インターネットゲーム上の「情報」と知的財産
なんとか・・・・
あとは文献記載し整形するだけです。
昨今拡大しつつあるネットゲーム業界であるが、拡大と同時にさまざまな問題も同時に噴出している。
こうした問題を挙げ、考察し、自分なりの見解とこれから法はどう制定されていくべきかを考えた。
その中で日本だけの問題として考えるのでなく、インターネットを介した国家間の問題にも留意しつつ
まとめるよう心がけ、また世間で言われている噂などや個人の感情などになるべく踊らされず
事実を客観的にまとめるよう努めた。
またWii、NintendoDSなどを手がける任天堂がインターネットゲーム業界に大きな関心を持っているし、また参入するであろうと考えられている。こうなればインターネットゲーム市場が、パソコン上で一部の人が行うという枠を超えて、今よりも活発になることは容易に想像できよう。インターネットゲームが現在よりも広く深く浸透することになれば、その問題が解決されたり、認識されないことは非常に危険であると思う。そのため、考察してみるにいたった。
そういった中で、ネット上でのお金、といったものも観念されるようになった。電子マネー、仮想マネーなどがそれに当たるといえよう。そうしたお金はもはやただの情報ではなく、貨幣と同じように流通するひとつの金銭として価値を認められる。こうしたように固形のものは無形の情報へと変化し、それがネット上で管理されている、ということが非常に多くなり、また一般的になってきているのが現在の社会である。
簡単に説明すると、ゲームにはプログラムとデータがあると見ることができる。つまりゲームの内容を規定するプログラムと、その中での細かい情報としてのデータである。既存の据え置きのゲーム機で言うと、ディスクがプログラム、メモリーカード(メモリー)がデータとして考えることができる。もちろんデータの中にもプログラムに大きく影響するものもあるとは思われるが、ここではそういったものは無視する。
今までのゲーム機は、ディスクもメモリーカードもユーザーが所有していた。これがMMORPGでは分離され、別々に管理される。
まず、ゲームのプログラムは公式サイトなどからダウンロードしたりすることで手に入れることができる。こうしたプログラムはゲームを動かす基盤となり、クライアントと呼ばれている。そうして自分がプレイしたデータ、つまりメモリーカードにあたる部分はどうなるか、というとこれが運営会社側のサーバーで管理され、保管される。そのため、データは不可逆、不可改変である。ゲーム機でのゲームでは気に入らないとリセットする、不正にデータを書き換えるなどの行為が可能であったが、MMORPGではそうしたことは基本的に行えない。また、データを管理するのが他人であるから、そのデータが自分のものである、と証明するためにIDとパスワードが必要となる。銀行と同じようにアカウントが管理されているわけである。そして一番異なるところは自分がゲームを終えてもゲームの世界は存在し、動いている、ということである。電源を切れば終わりではない。つまり現実と離れた一世界、一社会としてみなすことができる。
そうした小さなゲーム社会ではいろいろなやり取りがなされる。自分がほしいものを他人から購入する、いらないものを必要としている人に売る。本当にそこにはインフレ、デフレなどの経済的な挙動も存在する。しかし、小さな社会には善人ばかりが存在するわけではなく、やがて悪人が出現する。そうしてさまざまなゲーム上での犯罪、問題は起こる。
主なインターネットゲーム上での犯罪
インターネット上では人と人とが直接やり取りをしているわけではない。
インターネットワーク上で間接的に(モニター画面などを通して)取引をしているわけである。
そのため、直接的に相手の体に傷害を加えたり、相手の財物を直接強奪する、という行為はありえない。
つまり、言葉での暴力、間接的な財物の窃取ということが一般的になるわけである。
具体的には、詐欺、窃取、妨害・迷惑行為、暴言、不正アクセスなどが挙げられよう。
逆に直接相手にあって取引をしないということつまりモニター・サイバー空間を介してこれらの犯罪が行われることで、
容易に間接的犯罪を犯せる点も見逃せないところではあると思われる。
1．詐欺
ここでいう詐欺とは、刑法的な意味だけでなく、一般的な意味での詐欺という意味も含む。
つまり、単に相手を騙して何かをとる、というような意味で見ていきたいし、
それが刑法的構成要件に該当するかどうかは関係なく詐欺と呼んでいきたい。
現実世界で考えられる詐欺といえば、色々あろう。例えば、100万円払えば何かをを売ろう、といって
100万円を払わせるが何もあげない、それ以下の価値のものしかあげない、うまくごまかして逃げてしまう、
などというのが一般的ではないかと思う。
もちろんネット上でもそうしたことは可能だ。インターネットゲーム上でもそうしたことは可能である。
ゲーム内の仮想世界で同等の詐欺が行われることは容易に想像できるであろう。
むしろ、仮想空間上での言葉だけでの取引であるため、詐欺というものは非常に簡単に出来てしまう。
ゲーム空間ではインターネットの接続を切ってしまえば、相手から簡単に姿をくらませることが出来てしまうからだ。
2.リアルマネートレード
ゲーム内の世界ではゲーム内での通貨というものがそれぞれのゲームに存在し、その通貨がゲーム内のアイテムの取引などに
使われているわけである。そこでひとつの経済というものが生まれているし、何かを手に入れるのに通貨が必要とされる。
そうした通貨はプレイ時間に比例して増えていくわけである。長くプレイすればするほどアイテムやゲーム内での通貨が多く収集できる。
こうした手間をかけたくない、という観点から、現実の通貨(円など)でゲーム内の通貨・アイテムを購入しようとする者が現れることは
ある程度自然に考えられるのではないだろうか。こうした現実の通貨とゲーム内での通貨のやり取りがリアルマネートレード(RMT)と呼ばれる行為である。
リアルマネートレードは基本的に利用規約などで禁じられている。これらについては後で詳しく説明する。
3.不正なマクロプログラム、及びバグなどを利用したチート行為
現在のオンラインゲームの種類は大別して二つある。
まずは基本プレイに課金をするシステム(月額などで支払うタイプ)と基本プレイは無料でゲーム内でのアイテム、機能などに課金するシステムの
二通りである。もともと前者のタイプが多かったが、オンラインゲームが増えてきた現在、前者では敷居が高く、なかなかユーザー数が増えにくいこと
などから、後者のゲームも非常に増えてきている。もともと月額課金だったゲームが、後者の基本プレイ無料のゲームにかわることもしばしばである。
前者の場合、基本的にアカウントを登録する料金がかかり、お金を払うことでプレイできるようになる。
後者はゲームをプレイするためのアカウントは無料で登録でき、何も払わないでプレイすることももちろん可能である。
どちらにも共通することであるが、オンラインゲームは維持し、アップデートを繰り返し、内容を充実させていくことが
求められているし、それが出来ないゲームはすぐにユーザーに飽きられてしまう。前者にせよ後者にせよ長くプレイさせることが
会社の利益に直結するので、そのため、会社側・開発側も飽きられない工夫をそこに盛り込むわけである。
最も簡単なものが、手に入りにくいアイテムを作るということである。普通にプレイしていれば1年・2年かかっても手に入らないようなアイテムを
準備しておく、ということである。つまり難易度をあげるということは一番簡単なゲームの延命(長く続くという意味での)になるわけである。
そうしたアイテムを手軽に手に入れたい、と思う人が前述のリアルマネートレードを行うわけである。
しかしリアルマネートレードを行う以外にも、単調な作業となりやすく、多くの場合ユーザーの苦痛となりやすい
レベル上げ、アイテム集め、といった行動をマクロプログラムで組んでしまい、自動で行わせる、という不正行為でアイテムを手に入れるものもいる。
こうしたプログラムをBOTと呼んでいる。(語源はROBOT)
もっともリアルマネートレードを行う売り手側(ゲーム内アイテムなどを売る側)はこうしたプログラムを利用して、アイテムをかき集めて
それを売っていることが大半である。こうした売り手側はRMTの業者として存在しており、その具体的な問題は後述する。
またゲームのプログラミングも完璧ではないわけで、バグなどももちろん存在している。そうしたバグを利用して、不当に利益を得るという
行為を行うものもいる。
4.アカウントハッキング
ゲームにログインし、自分の持っているアカウント(キャラクター)の情報を引き出すためにはそれぞれIDとパスワードが必要とされる。
いまやネット上でIDとパスワードでログインし、自分の情報が管理されていることは稀ではないので容易に想像できるだろう。
こうした情報を不正に引き出す、ハッキング・不正アクセスといった問題はもちろんネットゲーム上でも存在している。
むしろ、そうした不正アクセスは個人情報を引き出すだけでなく、ユーザーのアカウント(キャラクター)に所持されていたアイテムを奪うことになる。
実際、個人情報のために不正アクセスされるのでなく、こうしたアイテムを奪うためにハッキングがなされることが多い。
システムの欠陥をついてアカウントをハッキングするものや、ソフトを用いたパスワード特定、直接本人に聞き出すという
詐欺的性格の強いアカウントハッキングまでさまざまであるが、銀行や郵便貯金の暗証番号を盗み出すことがいまだ問題になっているように、
なかなか解決の難しい問題、システム上避けられない問題として存在していることは確かである。
