某大型掲示板などで公開されたSSのまとめ、たまに2ちゃんスレもなWiki

実は上条がここに来れたのは初春がC棟の妹達の調整室で眠る上条を発見したからだった。

その途中、ビーカーに閉じ込められていた打ち止めを発見した二人は、幻想殺しでビーカーを破壊、救出しこの部屋へと向かったのだ。

球磨川が言う様に、上条がこれまでの経緯を把握しているのは二人が現場に向かう中、彼に説明したからである。

『いいかい、上条ちゃん。人間が他人を理解したって思うのは他人と同じ意見を持った時か、他人を自分色に染めた時にそう思っちゃうんだよ』

「…………」

球磨川の話に何を言い返すわけでもなく、ただ公演を聴く一人の観客のように黙り込む上条。

『例えば同じ趣味を持っていたとき。例えば同じ相手を好きになったとき。例えば同じ敵を前にしたとき。そうだね、後は……』

そして球磨川は再び仮面のような笑顔を浮かべ、こう言った。

『自分の思想を無理やり相手に押し付けて、それが正義だと思ったとき、ぐらいかな』

『例えば、今までの上条ちゃんが“敵”にしてきたみたいにね』

数々の相手にその拳と言葉は球磨川には届くことはなく、逆に上条の信念を再び揺らがすことになった。

「……でも、だからって目の前の人を助けない訳にはならねぇだろうが!!」

登場したときのように吼える上条だったが、どこかその言葉は弱く感じてしまう。

「皆が幸せになりゃあそれが一番だろうが!!」

もはや上条の言葉は誰かを正す為のものではなく、今にも倒れそうな自身の体と信念を支える為のものだった。

『皆が幸せに、か……』

「そうだ!」

球磨川はそんな上条に対し再び深い溜息をつく。無感情な無表情を浮かべ上条を見つめる目は、もはや落胆ですらなく哀れなものを見るそれだった。

ガシガシと頭を掻き、面倒くさそうに球磨川が言った言葉は、上条の主張を打ち砕く。

『でも、その皆ってのに僕は入ってないんだろう?』

もう、どんな言葉も球磨川には届くことがない。この場に居る人間は例外なくそう思った。

『涙子ちゃんも、ミサカちゃんも、天井ちゃんも、姫神ちゃんも……あぁ青髪ちゃんは少し違うけどさ』

『みーんな僕に感謝してくれたよ』

『心のどこかに抱えた感情を受け入れてくれたことが嬉しかったんだろうね、誰も彼女達に目を向けなかったんだろうね』

『能力者(プラス)が、生きている者(プラス)が、成功者(プラス)が、人気者(プラス)が』

『僕達(マイナス)に少しでも気をかけてくれたら、こうならずに済んだかもしれないというのに』

球磨川の言葉は止まらない。

球磨川の過負荷は止まらない。

『涙子ちゃんがどんな気持ちで能力者を見ていたのか』

『ミサカちゃん達がどんな気持ちで死に、今を生きているのか』

『天井ちゃんがどんな気持ちで成功しようと努力していたのか』

『姫神ちゃんがどんな気持ちで存在証明を探していたのか』

『青髪ちゃんがどんな気持ちで今まで生きてきたのか』

『他人は理解はできないけど、上条ちゃんは他人をちゃんと理解しようとしたのかな?』

『いいよ、上条ちゃんが全部自分の思い通りに事が運ぶと思うなら、他人を無理やり幸福(プラス)に導こうとするなら』

『そのふざけた現実をぶち殺してあげるね』

「っ……そ、それは」

『それは、なんだい?上条ちゃん。何か間違いがあったら教えてほしいな』

弱弱しく言葉に詰まる上条。もはや、自分の信念など音をたてて崩れ落ちていた彼の足は、小さく震えていた。

それは恐怖でも、畏怖でもない。

純粋に上条当麻が否定された為だった。

「何をビビってるのよ!!」

と、今にも崩れ落ちそうな上条にかかる一つの叫び。御坂の声だった。

