大学の寄付講義「国家基盤づくりに係る土地・家屋の調査」で利用するための用語集です。

区分建物に関する用語

区分建物(くぶんたてもの)

一棟の建物の中に独立した部分が複数あり、それぞれが独立して所有権の対象となるような建物の部分を区分建物という。平たく言うと「分譲マンション」である。一方、見た目は同じマンションであっても、全体を所有している者(オーナー)がいて、各部屋が第三者に賃貸されているようなもの(いわゆる賃貸マンション)は区分建物ではなく普通建物(共同住宅)として登記されている場合が多い。全く外観は同じであるにもかかわらず、取り扱いが区分建物と普通建物に分かれるということからも判るように、区分建物とするかどうかは所有者の意思によるものである。
区分建物で重要な概念は、一物一権主義の例外ということと、通常は敷地利用権と建物(専有部分)の分離処分ができないという点である。
一物一権主義とは、一つのものには一つの所有権しか成立しないという民法の原則で、どんなに規模が大きくても一棟の建物であるかぎり、この原則に従えば建物の一部が(たとえ独立した構造であったとしても)個別に所有権の客体となるということは考えられない。しかし、分譲マンションが当たり前のようになり、一物一権主義のもとでの共有という概念では対応することが事実上できなくなったため、「建物の区分所有に関する法律」という特別法をわざわざ作ってまで、個々の区分された建物の一部を独立した権利の客体とすることを可能としているわけである。すなわち、区分建物とは一物一権主義の例外なのである。
また、通常土地と建物は別の不動産であり、個別に処分することに何らの制限もありえない。しかし、区分建物では敷地の利用権だけを建物と分離して処分可能とすると、さまざまな問題を引き起こす可能性があり、登記上もかなり問題が多かった(特に土地に関する権利関係が問題となった)。そこで、敷地権という権利概念をわざわざ作って、区分建物については、原則として建物と敷地の利用権が別々に処分できないように、法律で権利に制限を加えている、という特色がある。区分建物購入者は、通常土地の利用権がどうなっているのかに関心はない。専有部分が自由に使えればよいのである。なので、この敷地権という概念の導入は、不動産としての区分建物を購入する国民の感覚ともよくマッチしており、その意味でもわかりやすい制度であるといえる。

区分建物の表題登記(くぶんたてもののひょうだいとうき)

区分建物は「原始取得者がその一棟に属する全部の区分建物について一斉に表題登記を行わねばならない」とされている(不動産登記法第47条2項、同第48条1項を要約)。従って、区分所有建物の場合には原始取得者のみに区分建物表題登記の申請義務が課せられており、区分建物購入者に表題登記の申請義務はない。
また、原始取得者は区分建物の表題登記に先立って、公正証書によって以下の条項について規約を定めることができる(建物の区分所有等に関する法律第32条)。
  1. 規約共用部分に関する規約(法律に定められた部分以外の共用部分を決めること)
  2. 規約敷地に関する規約(法律で定められた以外の建物の敷地を決めること)
  3. 敷地権分離処分可能規約(専有部分と敷地利用権と別々に処分することを認めること)
  4. 敷地権割合に関する規約(専有部分の面積割合とは異なる割合で敷地利用権を所有することを定めること)
これらは、いずれも分譲後(区分建物所有者が非常に多数になった後)では意思統一が難しいことを考慮して、原始取得者に決定権を与えている。ただし、この規約は公正証書によって作成する必要があり、公正が保たれる仕組みとなっている。

区分建物の登記簿(くぶんたてもののとうきぼ)

区分建物の登記簿は普通建物の登記簿とはその構成が異なる。普通建物の登記簿は(一棟の)表題部、権利部甲区、権利部乙区という3つのパートからから構成されるが、区分建物の場合には、一棟の建物の表示、敷地権の目的となる土地の表示、専有部分の建物の表示、敷地権の表示、権利部甲区、権利部乙区という6つのパート構成される。区分建物はその入れ物となる一棟の建物の表示が記録されている点と、敷地権に関する情報が記録されているのが特徴である。
なお、区分建物の登記簿は一棟に属するすべての建物(専有部分、規約共用部分など)で1登記用紙を構成している。

敷地利用権(しきちりようけん)

建物を所有するには、その敷地に対して何らかの利用権を持っている必要がある。そうでないと不法占拠となるからである。建物を所有する前提として、その敷地に対する利用権を敷地利用権という。敷地を利用できれば良いので、所有権だけでなく、地上権、賃借権、使用借権などが、敷地利用権になり得る。また、これらの権利が必ず登記されていなくてはならないという制限もない。

敷地権(しきちけん)

