Scenario4 前哨に吹く風
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kuroe_trpg 2022年03月20日(日) 08:32:29履歴
1）シナリオの背景
アルフレイム大陸では近年、魔動機文明時代の技術である魔動列車とその線路網が復活・普及しつつある。
既に大陸北西部とブルライト地方北方ラージャハ帝国は鉄道で結ばれ、
“導きの港”ハーヴェスやその先にも、鉄道を延伸する計画が立てられている。
この国々を跨る大計画に先立って、線路敷設のための測量や立地の選定などをする必要が出てきた。
しかしひとたび都市を出れば常に蛮族の脅威があるため、この事業は護衛の需要を急速に高める結果となった。
そのような状況で、骸骨道化亭の冒険者たちにも白羽の矢が立ったのである。
冒険者たちはハーヴェスを離れ、東南東に80km（馬車で2日程度）にある調査団の前哨基地へ向かう。
その過程で、前哨基地に迫るケンタウロスの脅威を知り、警戒しつつも調査をおこなうことになる。
しかしある夜、前哨基地は上位蛮族に率いられたケンタウロスとトロールの襲撃に遭ってしまう。
2）依頼：調査団の護衛
前回の依頼から数日すると、骸骨道化亭に冒険者たちが初めて見る人物が現れる。
骸骨道化亭ができたころから所属していた古株の冒険者2人で、名前をそれぞれスパイス、ルジェという。
〇“悪食竜”スパイス
種族：リルドラケン 性別：男 年齢：44
冒険者レベル：7 技能：ファイター7 スカウト6 エンハンサー3
言語：交易共通語（会話／読文）、ドラゴン語（会話）
長大なハルバードを得物とする長身の戦士。
あらゆる敵に対処できること、困難な依頼でも厭わずに受けることからから悪食竜の名で呼ばれる。
性格は豪放磊落。やや自信過剰なところはあるが面倒見はよい。
「ほう、新人の割にはいい面構えだなチビッ子ども！」
〇“暗黒料理人”ルジェ・リップバーン
種族：エルフ 性別：女 年齢：38
言語：交易共通語（会話／読文）、地方語（ブルライト：会話／読文）、魔法文明語（会話／読文）
魔動機文明語（会話／読文）、神紀文明語（読文）、汎用蛮族語（会話／読文）
冒険者レベル：7 技能：ソーサラー7 プリースト5（ティダン） セージ3
派手な服装をした魔術師であり、ティダンの神官。
強力な真語魔法で敵を切り裂き、焼却する姿から暗黒料理人の異名を持つ。
高慢な態度を取ることも多いが、情にもろい一面もある。
「うっかり死体になって、ハルハさんを悲しませないでよね」
スパイスとルジェは先日までの依頼で北のラージャハ帝国まで行っており、
そこで目にした魔動列車の話をハルハと冒険者たちに披露する。
その土産話をきっかけに、ハルハが思い出したように書簡を取り出し、冒険者たちに新しい依頼を提示する。
〇ハーヴェス王国からの依頼
・内容は線路敷設のための前哨基地およびその周辺における調査団の護衛。期間は3日間（延長あり）
・報酬は1人1日あたり400ガメル。ただし移動期間は日数に含まない。
・戦闘が発生した場合は、1回につき1人100ガメル以上の危険手当を支払う。
・味方へ暴行や逃走などを含む規律違反がない限り、原則として報酬は全額を支払う。
・前渡しの報酬として、ヒーリングポーションとアウェイクポーションを1人1つずつ支給する。
・前哨基地までの移動費、および前哨基地での滞在費は別途支給する。
物資輸送のための馬車はほぼ毎日ハーヴェスと前哨基地を行き来しており、
冒険者はそれに乗って3日で前哨基地に移動することができる。
ちなみに前哨基地から25kmほど離れた場所には、冒険者たちがかつて訪れたアルル村がある。
道は平坦で障害らしい障害もなく、心地よい（季節によっては冷たい）風が広い草原を吹き抜ける。
改めて見ればなるほど確かに、線路を引くには最適な場所であると言えそうだ。