「例えそれが偽善でも、間違いでも、自己満足でも私達がアンタに助けられたことは事実なのよ!!」

妹達を巡る事件の時、自らの命を差し出してまでも実験を止めようとした御坂を救ったのは紛れもない上条の言葉。

「そうだよ!ヒーローさんのおかげでミサカ達はこうやって生きてるし、あの人も変われたんだから!」

姉の言葉を続けるように、小さな体を震わせながら打ち止めも叫ぶ。

打ち止めの言葉に、一方通行は小さく舌を打つ。

「そうだァ三下……悪党は主人公に負けるってのが物語のお約束だろうがァ……」

どこかバツが悪そうな表情を浮かべながら一方通行も上条へ言葉を送る。

「その通りです!」

初春も、それに続く。

「だからアンタは今まで通り――」

思い切り息を吸い、御坂が上条に向けて伝えた言葉は。

一人で何でも抱え込む素直じゃない彼女が今まで誰にも伝えられなかった言葉だった。

それは。

「私達を助けてよ!!」

助けてほしいという、願いだった。

『あらら、嫌われたもんだね。まぁいいかこんな役回りは僕の役目だからね』

声援を浴びる上条を他所にどこからか取り出した螺子を構える球磨川。

『ちょっと長々と話しすぎちゃったね。ここは週間少年ジャンプみたいに戦って決着をつけようか』

立ち尽くしたまま動かない上条に、襲い掛かる上条。そしてゆらりと挙げた右手で球磨川の螺子を掴む。

その瞬間、球磨川の螺子は消滅してしまう。

「わかったよ球磨川……」

そして空いていた左手で拳を握り、球磨川の顔面へと叩きつける。

衝撃で仰け反り、顔面を押さえながら悶絶する球磨川に向け、上条は決意の言葉を投げる。

「俺は、お前を助けない」

球磨川は一瞬でダメージをなかったことにして、醜悪で、凄惨な笑みを浮かべる。

それは上条がこの部屋に来たときと同じ、どこか嬉しそうな笑顔。

『そう、それでいいんだよ。これで心おきなく戦える』

「ああ、何の気兼ねなくな」

向き合う上条にもう迷いはない。

「俺は、俺の幻想を守る為にこの拳をお前に振るう」

『そう。だったら僕はただ何となく君を螺子伏せることにするよ』

「いくぜ、大嘘憑き」

『おいでよ、幻想殺し』





上条と球磨川の戦いは平行線を辿っていた。

上条が与えるダメージはすぐに“なかったこと”にされるが、

逆に球磨川の螺子での攻撃は全て幻想殺しによって打ち消され、上条へダメージを与えることができない。

だが、それでも上条が絶対的に不利だった。

上条の攻撃が全てなかったことにされるのに対し、球磨川の攻撃は当たってさえしまえば確実にダメージを与えることができるのだ。

幻想殺しでは傷まで消すことはできない。

説得は届かず、暴力でさえ制圧することができない現状では、いずれ上条が負けてしまうのは明白だった。

『いい加減に諦めなよ、上条ちゃん』

「お前の指図はうけねぇよ!」

そんなことは上条は分かっている。だが拳を振り回すことを止めない。

周りにいる御坂達も助太刀はせず、ただ二人の行く末を見守っているだけである。

なぜだか二人の間に割って入ろうという気にはなれなかったのだ。

『それじゃ、こういうのはどうかな?』

球磨川はポケットから螺子を取り出し、上条へと攻撃を仕掛ける。

それは先ほどから何度もあったシーンで、そのつど上条は螺子を消しカウンターを決めていた。

「何度でも消してやる!!」

上条は迫りくる螺子に思い切り拳を握り締めた右手を振りぬく。そこで螺子は消滅する――

はずだった。

「ぐぅっ!!」

消えるはずの螺子はそのまま上条の右拳へ突き刺さり、痛みで上条は顔をゆがめ、思わず幹部を抑えながら蹲ってしまう。

『幻想殺し殺しってね』

そんな上条へ追撃は行わず、距離を開けて楽しげな笑みを浮かべたままそう言った。