ユーザーは連想しにくいパスワードを設定する、こまめにパスワードを変えるなどの方策で対処するしかない。
5.暴言、名誉毀損
暴言や名誉毀損などといった行為も非常に多発している。これは低年齢向けのゲームに顕著で、暴言や個人名(本名)をあげつらっての誹謗中傷なども
頻繁に行われている。これはネット上の掲示板などでも同様の問題があるし、特にネットゲームに限って存在する問題とはいえない。
それらの犯罪などに対する問題点・対応 及びそれに対する私見
1.詐欺
事例1：『ファイナルファンタジーXI』武器代金詐取事件
★ファイナルファンタジーXI(運営 SQUARE ENIX社)におけるトラブル
ゲームのアイテム交換サイトの掲示板で、男性が購入を希望していたのに対し
メールで現金を振り込むよう指示
被害額15万円 余罪100件近く総被害額500万円
参考：ファイナルファンタジーXI利用規約(公式サイトより引用)
第6条 禁止行為
ユーザーは、本サービスで取得したゲーム上の通貨ギル（G）をもとにして、
現実世界で流通する通貨をやり取りしたり、インターネットオークション等で
ポイント等を売買しないものとします
事例2：『メイプルストーリー』アイテム詐取事件
★メイプルストーリー(運営 Nexon社)の中でのトラブル
ゲーム内の会話で「ゲーム内仮想通貨(ポイント)でアイテムの代金を支払う」
と持ちかけアイテムを受け取ったが、支払わずに接続を切った
被害額1300円相当 余罪100件近く総被害額3~4万円
「被害者が購入した、ゲーム内でサービスを受ける権利を奪ったことが、
財産上、不法な利益を得たと判断した」（香川県警）
現金で購入できるアイテムを他人に贈与する方法がある
⇒現実世界の通貨とゲーム内通貨の交換が可能
詐欺という問題は基本的にリアルマネートレードと絡んで問題となることが多い。
というのもゲーム内でアイテムを交換する場合、基本的にゲームシステムとして詐欺が起こりにくいように設計されているゲームが多く、
アイテムと金銭をやり取りする場合でも、同時履行となっているために問題は起こりにくい。
どうしてもシステム上出来ない取引を行う場合は、ユーザー同士で担保をつけたりと、争いがおきにくくなるよう取引されるために
通常のゲーム内の取引では問題はそう起こりえない。
またゲーム内の相場は現実世界の相場と比べると激しく変動していることが通常であり、またゲーム内のアイテムのやり取りであるから
相場より高く買わされた場合でも「ゲームだから」とか「相場の変動が激しいから」ということで諦めたり、流されたりする場合が多い。
しかし、現実のお金が絡むリアルマネートレードとなるとそうはいかない。
アイテムを渡したがお金が払われない、という事例はまずありえず、お金を払ったがアイテムがもらえない、という事例が大半である。
まず、リアルマネートレードは禁じられているゲームがほとんどである。何故禁じられているかなどは次項の説明に任せるとして、
リアルマネートレードが禁止されているゲームではリアルマネートレードは出来ないようにゲーム設計されている。
つまり基本プレイが無料でアイテム課金制度を取っているゲームならば、課金して購入したアイテムとゲーム内の通常のアイテムを交換できなくする、
購入したアカウントのみで効力を発揮するようにする、などの対策が採とられていることがしばしばである。
そういった仕様があれば、よりリアルマネートレードは困難になるため、現金とゲーム内アイテムを取引する場合、現金を振り込む、アイテムを渡す、
という二つの行為の間にラグが発生してしまう。このラグの間に姿をくらませられては元も子もないわけだが、それでも取引を試みようとする
ユーザーが存在するために問題となるわけである。
そんな危険をかえりみてまで規約に違反した行動を行うユーザーも確かに悪いといえようが、実際一番悪いのは詐欺の加害者であることは明白である。
こうした詐欺について、二つの事例を挙げてみた。
一つ目は『ファイナルファンタジーXI』武器代金詐取事件である。
これはオンラインゲーム、ファイナルファンタジーXI(運営 SQUARE ENIX社)におけるトラブルである。
ゲームのアイテム交換サイトつまりリアルマネートレードを扱っている掲示板で、男性がアイテムを購入を希望していた。
それに対し、加害者がじゃあ売ります、と名乗り出、メールで現金を振り込むよう指示し、振り込ませて姿をくらませた、という事例である。
姿をくらませる、とはいえ、メールでのやり取りなわけで、メールアドレスを破棄する、変えてしまうなど連絡手段を断ってしまえば済む。
加害者には同じような手口で余罪が100件ほどあり、被害総額は500万円近くに上っていて、またそうした振込みの履歴もあったという。
この事例について言えることは、まず現金を振り込ませたということである。
つまり被害者は現金という財産の侵害を受けているため、詐欺罪の構成要件に合致し、加害者は有罪となるのはいわば当たり前、
普通の詐欺となんら変わらず、ゲーム内のアイテムという物を使って相手を騙しただけである。これが詐欺であることは疑いがないといえる。
確かにファイナルファンタジーXIの利用規約には、リアルマネートレードは禁止事項として明記されているが(事例1参考参照)
それが罪を軽くするものでもないし、ましてや加害者の詐欺という行為を正当化する根拠には決してならないと考える。
しかし二つ目の事例は厄介である。メイプルストーリー』アイテム詐取事件である。
これはメイプルストーリー(運営 Nexon社)の中でのトラブルである。
言葉の問題ではあるものの、これはゲームの中でのトラブルであることに注意していただきたい。先ほどの事例はゲームにおけるトラブルであった。
つまりゲーム内では一切何も行われてはいなかった。
しかしこの事例は逆にゲーム内で一切の取引が行われていた点が最も違う点であるといえよう。
具体的にどのような事例であったかというと、加害者が他人のIDを用いてログインし、1300ポイントの課金アイテムと通常のアイテムを交換しようといって
相手から受け取って自分は何も渡さずに、そのままログアウトしてしまったということである。
1ポイントが1円相当であり、1300円相当のアイテムを騙し取ったことになるわけだが、
このメイプルストーリーではポイントアイテム(課金アイテム)を他人にプレゼントするという機能が実装されているようだ。
これは実質リアルマネートレードを助長する設計であるし、またゲーム自体が認めている、といえるだろう。
この事例ではこうした機能が悪用された形になるわけである。
1300ポイントのアイテムが1300円に相当するとはいえ、ゲーム内のアイテムが奪われたのであり、現金が直接奪われたわけではない。
つまり、こうしたゲーム内のアイテムはこれまで知的財産として認められていなかったわけで、これまでの法及び解釈では知的財産と認められず
詐欺罪は成立しえなかったが、「被害者が購入した、ゲーム内でサービスを受ける権利を奪ったことが、
財産上、不法な利益を得たと判断した」（香川県警）というように、こうしたゲーム内のアイテムが財産と認められ、
また加害者が有罪として実刑判決(懲役1年3ヶ月執行猶予3年)を受けたことは非常に注目すべき大きな点といえよう。
まとめると
という結論が二つ今示されている。ここで他に想定できるのは
��RMTが容認されているゲームで現金を奪われた場合
��RMTが禁止されているゲームでゲーム内アイテムを奪われた場合
の二つである。この二つはどういった結論が考えられ、また妥当であろうか。
�，砲弔い討狼燭い覆�詐欺が成立するといっていい。
しかし問題は�△任△襦�
つまりRMTが許可されているゲームだからこそ事例2のような判決が出たのであり、RMTが禁止されているゲームではこういった判決が出るのか、ということである。
RMTが可能な設計ということは、現実のお金(リアルマネー)とゲーム内のアイテムが何かしらで交換可能であり、
アイテムの価値をリアルマネーで客観的に判断可能である。
だからこそ「被害者が購入した、ゲーム内でサービスを受ける権利を奪ったことが、財産上、不法な利益を得たと判断」できるともいえる。
もともと相容れない、交換ができない前提であるならば、そういった判断が果たして可能なのか、という問題は生じうる。
つまり原則、ゲーム内のアイテムはリアルマネーにはならないのであり、財産上の不法な利益、または財産上の損害といえない。
しかし、現実問題、そうした損害を受け、被害がある以上、RMT禁止という理想を掲げてきて、それを盾にRMTを半ば黙認するような態度を
取ることは妥当ではないと考えられるし、RMT禁止であろうと、容認であろうと、加害者が行う行為は変わっていない(相手を騙してアイテムやお金を奪う)
わけであるから、規約というものにあまりとらわれすぎず、実害や状況などを個別的に判断することが適当なのではないかと思われる。
事例2、�△砲�いてはゲーム内アイテムが知的財産、もしくは財産として保護される、ということが解釈として存在する、もしくは
法で定められていることが必要であると考える。現在は法などではゲーム内アイテムは財産として保護されていないし、知的財産・財産として
認められていないことのほうが多いというのが現状ではないだろうか。だからこそ、メイプルストーリー事件における高松地裁2006年11月17日の判例は
深い意味を持つであろうし、現状を見据えた画期的な判例といえよう。これから判例が蓄積されたり、もしくは法が制定されることで
ゲーム内アイテムが財産と認められていけば、こうしたゲーム内のトラブル、詐欺というものもなくなっていくだろうし、解決されていくだろう。