もしこの場所を鉄の魔動列車が走ることになれば、旅人は疲労と心細さに煩わされることなく、
爽やかな景色を楽しみながら、のどかな気持ちでハーヴェスを目指し、そしてあとにすることができるだろう。
3）基地までの道
ハーヴェスを経って2日目の午前、冒険者たちは襲撃されている馬車を目にする。
馬車を襲撃しているのは3体のケンタウロスだが、1体は負傷してHPが半分（12）になっている。
●戦闘
前衛：ケンタウロス×3（ルールブック�� p373）
後衛：ケンタウロス×2
戦闘が終わると、冒険者は馬車の周辺に戦闘不能の重傷者が2人いることに気が付く。
彼らは新米の冒険者であり、前哨基地での護衛を終えた後、ハーヴェスに戻る途中だったのだ。
もし冒険者が彼らの治療をするならば、礼として〈魔晶石〉（MP3点）×1を受け取ることができる。
新米冒険者たちは元気になった場合そのままハーヴェスへ、重傷のままである場合は前哨基地へと引き返す。
御者は何度かこの道を往復しており、小型の蛮族を見たことはあるが、
ケンタウロスを見たのははじめてだ、と不安そうに話す。
これを聞いた冒険者たちは、前哨基地に今までにない脅威が迫っているのでは、との危惧を抱くかもしれない。
4）前哨基地
ケンタウロスに襲われていた馬車を助けて以降は特にトラブルもなく、冒険者たちは前哨基地に辿り着く。
〇ハーヴェス鉄道第二調査団
鉄道敷設のためハーヴェス近郊に散っている調査団のうちの一つ。
10日前に前哨基地の設営を終え、現在は周辺の測量や地質調査をおこなっているところである。
基地の周囲は地面に丸太を突き刺し、隙間なく並べたような、高さ4mの柵がある。
直径は約50ｍで、内部では兵士や冒険者、神官などの護衛要員が80人ほど、
技師や研究者、物資の管理や馬の世話をおこなう者などの非戦闘員が120人ほど滞在している。
マギテックに関わる仕事も多いためか、タビットやルーンフォークの姿も見られる。
現場責任者として調査の終了までいる者もいれば、任期付の補佐として短期間で交代する者もいる。
今回の依頼を請けた冒険者たちは後者で、疲労と緊張の多い護衛の交代要員なのだ。
（下記見取り図を参照のこと）
冒険者たちは基地の中央にある大きなテントで、まず団長に引き合わされる。
団長はティングルという名のタビット（男性／16歳）であり、人手不足もあってか冒険者を大層歓迎する。
もし冒険者たちが道中での襲撃のことを告げれば、彼は感謝を述べつつ強い懸念を示すだろう。
「ケンタウロスのことは初めて聞きました……そうですか、皆に伝えねば」
「報告ありがとう。危険手当についても忘れずに記録しておきますよ」
冒険者たちに前渡しの報酬を手渡したあと、ティングルは人を遣ってある人物を呼びに行かせる。
少しすると若いドワーフの女性がやってきて、冒険者たちに元気よく挨拶する。
ティングルは冒険者たちに、彼女と彼女が率いるチームご護衛を頼みたい、と言う。
「こんにちは！ みなさんが護衛の方々ですね！ よろしくお願いします！」
〇モーリイ（ドワーフ／女性／18歳）
・若くして優秀な魔動技師（マギテック）兼土木技師であり、少人数ながらチームを率いる立場にある。
・活発で人懐こく、好奇心旺盛な性格をしており、冒険者たちとも積極的にコミュニケーションを取る。
・武器や戦闘技術は持っておらず、戦いに加わることはない。必要があればHPは10あるものとして扱う。
冒険者たちは1つないしは2つの小さなテントを割り当てられる。
もし女性の冒険者がいれば、モーリイと同じテントで過ごすこともできる。
（そして彼女はリラックスした状態だと、かなりだらしない人物であることがわかる）
5）周囲の調査
探索者たちはこのシナリオ中、到着1日目の午後、2日目の午前、2日目の午後、の3回分護衛をおこなう。
調査地点はA,B,Cの3か所あるが、特に順番は決まっておらず、冒険者たちが自由に選択できる。