『確かに今までの螺子は消せたかもしれないけど、普通にホームセンターで売ってたその螺子は消せないよねー』

「テメェ……!!」

球磨川が攻撃に使用した螺子は、能力によって出現させたものではなく紛れもなく現実の物。

わざわざポケットから出したのがその証拠である。

『さて、もう閉演の時間かな。こうやってヒーローが負ける物語もなかなか乙だよねぇ』

今度は螺子を能力によって出現させ、上条へ歩み寄る。

『呆気なかったね。まぁ流石に“彼女”みたいなのは例外か』

球磨川が指す彼女とはいったい誰なのかなど上条に分かるはずもない。

それは過去に球磨川が通っていた学校から武力によって撤退を余儀なくされた相手。

球磨川が『大嫌い』と証する黒神めだかという少女のことだった。

『それじゃ、また明日とか』

そういって蹲る上条へ振り下ろされた巨大な螺子は、そのまま右肩を貫いた。

「っがああああああああああああああああ!!」

飛び散る鮮血と共に上条の叫び声が部屋の内部に木霊する。

『あは!いい声だねかみじょ……痛!』

もう一つの螺子も振り下ろさんとした球磨川が、飛来した電撃を浴び苦悶の声を上げる。

流石に黙ってみている訳にはいかないと判断した御坂の放ったものだった。

「させないわ」

その言葉に一方通行も臨戦態勢をとる。けして敵わないと知っているが、せめて少しでも時間を稼ごうとしたのだ。

『おいおい、美琴ちゃんはこういったラストバトルには手出し無用ってのが暗黙の了解なのを知らないのかい?空気読めよ』

火傷を負ったまま目線を御坂へとずらし、ゆらりと体を御坂に向ける。

『観客のままだったら手出しはしないつもりだったけど、しかたないよね。舞台に上がったんなら容赦はしないよ』

ゆっくりと御坂達に歩み寄ろうとした球磨川だったが、足首を何かに掴まれ前進を止める。

ふと視線を落とすと、血だらけの右手で球磨川の足首を掴む上条が居た。

「お前の相手は……俺だろうが……」

息も絶え絶えになりながらも、その右手に加える力は増すばかりである。怪我をしているのにもかかわらず、球磨川が振りほどけないほどに。

『……離しなよ、上条ちゃん』

どことなく早口でそう話す球磨川に上条はあることに気がつく。

「なぁ球磨川。お前、その火傷を消さないのか?」

その言葉に一瞬場の空気が止まる。

今まで好き勝手なタイミングで傷を消してきた球磨川だったが、今は傷どころか服の汚れさえ消えていない。

相手に対し何かしらの意図がない限り即座に傷を消してきた球磨川だったからこそ、上条はその違和感に気がついたのだ。

今も何かしらの思惑の上で傷を消さないのか――










「傷を、消せないのか――」















傷を消さないのではなく、消せない。

全てを虚構にする大嘘憑きにはあってはならないこと。

球磨川にとってイレギュラーもいいところだった。

「そうだよ、青髪も言ってたじゃねえか……この右手の前じゃ大嘘憑きは意味を無さねぇって」

――その右手の効果のせいで、大嘘憑きは全く意味をなさんからな

それは上条の親友である青髪の言葉。

確かに幻想殺しの特性を考えれば当たり前のことだった。

御坂の手を握れば電撃は放たれず、一方通行の反射膜さえ形成できなくなる。

今にして思えば、幻想殺しを無かったことにしなかった時点でこの答えに辿りつかなければならなかった。

“強制力は幻想殺しの方が上”ということに。

へへ、と不適な笑い声を漏らしながら上条は球磨川の体を支えにする様にゆっくりと立ち上がる。

当然、右手で触られたままなので螺子を出現させることはできない。

「さて、ようやくラスボスの攻略方法がわかっ!?」

