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[SSメモ] 083 2012/02/25  [32-389 10r]

千早誕生日記念SS

  • 以下本編-


“メカ千早”。
あるステージの歌いっぷりからファンに頂いた愛称である。
HMD装着はただの受け狙いで、ロボットみたいに歌えと指示したわけではないから
千早には不本意でも俺に反抗した結果だから自業自得ではある。
デビューから半年経った今もこんな調子だから、信頼関係はまだまだ不十分だし
俺が彼女に抱く愛情は仕事面で示すしかないのが辛いところである。

そんな状況でなお“メカ千早”を作ろうと考えたのには理由があった。
事務所の後輩・星井美希がライブで見せた新曲披露のパフォーマンスである。
曲名に因んだマリオネットに自らも扮し、2体のバックダンサーを従えて好評だった
ダンスにこっちもあやかろうというわけである。
だが俺が構想する“歌って踊れるロボット”は現在の技術では実現が困難らしく
計画が早々と頓挫しかけた時、意外な人物がそのオファーを持ち込んできた。

同じ事務所の水瀬伊織。
新人アイドルというより、水瀬財閥の末娘という方が通りのいい生粋のお嬢様。
その彼女が水瀬グループ傘下の研究所を紹介してやると言ってきたのである。
今更ありがた迷惑ともいえず、お嬢様のお顔を立てるためだけにその研究所を訪ねた俺は
そこでとんでもない鉱脈にぶつかったのである。


《何よアンタ、ジロジロ見ないでちょうだい》
「へっ? お前もしかして伊織か!?」
《気安く名前を呼ばないで頂戴、この変態!》

ふんぞり返った小娘の口調は間違いなく伊織だが、外見は2つ3つほど幼く見える。
つまりこれが彼女の言っていた“人間ソックリのロボット”と言うやつか。
確かに精巧な姿形だけでなく喋り方も人間とほとんど見分けがつかない。

「本物そっくりでしょう? ちなみに伊織お嬢様12歳の頃のお姿です」
「ではこのロボットは実用化に2年以上もかかったと?」
「計画自体は4年越しです。それにこの子は未完成の試作品なんです…」

研究員によれば実用化目前で開発予算が尽きてしまった上、採算が見込めないようなら
研究所閉鎖もありうるらしいから、天下の水瀬グループとはいえシビアな話である。
水瀬伊織がこの研究所に肩入れする理由はともかく、わざわざ俺に紹介したのは
要するに千早の知名度と資金力で何とかしてほしいということだろう。

「遠慮せず触ってみてはどうですか」
《なにすんのよ、変なとこ触るなこのDa変態!》
リアルすぎる罵倒につい手を引っ込めてしまった俺だが、
研究員は「ご褒美です」と嬉しそうに“ロリ伊織”を撫でている。
……研究所の危機はそれが原因じゃないのか?

それはともかく、これならメカ千早計画を再起させられるかと俺は考え始めていた。
ダンスどころか動作すら不自由でも、“ロリ伊織”が証明する精巧さとAIなら話題性は十分、
そこから先は俺の演出次第だが、それには自信も勝算もたっぷりある。
問題は想定以上の資金額だが、悩む俺にとんでもない奥の手をぶつけてきやがった。

「寝かせて使うオプション機能も開発済みです。もちろんお嬢様は存じません」
俺はその悪魔の囁きに、黙って頷くしかなかった。

担当アイドルに手を出すなどもっての他だが、相手が人形ならどうしようと問題は無い。
そう考える自分の正気をまず疑うべきだが、“メカロリ伊織”を見てしまった俺の感情は
<人形でも千早を抱けるなら>という妄執に囚われてしまっていた。
かくしてメカ千早には極秘機能が登載されることになったのである。



そんな事は露知らず、千早は計画への賛成と協力を約束してくれた。
彼女は単純にメカの汚名返上ができるくらいにしか思っていないのだろう。
俺たちは計画の第一段階である千早の“形取り”を行うために研究所を訪れた。

