某大型掲示板などで公開されたSSのまとめ、たまに2ちゃんスレもなWiki


勇者「しかも、結構遠い」

幼女「歩いて2日ぐらいです。そんなに遠くないと思います」

勇者「2日か。水や食料、寝床はどうするの?」

幼女「大丈夫ですよ。2日ぐらい、飲まず食わず寝ずでも人間死にません」

勇者「いや、確かにそうだけどさ、急ぐ旅でもないんだから、初っぱなからそんなハードは通らなくて良くね?」



―――忍の里



幼女「結局、三日掛かってしまいました」

勇者「良いじゃないか、別に。かなり楽だったろ?」

幼女「それはまぁ、王都に行く時と比べたら幸せなものでしたが……」

勇者「君がこれからも旅をしたいなら、その急いだ方が得って精神は邪魔になるね」

幼女「むぅ……」

勇者「さて、君の家はどれだい?」

幼女「あ、アレです。通りの奥のやつです」

勇者「周囲と比べると、少し立派な家だね」

幼女「村長さんですから」

勇者「えっ!君が?」

幼女「答えませんから」

勇者「ごめん。そんな展開なら面白いと思って、つい」

幼女「さ、とにかく家へ急ぎましょう。なるべく、ジジイの居ないことを祈って」

勇者「何で?仲悪いの?」

幼女「色々複雑な事情があるんです。よいしょっ、と」

勇者「ふーん、っておい!窓から入ろうとするな!普通に玄関で良いだろ!」

幼女「良く有りません!呼び鈴鳴らしたら、私達の侵入がバレるでしょうが!」

勇者「自分の家なんだから堂々としろよ!」

幼女「だから、そこは複雑な事情が有るんです!」

ガチャッ

老人「家の前でどうしたんですか?」

勇者「あ……」

幼女「げ……」

老人「ん?お前……」



―――忍の里 《村長宅》



老人「いや、どうも勇者さま。こんな辺鄙な所にわざわざお越し頂いて、有り難うございます」

勇者「いえ、別に」

老人「にしても、驚きました。突然村にやって来た青年があの勇者さまで、行方不明だった孫娘を連れ帰ってくださるとは」

勇者「あの、別に……」

幼女「直ぐ出ていくもん!」

老人「こら!そういうことを言うんじゃない!」

幼女「言っておくけど、お爺様、勇者さんには此処が忍の里だってこと教えてあるから!」

老人「まだ、そんな有りもしないことを言っているのか!さらには、お外の人に、それも勇者さまに法螺を吹き込んで!おい、連れて行け!」

村人「判りました」

幼女「ちょっ!離せ!離せよぉぉ!」

バタンッ

勇者「……」

老人「お見苦しいところを済みません」

勇者「あ、大丈夫です。気にしませんから」

老人「そう言って頂けると有難い。アレは、まぁ、少々手の掛かる子でしてね」

勇者「は、はぁ……」

老人「トグサという者が武芸を少し齧っていましてね。どうも、その者の稽古風景を見て忍者だと勘違いしたようで」

勇者「はぁ」

老人「普通ならそれで済むのですが、あの子は人一倍思い込みが激しく、皆が忍者だと信じきってしまい、頑としてその否を認めようとはしませんでした」

勇者「ふむ」

老人「何回か口喧嘩をした後、とうとう家出をしてしまいましてね。そのまま長いこと、行方知らずだったんですよ」

