上条「そこだよ。『そこから間違っているんだ』。撃たれたのはビリビリなんかじゃあない。
アイツは俺の渡したネックレスを付けていたんだから」
上条「アイツは・・・・御坂妹だ」
――同時刻、某場所――
美琴「・・・・・・・」
??「どうやら計画は順調のようだ。二人邪魔が入っているが・・・」
美琴「・・・あの子の容態は?」
??「外の病院で絶対安静だが、今のところ命に別状は無い」
美琴「・・・・よかった・・・」
??「一方通行が絡んでしまったことは予定外だったが、彼も私の意図を汲んでいるようだ
これなら作戦に支障はきたすまいよ」
美琴「・・・そうですか」
??「だが、君はこれ以上動かない方がいい」
美琴「・・・・!うぅ・・・・」バタン
??「これでよし・・・最悪の場合は・・・」
――同時刻、学園都市内の公園――
亀山「ネックレス・・・ねぇ」
右京「やはり君はプレイボーイですね、しかも筋金入りの」
土御門「カミやん・・・お前は何人の女を落とせば気が済むんだにゃー」
上条「な、なんだよみんなして俺のこと睨みやがって!」
右京「先ほど米沢さんに確認してきました。確かに彼女の衣類の中に、君のプレゼントのペンダントがありました。
さらに、今分かったことですが、設定上、御坂美琴には狙撃の類は効果がない。つまり、撃たれた御坂美琴は『御坂美琴』では
ない」
亀山「と、いうことは被害者は御坂美琴ではなく、そのクローン・・・クローンって・・・はぁ」
右京「どうしましたか?亀山君」
亀山「いや、なんだかだんだん世間の常識って奴が分からなくなってきました」
右京「今更そんなことを。ここに来た時点で常識は通用しないと言ったではないですか」
亀山「そりゃまあそうですが」
右京「ところで、被害者の『御坂妹』さんでしたか、彼女に一番詳しいのはどなたになるんですか?」
上条「まあこの中なら俺、だろうけど多分一番知ってるのはあの先生じゃないかな」
亀山「先生?」
上条「そう、カエル顔のセンセイ。あの人にかかれば病気も怪我も一発なんですよこれが」
右京「ほう、それは興味がありますね。ぜひ行ってみましょう」
――同時刻、第七学区内、病院入り口――
ゲゴ太「やあ、今日は怪我で来たわけじゃあないんだね?」
上条「いつも怪我して来てますからね」
ゲゴ太「そして、後ろの方々はお客様かい?」
右京「こんにちは、警視庁特命係です。今回はとある少女のお話を伺いに来ました」
亀山「御坂美琴のクローンっすよ。何かご存じないですか?」
ゲゴ太「・・・・・・君達は、どこまで知っている?」
右京「いえ、まだ何も。だからこそお話してください。今彼女はどこにいるのか」
ゲゴ太「知らないねぇ?退院してそれ以来会ってないんだからわからないよ?
確かにあの子は前にこの病院で入院してたことはあるけどね?」
右京「・・・随分と薄情ですねぇ」
ゲゴ太「そんなことはないよ?それにしても彼女がクローンだなんて驚きだったでしょ?」
亀山「そうっすね。俺自身まだ信じられません」
ゲゴ太「そう思うのも無理はない。しかし彼女達はクローンだ。今はそんな情報が流れてないからみんな知らないのだけど
知ったら民衆はどうする?彼女達を『科学の結晶』として持ち上げるかい?それとも『生命の冒涜』として弾圧するのかい?