「やだ、下着も脱がなければいけないのですか……」
渡された検査衣を抱えた千早は頬を赤らめてみせる。
「レントゲンみたいに体が透けて見えたりしないし、その服だって生地が分厚いだろう?」
「そうですが……」
「水着でも測定できるらしいから、そっちに変えてもらうか?」
「い、いえ、それには及びません。 あの、着替えるので出て行ってください!」

透けて見えないといったのは嘘ではない。
体型を測定するスキャナーは測ったデータをコンピューターに送るだけである。
問題はコンピューターの解析能力で、それは前に見せられたメカ伊織の設計データ
(というよりロリ伊織の超精密全裸CG画像)を見れば一目瞭然である。
対象物の形状・温度・色・硬度・密度までデータ化するそいつにかかれば
絶対に見ることのできない千早の秘部ですら精密なCGで再現されることになる。
そして本来なら口腔だけが内部スキャンの対象だが、今回は例の機能のため、
別のある部分もスキャンされることになっている。
それがどこかは言うまでもなかろう。

ワイヤーフレームにテクスチャーが貼りあわされ、徐々に人間らしい外観が形成される。
その上に黒子やにきびまで再現され、各部の体毛が産毛まで緻密に表現されると
そこでいったんCGは静止画像として固定される。
次に体型変化をデータ化するため、検査台の千早に様々なポーズをとらせてスキャンし
その合間に内密の走査も進めながら、30分ほどかけた測定は終了した。

研究員がキーボードを操作すると、画面の中で回転していた千早の静止画は瞼を開き
プログラムされたパターンに沿って動き始める。
胸の隆起や瞬き、首を傾げるといった仕草は自然で、CGとは思えないリアルさである。
張り詰めた脹脛から太ももへのライン、あるいはヒップと腰のくびれのギャップの部分。
千早特有のチャームポイントを惜しげもなく晒しながら、画像は様々な動作を見せる。
体をひねればうっすら腹筋が浮き、ジャンプすれば小ぶりな胸の膨らみが微かに揺れる。
コンピューターが再現した乳首はやや小粒で薄紅色、年齢にしてはまばらな陰毛。
そして未熟な果実のように固く閉じあわされた秘めたる花弁……

その後もAIの基礎となる会話パターン解析や音声データの採取などを行い、
ボディー製造と平行して内面データとプログラム作成が進められた一ヶ月の後。
試作機“メカ伊織”に改良を加えた実用一号機となる“メカ千早”は完成した。
完成日の前日、千早に内緒で単身研究所を訪れたのはある“儀式”のためである。


その日、世界は一変した。
ベッドに横たわったメカ千早は、覆いかぶさる俺を無表情で見上げている。
既に極限まで猛っていた俺が容赦なく下肢を押し開いても表情ひとつ変えず
精巧に再現された未成熟の花びらを俺の目の前にさらけ出す。
硬く閉ざされた入り口に先端を押し付けると、粘り気のある人工的な液体が滲出を始め
抵抗感を気にしながら腰を進めると、ずるりと先端部分が没入する。
痛がりもせず、また嫌がりもしないメカ千早だったが、侵入が半ばに至った頃
表情がわずかに歪み、同時に小さな吐息を漏らし始めた。

「千早、大丈夫か?」
思わず声を掛けてしまったほどリアルな反応だった。
《ダいじョウブです、ソノままキテくだサイ》
メカ千早は微かに瞼をひらくと、痛々しい微笑みすら浮かべてみせる。
そこで俺の理性は蒸発し、腰に力をいれると残る全てを強引に侵入させた。