区分建物(分譲マンション)に特有の用語で、敷地利用権の内、登記された所有権、地上権または賃借権で、区分建物と一体的に処分されるものを指す。ほとんどの区分建物は敷地権つき区分建物として分譲されている。敷地権付きであるということは、区分建物の専有部分を処分すれば、敷地の利用権も同時に処分したことになるというシステムで、登記の簡略化を図る上で非常に重要な仕組みである。なお、使用借権は登記することができないため、敷地利用権であっても敷地権とはならない。また、区分建物と分離処分が可能な敷地利用権(例えば土地の共有持分)や区分建物の専有部分と敷地の所有者が異なる場合も当然には敷地権とはならない。
通常、区分所有建物(分譲マンション)はその敷地及びその地上建物が同一所有者によって表題登記される。なので、表題登記の際に敷地権についても同時に登記が行われる場合がほとんどである。しかし、場合によっては新築時点で敷地と区分建物の所有者が異なる場合もある。そのような場合には、敷地権が付いていない区分建物として表題登記をした後に、敷地の持ち分移転と、専有部分の所有権移転を同時に行い、敷地利用権と区分建物の所有者が同一になった専有部分について個別に敷地権を張り付けていくというケースも有る。いずれにしても、最終的には敷地権付きの区分所有建物として登記されることになる。
敷地権の目的となった土地については「敷地権たる旨の登記」が登記官によって実行され、以後、その土地の敷地利用権に関する登記記録は一切書き換えられることはない。区分建物につて行われた権利に関する登記がそのまま土地の登記にも自動的に効力を及ぼすようになる。

一棟の建物(いっとうのたてもの)

区分所有の対象となる専有部分の建物と対を成す言葉として建物全体を「一棟の建物」という。一棟の建物には、専有部分の他に、規約共用部分や法定共用部分も含まれる。賃貸が目的のマンションはどんなに大きなものであっても区分所有の対象とはならず、普通の建物と同じように一棟の建物としてのみ登記される。区分所有建物はその入れ物として一棟の建物が必ず存在し、それも登記の内容となり、これを一棟の建物の表示という。同じ一棟に属する区分建物の登記記録にはすべて同じ一棟の建物の表示が記録されている。
一棟の建物は通常、建物躯体の中心線で構成される区画を持って床面積が計算され登記が行われる。外気分断性のない外廊下、非常階段、バルコニーなどは、一棟の面積からも除外される。この点は普通建物の床面積算出方法と同一である。

法定共用部分(ほうていきょうようぶぶん)

区分建物の存在に欠かせない一棟の建物の部分で、専有部分ではないものを法定共用部分という。具体的には、エントランスホール、管理人室、内廊下、エレベーター部分、専有部分には含まれない壁や柱などが法定共用部分とされる。ただし、特定の専有部分のためだけに存在するものは、その専有部分の法定共用部分となり、全体の法定共用部分とはならない。また、エレベーターが停止しない階のエレベーター部分は床面積から除外され、法定共用部分とはならない。
なお、そもそも一棟の面積に算入されない、外気分断性のない外廊下、非常階段、バルコニーなどは、法定共用部分ですらない。

専有部分(せんゆうぶぶん)

一棟の建物の中で、独立しており、個別に所有権の対象となる部分(所有権の及ぶ範囲)を言う。分譲マンションの1戸が典型例。専有部分は原則として壁の内側の線で結ばれた部分であり、ベランダ等は含まれない。従って、壁の内側である壁紙や間仕切り壁は所有者が改装工事で変更することができるとされている。しかし、当然のことながら一棟の建物全体の強度を下げるような改装工事(耐力壁や専有部分の内側に出っ張った柱を削るなど)は認められない。
専有部分はその用途(住居や店舗など)に従った機能を有しておらねばならず、独立性がなくてはならない。独立性があるとは、他の専有部分と一体利用しなくても用途を満たすことを意味し、また、法定共用部分のみを通って(他の専有部分を通過せずに)外部との出入りが出来る構造になっているという意味でもある。
なお、個々の専有部分が独占して利用するような設備が収められている部分(メーターボックスなど)は、専有部分の床面積に算入される。

規約共用部分(きやくきょうようぶぶん)

専有部分のうち、規約によって強制的に共用部分(区分所有者全員のもの)にしてしまった部分を規約共用部分という。ゲストルームや集会室、車庫などが規約共用部分とされる場合が多い。これらは専有部分としての登記能力を充分に有しているがゆえに、不正な登記によって第三者に取得されてしまうおそれがある。そこで、あらかじめ規約によってこれを規約共用部分と定め、第三者対抗要件を備えるために、「区分建物表題登記」に加えて「共用部分である旨の登記」を行い、専有部分と同じような取引ができないように、区分所有者全員の共有にしてしまうのである。通常、不動産の共有状態を登記する場合には、個別共有者の持ち分について明示的に登記する必要があるが、規約共用部分に関する登記では、区分所有者全員という概念として所有者を特定しており、個別の区分所有者が(転売等によって)変わっても、規約共用部分に関する登記を変更する必要はない。なお、規約は管理組合の決議で変更が可能で、専有部分として変更登記をすれば、第三者への売却も可能である。