」
右京「・・・今度は饒舌になりましたねぇ」
ゲゴ太「私は彼女達が心配なだけなんだけどなぁ?」
右京「そうですか。ではもう一つだけ」
ゲゴ太「なんですか?」
右京「もし貴方が学園都市の一般開放を止めることができる立場であった場合、貴方はどうしますか?」
ゲゴ太「もちろん、止めるよ?それが僕に出来る償いだからね」
亀山「償い?」
ゲゴ太「質問は一つだけと聞いていたけど?」
右京「失礼しました。では私達はこれで」
――同時刻、学園都市内の公園――
上条「どういうことだよ!アンタ等先生を疑ってるのかよ!」
黒子「私も、申し訳ありませんが信じられませんわ・・・」
右京「いえ、そこまでは言っていません。しかし、気にある点がいくつかあります。
まず一つは彼が御坂妹の動向を知らないはずがない。
クローンだからと言うだけでは片付けられない執念と言うものが言葉の節々に感じられました。
クローンが世間に出ることを恐れていると言うのなら、決して自分の目から離したりはしませんからねぇ。
そしてもう一つ、亀山君も気になっていたでしょう、『償い』と言う言葉です。
しかしそれが分からない。何に対する『償い』なのか、誰に対する『償い』なのか
量産化能力者計画に彼の名前は入っていなかった。いったい彼は何を『償い』たいのでしょうか」
土御門「そういやあ他の妹達はどこに言ったんだにゃー?」
初春「えっと・・・世界中に、ですね。治療のためと言うことで各地の研究所に行っています。
ここだけの設備では数千人規模の治療は出来ないという先生の判断だと思われます」
右京「だとすると御坂妹さんの居場所だけ知らないと言うのはやはり不自然ですね」
打ち止め「せんせいはそんなことする人じゃないもん!ってミサカはミサカは前と同じ台詞を言ってみる」
亀山「そうは言ってもな、一方通行を無罪だっていう嬢ちゃんを信じるなら、一番怪しいのはあのカエル顔だぜ?」
土御門「うーん・・・わからんにゃー・・・・」
打ち止め「・・・このまま離れ離れなのかなぁ」
上条「だ、大丈夫だって。きっとすぐ戻ってくるから。こんなにみんなで考えてるんだから・・・さ」ポン
パリィン!
一方通行「・・・・・!!」
――同時刻、警視庁内取調室――
伊丹「おいどうしたよ急に驚いた顔しやがって」
一方通行「うっせェ黙ってろこの三下!・・・無事そうだな。ならこンな所にゃァ要はねェ」
伊丹「はぁ?お前は何を言って――」
一方通行「・・・言ってたよな?『超能力がみたい』ってよォ・・・?お望みどおりご披露してやるぜェ!!」
一旦休憩
――同時刻、学園都市内、公園――
右京「なんと!容疑者が逃げた!そうですか・・・わかりました」
亀山「どうしたんですか?」
右京「容疑者の一方通行が逃走したようです」
打ち止め「あ、そういえばさっきミサカネットワークが通じるようになったから・・・かなあ、とミサカはミサカは問題を解決してみ
る」
亀山「なんだそりゃ、つまり『ねっとわーく』ってやつが通じるようになれば能力が使えるのか?」
打ち止め「そういうこと」
右京「それはいつから通じていなかったのですか!?」
打ち止め「え?いきなりダンディーなおじさんの方が急に大きな声出したからびっくりしたってミサカはm――」
右京「重要です!・・・僕としたことが・・・!
取調室では超能力を使わなかったのではなく、『使えなかった』と言うことに早く気づいていれば・・・・!」
亀山「それがどうかしたんですか?」
右京「あなたも量産化能力者計画と絶対能力進化の結末を聞いたでしょう!計画は頓挫。
その後の『事故』により障害を負った一方通行は巨大な並列コンピューターの補助無しには高度な演算を行なうことが出来なく
なった。
彼にその『巨大コンピューター』とリンクさせる補助装置を渡したのは誰ですかっ!
その人物なら一方通行への通信妨害は容易に行なうことができるはずです!」
土御門「ちょっと待て。一方通行自身にはムリだぞ?以前に電磁妨害が起きてから奴自身の杖には・・・・あ!」
右京「そうです、だからこそ、コンソールの役割を持つ彼女を封じたのです。
例の計画を始めて聞いた時、ラスト・オーダー、君は『また先生のところに行こうかなー』と言っていましたね?
前回先生のところに行ったのはいつですか!」
打ち止め「うーん・・・多分一週間くらいまえ。そのときにこのお守り貰ったの!
ってミサカはミサカは霊験あらたかなお守りを誇らしげに掲げてみたり」
右京「開けても?」
打ち止め「だめだよせっかくのご利益がなくなっちゃうもんってミサカはミサカは」
上条「一方通行が今度連れてってくれるってさ。恋愛の神様が祭ってある神社に」
打ち止め「はいこれ!とミサカはミサカは何の躊躇もなく渡しちゃったり」
右京「どうも・・・・・・これは、小型アンテナ・・・ですか?」
黒子「そうですわね。これが電磁波の役割を果たしていたとすれば・・・」
土御門「可能性はあるが・・・この子だってレベル3の強能力者だ。生半可な電磁波なんて効果ないぞ?」
亀山「ならすんごい強いんじゃないんですか?ほら、レベル5がいるんでしょ?電撃使いの・・・誰だったっけ・・・」
右京「・・・・・まさか」
――同時刻、第七学区内、病院入り口――
一方通行「あンのクソ医者がァァァァ!どこにいやがる!」
ゲゴ太「なんだい?いきなり来て何の用だい?」
一方通行「てめェ俺をよくもハメやがったなァ!」
ゲゴ太「まさか君があの場にいるとは思わなかったな?