いざ反撃開始、というところで上条の言葉が止まる。その原因は球磨川の表情だった。

弱点がばれて困惑するわけでもない。

追い詰められて泣き顔になるわけでもない。

今頃気がついたのかと呆れた表情なわけでもない。

不気味な笑みを浮かべているわけでもない。

球磨川はただ、怒っていたのだ。

球磨川が学園都市に来て、始めてみせるはっきりとした『怒り』の感情。

その表情は修羅のごとく、上条を怯ませるには十分なものだった。

『そうだね、どうも大嘘憑きが発動できないみたいだ』

冷静に喋る球磨川だったが、やはり今までのような人をおちょくるような感じは見受けられない。

冷静すぎるほど冷静なのだ。

『まぁある程度は予想はしてたよ、でもいざ結果が出ると落ち着いてはいられないみたいだ』

上条の右手は現在、球磨川の左肩に置かれている。

払いのければきっと怪我を負った上条の右手などすぐにどかせるだろう。だが球磨川はそれをしない。

『よく頑張ったね、上条ちゃん。これで五分と五分……いや上条ちゃんのほうが有利かな?』

コロッと表情を笑顔に変える球磨川はそう言って上条を見つめる。

『だから、“久しぶり”に喧嘩をしてあげるよ』

言うが早いか球磨川の右拳が上条の顔面へと振りぬかれる。

「っが!」

だが、懸命に右手を握り締めて倒れようとしない上条は、そのまま柔道の組み手のように手を返し球磨川の学ランを巻き込む。

これでちょっとやそっとじゃ上条の手は離れない。

「おらぁ!!」

叫びながら上条は左拳で球磨川を殴りつける。

『痛いじゃない……か!』

球磨川も同じように殴り返す。

上条が殴る。

球磨川が返す。

上条が蹴る。

球磨川が返す。

上条が頭突きをする。

球磨川が返す。

そのやり取りが数分続いた。

二人の顔面は腫れ上がり、息を切らしている。

どこかその姿は、友人同士が喧嘩をしているように見えた。

「いい加減……倒れろよ!!」

上条が殴る。

『上条ちゃんこそ!!』

球磨川が返す。だが、上条に比べて既にその拳には力が入っていない。

体ひとつで数々の修羅場を潜って来た上条と、大嘘憑きによって難なく事を収めてきた球磨川との違い。

それは経験地と体力。そして純粋な身体能力の差だった。

無論、球磨川がひ弱というわけではない。彼はいわばエリートと呼ばれても遜色の無い潜在能力の持ち主である。

しかしそれでも、上条には敵わなかった。

上条の左拳が球磨川の顔面を殴りつけた瞬間、上条の右手に負荷がかかる。それは球磨川が倒れようとしている証だった。

右手を離された球磨川はドサリと仰向けに倒れてしまう。

『あーあ負けちゃった』

「傷を戻さないのかよ」

『いいよ、なんだかどうでもよくなった』

「そうかい」

そんな会話を交わす二人を御坂達は心配そうに眺めている。

球磨川はあっさりと約束を反故する。それは身にもって学んだことだったからだ。

しかし、球磨川は一向に傷を戻す気配はみせない。いっそ清々しい表情を浮かべているくらいである。

『なんだか週刊少年ジャンプみたいだね。青春を感じるよ』

「こんな青春はごめんだね」

『そうかい』

もう球磨川には戦う意思はない。上条は会話を交わしながら確信した。

「球磨川、ここは見逃してやる。だから約束をしろ」

『いいよ、今の僕はどんな不平等条約だって守る気持ちだからね』

立ち上がることをしない球磨川に対し、見下ろしながら言葉を続ける。

「お前が壊した物や、傷つけた人を元に戻せ」

『分かった』

「俺たちの前に姿を現すな」

『分かった。僕は君たちの前に現れない』

「それだけだ」

そんな口約束を取りつけたあと、球磨川は口を開いた。

『了解だよ。上条ちゃん一つだけお願いを聞いてくれないかい?僕を立ち上がらせてくれ』