上記の事例を見てもわかるように、詐欺を行うものは一度だけ詐欺を行ったりするのではなく、何度も繰り返し詐欺行為を行っているわけで、
ゲーム内であるとはいえ、そうした詐欺行為を認めるわけにはいかないであろう。また被害者にしてみれば、いくらであろうと、
ゲーム内アイテムを取られることはつらいことであろうし、ひいてはそれが楽しみを奪うことにもなりかねないわけである。
そうしたゲーム内のアイテムなどが財産と認められることで、解決する問題もあるだろうが、新たに生まれる問題もないだろうか。
たとえば、詐欺の手口が更に巧妙化する、ということは考えられるだろう。
またRMTもこれで減少することはなく、むしろ増えてしまうのではないか、という危険性も持っている。というのも、
RMTの存在が白日に晒されることで、やる人が増える、ということはありうる。
しかしRMTに対する対策をあわせて作出することでそれは防げるし、また拡大しつつあるネットゲーム業界において
そうした対策がまったくなされないというのはもっと問題であろうと思う。
よってそうしたゲーム内のアイテムという一情報も財産として保護される、という法が制定されるべきだろうと思う。
2.リアルマネートレード(RMT)
リアルマネートレード(RMT)は先述の通り、非常に詐欺などの問題に深くかかわってくる。
RMTは基本的にユーザーから嫌われている。理由は主に五つある。
一つ目は、ゲーム運営会社が規約で禁止している、ということである。運営会社もトラブルの多いRMTを禁止としている場合が多い。
規約で禁止していることをやる、つまりルール違反なのだから嫌われて当然といえば当然である。
二つ目は、ゲーム内のバランス、というものを著しく破壊する、ということである。
RMTが前提となっておらず、RMTが禁止されているゲームでは、手に入りにくいアイテムがRMTでさかんに取引されるようになると
通常のゲーム内市場に出回る数が減り、一般ユーザー(RMTを利用しないユーザー)には手に入れにくいアイテムとなってしまうわけである。。
またRMTしているキャラクターには多少の高い値でも売れていったりするために、結果として相場は圧倒的に上がり、
物価が何十倍にもはねあがるなどの過度なインフレを引き起こす。
三つ目は、RMTという近道が取られることで、利用しない一般ユーザーとの格差、不平等を生んでいくことである。
正直者が馬鹿を見る、やったもん勝ちな状況を生み出してしまい、ゲーム内も殺伐としてしまうということである。
四つ目は、先述した通り、RMTに伴って詐欺などの多くの問題が起きていることである。
五つ目は、RMTがBOTの温床になっているということである。RMTを行う業者は基本的にBOTを数十台稼動して
ゲーム内のアイテム・通貨をかき集め、それを販売している。また驚くべきは、RMTによって得た利益は
地下銀行などを通して、国外に流れていっていることが多いということである。
現在日本でのRMT市場は200億から500億といわれている。そのうち100億から数百億は日本国外、主に中国に流れていっている。
中国にはゴールドファーマーと呼ばれるネット出稼ぎ就労者がいるといわれ、その人数は数十万と見られている。
もちろんゲーム会社もこうした国外からのアクセスを規制したりはしているものの、RMTは減っておらず、
やはり地下銀行を通して国外に何百億という金が流れていっているようだ。
そうした金は暴力団などの手にわたることもあるようで、見逃すことは出来ないであろう。
また租税法、銀行法などを無視しているわけであり、こうした問題も放っては置けない理由のひとつである。
最近ではなんとRMTを禁止しているはずのゲームの運営会社自体がRMTに関わるというなんともお粗末な事件さえ起きている。
★社員自体がRMTに関わった事例(ガンホー社員不正アクセス事件)
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社の運営する
ラグナロク・オンラインに関わる事件
管理権限を持っている上司のキャラクターをハッキングし、
不正にアイテムやゲーム内通貨を作り出し、RMTを扱う業者に売った。
その額はゲーム内通貨にして総額6900億に及び、現実通貨5000万円以上。
⇒しかし対応する法がなく、「不正アクセス禁止法違反」(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)
で訴えられるだけで済んでしまった
⇒判決は懲役1年、執行猶予4年(非常に執行猶予が長い)
ラグナロクオンラインというゲームは非常にユーザーが多いことで知られているMMORPGなのだが、
このゲームを運営しているガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社(以下ガンホー社)の社員が
管理権限を持つ上司のキャラクターで不正にログインし、その管理権限を利用してアイテム、ゲーム内通貨を作り出し、
これをRMTを行う業者に売ったというのである。
その額はゲーム内通貨でおよそ6900億、現実通貨で5000万円以上である。この総額はアカウントに残っていた行動履歴から明らかになった。
こんな多額のRMTを半年に満たない期間で行っていたのだから驚きだ。
この事件は訴えられはしたものの、対応する法が存在しなかった。
そのため、不正アクセス禁止法違反という軽い罪でしか処罰することが出来なかったのである。
また会社も社員を民事で訴えたものの、社員の罰金は数百万程度であったといわれている。
つまり5000万円近くは加害者の懐に入ったことになるわけであり、当然納得がいかないものである。
結局現行の法では、RMTをやったもの勝ちなのだ、ということをまざまざと見せ付けられる格好になったわけである。
オンラインゲームの先進国である韓国では、RMTが年間千数百億億円(日本円に換算して)という単位の大きな規模で行われているといわれる。
また韓国ではオンラインゲームを自国産業として保護育成することを国策に掲げており、各方面から法律によりRMTを規制するべきという
要望が根強く、政治レベルでの検討が進められ、ゲーム産業振興に関する法律」が制定された。
これによりオンラインゲームにおいて正常なルートではない方法で得られたゲーム内通貨やアイテムの現金化などが、処罰可能な違法行為となった。
日本でもこれに類似する法律が早く制定されるべきであろう。
またこの事件は、運営会社の管理のずさんさも露呈することとなった。
身内にそういったRMTをする者がいた、及びそうした管理権限を持ったアカウントが利用されていたのに
5ヶ月近く気付かなかったというのは運営会社の管理も甘かったといわざるを得ない。
また、そうした取引の履歴(ログ)というものは残っているにもかかわらず、常日頃はまったくRMTを取り締まらない運営会社の
いい加減さというものも見て取れるだろう。
通常の掲示板やオークションなどでRMTは堂々と行われているのにそれを取り締まらない会社自体にも大きく責任があろう。
だからといって会社にそうした運営上の責任を課すとこれは逆にユーザーのためにならない可能性もある。
なぜならそうした対応に追われることで、肝心のゲーム内容が充実しない結果を生んでしまいかねないからだ。
しかし現状がいいということは決して出来ず、良心的かつ自発的な運営を会社に期待するしかない、というのがユーザーの現状であろうか。
会社側、ユーザーともに歩み寄り、妥協した上で、そうした状況を打破できる法律の制定というものが望まれるところである。
3.不正なマクロプログラム、及びバグなどを利用したチート行為
不正なプログラム、バグ利用などのチート行為で一番問題なのはBOTである。
BOTはRMTと密接にかかわっており、RMT業者がBOTを使っていることが多い。一台二台の起動ではなく、何台も起動したりして
自動狩りプログラムを起動している。これは何もしないでゲーム内アイテムなどを24時間集め続けるわけで、運営が想定したよりも
速いペースで資金が増えていくため、インフレを引き起こす。それだけでなく、その場所を占領し続けるので、同じフィールドに来た一般ユーザーに
取ってはそのフィールドでゲームプレイをすることが困難になる。そういったためBOTは直接的にもっとも嫌われているといえる。
このBOTはMMORPGにとってRMTに絡む、またゲームプレイの阻害をしているので、寿命を縮める寄生虫となっている。
もちろん運営もこれに対して対処をしているが、いたちごっこである感は否めない。
BOT以外にも不正なチートツールを個人で使うものもおり、これを摘発・駆除することは運営にとって非常に困難である。
そのためゲームのクライアント(プログラム)に付随してそういった不正なプログラムの起動を阻害するゲームガードプログラムが
開発・使用されるようになってきた。
ゲームガードプログラムで今一番使われているソフトの一つにnProtectGameGuard(以下nProGG)というソフトがある。
このnProGGはINCA社という韓国のセキュリティ会社によって開発された。このINCA社は他にもセキュリティソフトを開発しており、
その中には安全性が高く、銀行などの金融機関でも使われているものも存在する。
しかしこのnProGGに限ってはそうとはいえない大きな問題点が存在している。
このnProGGはゲームクライアントを起動したと同時に起動され、常駐して働く。
不正なツールを使用しているとこのnProGGが働き、ゲームを強制終了するようになる。
