうまれるの?

あらっ、それはあなたが大人になってお母さんになれば分ることよ

えー、おしえてよ、おかあさん?

そうね……お母さんとお父さんが仲良くしていたから、かしら?

なかよくしてたらあかちゃんがうまれるの?

そう。空の上から赤ちゃんたちは探しているのよ。どこのおうちに生まれたら
幸せになれるかなって。

そうか! おかあさんとおとうさんのなかがいいとしあわせだからでしょ?

ええ、そうよ。この子もあなたもそうやってお母さんたちのところに生まれてきたの。
その時のことはもう忘れてしまったかしら?

うん……おぼえてない

ねぇ、これはとても大事なことだからちゃんと覚えておくのよ。
あなたが結婚して赤ちゃんが欲しくなったら、お母さん達みたいに仲良くすること。

うん! わかったよおかあさん。

あとね、もう一つ大事なことがあるの。
あなた自身が心から赤ちゃんが欲しいって思わないといけないのよ。

わたしがうまれたるときも、おかあさんはそうしたの?

もちろんそうよ。やさしくて可愛い女の子が欲しいとお祈りしたから。

わかった! ちはや、ぜったいわすれないようにおぼえておくね!

ふふっ……あなたはきっといいお母さんになれるわ。
その日がくるの、お母さんも楽しみにしているからね、ちーちゃん?





開いた扉の向こうで出迎えてくれたのは妻の9393した顔だった。
仕事の文句は絶対言わない彼女のこと、深夜の残業も仕事の持ち帰りも
労ってくれこそすれご機嫌斜めになる理由にはなり得ない。
思い当たる節を考えていた俺が原因に辿りついたのは食事が終わる頃で
気が付けばテーブルの向こうに座っていた妻の姿は消えていた。
どうやら話し合いは諦め寝室に引っ込んでしまったらしい。

食事を済ませた俺はテーブルを片付けるとそのまま寝室に向う。
何もテーブルで向き合うだけが話し合いではなく、俺の経験でいうなら
寝室での話し合いが一番効果的で成功率が高いはずである。
そしてドアを開くと寝室はまだ明るいままで、ベッドの上に座った妻は
つまらなそうな顔のまま、めくっていた雑誌をパタンと閉じた。

「やっぱり起きて待っててくれたんだな」
「……もう寝るところです。それより仕事はいいのですか?」
「今から取り掛かるところだよ」
「な、なんでもそれで誤魔化せると思ったら大間違いですから」
「そうかな?」

俺はヘッドボードに並べてある一組の人形に目をやった。
結婚祝いに贈られた俺達そっくりの人形で、仕込んである針金によって
好きなポーズを取らせることができ、妻の気分よってポーズが変わるため
俺は密かにイエスノー人形と呼んでいる。
今朝まで手を繋いでいたのが、今は俺が妻に抱きついている格好をしている。

「ち、違います! これは……その」
「照れなくていいからおいでよ。こないのなら俺からいくぞ?」
「やっ、駄目です……今そんな気分じゃ、あっ、待って、んんっ……」
少し強引に唇を奪ってやるだけで妻は抵抗を諦め、舌を侵入させる頃には
甘い鼻声をもらしながら俺にしがみついてきた。
そのまま一緒にベッドに倒れこみ、首筋に舌を這わせながらパジャマがわりの
ワイシャツを脱がせていくと、やはりブラはつけていなかった。
それを指摘して引っぱたかれたことがあるから、俺は黙ったまま乳首を咥えると
かすかに甘酸っぱい味が舌に伝わってくる。

「待ってください……あの、まだお風呂入ってなくて」
「そう、なら俺が綺麗にしてあげないとだな」
「やぁ…意地悪しないで……今日は汗もかいたし汚れているから」
「意地悪だったのは誰だっけ?」
「…………それは」

実際のところ、キスして撫で撫でしながら彼女の機嫌を直そうと思っていたのだが
勢い余って脱がせてしまったことで俺の方が引っ込みつかなくなっていた。
どのみち妻もスイッチが入っているようだから、まずは体で話し合いをしてから
終わった後にゆっくり言葉を交わせばいいだろう。
そう思って下腹部に伸ばした手が、下着の中に入る直前手首を掴まれ阻まれた。

「……駄目」
「今日の千早は意地悪ばっかりだ」
「ち、違うから……」
そういうと彼女は俺の体を押しのけ、仰向けに転がされた俺の上に跨った。

「悪いのは私です……だから今日は私が」
「ちょ、待て千早。俺も風呂まだだから、な?」
だが彼女は俺を無視してベルトを外すと、パンツごとスラックスを引きずり下ろし
先走りを滲ませた俺の愚息を根元まで咥えこんだ。

未だにテクニックという言葉が似つかわしくない、どちからといえば稚拙な口淫だが
初めて千早が俺のを咥えてくれたとき、わずか十数秒で口内にぶちまけてしまって以来
千早がその行為をするという事実だけで俺は常に暴発の危機に晒されている。
そして初めてから2年以上立った今、彼女は無意識のうちに俺のツボを体得しており
その舌が雁首を掠めるたび、口内全体で吸い上げられ締め付けられるたび、
そして時折恥ずかしそうな上目遣いが俺を見上げるたび、緩みそうな引き金を
必死で堪えながら反撃の機会を伺うが勝率は芳しいものではない。