法定敷地(ほうていしきち)

区分建物が存在する一棟の建物の敷地(所在地)となっており、法的に当然区分建物の敷地とされる土地をいう。接地面では直接建物の敷地にはなっていないが、空中又は地中で建物の構造物がかかっている土地についても法定敷地とされる。

規約敷地(きやくしきち)

一棟の建物の所在する土地ではないが、規約によって区分建物の敷地とされた土地をいう。具体的には、マンションへの導入路部分や少し離れた場所にある駐車場とか、区分所有者のためのテニスコートが規約敷地として登記されたという例がある。

敷地権割合(しきちけんわりあい)

専有部分に対する敷地権の持分割合。平たく言うと敷地利用権の共有持分と考えれば良い。原則的には全専有部分の合計面積を分母として、その専有部分の面積を分子とする割合とされる。しかし、建築設計における専有面積と、登記における専有面積には差異が生じるのが当たり前なので、原始取得者(通常は分譲マンションの売主・施主)の権限で公正証書(規約公正証書という)にて、あらかじめ敷地権割合を決めておくのが実務上の取り扱いである。マンションの分譲(売買契約の締結)は表題登記よりも先行するのが通常だが、敷地権の割合を特定せずにはマンションを分譲することができない、というジレンマを解決するためのテクニックでえあるといえる。

団地(だんち)

数棟の区分所有建物が集合しており、その数棟で管理する必要がある施設があるものを団地という。法令上、単に区分所有建物が数棟集まっているだけでは団地ではない。

団地共用部分(だんちきょうようぶぶん)

団地全体で共有する施設を団地共用部分という。数棟の区分所有建物で構成される団地全体で利用する集会場などが団地共用部分の典型例である。団地共有部分がある場合には、団地管理組合を作ることが義務付けられ、団地を構成する全ての区分所有者は、この管理組合の構成員となる。

管理組合(かんりくみあい)

区分建物の所有者(区分所有者)は、好むと好まざるとにかかわらず、全員が強制的に区分建物管理組合の組合員となる(建物の区分所有等に関する法律第3条)。区分建物の所有者はいわば「一蓮托生」の関係であり、区分所有者全員で管理運営していくべきものであるから、法令も区分所有者でありながら、管理組合には属していないという区分所有者の存在を認めていない。そして、区分所有者であるかぎり、その管理規約に拘束される。
管理組合は通常理事会をもち、その構成員である理事長や理事は、主として区分所有者の中から選ばれる(ほとんどの場合が無報酬ボランティア)。通常の管理運営は理事会に託されることが多い。なお、区分建物の運営に関する最終意思決定は管理組合の総会(最低でも年に1度は開催される)で行われることがほとんどである。
外国人が投資目的で購入しているというようなケースでは、総会が成立しなかったり管理組合が機能しなかったりして、マンションの管理運営に支障をきたすことが問題視されている。

管理規約(かんりきやく)

区分所有者全員で構成する管理組合が、区分建物全体を円滑に管理・運営していくために必要な事項をまとめたもの。国土交通省からモデルが示されており、そのモデルを基本として作成されることが多い。管理規約の中では、管理組合の運営方法や、区分建物の管理方法についても細かく規定されているのが常である。区分所有者はこの管理規約に拘束され、それを変更するには管理組合総会の決議が必要とされていることがほとんどである。平成28年3月に見直しが行われ、専門家の積極的な活用などが盛り込まれ、さらに平成29年8月には民泊の実施/禁止についての内容を盛り込む改正が行われた。
マンション管理についてい
マンション標準管理規約(単棟型) 【PDF】
マンション標準管理規約(団地型) 【PDF】
マンション標準管理規約(複合用途型) 【PDF】

規約公正証書(きやくこうせいしょうしょ)

一棟に属する全部の区分建物の原始取得者(通常は分譲マンションの売主・施主)は、公正証書によって以下の規約を予め設定することができるとされている(建物の区分所有等に関する法律第32条)。
  1. 規約共用部分に関する規約(法律に定められた部分以外の共用部分を決めること)
  2. 規約敷地に関する規約(法律で定められた以外の建物の敷地を決めること)
  3. 敷地権分離処分可能規約(専有部分と敷地利用権と別々に処分することを認めること)
  4. 敷地権割合に関する規約(専有部分の面積割合とは異なる割合で敷地利用権を所有することを定めること)
これらの規約について定めた公正証書が規約公正証書である。
区分建物の分譲後は非常に多数の区分所有者が一つのコミュニティー(管理組合)を形成することとなり、権利関係が極めて複雑になる。権利関係が極めて複雑な状況になってから、全員の利害に直接係る事項の合意を得ることは容易ではないため、上記のような区分所有者全員の利害に係る重要な決まり事を、原始取得者(通常1人または数人)の良識ある判断に任せ、公証人が関与する公正証書として残すことで、後のトラブルを避けるという目的が、規約公正証書にはある。

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