勇者「成る程、話は分かりました」

老人「おぉ、助かります」

勇者「で、今の話の台本は何処ですか?」

老人「……まさか、勇者さまは孫の法螺を信じるおつもりで?」

勇者「んー、まぁ、信じざるを得ないと言いますか。あの子、子供が買える筈のないクナイを所持していましたし」

老人「玩具でしょう」

勇者「失礼ですが、今、切れない玩具を作っている程、鉄が出回っていないのはご存知ですよね?」

老人「何を漠迦な。魔物は活発になっていますが、鉄はまだまだふんだんに取れていますよ」

勇者「そうではなく、王国の専売故に自由に扱える部分が無いということです」

老人「……孫を連れて来い」

ガチャッ
ポイッ

幼女「ぐえっ」ドサッ

勇者「お帰り」

老人「やれやれ、本当に困った孫だ」

勇者「あ、認めるんだ。結構ダメ元で押しただけなのに」

老人「……あれがダメ元か。中々に鋭かったんだが」

幼女「お爺様!さっきから人を捨てたり拾ったりで何がしたいんだ!」

老人「確認だ」

幼女「確認?」

老人「何故逃げた」

幼女「え?お金が入らないからだけど」

老人「……え?」

幼女「え?」

勇者「お前、逞しいな」

幼女「だって、依頼はしょっちゅうまい込んで来るのに、お金が払われないんだもん!」

老人「我々は国に仕えているんだ。報酬を求めてはいかん」

幼女「残業でもないのに無賃とか、ブラックってレベルじゃないじゃない!」

老人「衣食住は提供されている。それ以上に何を望むのだ」

幼女「金!金!金!」

勇者「聞かなきゃ良かった的な話を聞いている気がする」

老人「そこまで徹底していて、何故戻って来た!未練があるからではないのか!」

幼女「誰がこんな世界一危険なボランティア団体に未練残すかっ!私は、勇者さんと旅に出る!その準備に戻ってきたの!」

老人「旅だと!?勇者さま、今の話は本当ですか!?」

勇者「えっ!あ、はい!まぁ、そう言われればそうかなぁ、なんて……」

老人「今のを聞いていたでしょう!この通り金の亡者です!しかも幼い!どうか、どうか考え直してください!」

勇者「うーん、そう言われてもですね。俺はお孫さんの性格知ってて許可したワケですし、幼いというのは重要なファクターです」

老人「幼いのが……重要…?」

勇者「あれ、俺なんかマズいこと言った?」

幼女「考えると、幼いのが良いって、単語だけだと危険な誤解を生みそうですね」

勇者「なるほどー」

老人「……ま、」

勇者「ん?」

老人「孫はやらん!!」

勇者「あぁ!違うんです!違うんですよ、お爺さん!」

老人「い、いくら勇者さまと言えどこれだけは認められません!」

勇者「話を!1分で良いので話を聞いてください!」

老人「惚気は結構です!」

幼女「お爺様!私からもお願いします!」

老人「お、お前までっ!」

幼女「ってか、何時まで孫にべったりのお爺ちゃん演じてんだ!そろそろウザいしキモいし、何かもう[ピーーー]っ!」

老人「……」

勇者「……」

幼女「……」

勇者「お邪魔しました」

幼女「逃げないでください」ガシッ