「傷を戻せばいいじゃねえか」

『この傷はできればそのままにしておきたいんだ。戒めのためにもね』

その言葉にどこか納得できない様子の上条だったが、すこし間を空けた後左手を差し出した。

そして、球磨川がその手をとろうとした刹那――

爆発音が鳴り響いた。

「なんだァ?」

突然爆発した研究所の天井。その異変に一方通行が怪訝な表情を浮かべる。

一方通行だけではない、初春も、打ち止めも、御坂も、上条も、そして球磨川でさえも現状を把握できていなかった。

「よぉマイナス第一位。殺しに来たぜ」

そしてこの場に居る誰でもない声が響き渡り、同時に真っ白な羽が舞い落ちてくる。

それは打ち止めを閉じ込めていたビーカーを作成した人物の能力によって作り出された未元物質の羽。

レベル5第二位、垣根帝督によるものだった。

「なんだぁ?どいつもこいつもしけた表情しやがって。心配すんなお前らは殺さねえよ。第一位お前もな」

風穴の開いた天井からまるで天使のような羽を羽ばたかせながら降りてくる垣根はそう言った。

どこかのホストのような姿に天使の羽とはシュールな光景だが、この状況下笑う人間は誰も居ない。

「なンですかァ?このメルヘンホストくンはァ?」

垣根が放った言葉は一方通行の逆鱗に触れた。お前は簡単に殺せる、そういった意図を感じたためだ。

ベクトル操作で垣根をしとめようと演算を開始したところで、突如それが中断する。

球磨川の負能力ではない、これは――

「バッテリー切れだよってミサカはミサカはあなたに教えてみる」

バッテリー切れだァ、と一方通行は言おうとするが言語機能さえ上手く働いていないようで言葉を紡ぐことができない。

『上条ちゃん。ごめんね傷を戻すよ』

球磨川は差し出されていた手をとることは無く、自らの傷を戻し立ち上がる。

『みんなを連れて先に逃げて』

「……わかった」

球磨川の提案にいくらか驚いた上条だったが、頷き御坂達の下へ走っていく。

「おいおい、ずいぶんと余裕だな」

『まったく、余りに想定通りで逆にテンション下がっちゃうよ』

垣根と向き合った球磨川はやれやれと首を横に振る。

『どうせ統括理事長さんの差し金でしょ?』

「まぁ俺を動かせるのはあの野郎くらいだしな。ちなみに今日は暗部の垣根帝督じゃなく、あくまで一個人への依頼としてを受けて来た」

『ふぅん』

「その態度、ムカついた。テメェはグチャグチャ殺してミンチにしてやるよ」

そして垣根は両翼を広げ臨戦態勢をとる。

そんな中、気を失っている佐天を初春が、9982号を御坂、そして一方通行は上条が担ぎ避難を始める。

最後に部屋を出ようとした上条は一度振り返り球磨川を見る。すると球磨川も振り返り微笑んだ。

『もう君の前に現れることは無いけど、こんなことで償いができるとは思わないけど……』

球磨川ははっきりとこう言った。

『できれば僕とまた友達になってくれると嬉しいな』

球磨川は上条の返事を聞くことができなかった。

それは垣根の放った無数の光る羽が部屋中を破壊し、轟音を鳴り響かせたためである。

『ずいぶんとメルヘンチックだね。垣根ちゃんのイメージには合わないかも』

「安心しろ、自覚はしている」

螺子を取り出し応戦する球磨川だったが、遠距離からの攻撃に垣根へ近づくことはできない。

羽が球磨川を打ち抜くが、すぐに元に戻す。

先の上条との戦いのように平行線を辿る二人の戦い。

『それならその似合わない羽はなくしてあげるよ』

被弾する羽など気にも留めず、球磨川は前進し、宙を舞う垣根へ螺子を投げつける。

垣根はそれを羽で防ぐが、球磨川の目的は攻撃ではなく羽を消すことにあった。

「な……!」