そのため簡単な不正ツールを掲示板などで入手して使っていた、専門的知識のないユーザーは不正ツールを使えなくなる。
一定の効果はあるといえよう。
しかし、このnProGGはそれだけでなく、常駐して動くため、非常に動作を重くし、パソコン自体に負荷をかける。
熱暴走などの故障の原因にもなりやすく、パソコンが壊れた、という報告も多く聞かれる。
またゲームによっては非常に相性が悪く、全く動かなくなる、ログインできなくなる、接続がすぐ切断される、
などの致命的なエラーを起こすこともある。
現にそうした状況を引き起こされたため、導入後すぐにこれを排除したゲームもある。
またnProGGはWindowsの設定やシステムなどをユーザの許可なしに書き換えるなどの動作をしている。
なんらウイルスと変わらない挙動をしているためにWindowsなどでは完全にはじかれてしまったり、WindowsVistaにも正式対応していない。
マイクロソフトには有害ソフトウェアとして認識されているため、除外を要求してはいるが、除外のめどは立っていない。
またゲームを終了しても、nProGGは終了しない、アンインストールしても深部に残り続け、挙動し続ける、などの深刻な問題もある。
その上、nProGGは高度な技術をもつプログラマーには致命的な欠陥をついて回避されてしまい、意味がない。
結局RMTを行う業者などはBOTなどのチートプログラムをnProGGが導入された環境下でも使っている。
先述のゲーム、パソコンに対する影響も大きいこともあいまって一般ユーザーには「百害あって一利なし」と大きな反発を呼んでいる。
そうした中でnProGGを導入せず、運営努力でBOTを排除したり、BOTが意味を持たなくなるようなゲームシステムを構築したり
というゲームも存在する。しかしなかなかうまくいっていないのが現状である。
BOTやバグを利用して、労せずゲーム内のアイテムを手に入れ、これをRMTする、という行為は、
(前項で述べたラグナロクオンラインの運営会社の社員によるRMT事件も同様だが）通貨偽造的な性格を持っているといえよう。
なぜならば、労せず手に入れた不正なゲーム内のアイテムを、現実の金に買えて資金洗浄している、マネー・ローンダリングしている
といっても過言ではない。またこうした金が地下銀行で国外に大半が流れていくわけで、大きな問題といえよう。
RMTが元であり、BOTやチートはそれに付随した不正因子である。大元のRMTを規制する法が必要なのは当たり前だとして、
RMTを支えている、RMTするために行われているBOTを取り締まるということは必要不可欠であろう。
しかしこれは先述の通り運営に任せられるしかないのが現状である。運営が努力するように規制することは簡単であろうが、
それは運営にとって大きな負担となりうる。それはユーザーにとってサービスの低下を招きかねないことから容易には出来ないであろう。
しかし、運営の努力がなければユーザーと運営の溝が深まっていくばかりであり、決していいとはいえない。
多くのMMORPGは韓国から輸入されており、韓国の会社が日本の会社に権利を売ったり、日本に支社を作って運営していることが
大半である。そのため日本独自で運営を行うということがなかなか難しいという現状もあるようだ。
4.アカウントハッキング
アカウントハッキングはアイテムを取られたりするという被害だけでなく、ここにもRMTが絡むこともある。
RMT業者がそうしたパスワードを抜き取るプログラムを開発したりしてばら撒き、大量にアカウントがハッキングされる事件も少なくない。
被害者としては、アイテムを取り返したい、キャラクターを取り返したい、犯人を何とかしてほしい、というのが
心情であろうが、あまり運営会社はこうした事件に乗り出して調査することはなく、基本的には個人の責任だとして
終えてしまうことが多い。そのため多くのユーザーは泣き寝入りする羽目になる。
証拠もなかなかつかみづらく、大変ではあるが、何とか被害者を募り、警察などの機関に助けを求めるユーザーも少なからずいる。
TalesWeaver(NEXON社)というMMORPGでは大規模なアカウントハッキングがあったが、会社が全く対応しないので、被害者が団結し、
群馬県警に届け出、現在被害者への聞き込みなどの調査が行われている、ということである。
銀行などでもカードを盗まれ、不正にお金を引き出されてもその責任を負わないので、アイテムなどの責任を取る必要はないだろうが、
その犯人特定などの協力はするべきであろう。
もし、ゲーム内のアイテムやキャラクターに財産性が認められるならば、銀行のカードが盗まれ、不正に現金を引き出されたのと同じで
財産を盗んだといえるであろうし、アカウントハッキングを窃盗としてみなすことが出来るのではないかと思われる。
5.暴言、名誉毀損
暴言や名誉毀損などは基本的に仲裁する人がいないので荒れるばかりである。
まれに対処される場合もあるが、基本的には全く介入されない。
ゲームによっては下品な言葉は伏字になるようにあらかじめ設定されていたりする。
しかし、まれに仲裁する側である運営側が不可解な仲裁を行うことがあり問題となっている。
具体的にここにあげることは諸々の問題から避けるが、BOT反対などの運動を行う者がアカウント停止され、
BOT使用者がアカウント停止されず無罪放免、というような、ユーザーから見るとなんとも憤らずにはいられない判断のようだ。
4.国家間の問題
MMORPGは今後も増えていくことは確かで、問題もこれからどんどん増えていくだろう。
上述のさまざまな問題に共通しているのは、ユーザーと運営会社の対立である。
ユーザーはよりよいサービスを求め、運営会社は利益を追求する。そのため両者の間には溝が生まれてしまうわけである。
しかし、運営会社自体もまた大きな対立関係を持っているのではないかと考えられる。
たとえばほとんどのMMORPGは韓国が大元であり、その支社としてであったり、権利を購入したりして
日本で運営されていることが多いのが今の現状だ。
そうした中、ゲームを購入する側である日本の会社と、大元の韓国の会社での対立がないとはいえない。
たとえば、大元のゲームでnProtectGameGuardが導入されると、支社である日本の会社ではなかなかそれを断れないということだ。
つまり日本のユーザーの声が届いていて、日本での運営会社がたとえそれを改善しようとしていても、大元の会社などの圧力等により
変えられない、ということもありうる、ということである。それでは結局今後の発展というものを阻害してしまうことになりかねない。
またそれ以外にも問題はありうる。たとえば、韓国では法律が制定されたためRMTは有罪だ。
しかし日本では今のところ散々述べてきた通り軽い刑しか課されない。
これでは韓国で活動していたRMT業者が日本になだれ込む、という危険性があるのではないだろうか。
それにインターネットとは国家をまたいで境がない。そのため国家ごとの差異がある、というのはある意味でちぐはぐだともいえる。
中国ではBOTプログラムが不法経営罪、著作権侵害及び業務妨害罪にあたるとされ、中国人民法院より有罪判決が出ているが、
日本ではそこまで踏み込んだ判決は出ていないし、今でも堂々とそうしたプログラムが販売されている。
処罰などの基準にもある程度の統一性というものは必要であろうし、保護の程度についてもそれぞれある程度に通った基準というものを作るべきだ。
たとえば韓国で作られたゲームが日本の会社に権利が売られ、日本の会社が運営していたものを、中国人の業者がBOTプログラムを利用して
BOTを稼動していた、という事例の場合、誰がどこで訴えるかによって結論が異なるのでは妥当ではない。
民事的にも刑事的にも統一性が求められているのではないか、と思う。
日本ではBOT,RMTといったものが認知されてはいるが、それを特に処罰していないために今後更にそうした問題が多発する危険性がある。
早急な対処がなされるべきではないかと思われる。
5.まとめ
インターネットゲームは韓国では自国産業として保護されているし、国家単位で力を入れている。
しかし日本ではゲーム機によるゲーム自体、保護しようという意識が低く、またインターネットゲームというものがあまり評価されてこなかった。
昨今、ようやく大手の会社もインターネットゲームを製作したり、発表したりしている。こうした中で
やはり韓国から輸入されたゲームと同様の問題が起きている。
今後日本でもMMORPGをはじめとしたインターネットゲームは普及するだろうし、多くなっていくだろうが、
今ある問題が未解決のままであれば、それは大きく発展を阻害することになる。
インターネットゲームがこれから盛んになり、日本もゲームを輸出していくことになりうるわけであり、
そのためにはやはりゲームというものを文化として認知、ひいてはその保護を考えるということは大いに必要ではなかろうか。
あとは文献記載し整形するだけです。
昨今拡大しつつあるネットゲーム業界であるが、拡大と同時にさまざまな問題も同時に噴出している。
こうした問題を挙げ、考察し、自分なりの見解とこれから法はどう制定されていくべきかを考えた。
その中で日本だけの問題として考えるのでなく、インターネットを介した国家間の問題にも留意しつつ
まとめるよう心がけ、また世間で言われている噂などや個人の感情などになるべく踊らされず
事実を客観的にまとめるよう努めた。
きっかけ
