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星空と(梓視点)
星空と(澪視点)





 あの夜に芽生えた名もなき感情。
 この気持ちが何なのかわからなくて。
 だけど、なんとなく梓のことが気になりだした。

 唯を羨ましく思った。
 自分の感情を素直に表現できることに。
 梓に抱きつく唯を見て、そう思う。
 そして、ずるいとも…。


 *



 登校中に梓を見かけた。
 
 「おはよ、梓!」

 駆け寄って声をかけると梓は顔を上げた。
 驚きが交じった、なんとなく暗い顔。

 「ん、どうした?何か暗くないか?」

 心配になる。
 梓にそんな顔は似合わないから。

 「そんなことないですよ。おはようございます。澪先輩。」

 そう言ってほほ笑む梓。
 うん、やっぱり梓には笑顔が似合うな。

 「学校まで一緒に行こっか」

 梓は頷き、私の隣を歩く。
 他愛のない会話が心地よくて。
 ころころと表情を変える梓を可愛いな、と思った。


 学校に着く。

 
 「じゃあまた部活で。」

 そう言って歩いていく梓の後ろ姿を見送りながら、あの時の感情が蘇るのを感じた。
 
 もっと一緒に話したかったな。

 心の中で呟いて、私も教室に向かった。



 **

 
 「おーす。って私が1番乗りか。」

 放課後、部室に行くとまだ誰も来ていなかった。
 いつもは狭く感じる部室がやけに広く感じて、なぜか不安になる。

 ベースを取り出す。

 何かしてないといられない、そんな気持ちだったから。


 


 しばらく弾いていると、人の気配がした。
 だけど話しかけてこない。
 気配のする方をちらりと見る。
 梓だった。

 気恥ずかしさから演奏をやめる。

 「あ、梓か。来てるなら挨拶くらいしようよ。」

 恥ずかしさを隠すように梓に話しかける。

 「あ、いや…。あの。」

 いきなり声をかけたからか梓は動揺してて。
 そして固まった。
 それが可笑しくて笑いがこぼれる。


 「律たち遅いなぁ。」
 
 私はソファに腰を下ろす。

 「ホームルーム伸びてるのかな。」

 そうい言って梓を見ると、まだ固まっているようだった。
 そのまま立ち尽くす梓に声をかける。

 「梓。荷物置いたらどうだ?」

 そう言うと梓は驚いた猫のように動き出す。
 そんな様子を見守っていると、あの夜のことが思い出された。

 
 今、二人きり。

 あの夜以来だな…。

 
 「あ」


 呟く梓の声で現実に引き戻される。

 「ん。どうした?」

 梓は何かを持って振り返る。

 「あ、あの澪先輩。」

 少し緊張した面持ちで。

 「ん?」

 差し出されたのは手紙だった。


   秋山澪様


 そう書かれてる、明らかに私宛の手紙だった。
 手紙を受け取る。

 「え…と。」

 驚きで言葉がうまく出ない。
 
 「梓が、私に…?」

 手紙を見つめながら、かろうじて出た私の質問。
 もしそうだったら嬉しいな。
 そう思いながら。


 「あ、えっと…いや。違くて。同級生に渡すように頼まれてまして。あっと…。」

 梓の返事は私が期待したものとは違って。
 慌てて否定する梓の姿に、なぜか胸が痛んだ。

 「そっかー。…私は馬鹿だな。」

 変な期待をした自分自身に対して小さく呟く。




 「遅れてごめーん!!」

 律たちがやってきた。
 

 「ホームルームが思いのほか長引いちゃって。」

 唯やムギも律に後から入ってくる。

 でも今はそれよりも、手紙が気になった。

 

 「お〜〜!?澪!」
 手紙を見つめていると、律の私を呼ぶ声がした。

 「なに持ってんだ?」
 律が近づいてくる。
 手紙、見られたらいやだ。
 私の願いもむなしく律は手紙の存在に気付く。

 「何それ?手紙?あたしにも見〜せて。」

 律は茶化すような顔をして手紙に手を伸ばしてきた。

 「なんでもないよ!!律には関係ないだろ!」

 夢中で発せられた言葉は、思ったより強くて、棘があった。
 目の前に広がる困惑した律の顔。
 ハッとなる。
 そんなにむきになる必要なんてないじゃないか。

 「ごめん。」

 律は無理矢理作ったような笑顔で

 「いやっ、その…あたしも無理矢理取ろうとしちゃったし、ごめっ!」

 そう言うから。
 私はこの場から逃げ出した。

 「ううん。私ちょっとトイレ行ってくるね。」



 ***



 悪いことしちゃったな。頭、冷やさなきゃな。
 水道の蛇口に手を伸ばそうとした時、握られた手紙に気付く。
 持ったまま来ちゃったのか。
 誰もいないし、今読んでみるか。


 秋山澪様。

 いきなりの手紙ですいません。


 そうやって始まった手紙。
 かわいらしい字で書かれてる。
 

 ・・・・・・・・・え?