それぞれの調査地点では異なったイベントが発生する。
〇調査地点A：傷ついたコボルド
冒険者たちがAの地点に向かうと、50ｍほどの距離にある茂みから、傷ついたコボルドが走り出てくる。
その直後、槍を持ったケンタウロスが2体、コボルドを追ってくる。
このコボルドは食料泥棒をし損ね、制裁として追われているのだ。
冒険者たちがコボルドを助けるかどうかに関わらず、ケンタウロス2体との戦闘に突入する。
この戦闘にコボルドは参加しない。
●戦闘
前衛：ケンタウロス×3
後衛：ケンタウロス×2
傷ついたコボルドの処遇は冒険者たちに任される。
殺すならばすぐさまそうできるし、治療をしたり、食料を与えたりすれば従順になる。
逃がしてやることもできれば、前哨基地に連れ帰ることもできる。
ハーヴェスでも料理人や小間使いとして少数のコボルドが生活しているので、
冒険者たちが多少とりなせば、団長のティングルもコボルドの保護を許可するだろう。
〇調査地点B：埋もれた魔動機
冒険者たちがBの地点に向かうと、少し離れた場所で他のチームと思しき調査員たちが人だかりを作っている。
その様子を見に行くと、地中に埋まった金属質のものを掘り出している最中である。
目標値12の「魔物知識判定」に成功すると、それがシャザーレィであることが分かる。
もし冒険者たちが判定に失敗した場合は、同行しているモーリイが鑑定することになる。
「わぁ、実物を見るのは初めて！ 基地に持って帰って早速いじってみよう！」
モーリイ以外の調査員たちはシャザーレィを埋めたままにするか、掘り返して持ち帰るか判断をつけかねている。
暴走した場合に、人的物的な被害が出る可能性を考慮してのことだ。
冒険者のなかにマギテックがいれば、目標値9で「マギテック+知力ボーナス」の判定を試みることができる。
成功した場合、このシャザーレィには調査員や冒険者たちを攻撃するような命令は与えられておらず、
また保存状態も比較的よいため、暴走する恐れはないと判断できる。
おそらくは〈大破局〉以降に一度発掘され、整備を受けたのではないかと推測できるかもしれない。
（モーリイが鑑定した場合には、これらに「多分」がつく）
目標値7の「腕力判定」に2回分成功すると、無事シャザーレィを掘り起こすことができる。
掘り出されたシャザーレィは、その時間中に前哨基地へと運搬される。
冒険者たちが判定に失敗した場合、前哨基地に運搬されるのは次の時間となる。
つまり1日目午後の場合は、2日目午前。2日目午後に失敗した場合、シナリオ中には到着しない。
〇調査地点C：トロールのキャンプ跡
冒険者たちが地点Cに向かうと、燃え尽きた焚火の跡、野生動物の骨、食事の残骸や排泄物などが見つかる。
それらを手掛かりとして目標値9の「足跡追跡判定」「探索判定」に成功すると、
ケンタウロスではない大型の蛮族が、この場所で一晩を明かしたのだということが分かる。
（正体はケンタウロスとの連携を画策するトロールであるが、この時点では分からない）
足跡は百ｍほど追跡することができるものの、その後は草原に紛れていて、主に辿り着くことはできない。
冒険者たちのうち1人がここで2d6をロールし、出目に応じたアイテムを獲得する。
2〜3：なし
4〜6：〈黒ずんだ複眼〉（30G／赤B）
7〜10：〈良質の殻〉（150G／赤A）
11〜12：〈宝石〉（150G／金A）1d3
6）犠牲者
探索一日目の日暮れ前、冒険者たちが前哨基地に戻ってきたあと、数人の調査員が死体を運んで帰ってくる。
それは若い人間の男性で、調査の途中でケンタウロスに襲われ、槍で胸を刺されたのだという。
同行していた冒険者がケンタウロスを撃退したため、それ以上の犠牲は出なかった。
通常、冒険者以外は蘇生を望まないため、遺体は神官による保存の魔法がかけられ、安置されることになる。