昨今MMORPGというものがそれなりに大きな市場として成り立っている。しかしそこには多くの問題点が巻き起こっている。またWii、NintendoDSなどを手がける任天堂がインターネットゲーム業界に大きな関心を持っているし、また参入するであろうと考えられている。こうなればインターネットゲーム市場が、パソコン上で一部の人が行うという枠を超えて、今よりも活発になることは容易に想像できよう。インターネットゲームが現在よりも広く深く浸透することになれば、その問題が解決されたり、認識されないことは非常に危険であると思う。そのため、考察してみるにいたった。
インターネットの拡大
昨今インターネットが急速に拡大し、今まで直接人が会って行っていたこと、紙面上で行っていたことが、インターネット上（実際にはインターネットにつないだパソコンが映し出すモニター上）で行われるようになった。これは大きな進歩である。手紙がEメールでやり取りされるようになったり、今まで面と向かって行っていた討論や雑談がネット上での掲示板でなされたり、直接ライブを聞いたり、CDを購入して聴いていた音楽がネット上で配信されたり、図書館に行って調べていた情報が検索サイトで簡単に検索できるようになったり、と挙げればきりがない。そういった中で、ネット上でのお金、といったものも観念されるようになった。電子マネー、仮想マネーなどがそれに当たるといえよう。そうしたお金はもはやただの情報ではなく、貨幣と同じように流通するひとつの金銭として価値を認められる。こうしたように固形のものは無形の情報へと変化し、それがネット上で管理されている、ということが非常に多くなり、また一般的になってきているのが現在の社会である。
MMORPGの登場
そうした中、娯楽としてのゲームにも大きな変化が現れる。Massively Multiplayer Online Role-Playing Game （MMORPG）と呼ばれる多人数参加型のオンラインRPGゲームである。今までゲームはゲーム機を介して、それぞれの家にあるテレビに映像を映し出して行っていたものが、パソコンとインターネットを利用して行われるようになった。このMMORPGが一番変えたことは、アイテム、通貨などは一プレイヤーが管理するのではなく、全体として管理されている。簡単に説明すると、ゲームにはプログラムとデータがあると見ることができる。つまりゲームの内容を規定するプログラムと、その中での細かい情報としてのデータである。既存の据え置きのゲーム機で言うと、ディスクがプログラム、メモリーカード(メモリー)がデータとして考えることができる。もちろんデータの中にもプログラムに大きく影響するものもあるとは思われるが、ここではそういったものは無視する。
今までのゲーム機は、ディスクもメモリーカードもユーザーが所有していた。これがMMORPGでは分離され、別々に管理される。
まず、ゲームのプログラムは公式サイトなどからダウンロードしたりすることで手に入れることができる。こうしたプログラムはゲームを動かす基盤となり、クライアントと呼ばれている。そうして自分がプレイしたデータ、つまりメモリーカードにあたる部分はどうなるか、というとこれが運営会社側のサーバーで管理され、保管される。そのため、データは不可逆、不可改変である。ゲーム機でのゲームでは気に入らないとリセットする、不正にデータを書き換えるなどの行為が可能であったが、MMORPGではそうしたことは基本的に行えない。また、データを管理するのが他人であるから、そのデータが自分のものである、と証明するためにIDとパスワードが必要となる。銀行と同じようにアカウントが管理されているわけである。そして一番異なるところは自分がゲームを終えてもゲームの世界は存在し、動いている、ということである。電源を切れば終わりではない。つまり現実と離れた一世界、一社会としてみなすことができる。
そうした小さなゲーム社会ではいろいろなやり取りがなされる。自分がほしいものを他人から購入する、いらないものを必要としている人に売る。本当にそこにはインフレ、デフレなどの経済的な挙動も存在する。しかし、小さな社会には善人ばかりが存在するわけではなく、やがて悪人が出現する。そうしてさまざまなゲーム上での犯罪、問題は起こる。
主なインターネットゲーム上での犯罪
インターネット上では人と人とが直接やり取りをしているわけではない。
インターネットワーク上で間接的に(モニター画面などを通して)取引をしているわけである。
そのため、直接的に相手の体に傷害を加えたり、相手の財物を直接強奪する、という行為はありえない。
つまり、言葉での暴力、間接的な財物の窃取ということが一般的になるわけである。
具体的には、詐欺、窃取、妨害・迷惑行為、暴言、不正アクセスなどが挙げられよう。
逆に直接相手にあって取引をしないということつまりモニター・サイバー空間を介してこれらの犯罪が行われることで、
容易に間接的犯罪を犯せる点も見逃せないところではあると思われる。
1．詐欺
ここでいう詐欺とは、刑法的な意味だけでなく、一般的な意味での詐欺という意味も含む。
つまり、単に相手を騙して何かをとる、というような意味で見ていきたいし、
それが刑法的構成要件に該当するかどうかは関係なく詐欺と呼んでいきたい。
現実世界で考えられる詐欺といえば、色々あろう。例えば、100万円払えば何かをを売ろう、といって
100万円を払わせるが何もあげない、それ以下の価値のものしかあげない、うまくごまかして逃げてしまう、
などというのが一般的ではないかと思う。
もちろんネット上でもそうしたことは可能だ。インターネットゲーム上でもそうしたことは可能である。
ゲーム内の仮想世界で同等の詐欺が行われることは容易に想像できるであろう。
むしろ、仮想空間上での言葉だけでの取引であるため、詐欺というものは非常に簡単に出来てしまう。
ゲーム空間ではインターネットの接続を切ってしまえば、相手から簡単に姿をくらませることが出来てしまうからだ。
2.リアルマネートレード
ゲーム内の世界ではゲーム内での通貨というものがそれぞれのゲームに存在し、その通貨がゲーム内のアイテムの取引などに
使われているわけである。そこでひとつの経済というものが生まれているし、何かを手に入れるのに通貨が必要とされる。
そうした通貨はプレイ時間に比例して増えていくわけである。長くプレイすればするほどアイテムやゲーム内での通貨が多く収集できる。
こうした手間をかけたくない、という観点から、現実の通貨(円など)でゲーム内の通貨・アイテムを購入しようとする者が現れることは
ある程度自然に考えられるのではないだろうか。こうした現実の通貨とゲーム内での通貨のやり取りがリアルマネートレード(RMT)と呼ばれる行為である。
リアルマネートレードは基本的に利用規約などで禁じられている。これらについては後で詳しく説明する。
3.不正なマクロプログラム、及びバグなどを利用したチート行為
現在のオンラインゲームの種類は大別して二つある。
まずは基本プレイに課金をするシステム(月額などで支払うタイプ)と基本プレイは無料でゲーム内でのアイテム、機能などに課金するシステムの
二通りである。もともと前者のタイプが多かったが、オンラインゲームが増えてきた現在、前者では敷居が高く、なかなかユーザー数が増えにくいこと
などから、後者のゲームも非常に増えてきている。もともと月額課金だったゲームが、後者の基本プレイ無料のゲームにかわることもしばしばである。
前者の場合、基本的にアカウントを登録する料金がかかり、お金を払うことでプレイできるようになる。
後者はゲームをプレイするためのアカウントは無料で登録でき、何も払わないでプレイすることももちろん可能である。
どちらにも共通することであるが、オンラインゲームは維持し、アップデートを繰り返し、内容を充実させていくことが
求められているし、それが出来ないゲームはすぐにユーザーに飽きられてしまう。前者にせよ後者にせよ長くプレイさせることが
会社の利益に直結するので、そのため、会社側・開発側も飽きられない工夫をそこに盛り込むわけである。
最も簡単なものが、手に入りにくいアイテムを作るということである。普通にプレイしていれば1年・2年かかっても手に入らないようなアイテムを
準備しておく、ということである。つまり難易度をあげるということは一番簡単なゲームの延命(長く続くという意味での)になるわけである。
そうしたアイテムを手軽に手に入れたい、と思う人が前述のリアルマネートレードを行うわけである。
しかしリアルマネートレードを行う以外にも、単調な作業となりやすく、多くの場合ユーザーの苦痛となりやすい
レベル上げ、アイテム集め、といった行動をマクロプログラムで組んでしまい、自動で行わせる、という不正行為でアイテムを手に入れるものもいる。
こうしたプログラムをBOTと呼んでいる。(語源はROBOT)
もっともリアルマネートレードを行う売り手側(ゲーム内アイテムなどを売る側)はこうしたプログラムを利用して、アイテムをかき集めて
それを売っていることが大半である。こうした売り手側はRMTの業者として存在しており、その具体的な問題は後述する。
またゲームのプログラミングも完璧ではないわけで、バグなどももちろん存在している。そうしたバグを利用して、不当に利益を得るという
行為を行うものもいる。
4.アカウントハッキング
ゲームにログインし、自分の持っているアカウント(キャラクター)の情報を引き出すためにはそれぞれIDとパスワードが必要とされる。
いまやネット上でIDとパスワードでログインし、自分の情報が管理されていることは稀ではないので容易に想像できるだろう。
こうした情報を不正に引き出す、ハッキング・不正アクセスといった問題はもちろんネットゲーム上でも存在している。
むしろ、そうした不正アクセスは個人情報を引き出すだけでなく、ユーザーのアカウント(キャラクター)に所持されていたアイテムを奪うことになる。