勇者「離してください。俺には判るんです。ただいまの君の発言により空気が重くなったということがね。正直、居たくないんです」

老人「……はぁ、勇者さま」

勇者「は、はいっ!」

老人「私の孫が必要と言う話、詳しくお聞かせ頂けますか?」

勇者「え、えーと、まぁ、広告塔です」

老人「成る程。それは、確かに必要ですな。もう少し、年のいった大人の美人の方が良いと思いますがね」

勇者「まぁ、そこは少々込み入った事情でして、なるべくか弱そうな人が良いんですよ」

老人「その込み入った事情が知りたいんですよ」

勇者「いや、結構国の恥ずかしい部分でして……」

老人「気にしません。元より、我々は暗い部分に住んでいるのですから」

幼女「話したくないなら別に良いじゃん!知った所でどうする気も無いクセに!」

老人「機会をあげましょう」

勇者「機会?」

幼女「何の?」

老人「今、此処で見逃す機会だ」

幼女「うえっ」

老人「お前は、この里には掟のあることを忘れた訳ではないだろう」

幼女「……」

勇者「まぁ、国が危ない情報持っている奴を逃がすワケないか」

老人「流石、察しが良くて助かります」

幼女「大丈夫!私は今まで見つかってないし!」

老人「我々が国からお前が逃げた事実を隠していたからだ」

幼女「へ?」

勇者「子供の家出で睨まれたくはない、と」

老人「左様。こうして、騒ぎになる前に運良く戻って来たお前をみすみす放しはしない」

勇者「俺を盾にするのはどうですか?これでも勇者です」

老人「はて?国が勇者に熱を入れている話は聞きませんが……」

勇者「嫌なことまで知ってやがる」

幼女「ね、ねぇ!勇者さん!話しましょうよ!」

勇者「でもなぁ……」

幼女「言っておきますが、私みたいな理想がそこらに転がっていると思わないでください!此処で見逃したら、もう手に入りませんよ!」

勇者「ここで涙の一つでも流せたら立派なんだけどなぁ。そう思いませんか、お爺さん?」

老人「そうですね。まだまだ、甘い」

幼女「なっ!」

勇者「その、話せば貰える機会とやらを先に知らせてくれますか?」

老人「……聞いてなんとするのですか?」

勇者「まぁ、話してくれたら答えをあげます」

幼女「え?え?」

老人「本当に察しが良くおられる。分かりました、話ましょう」

勇者「頼みます」

幼女「ど、どういうことです?」

勇者「機会はあくまで機会ってこと。タダで逃すなんて君のお爺さんは言ってない」

老人「勇者さまの説明した通り、我々は貴方にとある問題を解決して頂きたいのです」

勇者「ある程度の問題なら、貴方方だけで充分な気がしますがね」

老人「部外者でなければならない問題なのです」

勇者「まぁ、色々制約が多そうだとは思います」

老人「その問題とは>>75」


75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[sage]:2011/03/30(水) 01:48:15.65 ID:gF4fTSxAO
この密書を隣の国に届けてくだされ
ただし、汚す、折る、破れる事があったら貴様らの命はないと思え