そのような光景をしんみりとした表情で眺めながら、モーリイは人族と蛮族の争いに対する想いを漏らす。
「なんで戦いなんて不合理なことが、こうもしょっちゅう起こるんでしょうか？」
「私は時々、人族と蛮族が分かれていること自体を不思議に思うことがあるんです」
「世界っていう機械の中で、お互いに仕組みを邪魔し合う部品みたいなものですよ」
7）暗夜の襲撃
探索二日目の夜、冒険者たちはモーリイとともに、前哨基地本部テントに呼び出される。
テントの中ではティングルが待っていて、度々目撃されるケンタウロスに言及する。
そして冒険者たちはここ数日、前哨基地近辺を脅かしているケンタウロスについて、
印象や気が付いたこと、どのような危険がありそうか、なんでもいいので聞かせてほしい、と請われる。
このとき冒険者が答える内容はどんなものでもよい。
話しがひと段落したあと、前哨基地内にけたたましい半鐘の音が鳴り響く。敵襲の合図である。
ティングルは周囲に素早く指示を飛ばし、冒険者たちには、門の方へ向かってほしい、と頼む。
〇決戦
冒険者たちが前哨基地の門に向かうと、既に戦闘が始まりかけている。
見張り櫓に立つ兵士が、敵は数十体のケンタウロスであることを知らせる。
少しの間、柵越しに槍や弓矢での応酬が続いたあと、派手な妖精魔法で門が破壊される。
敵味方入り乱れての戦いとなり、冒険者たちはまず3体のケンタウロスを相手にすることになる。
●一戦目
前衛：ケンタウロス×3
後衛：ケンタウロスインペイラー×1（ルールブック�� p376）
この戦闘が終わったとき、目標値5の「聞き耳判定」をおこなう。
成功した冒険者には、前哨基地の南東（見取り図右下）で、なにかを破壊するような音が聞こえる。
冒険者はここで踏みとどまって戦ってもいいし、音のした方に向かってもいい。
もし探索中にコボルドを連れ帰っていれば、彼（彼女？）が背後で起こっていることを知らせてくれるだろう。
踏みとどまる場合は、立派な槍を持ったケンタウロスの指揮官を含んだ敵との戦闘になる。
●二戦目A
前衛：ケンタウロス×3※
後衛：ケンタウロスインペイラー×1※
※剣のかけら×2で強化されている。
冒険者たちが音の方に向かうならば、そこで派手に破壊されている柵を目にする。
姿を現すのは、巨大な棍棒を持った2体のトロールである。
もし、この時点までにシャザーレィが前哨基地に到着していれば、
破壊された柵の近くには、いち早く挟撃に気づいたモーリイがいて、魔動機を起動している。
その場合、味方としてシャザーレィ×1が加わる。
●二戦目B
前衛：トロール×2（ルールブック�� p447）
8）結末
冒険者たちが勝利すれば戦況は傾き、ケンタウロスたちは撤退していく。
犠牲者も比較的少なく、前哨基地の面々は無事朝を迎えられることに喜ぶ。
しかしティングルはなにか深刻そうな顔で、ぶつぶつと呟いている。
「しかし、ケンタウロスとトロールが協力を？ まさか上位蛮族が……」
この発言の背景には、それぞれが独立心の強い種族であるという事実がある。
2種族が協力関係を結んだのは、ドレイクやディアボロなどの関与があったからかもしれず、
そうなると今後も散発的な戦闘では収まらない可能性が高い、とティングルは考えているのだ。
しかし、現時点では推測するほかなく、冒険者たちの任務も終わりに近づいていく。
3日目に周辺地域の調査はおこなわれず、負傷者の治療、敵味方の死体処理、柵の補修などに費やされる。
やがて冒険者たちが約束の報酬を受け取り、馬車でハーヴェスに戻るとき、
モーリイは冒険者たちに礼を言い、再会を約し、名残惜しそうに前哨基地の外まで送りに来る。
「お仕事頑張りましょう！ お互いに！ どうか道中も気を付けて！」
強い風が吹き抜ける中、馬車が遠くなっても、モーリイは長いこと手を振り続けていた。
冒険者たちと彼女の間に、今はまだ未開発の草原が横たわるのみだが、