実際、個人情報のために不正アクセスされるのでなく、こうしたアイテムを奪うためにハッキングがなされることが多い。
システムの欠陥をついてアカウントをハッキングするものや、ソフトを用いたパスワード特定、直接本人に聞き出すという
詐欺的性格の強いアカウントハッキングまでさまざまであるが、銀行や郵便貯金の暗証番号を盗み出すことがいまだ問題になっているように、
なかなか解決の難しい問題、システム上避けられない問題として存在していることは確かである。
ユーザーは連想しにくいパスワードを設定する、こまめにパスワードを変えるなどの方策で対処するしかない。
5.暴言、名誉毀損
暴言や名誉毀損などといった行為も非常に多発している。これは低年齢向けのゲームに顕著で、暴言や個人名(本名)をあげつらっての誹謗中傷なども
頻繁に行われている。これはネット上の掲示板などでも同様の問題があるし、特にネットゲームに限って存在する問題とはいえない。
それらの犯罪などに対する問題点・対応 及びそれに対する私見
1.詐欺
事例1：『ファイナルファンタジーXI』武器代金詐取事件
★ファイナルファンタジーXI(運営 SQUARE ENIX社)におけるトラブル
ゲームのアイテム交換サイトの掲示板で、男性が購入を希望していたのに対し
メールで現金を振り込むよう指示
被害額15万円 余罪100件近く総被害額500万円
参考：ファイナルファンタジーXI利用規約(公式サイトより引用)
第6条 禁止行為
ユーザーは、本サービスで取得したゲーム上の通貨ギル（G）をもとにして、
現実世界で流通する通貨をやり取りしたり、インターネットオークション等で
ポイント等を売買しないものとします
事例2：『メイプルストーリー』アイテム詐取事件
★メイプルストーリー(運営 Nexon社)の中でのトラブル
ゲーム内の会話で「ゲーム内仮想通貨(ポイント)でアイテムの代金を支払う」
と持ちかけアイテムを受け取ったが、支払わずに接続を切った
被害額1300円相当 余罪100件近く総被害額3~4万円
「被害者が購入した、ゲーム内でサービスを受ける権利を奪ったことが、
財産上、不法な利益を得たと判断した」（香川県警）
現金で購入できるアイテムを他人に贈与する方法がある
⇒現実世界の通貨とゲーム内通貨の交換が可能
詐欺という問題は基本的にリアルマネートレードと絡んで問題となることが多い。
というのもゲーム内でアイテムを交換する場合、基本的にゲームシステムとして詐欺が起こりにくいように設計されているゲームが多く、
アイテムと金銭をやり取りする場合でも、同時履行となっているために問題は起こりにくい。
どうしてもシステム上出来ない取引を行う場合は、ユーザー同士で担保をつけたりと、争いがおきにくくなるよう取引されるために
通常のゲーム内の取引では問題はそう起こりえない。
またゲーム内の相場は現実世界の相場と比べると激しく変動していることが通常であり、またゲーム内のアイテムのやり取りであるから
相場より高く買わされた場合でも「ゲームだから」とか「相場の変動が激しいから」ということで諦めたり、流されたりする場合が多い。
しかし、現実のお金が絡むリアルマネートレードとなるとそうはいかない。
アイテムを渡したがお金が払われない、という事例はまずありえず、お金を払ったがアイテムがもらえない、という事例が大半である。
まず、リアルマネートレードは禁じられているゲームがほとんどである。何故禁じられているかなどは次項の説明に任せるとして、
リアルマネートレードが禁止されているゲームではリアルマネートレードは出来ないようにゲーム設計されている。
つまり基本プレイが無料でアイテム課金制度を取っているゲームならば、課金して購入したアイテムとゲーム内の通常のアイテムを交換できなくする、
購入したアカウントのみで効力を発揮するようにする、などの対策が採とられていることがしばしばである。
そういった仕様があれば、よりリアルマネートレードは困難になるため、現金とゲーム内アイテムを取引する場合、現金を振り込む、アイテムを渡す、
という二つの行為の間にラグが発生してしまう。このラグの間に姿をくらませられては元も子もないわけだが、それでも取引を試みようとする
ユーザーが存在するために問題となるわけである。
そんな危険をかえりみてまで規約に違反した行動を行うユーザーも確かに悪いといえようが、実際一番悪いのは詐欺の加害者であることは明白である。
こうした詐欺について、二つの事例を挙げてみた。
一つ目は『ファイナルファンタジーXI』武器代金詐取事件である。
これはオンラインゲーム、ファイナルファンタジーXI(運営 SQUARE ENIX社)におけるトラブルである。
ゲームのアイテム交換サイトつまりリアルマネートレードを扱っている掲示板で、男性がアイテムを購入を希望していた。
それに対し、加害者がじゃあ売ります、と名乗り出、メールで現金を振り込むよう指示し、振り込ませて姿をくらませた、という事例である。
姿をくらませる、とはいえ、メールでのやり取りなわけで、メールアドレスを破棄する、変えてしまうなど連絡手段を断ってしまえば済む。
加害者には同じような手口で余罪が100件ほどあり、被害総額は500万円近くに上っていて、またそうした振込みの履歴もあったという。
この事例について言えることは、まず現金を振り込ませたということである。
つまり被害者は現金という財産の侵害を受けているため、詐欺罪の構成要件に合致し、加害者は有罪となるのはいわば当たり前、
普通の詐欺となんら変わらず、ゲーム内のアイテムという物を使って相手を騙しただけである。これが詐欺であることは疑いがないといえる。
確かにファイナルファンタジーXIの利用規約には、リアルマネートレードは禁止事項として明記されているが(事例1参考参照)
それが罪を軽くするものでもないし、ましてや加害者の詐欺という行為を正当化する根拠には決してならないと考える。
しかし二つ目の事例は厄介である。メイプルストーリー』アイテム詐取事件である。
これはメイプルストーリー(運営 Nexon社)の中でのトラブルである。
言葉の問題ではあるものの、これはゲームの中でのトラブルであることに注意していただきたい。先ほどの事例はゲームにおけるトラブルであった。
つまりゲーム内では一切何も行われてはいなかった。
しかしこの事例は逆にゲーム内で一切の取引が行われていた点が最も違う点であるといえよう。
具体的にどのような事例であったかというと、加害者が他人のIDを用いてログインし、1300ポイントの課金アイテムと通常のアイテムを交換しようといって
相手から受け取って自分は何も渡さずに、そのままログアウトしてしまったということである。
1ポイントが1円相当であり、1300円相当のアイテムを騙し取ったことになるわけだが、
このメイプルストーリーではポイントアイテム(課金アイテム)を他人にプレゼントするという機能が実装されているようだ。
これは実質リアルマネートレードを助長する設計であるし、またゲーム自体が認めている、といえるだろう。
この事例ではこうした機能が悪用された形になるわけである。
1300ポイントのアイテムが1300円に相当するとはいえ、ゲーム内のアイテムが奪われたのであり、現金が直接奪われたわけではない。
つまり、こうしたゲーム内のアイテムはこれまで知的財産として認められていなかったわけで、これまでの法及び解釈では知的財産と認められず
詐欺罪は成立しえなかったが、「被害者が購入した、ゲーム内でサービスを受ける権利を奪ったことが、
財産上、不法な利益を得たと判断した」（香川県警）というように、こうしたゲーム内のアイテムが財産と認められ、
また加害者が有罪として実刑判決(懲役1年3ヶ月執行猶予3年)を受けたことは非常に注目すべき大きな点といえよう。
まとめると
- RMTが禁止されていても現金を奪われたのであれば、詐欺として成立する。(事例1)
- RMTが容認されている、または実質可能な設計であるゲームでゲーム内アイテムを奪われた場合、詐欺として成立する(事例2)
という結論が二つ今示されている。ここで他に想定できるのは
��RMTが容認されているゲームで現金を奪われた場合
��RMTが禁止されているゲームでゲーム内アイテムを奪われた場合
の二つである。この二つはどういった結論が考えられ、また妥当であろうか。
�，砲弔い討狼燭い覆�詐欺が成立するといっていい。
しかし問題は�△任△襦�
つまりRMTが許可されているゲームだからこそ事例2のような判決が出たのであり、RMTが禁止されているゲームではこういった判決が出るのか、ということである。
RMTが可能な設計ということは、現実のお金(リアルマネー)とゲーム内のアイテムが何かしらで交換可能であり、
アイテムの価値をリアルマネーで客観的に判断可能である。
だからこそ「被害者が購入した、ゲーム内でサービスを受ける権利を奪ったことが、財産上、不法な利益を得たと判断」できるともいえる。
もともと相容れない、交換ができない前提であるならば、そういった判断が果たして可能なのか、という問題は生じうる。
つまり原則、ゲーム内のアイテムはリアルマネーにはならないのであり、財産上の不法な利益、または財産上の損害といえない。
しかし、現実問題、そうした損害を受け、被害がある以上、RMT禁止という理想を掲げてきて、それを盾にRMTを半ば黙認するような態度を
取ることは妥当ではないと考えられるし、RMT禁止であろうと、容認であろうと、加害者が行う行為は変わっていない(相手を騙してアイテムやお金を奪う)
わけであるから、規約というものにあまりとらわれすぎず、実害や状況などを個別的に判断することが適当なのではないかと思われる。
