音楽と著作権2 JASRACに関して
JASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)とはどのような団体か
国内の作詞家、作曲家、音楽出版者などの権利者から著作権の管理委託を受けるとともに、海外の著作権管理団体とお互いのレパートリーを管理し合う契約を結んでいる。
管理楽曲をデータベース化し、演奏、放送、録音、ネット配信などさまざまな形で利用される音楽について、利用者が簡単な手続きと適正な料金で著作権の権利処理を行う窓口となっている。そして、支払われた使用料は、作詞家・作曲家・音楽出版者など権利委託者に定期的に分配する。東京にある本部のほか、全国の主要都市に21支部を置いて、主にコンサートやカラオケなどの演奏についてきめの細かな管理を行っている。
以上の著作権管理業務に加え、著作権思想の普及や音楽文化振興などを目的とした講演会や大学への寄附講座、コンサ−トなどの文化事業も行っている。
昭和14年、公益を目的とする社団法人として設立された。著作物がデジタル化されネットワークで世界をかけ巡る時代を迎えた今、あらためて公益法人としての立場を自覚し、60年を超える実績と経験をベースにデジタル化・ネットワーク化時代の著作権管理のあり方を追求するとともに、そのルールづくりを担い、人々にとってかけがえのない音楽文化の普及・発展に尽すことを目指している。
（JASRACホームページを参考に、一部語句を変更。）
JASRACの問題点はどのようなものか
ジャズ喫茶やダンス教室などに対して過去に遡った楽曲使用料を請求。複数の訴訟を提起し、その額が一般の想定よりもかなり高額であったこと、激しい取り立て行為があったとされることなどから、問題視される。
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JASRACの勝訴が多数。システムの構造の帰結。
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システム自体の問題
- JASRAC以外の著作権委託業者が長年存在しなかった独占状態。ゆえに、価格が市場にさらされていない。
- また、JASRACに著作権管理を委託する場合、曲単位で一括で委託する他なく、ネット上での著作権管理は自分で する、などの選択肢がない状態が近年まで続いていた。
- さらに大手のレコード会社はほとんど全てJASRACの会員である。
これらのことから、音楽著作権で収入を得ようとする場合にはJASRACに委託する以外の選択肢が事実上かなり制限されていた。
新しい流れ？
著作権等管理事業法
JASRACは1939年に制定された「著作権に関する仲介業務に関する法律」（仲介業法）によって、60年以上にわたり、音楽著作権の管理業務を独占して来たが、2001年10月から「著作権等管理事業法」が施行された。
それ以前は許可制であった著作権管理事業者が登録制となることから、新規事業者の参入が容易となり、競争原理が働く余地が出来た。「イーライセンス」「ジャパン・ライツ・クリアランス」など13団体（2006年6月時点）が参入している。
JASRACは約款を変更し、ある曲に関する別々の権利をばらばらに他の会社に信託することを可能とした。しかし一方で、JASRACとの契約を解除した場合には本来の契約満了期到来まで著作権の委託が出来ないとの条項を加え、新規事業者への顧客の流出を防いでいる。
このような流れはあったものの、、、
＜三社の使用料徴収額＞
JASRAC：1,100億円、ジャパンライツクリアランス：3.6億円、イーライセンス：3.4億円（2004年度時点）
JASRACの寡占状態は継続している。2007年時点でもそれほど変わっていないと想定される。
（JASRACの2006年度の徴収額は2004年度とほぼ変化なし。他の二社はホームページ上に財政諸表が公開されておらず、未確認。）
また、JASRACほどの海外の著作権業者との提携（相互管理契約）もなされていないと推測される。ゆえに、海外で作品を売ることを視野に入れた場合、JASRAC以外の団体では不利になる恐れがある。
これらのことから、著作権者の選択肢が増えたのは確かだが、著作権等管理事業法施行から6年を経た現在(2007年10月)現在でも、状況が決定的に変化した訳ではない。今後の動向は？
それと別に、
ミュージシャンのセルフマネージメントの動き
2007/10/10、RadioheadというUKのバンドがレコードレーベルを通さず自身のウェブサイト上でアルバムを発表。（価格は購入者が決めるというシステム。）著名なミュージシャンでは初の試み。ダウンロード数は公開されていないが、当日夜には120万のダウンロードがあったとの噂がある。
情報公開が無くはっきりとは分からないが、一般のインディーのミュージシャン（大手レーベルと契約していないミュージシャン）同様、レーベルだけでなく著作権委託業者にも委託していないことも可能性として推測される。（多くの場合、ミュージシャンが直接著作権管理業者に著作権管理の委託を行うのではなく、レーベルが著作権委託を行っている。）
