コラム
2010年6月までに、改正貸金業法の目玉である「総量規制
」が施行され、「総借入れ金額が年収の3分の1を超える」ことが原則禁止される。さらに、この改正によって、収入のない主婦(主夫)の借入に関して、今までにはなかった規制が設けられることになる。
借り入れることのできる金額が「年収の3分の1」と定められているが、収入のない人はこれから借入をどうしたらいいか、そもそも収入のない人は借入自体ができなくなるのではないかという疑問が生じるが、この点について「配偶者と併せた年収の3分の1以下」であれば借入できるという規定があるので、専業主婦の方であっても借入自体は可能になる。
しかし、実際に主婦が借入を行う場合には、この規定に該当することを証明しなければならなくなる。配偶者貸付においては、「年収を証明する書類」の他に「配偶者の同意」と「配偶者であることを証明する書類」を提出することが義務付けられるのだ。
ここで問題になるのは、「配偶者の同意」を証明する書面であろう。配偶者に、借入を行うことについて一筆書いてもらう必要がある。つまりは、配偶者に内緒で借入することは実質不可能になるということだ。多重債務に陥り、相談に来られる専業主婦の方は、ほとんどが夫に内緒で借入れをしている。やはり、自分には全く収入がなく、扶養されている身であるにも関わらず借入れをして夫の収入で返済しているということに後ろめたさを感じているので、夫にはとても言えないという方が多い。それは当然の感覚であろう。
しかし、そのような専業主婦の方に最初に借入をしたきっかけを聞くと、十人十色の事情はあるものの、ほとんどのケースに当てはまるのが、不況で夫の収入が下がってしまったが、小さい子供を抱えているとか親の介護で自分が働けない等、本当にちょっとした事情である。まさに「ちょっとだけだしすぐ返せる」という軽い感覚で借りたという例が非常に多い。
貸す側の広告を見ても、審査は簡単で、お金を借りることに抵抗を感じさせない内容だ。これなら便利だし利用してみようと思ってしまってもおかしくない。
だが、すべての落とし穴がここにあるのだ。一度借入に頼ることを覚えてしまうと、借入に頼らずには生活できなくなっていってしまう。まさかこんなに債務額が膨らむなんて、借入をした当初は誰も思わなかっただろう。
もし夫に最初に相談なり話なりができていれば、節約や別の方法によって借入に頼ることが回避できたかもしれない、ひいては多重債務に陥ることを回避できたかもしれないという例は本当に数えきれないほどある。
借入をするにあたって、夫にどうしても話すことができない人も中にはいるだろう。しかし本来家計を同じくして生活している夫婦において、資金の管理は今後の人生を歩んでいく上で最も重要なことの一つである。ほんの軽い気持ちで借りたことが、後の人生を大きく狂わせる原因になってしまうことを、借入をする際に一度立ち止まって考えてほしい。改正貸金業法の施行によって、しばらくは総量規制の基準に引っかかってしまう方への影響が多く出るだろうが、本来はこれくらい慎重に融資を行うべきなのだ。今この改正をきっかけに、借入について本当に必要なのかを見極め、将来的に多重債務に陥ってしまう人の数が少しでも減少するように願う。
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