事例2、�△砲�いてはゲーム内アイテムが知的財産、もしくは財産として保護される、ということが解釈として存在する、もしくは
法で定められていることが必要であると考える。現在は法などではゲーム内アイテムは財産として保護されていないし、知的財産・財産として
認められていないことのほうが多いというのが現状ではないだろうか。だからこそ、メイプルストーリー事件における高松地裁2006年11月17日の判例は
深い意味を持つであろうし、現状を見据えた画期的な判例といえよう。これから判例が蓄積されたり、もしくは法が制定されることで
ゲーム内アイテムが財産と認められていけば、こうしたゲーム内のトラブル、詐欺というものもなくなっていくだろうし、解決されていくだろう。
上記の事例を見てもわかるように、詐欺を行うものは一度だけ詐欺を行ったりするのではなく、何度も繰り返し詐欺行為を行っているわけで、
ゲーム内であるとはいえ、そうした詐欺行為を認めるわけにはいかないであろう。また被害者にしてみれば、いくらであろうと、
ゲーム内アイテムを取られることはつらいことであろうし、ひいてはそれが楽しみを奪うことにもなりかねないわけである。
そうしたゲーム内のアイテムなどが財産と認められることで、解決する問題もあるだろうが、新たに生まれる問題もないだろうか。
たとえば、詐欺の手口が更に巧妙化する、ということは考えられるだろう。
またRMTもこれで減少することはなく、むしろ増えてしまうのではないか、という危険性も持っている。というのも、
RMTの存在が白日に晒されることで、やる人が増える、ということはありうる。
しかしRMTに対する対策をあわせて作出することでそれは防げるし、また拡大しつつあるネットゲーム業界において
そうした対策がまったくなされないというのはもっと問題であろうと思う。
よってそうしたゲーム内のアイテムという一情報も財産として保護される、という法が制定されるべきだろうと思う。
2.リアルマネートレード(RMT)
リアルマネートレード(RMT)は先述の通り、非常に詐欺などの問題に深くかかわってくる。
RMTは基本的にユーザーから嫌われている。理由は主に五つある。
一つ目は、ゲーム運営会社が規約で禁止している、ということである。運営会社もトラブルの多いRMTを禁止としている場合が多い。
規約で禁止していることをやる、つまりルール違反なのだから嫌われて当然といえば当然である。
二つ目は、ゲーム内のバランス、というものを著しく破壊する、ということである。
RMTが前提となっておらず、RMTが禁止されているゲームでは、手に入りにくいアイテムがRMTでさかんに取引されるようになると
通常のゲーム内市場に出回る数が減り、一般ユーザー(RMTを利用しないユーザー)には手に入れにくいアイテムとなってしまうわけである。。
またRMTしているキャラクターには多少の高い値でも売れていったりするために、結果として相場は圧倒的に上がり、
物価が何十倍にもはねあがるなどの過度なインフレを引き起こす。
三つ目は、RMTという近道が取られることで、利用しない一般ユーザーとの格差、不平等を生んでいくことである。
正直者が馬鹿を見る、やったもん勝ちな状況を生み出してしまい、ゲーム内も殺伐としてしまうということである。
四つ目は、先述した通り、RMTに伴って詐欺などの多くの問題が起きていることである。
五つ目は、RMTがBOTの温床になっているということである。RMTを行う業者は基本的にBOTを数十台稼動して
ゲーム内のアイテム・通貨をかき集め、それを販売している。また驚くべきは、RMTによって得た利益は
地下銀行などを通して、国外に流れていっていることが多いということである。
現在日本でのRMT市場は200億から500億といわれている。そのうち100億から数百億は日本国外、主に中国に流れていっている。
中国にはゴールドファーマーと呼ばれるネット出稼ぎ就労者がいるといわれ、その人数は数十万と見られている。
もちろんゲーム会社もこうした国外からのアクセスを規制したりはしているものの、RMTは減っておらず、
やはり地下銀行を通して国外に何百億という金が流れていっているようだ。
そうした金は暴力団などの手にわたることもあるようで、見逃すことは出来ないであろう。
また租税法、銀行法などを無視しているわけであり、こうした問題も放っては置けない理由のひとつである。
最近ではなんとRMTを禁止しているはずのゲームの運営会社自体がRMTに関わるというなんともお粗末な事件さえ起きている。
★社員自体がRMTに関わった事例(ガンホー社員不正アクセス事件)
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社の運営する
ラグナロク・オンラインに関わる事件
管理権限を持っている上司のキャラクターをハッキングし、
不正にアイテムやゲーム内通貨を作り出し、RMTを扱う業者に売った。
その額はゲーム内通貨にして総額6900億に及び、現実通貨5000万円以上。
⇒しかし対応する法がなく、「不正アクセス禁止法違反」(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)
で訴えられるだけで済んでしまった
⇒判決は懲役1年、執行猶予4年(非常に執行猶予が長い)
ラグナロクオンラインというゲームは非常にユーザーが多いことで知られているMMORPGなのだが、
このゲームを運営しているガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社(以下ガンホー社)の社員が
管理権限を持つ上司のキャラクターで不正にログインし、その管理権限を利用してアイテム、ゲーム内通貨を作り出し、
これをRMTを行う業者に売ったというのである。
その額はゲーム内通貨でおよそ6900億、現実通貨で5000万円以上である。この総額はアカウントに残っていた行動履歴から明らかになった。
こんな多額のRMTを半年に満たない期間で行っていたのだから驚きだ。
この事件は訴えられはしたものの、対応する法が存在しなかった。
そのため、不正アクセス禁止法違反という軽い罪でしか処罰することが出来なかったのである。
また会社も社員を民事で訴えたものの、社員の罰金は数百万程度であったといわれている。
つまり5000万円近くは加害者の懐に入ったことになるわけであり、当然納得がいかないものである。
結局現行の法では、RMTをやったもの勝ちなのだ、ということをまざまざと見せ付けられる格好になったわけである。
オンラインゲームの先進国である韓国では、RMTが年間千数百億億円(日本円に換算して)という単位の大きな規模で行われているといわれる。
また韓国ではオンラインゲームを自国産業として保護育成することを国策に掲げており、各方面から法律によりRMTを規制するべきという
要望が根強く、政治レベルでの検討が進められ、ゲーム産業振興に関する法律」が制定された。
これによりオンラインゲームにおいて正常なルートではない方法で得られたゲーム内通貨やアイテムの現金化などが、処罰可能な違法行為となった。
日本でもこれに類似する法律が早く制定されるべきであろう。
またこの事件は、運営会社の管理のずさんさも露呈することとなった。
身内にそういったRMTをする者がいた、及びそうした管理権限を持ったアカウントが利用されていたのに
5ヶ月近く気付かなかったというのは運営会社の管理も甘かったといわざるを得ない。
また、そうした取引の履歴(ログ)というものは残っているにもかかわらず、常日頃はまったくRMTを取り締まらない運営会社の
いい加減さというものも見て取れるだろう。
通常の掲示板やオークションなどでRMTは堂々と行われているのにそれを取り締まらない会社自体にも大きく責任があろう。
だからといって会社にそうした運営上の責任を課すとこれは逆にユーザーのためにならない可能性もある。
なぜならそうした対応に追われることで、肝心のゲーム内容が充実しない結果を生んでしまいかねないからだ。
しかし現状がいいということは決して出来ず、良心的かつ自発的な運営を会社に期待するしかない、というのがユーザーの現状であろうか。
会社側、ユーザーともに歩み寄り、妥協した上で、そうした状況を打破できる法律の制定というものが望まれるところである。
3.不正なマクロプログラム、及びバグなどを利用したチート行為
不正なプログラム、バグ利用などのチート行為で一番問題なのはBOTである。
BOTはRMTと密接にかかわっており、RMT業者がBOTを使っていることが多い。一台二台の起動ではなく、何台も起動したりして
自動狩りプログラムを起動している。これは何もしないでゲーム内アイテムなどを24時間集め続けるわけで、運営が想定したよりも
速いペースで資金が増えていくため、インフレを引き起こす。それだけでなく、その場所を占領し続けるので、同じフィールドに来た一般ユーザーに
取ってはそのフィールドでゲームプレイをすることが困難になる。そういったためBOTは直接的にもっとも嫌われているといえる。
このBOTはMMORPGにとってRMTに絡む、またゲームプレイの阻害をしているので、寿命を縮める寄生虫となっている。
もちろん運営もこれに対して対処をしているが、いたちごっこである感は否めない。
BOT以外にも不正なチートツールを個人で使うものもおり、これを摘発・駆除することは運営にとって非常に困難である。
そのためゲームのクライアント(プログラム)に付随してそういった不正なプログラムの起動を阻害するゲームガードプログラムが
開発・使用されるようになってきた。