この方法で音源を販売した場合、売り上げのほとんどがミュージシャンに還元される。レコード会社を通して販売した場合、ミュージシャンには売り上げの1〜2％の金額しか還元されないのが一般的である。（これらのこともあり、日本でもレコード会社を通さずにセルフマネージメントを行って流通に音源を乗せるミュージシャンもいる。ZAZEN BOYSなど。）
Radioheadのこの動きに賛同を表すミュージシャンも多い。さらに、現在までにいくつかの著名ミュージシャンがRadioheadと同様の方法を採るとして、レコード会社との契約延長をしない意向を表明している。
このように著作権者自身がマネージメントを行い経済的還元を受ける方法が一般的になれば、音楽業界の体制に大きな変革をもたらすであろう。ミュージシャンに還元される金額を考えると、経済的にレコードレーベルや著作権管理業者が介在する余地はあまりなくなるであろう。インターネット技術によって流通を通す組織やインフラが不必要になったことの帰結という文脈で捉えることも出来よう。
プラーゲ旋風と仲介業務法
1931年に、旧制一高のドイツ人教師であったウィルヘルム・プラーゲが、主にヨーロッパの著作権管理団体より日本での代理権を取得したと主張して東京に著作権管理団体「プラーゲ機関」を設立した。そして放送局やオーケストラなど楽曲を使用するすべての事業者に楽曲使用料の請求を始めた。日本は1899年にベルヌ条約に加盟し、著作権法も施行されていたが楽曲を演奏（いわゆる生演奏の他に録音媒体の再生も含む）するたびに使用料を支払うという概念は皆無であった。プラーゲの要求する使用料が当時の常識では法外であったことや、その態度が法的手段を含む強硬なものであったことから、事実上海外の楽曲が使用しづらい事態に陥った。日本放送協会は契約交渉が不調に終わったことから1年以上にわたって海外の楽曲を放送できなくなった。
一方でプラーゲは、日本の音楽作家に対しても著作権管理の代行を働きかけ始めた。プラーゲの目的は金銭ではなく著作権の適正運用だったとも言われているが、楽曲利用者との溝は埋めることができず、日本人作家の代理権取得は更なる反発を招いた。
この事態を打開するため、1939年に「著作権に関する仲介業務に関する法律」（仲介業務法）が施行された。著作権管理の仲介業務は内務省の許可を得た者に限るというもので、同年 JASRAC 設立、翌年1940年に業務が開始された。これに伴いプラーゲは著作権管理業務から排除され、同法違反で罰金刑を受けて1941年離日した。
これら一連の事件は「プラーゲ旋風」と呼ばれ、日本における著作権の集中管理のきっかけとなった。
こうした経緯から、文化庁は JASRAC をはじめ4団体に仲介業務の許可を与えて他の参入を認めなかったので、音楽著作権の仲介は JASRAC の独占業務となった。
仲介業務法の終焉とJASRACの今後
著作権の一元管理は効率の良いシステムとして運用されてきたが、音楽ソフトのデジタル化、ネットワーク化の進展にともなって JASRAC の非効率性が指摘されるようになってきた。カラオケでも使用料や権利者への分配方法が業界や権利者代表との話し合いでも決定しないままビジネスが先行するなどの弊害も生んだ。権利者側からも、従来からあった楽譜出版、録音、演奏の権利とゲーム、着信メロディ、ネット配信などの権利は別に管理したいのに、JASRAC の著作権信託ではそれができないことを指摘して、これを改めるよう求める動きも活発化した[3]。
こうした流れの中、2000年に著作権等管理事業法が成立、2001年に施行され、イーライセンス、ジャパン・ライツ・クリアランス（コピナビ）、ダイキサウンドなどの株式会社が音楽著作権管理事業に参入した。これまでの仲介業務法と最も異なる点は管理団体の設立が許可制から登録制に緩和されたことであり、これにより60年にわたる JASRAC の独占は転機を迎えた。しかしこれがすぐに JASRAC に代わり得る管理団体の誕生を意味するものではなく、依然として JASRAC の独占は続いているといった声も根強くある。
リンク（色々貼って下さい。）
http://www.jasrac.or.jp/
http://xtc.bz/article/cyzojasrac.html
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0606...
http://blog.japan.cnet.com/nakajima/archives/00339...
http://homepage1.nifty.com/azegami/jas.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/日本音楽著作権協会
http://d.hatena.ne.jp/keyword/JASRAC
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/30/new...
http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20071109/copyright
2007年11月10日(土) 02:59:24 Modified by ishiguro2007