日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼海軍航空隊のJH-7


JH-7は全天候の複座戦闘攻撃機で、ロシアのSu-24フェンサーと同様の用途を目指した機体である。ただし可変後退翼ではなくきつい後退角の付いた主翼を肩翼配置にして、全遊動式の水平尾翼と単垂直尾翼を組み合わせた尾部という機体構成になっている。開発は西安にある第603航空機設計研究所と西安飛機工業集団公司が、機体の生産は西安飛機工業集団公司によって行われた。NATOコードネームは「Flounder」。

【開発経緯】
1970年代に西沙諸島で南ベトナム軍と交戦した中国海軍は海軍航空隊から十分な支援を受けることができず、海軍は制空権が無い状態で苦戦を強いられた。海軍航空隊の所有するJ-6戦闘機(MiG-19)やJ-7戦闘機(MiG-21)は支援攻撃能力が著しく低く、またQ-5攻撃機では航続距離が足らずに海軍航空隊の限界が露呈してしまったのである。この戦訓を受けて中国空軍と海軍航空隊は1976年、対艦ミサイルの運用が可能で自衛用AAMを搭載し、Q-5攻撃機の2.5倍の作戦行動半径と3倍近い爆弾搭載量が可能な戦闘攻撃機の開発を要求した。また、この機体はQ-5だけでなく、旧式化したH-5爆撃機の後継になる事も決まっていた。これに応じて瀋陽飛機工業公司がJ-8IIの攻撃機化案を、南昌航空機工業(現洪都航空工業集団公司)は新型可変翼機Q-6を、そして西安の第603航空機設計研究所が提出したのがJH-7開発案であった。中国空軍はこれらの案を検討した結果、当時対立していたソ連の強力な防空態勢を突破するためには双発複座の大型攻撃機が望ましいとされ、次期攻撃機はJH-7が採用される事に決定した

第603航空機設計研究所での開発作業は1973年末から開始された。要求された性能はフェリー航続距離2,800km以上、戦闘行動半径800km以上、最大速度M1.5、標準兵装搭載量3トン、最大兵装搭載量5トン、夜間・悪天候・高ECMという悪環境でも超低空で敵地深部に侵攻できるというものだった。海軍型は縦列複座(JH-7)、空軍型は並列複座(H-7)として2機種が並行して開発される事になったが、類似機種とはいえ2機種を同時新規開発する事は難しく、1980年代初めに空軍型H-7の開発は中止され、海軍型のJH-7だけが開発される事になった。

このJH-7は2機の試作機が作られ、ファーンボロ航空ショーの1ヶ月前に試作1号機がロールアウトし、1988年12月14日に初飛行に成功した。試作機のうち1機はエンジン・トラブルにより墜落し、パイロットは2名とも死亡したという。本機の生産は1990年代初めから開始されたが、20機弱が海軍の上海・第6戦闘機師団に配備されただけで大量生産は行われていない。エンジンや機体構造に問題があり、生産が中止されたと推測されている。一部のJH-7は、電子戦ポッドを搭載して電波妨害を行う電子戦機として運用されているのが確認されている[1]。

JH-7は肩翼配置の主翼を備え25%翼弦で約45゜の後退角を有し、後縁は内側にフラップ、外側に補助翼という一般的な構成で、前縁にはドッグツースが付けられている。エア・インテイクは後席の後ろ側にあり簡素な固定式であるが、主翼の前縁付け根部にあたる位置に片側2つの補助インテイクがある。尾翼は単垂直尾翼と水平尾翼を低翼に配置した通常形式で、水平尾翼の前縁には約55゜というきつい後退角が付いている。水平尾翼は全遊動式。エンジンはロールスロイス・スペイMk.202とそのライセンス生産版である渦扇9「泰嶺」だが、渦扇9の国産化には長期の時間を要し、漸く2002年から量産に入る事に成功した。現在、年間60基程度の生産が行われているとされる。操縦装置はデジタル・フライ・バイ・ワイヤ方式。

【改良型JH-7A】
西安航空機工業(XAC)はJH-7の性能が奮わなかったために、その発展型であるJH-7Aを開発した。JH-7Aは主翼下のハードポイントを4箇所から6箇所に増やし、胴体下部の物を合わせるとハードポイントの合計は11箇所になる。JH-7との識別点は、胴体下の単垂直尾翼が左右2枚に変更、主翼のドッグツースが廃止、キャノピー前方の枠を削減などである。JH-7Aは、各種のロシア/中国製兵器を搭載する事ができる。中国はロシアから27Nレーザー・シーカーを購入し、ロシア型のレーザー誘導爆弾を国内生産している。また、100kmの射程を持つKH-31P(AS-12 Kegler/YJ-91)対艦ミサイルも国内で生産中だ。TV画像シーカー型の対地ミサイルはKH-29K(AS-14 kedge)に似ているが、成都の研究所で国内開発されている。対空ミサイルは中国空軍で広く使われているPL-8を搭載する。