調査団の仕事が順調に進めば、いつかはそれが力強く延びる、鋼鉄の線路になっていることだろう。
戻る
アルフレイム大陸では近年、魔動機文明時代の技術である魔動列車とその線路網が復活・普及しつつある。
既に大陸北西部とブルライト地方北方ラージャハ帝国は鉄道で結ばれ、
“導きの港”ハーヴェスやその先にも、鉄道を延伸する計画が立てられている。
この国々を跨る大計画に先立って、線路敷設のための測量や立地の選定などをする必要が出てきた。
しかしひとたび都市を出れば常に蛮族の脅威があるため、この事業は護衛の需要を急速に高める結果となった。
そのような状況で、骸骨道化亭の冒険者たちにも白羽の矢が立ったのである。
冒険者たちはハーヴェスを離れ、東南東に80km（馬車で2日程度）にある調査団の前哨基地へ向かう。
その過程で、前哨基地に迫るケンタウロスの脅威を知り、警戒しつつも調査をおこなうことになる。
しかしある夜、前哨基地は上位蛮族に率いられたケンタウロスとトロールの襲撃に遭ってしまう。
2）依頼：調査団の護衛
前回の依頼から数日すると、骸骨道化亭に冒険者たちが初めて見る人物が現れる。
骸骨道化亭ができたころから所属していた古株の冒険者2人で、名前をそれぞれスパイス、ルジェという。
〇“悪食竜”スパイス
種族：リルドラケン 性別：男 年齢：44
冒険者レベル：7 技能：ファイター7 スカウト6 エンハンサー3
言語：交易共通語（会話／読文）、ドラゴン語（会話）
長大なハルバードを得物とする長身の戦士。
あらゆる敵に対処できること、困難な依頼でも厭わずに受けることからから悪食竜の名で呼ばれる。
性格は豪放磊落。やや自信過剰なところはあるが面倒見はよい。
「ほう、新人の割にはいい面構えだなチビッ子ども！」
〇“暗黒料理人”ルジェ・リップバーン
種族：エルフ 性別：女 年齢：38
言語：交易共通語（会話／読文）、地方語（ブルライト：会話／読文）、魔法文明語（会話／読文）
魔動機文明語（会話／読文）、神紀文明語（読文）、汎用蛮族語（会話／読文）
冒険者レベル：7 技能：ソーサラー7 プリースト5（ティダン） セージ3
派手な服装をした魔術師であり、ティダンの神官。
強力な真語魔法で敵を切り裂き、焼却する姿から暗黒料理人の異名を持つ。
高慢な態度を取ることも多いが、情にもろい一面もある。
「うっかり死体になって、ハルハさんを悲しませないでよね」
スパイスとルジェは先日までの依頼で北のラージャハ帝国まで行っており、
そこで目にした魔動列車の話をハルハと冒険者たちに披露する。
その土産話をきっかけに、ハルハが思い出したように書簡を取り出し、冒険者たちに新しい依頼を提示する。
〇ハーヴェス王国からの依頼
・内容は線路敷設のための前哨基地およびその周辺における調査団の護衛。期間は3日間（延長あり）
・報酬は1人1日あたり400ガメル。ただし移動期間は日数に含まない。
・戦闘が発生した場合は、1回につき1人100ガメル以上の危険手当を支払う。
・味方へ暴行や逃走などを含む規律違反がない限り、原則として報酬は全額を支払う。
・前渡しの報酬として、ヒーリングポーションとアウェイクポーションを1人1つずつ支給する。
・前哨基地までの移動費、および前哨基地での滞在費は別途支給する。
物資輸送のための馬車はほぼ毎日ハーヴェスと前哨基地を行き来しており、
冒険者はそれに乗って3日で前哨基地に移動することができる。
ちなみに前哨基地から25kmほど離れた場所には、冒険者たちがかつて訪れたアルル村がある。
道は平坦で障害らしい障害もなく、心地よい（季節によっては冷たい）風が広い草原を吹き抜ける。
改めて見ればなるほど確かに、線路を引くには最適な場所であると言えそうだ。
もしこの場所を鉄の魔動列車が走ることになれば、旅人は疲労と心細さに煩わされることなく、
爽やかな景色を楽しみながら、のどかな気持ちでハーヴェスを目指し、そしてあとにすることができるだろう。