打ち止めに渡したあの妨害電波は君に計画を邪魔されてたくなかっただけなんだけどねぇ?」
一方通行「俺が止めると踏ンでいやがったのか」
ゲゴ太「そうだ、妹達を最悪犠牲にするこの計画に、君は反対するだろうからね」
一方通行「さっきから訳わかンねェな!なンなンだよその計画ってのはよォ・・・時と場合によっちゃあテメェを・・・」
右京「やめなさい!」
一方通行「ァン?誰だテメェ」
土御門「なんとかギリギリセーフ・・・かにゃー」
上条「これからアウトになるかもしれないけどな」
打ち止め「はやまっちゃダメー!ってミサカはミサカは大騒ぎしてみる!」
一方通行「オメェらまで・・・一体なンのお祭り騒ぎって奴ですかァ?」
右京「一方通行!妨害電波を入れた先生の犯行は、決して彼女を傷つけようとしたものではありません!
あくまで君を今回の計画の外に置くためのものだったのです!」
一方通行「いきなり説教たァ笑わせる。いいぜ、聞いてやる」
右京「計画とは、学園都市の一般開放の頓挫。
そのために学園都市の象徴である『御坂美琴』を外の世界において狙撃する必要があったのです。
実行犯は・・・御坂美琴その人です。詳しいことはまだですが、
先ほど鑑識に確認したところ、火傷の痕はほぼ間違いなく『電撃による火傷』であると断定できました。
どうやら落雷によって出来る傷と酷似していることが決め手になったそうです」
一方通行「はァ?テメェが言ったンだぜ?撃たれたのはあのクソビリビリだってよォ」
右京「影武者です。御坂妹というクローンが代わりに撃たれました。クローンについては僕より君のほうが知っているでしょう?」
一方通行「・・・・・・」
右京「そしてこの計画の肝は『学園都市から情報を出さない』ことにありました。
一般人の僕達にさえ助力があればこれほどの秘密を知ることが出来たのです。
もし一般開放された時にはどれほど非人道的な行いが行なわれてきたか、明るみに出るのは時間の問題でしょう」
土御門「だが一般開放自体は大覇星祭でも行なわれている。ここまでして守らなきゃいけないモノは一体なんだったんだ?」
右京「それはこれでしょう。『量産化能力者計画』です。他の荒唐無稽とも言っていい計画とは違い、この計画はそれこそ世界中の科
学者が欲しがるものです。
もちろん倫理的な問題は伴いますが、クローン羊やクローン牛で四苦八苦している現状において、クローン人間を生み出した研
究成果があれば・・・
と思う人間がいてもおかしくはないでしょう。世界中に散らばる妹達もどうなるか分からない。もうチャンスは今しかなかった
のです」
一方通行「まだ弱ェな。それなら別に俺をのけ者にする必要はねェ」
土御門「のけ者にしたんじゃなく、巻き込まないようにしたんだろう。
御坂が犯人でも、クローン人間が認知されてない今なら、御坂妹を御坂美琴だと勘違いしている今なら色々と裏工作が可能だ
しな。
お前が最初打ち止めのことを庇ったように、この先生もお前を庇ったんだよ」
一方通行「・・・・・・ちっ」
右京「先生、教えてください。貴方の言う『償い』とは結局なんだったのですか?」
ゲゴ太「僕と、もう一人で作った『学園都市』のことさ。いま、学園都市では一般開放に向けて準備が進められている。
なぜだか分かるかい?『閉鎖的な空間による独裁政権の所為でローマやロシアと戦闘させられる羽目になった』
『統括理事長がいない今、我々がすべきことは囚われている生徒達の解放である』だってさ?