 叫びそうになるのを何とか抑える。
 汗が噴き出して、手紙を持っている部分が湿って行く。
 顔をあげると鏡があって、そこには間抜けなくらい頬を真っ赤に染めた私がいた。

 落ち着け私。
 深呼吸、深呼吸。
 み、見間違いかもしれないぞ。
 ふぅと一息ついて、ちらりと目をやる。

 ・・・・見間違いなんかじゃない。

 そこには、


 『一目惚れでした。』


 ひ、一目惚れって言うのは、あの一目惚れなのか?
 やっぱり見間違いじゃなかった。
 
 これって、これって…


 ラブレター?





 ****



 

 ラブレターを貰ったことがないわけではない。
 だけど、同性から貰ったことなんて、ない。
 
 どうしよ?
 
 いつもは律に相談して何とかしてもらってた。
 でも…。

 『放課後、教室で待ってます。来なくてもいいです。』

 最後に書かれたこの1文。

 
 …いつまでも律に頼っていられないよな。

 
 よしっ!
 鏡を見る。
 いつもの顔できてるかな。
 大丈夫だよね?


 自分に言い聞かせてトイレを出る。
 みんなに謝らなきゃな。

 手紙をブレザーのポケットに入れる。

 きっと大丈夫だ。




 *****




 ドアを開けると、目の前には律がいた。

 「律?何やってんの?」

 びっくりして、こんな言葉が出ちゃったけど、律の表情を見て私を心配してくれていたんだと分かる。

 「さっきはごめん。」

 律だけじゃなくみんなに聞こえるようになるべく大きめな声で。
 でもなんとなく気まずくて。

 
 「おっ、今日もおいしそうだな。」

 そう言って机に広がるお菓子類に近づいた。

 

 ******



 大丈夫なつもりだったけど、体というものは正直なんだな。
 今日の練習。
 私は失敗ばかり。
 ばれないようにごまかしたつもりだけど。



 夕焼けが部室をオレンジ色に染め上げて。
 今日の部活も終わりだ。
 帰り仕度をしながらブレザーのポケットに手を手を置く。
 そこには手紙があって。
 

 「今日、このあと用事あるんだ。だからみんな先に帰ってて」

 私はそう告げて、みんなより先に部室を出た。


 廊下を進む。
 
 行ったところで、私はどうするつもりなんだろう。
 同性からのラブレターを貰ったことを気持ち悪いとか思ってるわけではない。
 なんでだろう?
 ラブレターを呼んだ時、恥ずかしさやいろいろな感情が湧きあがってきたけど、頭に浮かんだのは梓だった。
 手紙を渡された時、読んだ時、頭に浮かんだのは全部同じ言葉。
 
 これが梓からだったら…。

 
 なんでだろ?
 いつからだろ?