《……ンッ!》
膣奥にある子宮を先端が押すたび苦しげに呻くメカ千早を見下ろしながら、
俺は砲身全体をしめつけられる感触に酔いしれ夢中で腰を振り続けた。
外見はモデルの千早そのものでも、内部は例の目的を重視した構造になっており
生身の女では味わえないであろう感覚、すなわち締め付け、うねり、絡みつくといった
名器の条件全てが備えられている。
そのうえで千早そのものの顔と体が悩ましく呻き悶えているのである。
処女の千早を獣欲のまま貫き犯している倒錯的な快感。
メカの両腕を押さえつけ、獣のように腰を振り続けた俺はあっけなく上りつめると
膣奥にある子宮口をこじ開け、その中に大量の白濁を弾けさせた。

終わったあとに虚無感は無かった。
繋がったままメカ千早を抱き寄せると、彼女は苦悶の表情を消し穏やかな微笑みを向ける。
同時に締め付けが緩み、ゆるやかな蠕動が俺の砲身をくすぐり始める。

《プロデューサー、まんぞくできましたカ?》
「ああ、すごくよかったよ……千早はどうだ?」
《……わたしはメカです。 まちガエないでくだサい》
「俺にとってはお前こそが千早だよ」
《……カイセキできませ……ンっ!》

軽く眉根を寄せて見せたメカ千早の唇を塞いで黙らせる。
AI調律前でこの反応なら、データを仕込めば一体どれだけリアルに……
いや、比較など無意味だ。今抱きしめているのが俺にとっての千早だから。
唇を合わせたまま艶やかな髪を撫でる。
本物にしたくでもできなかった愛撫をおとなしく受け入れて、喜ぶメカの微笑み。
ぎこちない故に千早そっくりで、本人より自然で翳りのない笑顔が愛しくかった。

《キスがすきナノデすね……》
もう何度目かわからないキスのあと、メカ千早はそっと呟いた。
そのメカのキスも、最初は開いただけの唇で俺の唇を受け止めるだけだったのが、
数度のキスでパターンを覚えたのか、唇を柔軟に動かし変化させていく。
そうだ、どうせなら裏モードの千早は俺好みに仕立て上げればいいじゃないか。
キスが好きで、恥ずかしがりのくせに閨では大胆な好色少女、そんな千早を。

「千早とするキスが大好きなんだ。だから千早もキスが好きになってほしい」
《はい……プロデューサーとのきす、スキになります》



事務所奥の物置部屋をメカ専用にしたのは、出入りの多い部外者から秘匿する為だが
鍵が掛けられるのと、かつて宿直室だった名残で畳敷きなのが本当の理由である。
そこに研究所から持ってきた椅子状の架台と制御用PCが設置されAI調律の準備は整った。
動作や表情をセンサーで拾ってデータ化するのと、メカ千早と会話を交わす単純な作業を
千早は熱心に取り組むようになった。
初日こそ<そっくりで落ち着かない>とメカにHMDをつけさせたものだが、すぐ慣れたと見え
自分の衣装を着せてみたり、髪型をいじってみたりとまるで仲の良い姉妹のようで
そのことは千早が帰宅したあと確認する音声ログでも裏付けられていた。

『今日学校でこんなことがあったの。とてもおかしかったわ』
『音無さんはいい人よ。少し変わった癖があるみたいだけれど……』
『春香にもらった手作りクッキーがおいしかったわ』
千早には珍しい女の子らしい他愛のない会話が続いている。
人付き合いが苦手な千早にとって、メカは気兼ねなく話せる格好の相手なのだろう。
本当は他のアイドルともそんな風に仲良くなってもらいたいものだが……


一通りログを聞き終えると、ドアの施錠を確認してから裏モードに移行させる。
最初のうちは性交自体が目的だったが、今はメカと会話するだけでも十分楽しい。
だから行為に及んだとしても抱き上げた彼女と繋がったまま会話を続けたり
あるいは交わることなく、ただ抱きしめてキスを繰り返すということも多かった。
機械人形である彼女は何も望まず何も拒まないが
抱きしめて好きだと告げるのを何より喜ぶのも事実だった。
それこそAI成長の証であり、メカ自身の自律的思考のはずはないのだろうが。
だがある日のログでそれを疑うような出来事が起きた。
千早にしては珍しく恋愛や恋人をテーマとした話の途中、
メカ千早は唐突に、初めて鸚鵡返しではない質問を切り出した。

