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archilive2008 2009年03月28日(土) 18:22:10履歴
「住み家殺人事件」
自分で推薦しておきながらこんなことを言うのもなんだが、この本は議論には向かない本だった。かなり面白い本だと思うのだが...。面白いからといって議論しやすいかどうかは別問題だった。大反省である。次回はもう少し論理が明快な本を選びたい。
けれども、今回の三冊の中では一番読みやすかったのではないかと思う。他の2冊がなかなか難解な議論をしているのに対して、この本は非常に具体的である。そして、僕がこの本に惹かれるのもそれが理由だ。
この本は、どの部分を取っても現状をそのまま批判的に乗り越えようとはしない。たとえば私的-公的の話でも、どちらか片方のみの一元化することを批判し、同時にそれらを明確に分離する議論そのものを批判する。そして私的-公的の分かれる前の状態(近代化以前)へと遡行し、カウンターとなる世界観を提示する。けれどもそこへ「戻れ」とは決して言わない。
またこの本には、システムそのものへの批判でもある。待機児童が発生する問題や道路が危険になってしまった原因など、批判すべき対象をズラすことで思考の方向性を広げる、という書き方を繰り返している。
僕は以前の記事でこの本を「完全」と「完結」の二つの概念でまとめようとしたが、失敗してしまった。批評の批評を行うことそのものが間違いだったのかもしれないが、それ以上に重要なことは、評価軸を一度遡行して考えるというこの本の方法論に気づいていなかったことが間違いの原因だったように思う。
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