 多分、あの夜から。
 


 私の頭の片隅にはいつも、梓がいるようになった。




 *******
 



 約束の教室のドアの前に立つ。
 深呼吸をひとつつき、ドアに手をかける。
 
 「秋山先輩。来てくれたんですね。」

 教室には少女が一人立っていた。
 私が教室に入ると、その子が私に話しかけ出した。
 この子がラブレターの送り主か。

 「呼びだしちゃってすいません。」
 
 彼女は続ける。

 「秋山先輩は私のこと知らないと思います。」

 彼女はそこで1回言葉を切った。
 そして俯いた。
 私も何かしゃべった方がいいのかと思って口を開きかける。

 「手紙にも書いたけど…。私、秋山先輩のことが、好きなんです。」

 その瞬間、彼女は顔をあげた、こう告げた。
 頬が赤く染まってる。
 予想してたこととはいえ、面と向かって言われると照れが隠せない。
 
 「え、と。それは…あの…。」

 恥ずかしさで言葉が上手に出てこない。
 私は確認したかった。
 この好きはどの好きなのかって。
 彼女は私の言いかけた言葉をくみ取ったらしい。

 「この気持ちは、恋愛感情なんです。とまらなくなっちゃったんです。」

 苦しいほどまっすぐな瞳が私を貫いて。
 動けなくなる。
 全てが停止したみたいに。

 「こっ、こんなの気持ち悪いですよね!あり得ないですよね!」

 なにも反応しない私に不安そうに、涙交じりの声が私に届いて。

 「すいません!」

 少女は頭を下げる。
 涙を目の端に溜めて、頬を真っ赤に染めて。

 「…忘れてください。私はただの生徒Aっていうことで。」

 「私は、気持ち悪いとか思わないよ。」

 切なげで、苦しげで…でもまっすぐな瞳。
 少女の想い。

 そして…、気付かされた、私の想い。

 「え?」

 驚く少女。
 
 「人が人を好きになるって、素敵な感情だろ。」

 顔をあげた彼女に私はできる限りの笑顔で言うんだ。
 自分自身にも言い聞かせるように。

 「でも、ごめん。」

 私はこの少女の想いに返事をする。
 自分に素直になって…。

 「私、気になる人がいるんだ。」

 彼女がそうしたように、まっすぐ彼女を見据えて。 



 「それって…田井中先輩ですか?」



 彼女の返答は予想外だった。
 涙を隠すようなくしゃっとした笑顔で。
 そう言うんだ。

 「な、なんで律が出てくるんだ?」

 慌てて尋ねた私の言葉を彼女は照れ隠しと受け取ったらしい。

 「誰がどう見ても相思相愛ですよ。だから、分かってたんです。私の想いが先輩に届くことがないって。」

 彼女は私から目をそらす。

 「だけど、伝えたくなっちゃったんです。止められなくなっちゃったんです。」

 私はただ呆然と立ち尽くすしていた。
 彼女は可愛く微笑んで言うんだ。

 「私、私、応援してますから。自己満ですけど、伝えられてよかったです。」

 私は迷っていた。
 気になる人が誰なのか言ってしまった方がいいのかどうか。
 
 「今日は本当にありがとうございました。」

 バッグを持って立ち去ろうとする彼女が目の端に映った。

 「あ。あの!」

 反射的に呼びとめた。
 立ち止まる彼女に私は言ったんだ。

 「律は私にとって大切な存在だよ。だけど、律のことを親友以上に見たことはないんだ。」

 彼女は振り返る。
 目を丸くして。

 「え…?」

 その目は私に「じゃあ誰なんですか?」と尋ねていた。


 
 ********



 ずいぶん遅くなっちゃったな。
 久しぶりに一人で帰る気がする。
 
 私は彼女に誰とは言わなかった。
 勇気がなかった、というのもあるけど、この気持ちを1番最初に伝える相手が決まっていたから。

 夕日が沈んでいく。
 影が伸びる。
 今の私には夕焼けがまぶしかった。



 「みーおっ!」
 聞きなれた声が私を呼んだ。
 「律!?なんでここに?」
 律はみんなと一緒に帰ったはずなのに、なんでここにいるんだろう?
 
 「澪を待ってたんだよ!」
 屈託ないような笑顔でそう言って私の隣に並ぶ。
 「今日の澪、なんかいつもと違ったから心配したんだよ。」
 二人並んで歩きだす。

 かけがえのない大切な親友だから、1番最初に律に伝えたかった。

 「なぁ澪。」
 私がなんて切り出そうか考えていると、律が私に呼びかけた。
 「ん?」

 「澪さ、好きな人ができただろ?」

 「え?」

 律は頭の後ろで腕を組んでいつもの口調で言ったんだ。
 私は驚いて立ち止まった。

 「分かるよ。何年幼馴染やってると思ってんだよ。」

 律はそう言って私と同様に足を止めた。
 振り向いた律に沈んでいく夕日が重なった。

 「律…。」

 「あたしは、澪がいいと思うなら何でもいいと思うよ!」

 律の言葉はすべて分かっている上で言ってるような気がして。
 私はまた律の優しさに甘えちゃうんだ。

 「…私は、梓のことが好きみたいなんだ。」

 絞り出した言葉とともに涙が溢れた。
 
 「み〜お!人が人を好きになるのは素敵なことだよ。」

 偶然なんだろうけど、さっき私が言った言葉と同じ言葉を律に言われる。
 そして力が抜けるのを感じた。
 そんな私を律は抱きしめて支えてくれた。
 
 「どんなことがあっても私は澪の味方だよ。」

 律の優しさに包まれて。
 私は馬鹿みたいに泣いたんだ。



 *********



 「家まで送るよ。」
 
 一通り泣いた後、律は私の手を取って歩き出した。
 律の手は温かかった。
 
 「…律。」

 「うん?」

 「ありがと。」

 涙でにじんだ私には律がどんな表情をしてるかわからなかった。
 きっと、しょうがないな澪は、って顔をしてるんだろうな。
 手を引かれながら私はそう思ったんだ。










夕焼けと(梓視点)



つづき
あなたと



  

このページへのコメント

りっちゃんイケメンだなぁ(;_;)

0
Posted by ドヤえもん 2010年08月26日(木) 14:29:38 返信

よかったと思います。スゴい澪の心理描写がカッコよかった。

0
Posted by けいおん!最強 2009年08月09日(日) 00:17:29 返信

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