《人を好きになるとはどういうことですか、千早?》
『……そんなこと私には分らないわ』
《人を好きになったことがないから? 人に好かれたことがないから?》

その直後にログが途絶えたのは千早が強制終了させたせいだろう。
質問の意図が気になった俺は、彼女を抱く予定を中止してメカに尋ねることにした。

「千早、このログにある質問の意図はなんだ?」
《恋愛には興味ないわ、そんな暇私にはないもの》
「おいおい、そんなログじゃなかっただろ?」
《今のは千早が最後に言った言葉。 …千早は可哀相》
「可哀相ってどういうことだよ。 俺の質問に答えろ」
《千早は誰も愛していない。誰も千早を愛していない。だから千早は可哀相》
「そんなこと無い、俺は千早も大事にしている」
《あなたは千早を愛していない。だって千早にはキスをしない。千早とはセックスをしない》
「違う、そうじゃない。そういうことじゃないんだよ」
まっすぐ俺を見つめるメカに耐え切れず、俺はその場でメカを強制終了させる。

翌朝再起動させたメカは昨夜の異常反応なぞ無かったように正常だった。
コンソールを見てもエラーどころか異常の兆候すら現れていない。
だから俺はあれを進化したAIが生み出した特異な反応として片付けた。
既にライブはもう目の前に迫っていて、些細な問題に捉われている場合でもない。



“メカ千早”はライブのパフォーマンスとしては大成功だった。
ゲストの春香と美希ですらメカを千早と信じて疑わなかったくらいだから
セットに座って歌うメカを機械人形だと見抜いた観衆は恐らく一人もいなかったはずだ。
マスメディアにも事前にネタを仕込んでおいた甲斐あって、俺たちの目論見どおり
例の研究所には早速問い合わせが殺到しているとのことである。
千早の人気も上々、投資した資金も利息付で回収できそうだし全てがいいことづくめに
――なるほど甘いわけがなかった。

「今日はオフのはずだろ? 試験前の高校生が遊んでいていいのか?」
「ちゃんと試験勉強をしています。ねえ?」
《そう。千早は真面目ないい子だから叱ってはだめ》
「仲良しなこって。今日は営業先から直帰するけど何かあったら連絡しろよ」

ライブ後も口実を設けてはメカの部屋に入り浸る千早を注意しなかったのは
そうやって仲良くできるのもあとわずかな間のことだからである。
検査のためメカを研究所に里帰りさせた後、事務所に戻すつもりはなかった。
予定通り俺が私蔵するためだが、人形に執着する千早を危惧したからでもあった。
だが千早とメカの交流は俺が思っている以上に深く強く進んでいた。


「さあ、邪魔者はいなくなったし、この前の話の続きよ」
《試験勉強はいいのですか、千早》
「家でするから大丈夫。それより…キスだけど、あなたは経験あるのでしょ?」
《ええ、好きなひとにしてもらったわ。その人がキスを好きだから私もキスが好き》
「キスのどういうところが好き?」
《あたたかくて気持ちがいいし、何度しても飽きないものよ》
「そう…なのね。でも言葉だけではよく分からないわ」
《千早もキスをしてみれば分かること。きっと千早もキスがすきになるわ》
「キスしてみればって……相手もいないし無理よ」
《千早を好きな人とすればいいの。本来キスとはそういうものだから》
「な、何をいっているの。そんな人いないわよ」
《それならいいことを教えてあげる。千早、ヘッドセットを装着して》

千早が素直に従ったのは、AI調律で繰り返した“対話”のためと思ったからだが
システム内部の損傷で逸脱しはじめたAIの思考は、メカ自身が自律的に定めた目的に
向かって進み始めている。だから彼女がヘッドセット装着を促したのもそのため。
神経パルスの伝達機能に双方向性があることに気付いた彼女は
自身が保持するデータの送出を千早に対して試みたのである。