3）基地までの道
ハーヴェスを経って2日目の午前、冒険者たちは襲撃されている馬車を目にする。
馬車を襲撃しているのは3体のケンタウロスだが、1体は負傷してHPが半分（12）になっている。
●戦闘
前衛：ケンタウロス×3（ルールブック�� p373）
後衛：ケンタウロス×2
戦闘が終わると、冒険者は馬車の周辺に戦闘不能の重傷者が2人いることに気が付く。
彼らは新米の冒険者であり、前哨基地での護衛を終えた後、ハーヴェスに戻る途中だったのだ。
もし冒険者が彼らの治療をするならば、礼として〈魔晶石〉（MP3点）×1を受け取ることができる。
新米冒険者たちは元気になった場合そのままハーヴェスへ、重傷のままである場合は前哨基地へと引き返す。
御者は何度かこの道を往復しており、小型の蛮族を見たことはあるが、
ケンタウロスを見たのははじめてだ、と不安そうに話す。
これを聞いた冒険者たちは、前哨基地に今までにない脅威が迫っているのでは、との危惧を抱くかもしれない。
4）前哨基地
ケンタウロスに襲われていた馬車を助けて以降は特にトラブルもなく、冒険者たちは前哨基地に辿り着く。
〇ハーヴェス鉄道第二調査団
鉄道敷設のためハーヴェス近郊に散っている調査団のうちの一つ。
10日前に前哨基地の設営を終え、現在は周辺の測量や地質調査をおこなっているところである。
基地の周囲は地面に丸太を突き刺し、隙間なく並べたような、高さ4mの柵がある。
直径は約50ｍで、内部では兵士や冒険者、神官などの護衛要員が80人ほど、
技師や研究者、物資の管理や馬の世話をおこなう者などの非戦闘員が120人ほど滞在している。
マギテックに関わる仕事も多いためか、タビットやルーンフォークの姿も見られる。
現場責任者として調査の終了までいる者もいれば、任期付の補佐として短期間で交代する者もいる。
今回の依頼を請けた冒険者たちは後者で、疲労と緊張の多い護衛の交代要員なのだ。
（下記見取り図を参照のこと）
冒険者たちは基地の中央にある大きなテントで、まず団長に引き合わされる。
団長はティングルという名のタビット（男性／16歳）であり、人手不足もあってか冒険者を大層歓迎する。
もし冒険者たちが道中での襲撃のことを告げれば、彼は感謝を述べつつ強い懸念を示すだろう。
「ケンタウロスのことは初めて聞きました……そうですか、皆に伝えねば」
「報告ありがとう。危険手当についても忘れずに記録しておきますよ」
冒険者たちに前渡しの報酬を手渡したあと、ティングルは人を遣ってある人物を呼びに行かせる。
少しすると若いドワーフの女性がやってきて、冒険者たちに元気よく挨拶する。
ティングルは冒険者たちに、彼女と彼女が率いるチームご護衛を頼みたい、と言う。
「こんにちは！ みなさんが護衛の方々ですね！ よろしくお願いします！」
〇モーリイ（ドワーフ／女性／18歳）
・若くして優秀な魔動技師（マギテック）兼土木技師であり、少人数ながらチームを率いる立場にある。
・活発で人懐こく、好奇心旺盛な性格をしており、冒険者たちとも積極的にコミュニケーションを取る。
・武器や戦闘技術は持っておらず、戦いに加わることはない。必要があればHPは10あるものとして扱う。
冒険者たちは1つないしは2つの小さなテントを割り当てられる。
もし女性の冒険者がいれば、モーリイと同じテントで過ごすこともできる。
（そして彼女はリラックスした状態だと、かなりだらしない人物であることがわかる）
5）周囲の調査
探索者たちはこのシナリオ中、到着1日目の午後、2日目の午前、2日目の午後、の3回分護衛をおこなう。
調査地点はA,B,Cの3か所あるが、特に順番は決まっておらず、冒険者たちが自由に選択できる。
それぞれの調査地点では異なったイベントが発生する。
〇調査地点A：傷ついたコボルド
冒険者たちがAの地点に向かうと、50ｍほどの距離にある茂みから、傷ついたコボルドが走り出てくる。