「千早……すごく気持ちよかったよ」

彼女の頭を撫でながら意識をそらす試みは逆効果だった。
亀頭を舌で攻め立てていた千早は再び根元まで深く咥え込むと
口腔に擦りつけられた亀頭が限界を告げる。
顔をあげた彼女と視線がぶつかった瞬間、熱く潤んだ淫猥な瞳が俺を射抜き
最後の悪あがきをする暇も無く、俺は千早の口にたっぷり精液をぶちまけていた。

彼女は拗ねたような表情で俺を睨みつけたが、それでもぴったりと唇を閉ざしたまま
何度も続く脈動を耐えた。そして放出が終わると顔をあげ、俺を見つめたまま口に
溜めた精液を飲み干した。

「……ごめん千早。あまりに気持ちよすぎて、その……つい」

しばらく無言で俺を見下ろしていた千早は、ピンクの舌をのぞかせて
唇に付着した白濁の残りをぺろりと舐め取ってから、ようやく笑顔を見せた。

「ふふっ、しょうがないですね。今日は中に出してもらおうと思っていたのに」
「またまたご冗談を」
「あなたこそ。まさかこれでお仕舞だなんて、冗談でも駄目ですよ」
「それはもう……休憩時間をもらえるのなら」
「では一緒にお風呂というのは?」

異論などあるはずもなかった。
俺の望みは休憩時間ではなく話し合いにあるわけで、さっきの会話の中で
ヒントらしきものを掴むこともできた。



俺達の慣習通り、まず千早が俺の背中を流し、それから俺が千早を洗うと
洗髪その他は省略して二人して湯船につかることにした。
後から千早を抱きかかえ、濡れた髪をかきあげて耳朶にそっと唇を寄せる。

「…少しはご機嫌斜め、直してくれたかな」
「ごめんなさい……私、その……貴方に八つ当たりをしてしまって」
「今日の昼、事務所のアレだったら俺だって悪かったと思ってる」
「でも……」
「でもはなし。あずささんの赤ちゃん可愛かったもんな。それに真までがなぁ」
「ふふっ、そうですね。電撃結婚と同時に懐妊だなんて」
「昼はあんなこと行ったけど、俺だって子供は欲しいんだからな」
「本当ですか? ではもう仕事が優先とか言ったりしませんか?」
「約束する。千早が欲しいなら……いつでも、何人でも構わないさ」
「良かった……これでようやく決まりました」
「決まったって何が?」
「来週の私の誕生日、まさかお忘れなのですか?」


風呂から上がり、千早がリクエストした飲み物を持って寝室に戻ると
照明はすでに暗くなっていた。
そして千早は俺を見ると何故か布団に潜り込んでしまったため
溜息を付いてコップを置こうとすると、さっきまで抱き合っていたはずの
イエスノー人形は添い寝をする格好にされていて、二人の人形は何故か
コンドームを枕にしていた。

やれやれ、全くもってしょうがない我がまま姫だと溜息をつきながら
俺はリベンジに燃えて立ち上がろうとする愚息を宥めつつベッドに入った。
実際、途中中断というのは中々に大変なことではあるのだが
頭を撫でられて満足げに微笑んだままの千早の寝顔を見れば
そんなことはどうでもよくなり、俺もじき眠りに落ちた。



事務所主催の誕生日パーティが終わり、大人組と既婚者組による二次会を
済ませてようやく帰宅した俺達は、二人で風呂に入ってからベッドに入った。

「千早、最後に聞くけど本当に……いいんだな?」
「ええ。必ずできるというわけでもありませんから」
「天からの授かりものっていうくらいだからな」
「でもきっと……大丈夫かと」

なんだか妙に自信ありげな笑みを浮かべた千早にキスをしながら
抱きかかえた彼女をそっとベッドに寝かせると、俺はゆっくり体を重ねていく。

これまでにも避妊せずいたしたことは何度もあるが、勢いと本能に任せて
最後まで突っ走ってしまったのは千早の初めてをもらったときだけであり、
それ以後はたとえゴム無しでしても必ず外に出すようにしていた。
それでも千早と結婚したあとは、もしそれで出来ればいいとは思っていた。
最愛の千早と子供を設けることが俺にとって望外の幸せであることに変わり無い。
それに予定より時期が早くて困る事は……特に思いつかないわけで。

そしてその夜、全身全霊の力をこめた愛撫のあとで千早の中に入った俺は
お互いが望んだとおり最後の瞬間まで一つに繋がったままでいた。
全てが終わった後、そっとお腹をさすりながら筋の涙をこぼして見せた千早は
さながら微笑を浮かべる聖母のようだった。


千早の妊娠が判明したのは桜の季節が過ぎた頃のことである。




おしまい。

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