自分が受けた愛情を千早に伝えようとして。

信号の精度は本来よりも劣化していたがそれでも感触を伝えるのは十分だった。
メカ千早がプロデューサーと交わした行為の記憶がデータとして神経パルスに変換され
千早の知覚を通じて体に伝えられていく。

「これ……プロデューサー? あっ……何この感覚………んむ!?」
《わかったかしら、今のがキスよ》
唇に受けた確かな触覚はメカの言った通り温かく心地のいいものだった。
「んっ、んん……あっ…………これ、がキス……なのね」
メカから伝えられたプロデューサーとのキスの記憶。
千早の神経はそれをリアルな感覚として受け止め、夢中でその感触を追い求めた。



「ねぇ……今日もいいかしら」
《やはり千早もキスが好きになったわね》
「べ、別にそういうわけじゃ……こういうことを知っておく必要があると思うだけよ」
《まあ、なんでもいいのだけれど……》
部屋に来て早々ヘッドセットを持ち出した千早に、メカは“苦笑”を浮かべてみせる。
《そんなにキスが好きなら千早もプロデューサーにしてもらえばいいのに》
「そんなこと無理に決まってるでしょ」
《どうして無理なの? キスは好きな人とするものだから問題ないでしょ》
「そ、そういう問題ではないのよ」
《どういう問題? 千早はプロデューサーのことが嫌いなの?》
「ち、違うわ。好きか嫌いかでいうと…す、好きだとは思うけど」
《それなら簡単。いい方法を教えてあげる》


「本当にばれないかしら」
メカに着せていた衣装を身に付け、ご丁寧にHMDまで装着している千早は
衣装ケースの陰に隠したメカに不安そうな声をかける。
《大丈夫、私達そっくりだから。それよりプロデューサーがきたわよ》

「おはよう千早って……いない。 メカ、千早は来てなかったか?」
「……千早はトイレにいきました」
「そうか。じゃ……今のうちに」


覚悟を決めて入れ替わったものの、緊張のあまりHMDの中で目を閉じた千早。
プロデューサーは身をかがめると無造作に唇を千早の唇に重ね合わせた。
最初は軽いバードキス。ついで二度目はもう少し長く深い口付け。
「……んんっ」
千早が無意識に声を漏らしたのは、初めて交わしたキスの感触が
メカ千早のデータにより何倍も、いや何十倍も温かく心地のよいものだったからで
メカと入れ替わっていることも忘れ、キスの感触に陶然としていた。
だがどれだけ二人がそっくりでも、漏らす吐息の熱さまではごまかせなかった。
ふしんに思った彼は顔の半分を隠しているHMDをむしりとると、呆然となった。
「お前……千早なのか!?」


「すまん千早、まさか入れ替わっているなんて思わず……」
「それよりプロデューサーはいつもこの子にキス、しているのですか?」
「いや…まさか。今のはほんの出来心ってやつで」
「私が何も知らないと思っているようですが」
「そんな馬鹿な! プロテクトがそう簡単に破れ……」
思わず叫んでしまった俺はまんまと千早にしてやられたことに気付いた。

「俺の負けだ、煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「私はプロデューサーのこと責めているわけじゃありません」
「じゃあ一体何故こんなことを。目的はなんだ?」
「目的ならもう果たしました。ですが好きにしていいというなら」
「……?」
「も、もう一度してください、この子じゃなくきちんと私相手に……キスを」

恋愛感情なんかではない、ただの好奇心だと言い募る千早を引き寄せると
俺は千早の準備も待たず唇を奪ってやった。
驚いて見開いたままの目が閉じられても、俺はキスをやめなかった。

後でシステムをチェックしてみたが、プロテクトは正常だしエラーログに散発している
メモリーセルの破損も全て自己修復がなされている。
ログに所々存在する解読不能なデータが気になるところだが、すぐオーバーホールに入る
わけだし、千早もメカも上機嫌で好調を維持している。
大丈夫だ、問題なんかない。