その直後、槍を持ったケンタウロスが2体、コボルドを追ってくる。
このコボルドは食料泥棒をし損ね、制裁として追われているのだ。
冒険者たちがコボルドを助けるかどうかに関わらず、ケンタウロス2体との戦闘に突入する。
この戦闘にコボルドは参加しない。
●戦闘
前衛：ケンタウロス×3
後衛：ケンタウロス×2
傷ついたコボルドの処遇は冒険者たちに任される。
殺すならばすぐさまそうできるし、治療をしたり、食料を与えたりすれば従順になる。
逃がしてやることもできれば、前哨基地に連れ帰ることもできる。
ハーヴェスでも料理人や小間使いとして少数のコボルドが生活しているので、
冒険者たちが多少とりなせば、団長のティングルもコボルドの保護を許可するだろう。
〇調査地点B：埋もれた魔動機
冒険者たちがBの地点に向かうと、少し離れた場所で他のチームと思しき調査員たちが人だかりを作っている。
その様子を見に行くと、地中に埋まった金属質のものを掘り出している最中である。
目標値12の「魔物知識判定」に成功すると、それがシャザーレィであることが分かる。
もし冒険者たちが判定に失敗した場合は、同行しているモーリイが鑑定することになる。
「わぁ、実物を見るのは初めて！ 基地に持って帰って早速いじってみよう！」
モーリイ以外の調査員たちはシャザーレィを埋めたままにするか、掘り返して持ち帰るか判断をつけかねている。
暴走した場合に、人的物的な被害が出る可能性を考慮してのことだ。
冒険者のなかにマギテックがいれば、目標値9で「マギテック+知力ボーナス」の判定を試みることができる。
成功した場合、このシャザーレィには調査員や冒険者たちを攻撃するような命令は与えられておらず、
また保存状態も比較的よいため、暴走する恐れはないと判断できる。
おそらくは〈大破局〉以降に一度発掘され、整備を受けたのではないかと推測できるかもしれない。
（モーリイが鑑定した場合には、これらに「多分」がつく）
目標値7の「腕力判定」に2回分成功すると、無事シャザーレィを掘り起こすことができる。
掘り出されたシャザーレィは、その時間中に前哨基地へと運搬される。
冒険者たちが判定に失敗した場合、前哨基地に運搬されるのは次の時間となる。
つまり1日目午後の場合は、2日目午前。2日目午後に失敗した場合、シナリオ中には到着しない。
〇調査地点C：トロールのキャンプ跡
冒険者たちが地点Cに向かうと、燃え尽きた焚火の跡、野生動物の骨、食事の残骸や排泄物などが見つかる。
それらを手掛かりとして目標値9の「足跡追跡判定」「探索判定」に成功すると、
ケンタウロスではない大型の蛮族が、この場所で一晩を明かしたのだということが分かる。
（正体はケンタウロスとの連携を画策するトロールであるが、この時点では分からない）
足跡は百ｍほど追跡することができるものの、その後は草原に紛れていて、主に辿り着くことはできない。
冒険者たちのうち1人がここで2d6をロールし、出目に応じたアイテムを獲得する。
2〜3：なし
4〜6：〈黒ずんだ複眼〉（30G／赤B）
7〜10：〈良質の殻〉（150G／赤A）
11〜12：〈宝石〉（150G／金A）1d3
6）犠牲者
探索一日目の日暮れ前、冒険者たちが前哨基地に戻ってきたあと、数人の調査員が死体を運んで帰ってくる。
それは若い人間の男性で、調査の途中でケンタウロスに襲われ、槍で胸を刺されたのだという。
同行していた冒険者がケンタウロスを撃退したため、それ以上の犠牲は出なかった。
通常、冒険者以外は蘇生を望まないため、遺体は神官による保存の魔法がかけられ、安置されることになる。
そのような光景をしんみりとした表情で眺めながら、モーリイは人族と蛮族の争いに対する想いを漏らす。
「なんで戦いなんて不合理なことが、こうもしょっちゅう起こるんでしょうか？」