驚愕の表情を浮かべてそのまま地面へと落ちる垣根。その落下点のすぐ傍には球磨川が螺子を持ち待ち構えていた。

『これで終わり?垣根ちゃん』

「っへ、テメェの特徴の無い面に戦意をそがれただけだよ」

慌てる様子も無く垣根は軽口を叩く。

そんな垣根に球磨川は無邪気な笑顔を浮かべ「それじゃ怒らしてあげるから本気出してよ」と前置きをし口を開く。

『お前、なんだか冷蔵庫の中に入ってそうな顔してるよな(笑)』

垣根はブチ切れた。

「ぶっ殺す!!」

垣根はそう叫び、羽を作成。高く飛び上がる。

『学習能力が無いなぁ。そんなに堕天使ごっこをしたいのかい?ひょっとして垣根ちゃんって中二病?』

「うるせええええええええええええええええええ!!」

怒りに任せ先ほどの倍以上の羽を降り注がせる垣根。その衝撃で粉塵が舞い視界が奪われる。

そして視界が晴れてきた時、そこに居たのは無傷の球磨川の姿だった。

『もういいや、飽きたから死んじゃって』

そう言って球磨川がつまらなさそうに螺子を構えた瞬間、一筋の光が走り――

球磨川の右頭部が消し飛んだ。

「誰が一人だけっていったにゃーん」

頭部の四分の一が無くなった球磨川だったそれは無残にも倒れ、どこからか現れた一人の女に蹴り飛ばされる。

「おせぇんだよ、第四位。死ぬか?」

第四位と呼ばれた女は顔を引きつかせ、球磨川の死体を何度も踏みにじる。

「あぁ!?こんなダセェ野郎に我忘れてた奴は何処のどいつだ!?」

「俺の未元物質で姿を消してやったろうが。もともとこういう作戦なんだよ」

「っは!上からの命令じゃなきゃぜってぇテメェなんかとは組まなかったよ」

「俺もだよ」

「とっととしたい回収して、この研究所破壊しておさらばすんぞ」

「指図すんな。私は先に帰るから後よろしく」

女はそういい残すとさっさと研究所から出て行ってしまった。

一人残された垣根は球磨川の死体を担ぎ上げると、穴を開けた天井から飛び立ち空中から未元物質を降り注がせ研究所を破壊した。

研究所外部。脱出した上条たちは突如崩壊を始めた研究所をぼんやりと眺めていた。

誰も何も口にしない。

この戦いには勝者も敗者も存在しない。ただ、上条たちは徒労感を感じているだけだった。

「まぁだこんな所にいたのかよ」

そして突如投げかけれた聞き覚えの無い声。いや性格には御坂だけは知っていた。

「麦野……!」

かつて一度だけ戦ったことのある相手を前に放電する御坂。

「おいおい、こんなところで戦う気は無いわよ。であんた達は何をしてるのさ」

両手をあげ万歳をする麦野に上条が答える。

「球磨川を待ってる」

その言葉に一瞬首を傾げた麦野だったが、すぐに腹をかかえて大爆笑を始める。

麦野の姿に一同は困惑を覚えるが、麦野が言った言葉ですべてを理解した。




「あぁ?なにめでたいこと言ってんだよ?アイツなら死んだよ。私が殺したよ」






球磨川『学園都市?』12

このページへのコメント

なんで他作品とのクロスで主人公補正があるの。
同じ主人公でもめだか出来る事何一つ上条は出来ない。
主人公補正が無けれなば上条なんか善吉レベル雑魚。
善吉戦みたいに琢磨川みたいに視力を消されて、死ぬマイナスに落とされて友だちに成るかの二択を迫れる。
一方に偏った作品はとてもつまら無い。

0
Posted by renput 2017年05月15日(月) 16:37:52 返信

魔術や超能力と違って幻想殺しでも−は消えない。
後、死んでも生きかえるから、降伏する理由がない。

0
Posted by renput 2017年04月10日(月) 23:22:49 返信

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