《千早、好きな人にキスしてもらった感想はどう?》
「えっ、ええ……思ったよりもいいものだったわ」
《ふふっ、でもキスよりもっといいものがあるのよ。それも教えてあげないと》
「いいものって……だ、ダメよそれは!」
《どうしてかしら。好きなプロデューサーに愛してもらうことなのよ》
「愛し……だ、だめだって。第一そんなのまだ早すぎる」
《聞いて千早、私にはもう時間が残されていないの。だからお願い》
「どうしたのよ、検査のことなら心配しなくていいのに」

メカの言葉の意味するものが何か、奥手の千早にも気付いてはいたが
まさかキスのようにプロデューサーがこの子とそんなことするわけがない……
それが千早にヘッドセット装着を促した判断だった。
メカのお願いと自らの好奇心を言い訳に、畳の上にその身を横たえる。


《はじめるわね、千早。》
目を閉じた千早の脳裏に、早速ふわりとしたキスの感覚が蘇る。
だが感覚は唇だけにとどまらなかった。
口内に侵入してきたのが舌だと理解した瞬間、自分の舌がそれに絡め取られる。
他愛ないキスだけで満足していた少女にとって、その愛撫は刺激が強すぎたが
メカにはそれを頓着するようなことはできない。
自らが受け取った愛撫のデータをただ忠実に再現し、千早の神経に送り続ける。

《千早、緊張しないで体の力を抜いて。そう、それでいいわ》
「はぁっ…だ、だめぇ、そんなとこ、やっ……やぁ」
唇の次は首筋と、彼の舌による蹂躙は一所にとどまらない。
次に狙われている場所に気付き、無意味だと気付かず両腕で胸をガードする。

「ひゃああん! ああぁっ……や、やめ…て」

男の口に乳首が咥えられ、吸われ甘噛みされる感触は実際ではな幻であっても、
千早の神経にその区別はつかない。
初めての愛撫で得られる快感に息も絶え絶えになりながら
それでも懸命に意識にしがみつきながら、愛撫の行方を追い求める。
やがて愛撫が足先にまで行き渡り、指と口が離れていって安堵したのも束の間。
力の抜けた下肢が大きく割り開かれ、朦朧とした千早がその意図に気付いて叫ぶ。

「まって、だめ! やめて、いやぁっ!」

体の中心に衝撃が走り、同時に足が大きく開いて跳ね上がる。
その直後、過負荷に耐え切れなくなったシステムが機能の一部をカットしたため
データ転送は中断され、千早の神経感覚も解放された。
だがの直前、千早は確かに体の内に存在したものの感覚を受け止めていた。
メカとの接続が途絶えた今も、まだ熱く潤っているその部分に手を伸ばしてみると
ジーンズの股間は漏らしたようにぐしょぐしょに濡れている。

《どうだった、千早?》

機能を回復したメカの問いかけに、呆然としたままの千早は応えられない。




研究所での検査途中、メカ千早のシステムは唐突に機能を停止した。
診断の結果はあっけなく、そして残酷だった。
彼女の状態を人に例えたら、脳は生きているがその命令を伝える回路全てが途絶え
AIという人格は完全に世界から切り離されてしまっているということらしい。
モニターに走る意識の波形は綺麗な波を描き続けているが、外部からの刺激にも
メカは何の反応も見せず、ただ眠ったまま身動きひとつしない。


「この子は生きています、助けてください、お願いします!」
「残念ながら……今の技術ではこの損傷を回復することは……」
「そんなの納得できません。あなたがこの子を作ったのでしょ、それなら直して、ねえ!」
「よせ千早」
「いやだ、この子がいなくなるなんて……いや、絶対にいやぁ!」
「もういい千早、事務所に帰ろう。メカも一緒だ」