「私は時々、人族と蛮族が分かれていること自体を不思議に思うことがあるんです」
「世界っていう機械の中で、お互いに仕組みを邪魔し合う部品みたいなものですよ」
7）暗夜の襲撃
探索二日目の夜、冒険者たちはモーリイとともに、前哨基地本部テントに呼び出される。
テントの中ではティングルが待っていて、度々目撃されるケンタウロスに言及する。
そして冒険者たちはここ数日、前哨基地近辺を脅かしているケンタウロスについて、
印象や気が付いたこと、どのような危険がありそうか、なんでもいいので聞かせてほしい、と請われる。
このとき冒険者が答える内容はどんなものでもよい。
話しがひと段落したあと、前哨基地内にけたたましい半鐘の音が鳴り響く。敵襲の合図である。
ティングルは周囲に素早く指示を飛ばし、冒険者たちには、門の方へ向かってほしい、と頼む。
〇決戦
冒険者たちが前哨基地の門に向かうと、既に戦闘が始まりかけている。
見張り櫓に立つ兵士が、敵は数十体のケンタウロスであることを知らせる。
少しの間、柵越しに槍や弓矢での応酬が続いたあと、派手な妖精魔法で門が破壊される。
敵味方入り乱れての戦いとなり、冒険者たちはまず3体のケンタウロスを相手にすることになる。
●一戦目
前衛：ケンタウロス×3
後衛：ケンタウロスインペイラー×1（ルールブック�� p376）
この戦闘が終わったとき、目標値5の「聞き耳判定」をおこなう。
成功した冒険者には、前哨基地の南東（見取り図右下）で、なにかを破壊するような音が聞こえる。
冒険者はここで踏みとどまって戦ってもいいし、音のした方に向かってもいい。
もし探索中にコボルドを連れ帰っていれば、彼（彼女？）が背後で起こっていることを知らせてくれるだろう。
踏みとどまる場合は、立派な槍を持ったケンタウロスの指揮官を含んだ敵との戦闘になる。
●二戦目A
前衛：ケンタウロス×3※
後衛：ケンタウロスインペイラー×1※
※剣のかけら×2で強化されている。
冒険者たちが音の方に向かうならば、そこで派手に破壊されている柵を目にする。
姿を現すのは、巨大な棍棒を持った2体のトロールである。
もし、この時点までにシャザーレィが前哨基地に到着していれば、
破壊された柵の近くには、いち早く挟撃に気づいたモーリイがいて、魔動機を起動している。
その場合、味方としてシャザーレィ×1が加わる。
●二戦目B
前衛：トロール×2（ルールブック�� p447）
8）結末
冒険者たちが勝利すれば戦況は傾き、ケンタウロスたちは撤退していく。
犠牲者も比較的少なく、前哨基地の面々は無事朝を迎えられることに喜ぶ。
しかしティングルはなにか深刻そうな顔で、ぶつぶつと呟いている。
「しかし、ケンタウロスとトロールが協力を？ まさか上位蛮族が……」
この発言の背景には、それぞれが独立心の強い種族であるという事実がある。
2種族が協力関係を結んだのは、ドレイクやディアボロなどの関与があったからかもしれず、
そうなると今後も散発的な戦闘では収まらない可能性が高い、とティングルは考えているのだ。
しかし、現時点では推測するほかなく、冒険者たちの任務も終わりに近づいていく。
3日目に周辺地域の調査はおこなわれず、負傷者の治療、敵味方の死体処理、柵の補修などに費やされる。
やがて冒険者たちが約束の報酬を受け取り、馬車でハーヴェスに戻るとき、
モーリイは冒険者たちに礼を言い、再会を約し、名残惜しそうに前哨基地の外まで送りに来る。
「お仕事頑張りましょう！ お互いに！ どうか道中も気を付けて！」
強い風が吹き抜ける中、馬車が遠くなっても、モーリイは長いこと手を振り続けていた。
冒険者たちと彼女の間に、今はまだ未開発の草原が横たわるのみだが、
調査団の仕事が順調に進めば、いつかはそれが力強く延びる、鋼鉄の線路になっていることだろう。
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