ゲームガードプログラムで今一番使われているソフトの一つにnProtectGameGuard(以下nProGG)というソフトがある。
このnProGGはINCA社という韓国のセキュリティ会社によって開発された。このINCA社は他にもセキュリティソフトを開発しており、
その中には安全性が高く、銀行などの金融機関でも使われているものも存在する。
しかしこのnProGGに限ってはそうとはいえない大きな問題点が存在している。
このnProGGはゲームクライアントを起動したと同時に起動され、常駐して働く。
不正なツールを使用しているとこのnProGGが働き、ゲームを強制終了するようになる。
そのため簡単な不正ツールを掲示板などで入手して使っていた、専門的知識のないユーザーは不正ツールを使えなくなる。
一定の効果はあるといえよう。
しかし、このnProGGはそれだけでなく、常駐して動くため、非常に動作を重くし、パソコン自体に負荷をかける。
熱暴走などの故障の原因にもなりやすく、パソコンが壊れた、という報告も多く聞かれる。
またゲームによっては非常に相性が悪く、全く動かなくなる、ログインできなくなる、接続がすぐ切断される、
などの致命的なエラーを起こすこともある。
現にそうした状況を引き起こされたため、導入後すぐにこれを排除したゲームもある。
またnProGGはWindowsの設定やシステムなどをユーザの許可なしに書き換えるなどの動作をしている。
なんらウイルスと変わらない挙動をしているためにWindowsなどでは完全にはじかれてしまったり、WindowsVistaにも正式対応していない。
マイクロソフトには有害ソフトウェアとして認識されているため、除外を要求してはいるが、除外のめどは立っていない。
またゲームを終了しても、nProGGは終了しない、アンインストールしても深部に残り続け、挙動し続ける、などの深刻な問題もある。
その上、nProGGは高度な技術をもつプログラマーには致命的な欠陥をついて回避されてしまい、意味がない。
結局RMTを行う業者などはBOTなどのチートプログラムをnProGGが導入された環境下でも使っている。
先述のゲーム、パソコンに対する影響も大きいこともあいまって一般ユーザーには「百害あって一利なし」と大きな反発を呼んでいる。
そうした中でnProGGを導入せず、運営努力でBOTを排除したり、BOTが意味を持たなくなるようなゲームシステムを構築したり
というゲームも存在する。しかしなかなかうまくいっていないのが現状である。
BOTやバグを利用して、労せずゲーム内のアイテムを手に入れ、これをRMTする、という行為は、
(前項で述べたラグナロクオンラインの運営会社の社員によるRMT事件も同様だが）通貨偽造的な性格を持っているといえよう。
なぜならば、労せず手に入れた不正なゲーム内のアイテムを、現実の金に買えて資金洗浄している、マネー・ローンダリングしている
といっても過言ではない。またこうした金が地下銀行で国外に大半が流れていくわけで、大きな問題といえよう。
RMTが元であり、BOTやチートはそれに付随した不正因子である。大元のRMTを規制する法が必要なのは当たり前だとして、
RMTを支えている、RMTするために行われているBOTを取り締まるということは必要不可欠であろう。
しかしこれは先述の通り運営に任せられるしかないのが現状である。運営が努力するように規制することは簡単であろうが、
それは運営にとって大きな負担となりうる。それはユーザーにとってサービスの低下を招きかねないことから容易には出来ないであろう。
しかし、運営の努力がなければユーザーと運営の溝が深まっていくばかりであり、決していいとはいえない。
多くのMMORPGは韓国から輸入されており、韓国の会社が日本の会社に権利を売ったり、日本に支社を作って運営していることが
大半である。そのため日本独自で運営を行うということがなかなか難しいという現状もあるようだ。
4.アカウントハッキング
アカウントハッキングはアイテムを取られたりするという被害だけでなく、ここにもRMTが絡むこともある。
RMT業者がそうしたパスワードを抜き取るプログラムを開発したりしてばら撒き、大量にアカウントがハッキングされる事件も少なくない。
被害者としては、アイテムを取り返したい、キャラクターを取り返したい、犯人を何とかしてほしい、というのが
心情であろうが、あまり運営会社はこうした事件に乗り出して調査することはなく、基本的には個人の責任だとして
終えてしまうことが多い。そのため多くのユーザーは泣き寝入りする羽目になる。
証拠もなかなかつかみづらく、大変ではあるが、何とか被害者を募り、警察などの機関に助けを求めるユーザーも少なからずいる。
TalesWeaver(NEXON社)というMMORPGでは大規模なアカウントハッキングがあったが、会社が全く対応しないので、被害者が団結し、
群馬県警に届け出、現在被害者への聞き込みなどの調査が行われている、ということである。
銀行などでもカードを盗まれ、不正にお金を引き出されてもその責任を負わないので、アイテムなどの責任を取る必要はないだろうが、
その犯人特定などの協力はするべきであろう。
もし、ゲーム内のアイテムやキャラクターに財産性が認められるならば、銀行のカードが盗まれ、不正に現金を引き出されたのと同じで
財産を盗んだといえるであろうし、アカウントハッキングを窃盗としてみなすことが出来るのではないかと思われる。
5.暴言、名誉毀損
暴言や名誉毀損などは基本的に仲裁する人がいないので荒れるばかりである。
まれに対処される場合もあるが、基本的には全く介入されない。
ゲームによっては下品な言葉は伏字になるようにあらかじめ設定されていたりする。
しかし、まれに仲裁する側である運営側が不可解な仲裁を行うことがあり問題となっている。
具体的にここにあげることは諸々の問題から避けるが、BOT反対などの運動を行う者がアカウント停止され、
BOT使用者がアカウント停止されず無罪放免、というような、ユーザーから見るとなんとも憤らずにはいられない判断のようだ。
4.国家間の問題
MMORPGは今後も増えていくことは確かで、問題もこれからどんどん増えていくだろう。
上述のさまざまな問題に共通しているのは、ユーザーと運営会社の対立である。
ユーザーはよりよいサービスを求め、運営会社は利益を追求する。そのため両者の間には溝が生まれてしまうわけである。
しかし、運営会社自体もまた大きな対立関係を持っているのではないかと考えられる。
たとえばほとんどのMMORPGは韓国が大元であり、その支社としてであったり、権利を購入したりして
日本で運営されていることが多いのが今の現状だ。
そうした中、ゲームを購入する側である日本の会社と、大元の韓国の会社での対立がないとはいえない。
たとえば、大元のゲームでnProtectGameGuardが導入されると、支社である日本の会社ではなかなかそれを断れないということだ。
つまり日本のユーザーの声が届いていて、日本での運営会社がたとえそれを改善しようとしていても、大元の会社などの圧力等により
変えられない、ということもありうる、ということである。それでは結局今後の発展というものを阻害してしまうことになりかねない。
またそれ以外にも問題はありうる。たとえば、韓国では法律が制定されたためRMTは有罪だ。
しかし日本では今のところ散々述べてきた通り軽い刑しか課されない。
これでは韓国で活動していたRMT業者が日本になだれ込む、という危険性があるのではないだろうか。
それにインターネットとは国家をまたいで境がない。そのため国家ごとの差異がある、というのはある意味でちぐはぐだともいえる。
中国ではBOTプログラムが不法経営罪、著作権侵害及び業務妨害罪にあたるとされ、中国人民法院より有罪判決が出ているが、
日本ではそこまで踏み込んだ判決は出ていないし、今でも堂々とそうしたプログラムが販売されている。
処罰などの基準にもある程度の統一性というものは必要であろうし、保護の程度についてもそれぞれある程度に通った基準というものを作るべきだ。
たとえば韓国で作られたゲームが日本の会社に権利が売られ、日本の会社が運営していたものを、中国人の業者がBOTプログラムを利用して
BOTを稼動していた、という事例の場合、誰がどこで訴えるかによって結論が異なるのでは妥当ではない。
民事的にも刑事的にも統一性が求められているのではないか、と思う。
日本ではBOT,RMTといったものが認知されてはいるが、それを特に処罰していないために今後更にそうした問題が多発する危険性がある。
早急な対処がなされるべきではないかと思われる。
5.まとめ
インターネットゲームは韓国では自国産業として保護されているし、国家単位で力を入れている。
しかし日本ではゲーム機によるゲーム自体、保護しようという意識が低く、またインターネットゲームというものがあまり評価されてこなかった。
昨今、ようやく大手の会社もインターネットゲームを製作したり、発表したりしている。こうした中で
やはり韓国から輸入されたゲームと同様の問題が起きている。
今後日本でもMMORPGをはじめとしたインターネットゲームは普及するだろうし、多くなっていくだろうが、
今ある問題が未解決のままであれば、それは大きく発展を阻害することになる。
インターネットゲームがこれから盛んになり、日本もゲームを輸出していくことになりうるわけであり、
そのためにはやはりゲームというものを文化として認知、ひいてはその保護を考えるということは大いに必要ではなかろうか。
2008年01月12日(土) 19:21:17 Modified by ringotabeyo