事務所にもどり、いつもの場所に座らせたメカは無表情のまま眠り続けている。
コンソールの示す波形はメカの意識を示しているが、ただそれだけのことだ。
「…やっぱりいや、この子と別れるなんてできない」
「千早、諦めるんだ。メカは所詮機械でできた人形なんだよ」
「よくもそんな冷たいことを! プロデューサーはこの子が好きだったのでしょ? 
だからキスもしたし、せ、セックスだってしていたのでしょ?」
「ああ、そうだ。確かに俺はこの子としたよ。わざわざそういう機能をつけてまでな」
「それは……好きだったからですよね?」
「人形ではなく千早がな」
「わ、私ってそれ……ほ、本気ですか?」
「メカに誓う。嘘じゃない、本気だ」

千早は睨んでいた俺から目をそらすと、シャツのボタンに手をかける。
「おい千早、何する気だ」
「この子との約束、果たさないといけないから」
うろたえる俺が見守る前で千早はシャツを脱ぎ捨てズボンに手をかける。
「待て、千早。約束ってまさかお前……」

白い簡素な下着で包んだ体を隠そうともせず、千早はヘッドセットを装着する。
「教えてあげるんです、この子に愛し合うということを。そう約束したから」
背中に手を回しブラのホックが外される。
一瞬躊躇ったあとブラは床に落とされ、千早の手がショーツにかかる。

「見ないでください、恥ずかしいから……」
生まれたままの姿になった千早は、胸と秘部を隠し俺を見つめる。
頬が羞恥で染まっているとはいえ、その目は俺を射抜くほど真剣だった。
「千早……お前初めてなんだろ。いいのか、本当に」
「か、構いません。初めてが好きなひとだったら。それがプロデューサーだったら……」
半ば無意識のままスーツを脱ぎ捨てると、明りを消して震える千早の肩を抱き寄せた。
「千早、好きだ」
「わ、私もです。だから、その……や、やさしくして…ください」

千早を横たえると、コンソールの放つ淡い青が白い裸身を幻想的に染め俺を誘う。
メカ千早を抱きながらいつも脳裏に描いていた如月千早の生身の体。
膝をついた俺を誘うように差し伸べられた両手に顔を委ねて近づける。
最初のキスから深く唇を合わせ、舌を差し伸べ絡めあう。
人形にはない悩ましい吐息と鼻声。熱いくらいの体温。
そして俺を引き寄せ放そうとしない、意思ある両手の力。

メカ千早にそうしたように、そしてそれを知る千早が求めるように
俺はキスから首筋、胸から腹へと順を追って穢れのない体を味わってゆく。
汗の匂い。甘く酸っぱい少女の体臭。微かな乳の香り。舌を刺激する雌の酸味。
俺の舌が隠された部分に達したとき、既に千早は十分な蜜を蓄えており、
舌で花弁を開くと溢れ出したとろみのある粘液を存分に掬い取り味わう。

「そろそろ、いくぞ」
体を起こし膝をつくと、無意識に閉じようとする太ももをそっとさする。
「千早、力抜いて。怖くないから、大丈夫だから」
「……はい、んっ」

驚くほど溢れさせているとはいえ、文字通りの処女地は俺が押し付けた先端を
弾力で押し返そうと抵抗する。その部分を丁寧に先端でなぞりながら、
徐々にその感触を千早自身になじませていく。
やがてしかめた眉根が緩んできたころを見計らい
千早と唇を重ねながら、腰に力をこめる。


「んんっ! ぐっ……んはぁ……」
「千早、息をすって、そう。ゆっくりはいて……大丈夫だから」
狭くきつい膣内に先端が潜り込むと、すぐ先で行く手をさえぎる抵抗を感じる。
その時、視界の隅にあるモニターの中で波形が大きく跳ね上がった。