おかしな話さ、アレイスターがいたときはみんなして秘密を隠そうとしていたくせに、いなくなった途端聖者面ときたもんだ
。
上層部は世間に対していい顔をしたかっただけだ。その行いでどれだけの犠牲を生むか、それすら奴らは知らない。
僕にはこの学園都市を作った責任がある。学園を生み出した償いをしなければならない」
亀山「そこに御坂美琴が相談に来たってわけか、妹達のことで」
ゲゴ太「そう。もう時間はないのだと思った。御坂美琴から相談を受けてミサカ10032号、御坂妹のことだけど、僕の2人でこの狂言を
思いついた。
でも射程距離的に考えて、御坂美琴にしかできなかった。一方通行と同じく彼女がこの犯行に賛成するわけがなかった。
だから、理由を捏造して離れた場所から最大出力で撃ってもらうことだけしてもらったよ。10032号に避雷針の役目をお願い
したのは私だ」
右京「そうですか。そして、もう一人の共犯者の御坂美琴さんは?」
ゲゴ太「いや、共犯者ではないよ。私が、私の目的のために彼女をだまして利用したのだから。
彼女のしたことは、打ち止めと一方通行を無力化させるための装置作りと、あさっての方向に電撃をぶちかましただけさ。
今はその役割を果たしたから睡眠薬で眠らせたよ」
右京「そうですか・・・亀山君」
亀山「了解っす!っじゃあ行こうか上条君、お前も来るんだよ!」
上条「え?お、俺もっすか?」
亀山「当然だろ?眠り姫には王子様のキスって相場が決まってるんグハァ!」
黒子「させませんわっ!!」
打ち止め「わーい久しぶりな気分がするーってミサカはミサカは不意に抱きついてみたり」
一方通行「や、やめろ恥ずかしいじゃねェか・・・」
ゲゴ太「・・・今のうちに、行きましょうか?」
右京「お供しましょう。私にこの空気は合わないようですからねぇ」
土御門「・・・・・・・・」
――数日後、某場所――
小野田「それで?お前の持っているこのデータを僕に渡して一体どうする気?」
右京「いいえ、ただこの書類を見せたかっただけですよ、その後どうするかはご随意にどうぞ」
小野田「ふぅん・・・量産化能力者計画・・・ねぇ。何をさせたいのか、わかっちゃったんだけど、僕」
右京「物分りの良い方で助かります」
小野田「普通に頼めばいいのに・・・天邪鬼な奴だよ、お前は」
――さらに数日後、警察庁長官官房室――
理事1「そ、そんな!約束が違う!一般開放に『能力者の外出制限』が条件に加えられるなんて聞いていません」
小野田「そりゃそうでしょう。あれほどの事件が起き、さらに取調べ中の容疑者は能力で刑事に怪我を負わせた挙句逃走。
我々としては治安維持の名目上、彼らを野放しって訳にはいかないんですよ」
理事2「か、彼らだって力の使い方くらい承知しています。今の彼らに必要なのは自由なんでs――」
小野田「だーかーら、彼らが一般社会で受け入れられないくらい、貴方達も知ってるでしょ?
そういう風に育てたのは自分たちなのに、今更何を言っているんですか。動物園の動物は、檻の中にいるからみんな見に来る
んですよ?
まあどうしてもって言うなら、今までの研究データ、全部破棄してくださいね。危ないですから」
理事1「そ、それは・・・・」
小野田「できない、あっそ。やっぱり宝の山はどぶに捨てられませんか。そんなことだろうと思いました。人間、いつだって動くのは
欲ですからね」
理事2「・・・・・・」
小野田「まあ容疑者の『いっぽうつうこう』君だっけ?彼の容疑はもみ消しといてあげるから。よかったね。彼、自由の身だよ。貴方
達の欲しがった・・・ね」
――同時刻、ロンドン、某場所――
ローラ「さすがはウキョウでありけるわー。このくらいの謎はなんともならざるのねー」
土御門「・・・本当に良かったのか?」
ローラ「貴方はよく働きたもうよ。あの『一方通行』を犯行現場に誘い出し『打ち止め』に通信妨害の呪詛を張りたるのは貴方にしか
できぬことなりよー?」
(土御門「いやーお困りのようですにゃー・・・げっほげっほ」)
(亀山「あ!テメェ勝手に逃げやがって!よくもノコノコ戻って来れたもんだ!・・・ってどうしたその怪我」)
土御門「わざわざ一方通行を犯人に仕立て上げた理由・・・何かあるのか?」
ローラ「なんにもなかろうよー。しいて申せば『挑戦』かしらー。人を袖にしたりける意趣返しが近いと思わるよー」
土御門「なるほど、むかし振られた腹いせか」
ローラ「・・・・また会いたりけるわねー」
――同日夜、花の里――
亀山「それにしても、不思議なところでしたね。まるで夢みたいでした」
右京「夢みたい、とは随分とロマンチックなことを言いますねぇ」
たまき「あら?今回はどちらに行ってきたのですか?」
亀山「すごかったんですよ!見たことのない携帯電話やパソコンがわんさか」
右京「手で画面を触る携帯電話には驚きました。数年後に実用化されるそうです」
亀山「すごいですよねー。いつか本とか読めるようになってたりして」
右京「実用化される頃まで亀山君、君がいるといいですがねぇ・・・なんだかいない気がします。代わりの相棒がいるかも・・・」
亀山「そ、そんなあ・・・・・」
END
右京「ほう・・・学園都市ですか・・・」
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