老人「この密書を隣国まで届けてくだされ」

幼女「え?それだけ?」

老人「ただし!」

幼女「……!」

老人「汚す、折る、破れる事があったら貴様らの命は無いと思えっ!」

幼女「あ、そんなに難しくない」

勇者「……」

老人「さて、どうなさいますか?」

幼女「こんなに簡単なら受けた方が良いですよ。ね?」

勇者「……難しいな」

幼女「えっ?」

老人「では、この条件は飲めないと見て良いですかな」

幼女「ち、ちょっと!勇者さん受けないの!?こんなに簡単なら……」

勇者「お前は勇者ってシステムが分かっていないな」

老人「駄弁ではなく答えをはっきりさせて頂きたい」

幼女「勇者さん!」

勇者「……ッ!分かった、分かったよ。その条件飲みます」

老人「有難うございます」

幼女「ほっ…」

勇者「出発は明日にします。厚かましいかもしれませんが何処かに部屋を用意してください」

老人「構いませんが、貴方の事情を聞いていない」

勇者「紙と筆を用意して欲しい。俺の事情はそこに書いておきます」

老人「勇者さまですから無いとは思いますが、嘘を書くことも考えられます」

勇者「嘘なら喋っても書いても吐けます」

老人「フフフッ!成る程、確かにその通りですな」

勇者「許可頂けますかね?」

老人「良いでしょう。用意させます」

勇者「有難うございます。それで、宿はどちらになるのですか?」

老人「私の家に空きの部屋が有りますので、そちらに」

勇者「助かります」

幼女「空き部屋なんてあったっけ?」

老人「息子夫婦の部屋が空いている」

幼女「そっかー」

勇者「え、それ良いんですか?」

幼女「他人の部屋だからといって、遠慮する必要はありませんよ」

勇者「いや、そういう話じゃなくてさ……なんと言うか、感傷とかそういうのがさ、やっぱ有るんじゃないかと……」

幼女「……?」

老人「何なら孫の部屋か私の部屋にしましょうか?」

勇者「いやいやいや、結構です」

幼女「私も結構です」

勇者「……嫌か」

幼女「一人でゆっくりしたいです」

勇者「そっか」

老人「ふーむ、結局どうされるので?」

勇者「あ、そちらが気にしないのであれば、有り難く空き部屋を使わせてもらいます」

老人「気にするも何も……あ、あぁ!そういうことで」

勇者「へ?」

老人「此方の言い方が悪かったですな。別に息子達は死んでおりません」

勇者「あ、そうですか……」

老人「ですから、気にせずにお使い下さい」

勇者「密書を運ぶ際の条件は汚すな、折るな、破るなの三点。見るなは当然か」

勇者「明日話すのかもしれないが、今は時間指定無し。なら、かなりリスクの少ない道を行けるな」

勇者「密書は二重三重に封をした後に、板で挟んでしまえば安全だ。誰かが意図して狙わない限りだが」

勇者「しかし、部外者に任せるのが密書という時点で怪しい部分を多大に感じるものの、そうそう狙われる代物ではないだろう」

勇者「誰かが血眼で欲しがるものならば、俺みたいな素人に頼む筈がない」

勇者「時間指定が無く、意図して狙われない」

勇者「この条件が揃えばある方法が浮かぶ」

勇者「隊商に混ぜて隣国へ行くこと」

勇者「これなら、上手く金を積めば勇者であるリスクも消すことも可能だ」

勇者「しかし、大型の正式な隊商が事情も言えない相手を雇ってくれるかがネックだな」

勇者「最悪脅してみるか」

勇者「……」

勇者「あっ!そう言えば、誰に届けるか聞いていない」

勇者「まぁ、明日話してくれるか」

勇者「……善は急げだな。妙な場所なら今夜中に計画を練った方が良い」

勇者「寝てなきゃいいけど」



―――村長の部屋



コンコンコン

勇者「済みません。今、宜しいですか?」

「……どうぞ」

ガチャッ

勇者「夜分遅く済みません」

老人「いえ、結構ですよ。昼夜逆転の身の方が多いですから」

勇者「実は、一つ確かめたいことが有りまして」

老人「確かめたいこと?」

勇者「あの密書は誰に届けたら良いんでしょうか?」

老人「あぁ、失礼。言いそびれていました」

勇者「いえ、大丈夫です」

老人「あの書は>>88」


88:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/03/30(水) 22:55:19.38 ID:8K+fYrlv0
魔王の息子



老人「魔王の息子の元に」

勇者「……ぱ、ぱーどぅん?」

老人「魔王の息子です」

勇者「りありー?」

老人「えぇ、本当です。嘘偽りは言いません」

勇者「隣国に魔王の息子がいるとは想像がつかないんですが……」

老人「親と色々あったようですな。彼は普段は農夫として過ごしています」

勇者「ま、まぁ、仮に魔王の息子としておきましょう。それで、何で貴方が魔王に密書を?」

老人「それは>>95」


95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/03/30(水) 23:19:07.26 ID:+1sEbiW40
親友だからだ



老人「親友だからです」

勇者「それを俺の前で言いますか」

老人「ん?あぁ、そう言えば、貴方は勇者さまでしたね」

勇者「そういうことです。魔族と交友のある者を逃してはおけません」チャキッ

老人「……ひのきの棒」

勇者「……なんだろうコレ。情けなくて泣けてくるな」

老人「大変な旅をなさっているのですね」

勇者「分かってくれますか」

老人「それは支給されたもので?」

勇者「はい。国王様から直々に授かったひのきの棒です。香りは確かに良いです。後は500Gぐらいですよコンチクショー」

老人「力を入れていないとは聞きましたが、まさか現実がこれ程とは……」

勇者「全くです。もう、本当に死ねっ!あいつら死ねっ!あっ……」

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