「千早! メカに教えてやるんだろ、だからしっかり受け止めるんだ」
「プロデューサー……あの子にちゃんと分るでしょうか」
「大丈夫、まだメカは生きてるから絶対に伝わる。だから……いくぞ」
「ああっ……んっ、はい、き、来てください」
「千早、好きだ。愛してる、ずっと前から。初めてあったときから」
「プロデューサー……わ、わたしも好きです、あっ、ああああああっ!」
俺は力を解放すると抵抗を押しのけ一気に奥まで挿入を進めた。
先端が子宮にぶつかったときには苦しそうに呻いた千早だったが
俺が動きを止めてキスを求めると、舌で応じながらうっすら瞼を開く。

「プロデューサー……ちゃんと…最後まで、できたでしょうか」
「ああ、そうだ。俺と千早は一つになれた。分るか?」
「はい…私の中にプロデューサーのが……痛いけど、でも気持ちいい……」

《よかっタ……ワね、ち ハヤ》
「あなた聞こえるの!? わたしのこと、わかるのね?」
《ええ……ちゃんとワかる……千早がやくそクまもってクレたこと》
「ああっ、良かった……ちーちゃん生きてて良かった……」

《きいてチハヤ。私はあなたがうらやましかった……
私はプロデューサーにアイされてもココロがないからキモチがわからなかった。
だからそれができるチハヤみたいに……私もなりたかった。
愛されたりアイしたりするキモチがわかるあなたみたいに、ニンゲンみたいに。
でも……いまチハヤに教えてもらえてそれがワカった。
私にも愛されるキモチが、アイする気持ちが。
あなたのおかげ。プロデューサーのおかげ。
ココロが伝わるのはとても、トテもきもちがいい……だから私とても幸せ
ありがとう千早、ありがとうプロデューサー。
こんな私を愛してくれて。

幸せになって、ちは……-----------


メカ千早は言葉を失い、瞳の光が消えていく。
モニターの波形は一度だけ乱れたあと直線になり、それからゆっくり消滅した。

「いやだ、死なないで! お願いだから起きて、目を覚まして! お願いだから……」

俺はメカにすがり付いて泣きじゃくる千早をただ抱きしめてやることしかできなかった。




事務所で行われた身内だけのお別れパーティが終わると
千早が選んだ一番可愛いい衣装を身にまとったメカ千早を研究所に送り届けた。
プロトタイプとして、その技術とノウハウを次世代のメカシリーズに生かすために。
ほどなく千早も失意から立ち直り笑顔を見せるようにもなったが
彼女の口からメカの名前が出ることは二度となかった。




◆エピローグ  201X年、研究所。


「お嬢様、至急ラボまでお越しいただけませんか」
「何よ騒がしいわね。ここにいるときは社長って呼びなさいと何度言えば……」
「いいから早く!」

実験室中央の試験台に安置されている一体の少女型アンドロイド。
清楚なワンピースをまとった彼女は、凍結保存から解凍させたばかりらしく、
長い睫の先にはまだ微かに霜が残っている。

「この子……説明しなさい」
「プロトタイプのメモリーシステムのことは覚えておられますね」
「ええ、バックアップも取れない欠陥設計。そのせいでこの子は修理もできず凍結保存するしか
……って何、解凍してるじゃないこれ! どういうことよ!」
「メモリーコアへの再接続に成功したんです。理論的には完璧に」
「理論だけ? テストはしたの? それってホントに確実なの?」
「シミュレーションは100%成功しています。プロトタイプ#3のダミーを使った実地試験も
5例全て成功しました。ですから……」
「この子は目を覚ます、ということね」

お嬢様と呼ばれた女性は試験台の上で眠ったままの少女の頬に手をやった。

「良かったわね、メカ。グッドタイミングじゃない」
「ではお嬢様?」
「早速始めて頂戴。いいこと、来月の式までに絶対間に合わせるのよ!」
厳しい社長の顔を研究員に向けたあと、彼女はもう一度少女に向き直る。

「さてと。結婚祝いに凄いサプライズ用意してあげるんだから覚悟してなさい、ニヒヒッ!」



おしまい。

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