JH-7AはJL-10A「神鷹」パルスドップラーレーダー(Jバンド)を搭載している。このレーダーはルックアップ・ルックダウン能力を有しており、捜索範囲は最大80km(ルックダウン時54km)である。また同時に4つの目標を追跡する事ができ、その追跡範囲は最大40km(ルックダウン時32km)である。JL-10Aレーダーを開発した第607研究所は「藍天/ブルースカイ」という低高度航法ポッドも開発しており、このポッドの地形追随高度は60〜400mで、JH-7Aに装備すれば60mの低高度で地形追随飛行を行うことができるという。対地攻撃時にレーザー誘導弾を使用する際には、「藍天」低高度航法ポッドと合わせて613研究所が開発したFILAT多機能前視赤外線・レーザー捜索/照準ポッドを装備する。FILATは、光学照準装置と赤外線視認装置、レーザー照準照射装置の3つの機能を兼ねている。レーザー照準装置の最大視認距離は7〜10km。

前席には国内開発されたHK-13-03Gヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)が装備され、モノクロ多機能ディスプレイ2基とカラー多機能ディスプレイ1基が備えられている。対艦ミサイルなどの火器管制システムは後席にあり、攻撃用データはMil1553Bデジタル・データバスと通じてコンピューターに送られる。ほかにも8145型気象データ・コンピューター、WG-5A電波高度計、Hg563GB全地球位置測定/航法システム(GPS/INS)、210型ドップラー航法システム、TAKANデータリンク装置など最新のアビオニクスを備えている。また電子戦装備としてKJ-8602レーダー警戒装置、KG-8605レーダー妨害装置、KZ-8608電子情報収集システムなども装備している。

JH-7Aは2004年末に中国空軍の第28攻撃機師団への約19機の引き渡しを皮切りに、中国空軍と海軍航空隊への配備が開始された。なお、海軍航空隊に配備されたJH-7Aは、洋上での対艦攻撃を主任務とするため、空軍配備型よりも防錆、防塩対策を強化し、高温多湿地帯での運用を想定した改修が施されている[1]。両軍合計の総配備数は約200機を超える数(これはJH-7とJH-7Aの合計)となり、中国の空対地、空対艦任務の中核的役割を果たす戦力としての立場を確保した[2]。中国空軍と海軍航空隊では、JH-7Aよりも大型で高性能なマルチロールファイターであるSu-30MKKSu-30MK2をロシアから調達したが、取得コストがSu-30シリーズに比べて安く(約1,300万ドル)各種コンポーネントを国産でまかなえるJH-7Aも並行して調達が進められた。

【その他の派生型】
・JH-7B
JH-7Aのさらなる能力向上型として開発され、2012年には初飛行が確認されている[1]。機体の前半分の設計を一新して、新装備搭載のスペースを確保している[1]。航続距離延伸のため、コクピット左部には収納式の空中受油プローブを内蔵。さらにコクピット後方から垂直尾翼にかけてのドーサルスパイン部と主脚収納部直前にアンテナが追加されている[2]。レーダーやアビオニクス、機体制御システムについても大幅な改良が施された模様。射程400kmに達するYJ-12艦対艦ミサイル(鷹撃12)の運用能力を付与するため、主翼構造の強化と新型パイロンの装備も実施されている[1][2]。JH-7Bは、これらの改良により大幅な能力向上を達成したが、機体設計の古さやWS-9エンジンの出力向上の余地の少なさにより軍からの新規発注は得られなかった[2]。

・JH-7A
JH-7A兇JH-7Aの近代化改修タイプで、2019年8月にロシアで開催された「国際軍事コンテスト−2019」の航空部門に参加したことでその存在が明らかになった[2]。JH-7Aは、中国空軍の戦闘爆撃機戦力の数的主力を占めており今後もかなりの期間に渡って運用が続けられるため、戦力陳腐化を防ぐためのアップグレード型として開発されたのがJH-7A兇任△襪塙佑┐蕕譴討い[2]。

機体の外観からはJH-7Aとの相違点は確認されていないので、主な改良は機体内部やソフトウェア部分に施されていると推測されている[2]。具体的な改良の内容はまだ明らかにされていないが、作戦コンピュータの能力向上、コクピットのグラス化、運用可能な兵装の追加、「北斗-2」北斗衛星導航システムの導入、新型の照準ポッドや電子戦ポッドの搭載などが考えられている[2]。

・輸出型
JH-7は、FBC-1「Flying Leopard:飛豹」、JH-7AはFBC-1M「Flying Leopard II」(JH-7A)の名前で輸出型としても宣伝されているが、今のところ採用した国は無い。

JH-7性能緒元
重量16,000kg
全長21.0m
全幅12.8m
全高6.22m
エンジンRolls-Royce Spey Mk202 A/B 9,300kg ×2
最大速度M1.69
戦闘行動半径1,650km
上昇限度16,000m
武装23III型23mm機関砲×2
 PL-12アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(霹靂12/SD-10)
 PL-8赤外線誘導空対空ミサイル(霹靂8/パイソン3)
 PL-5赤外線誘導空対空ミサイル(霹靂5)
 Kh-29テレビ誘導短距離空対地ミサイル(AS-14ケッジ)
 Kh-31A空対艦ミサイル(AS-17クリプトン)
 YJ-91高速対レーダーミサイル(鷹撃91/Kh-31P/AS-17C Krypton)
 C-801対艦ミサイル(YJ-8K/CSS-N-4 Sardine)
 C-802対艦ミサイル(YJ-82)
 KD-88空対地ミサイル(空地88)
 LT-2レーザー誘導爆弾(雷霆2型)
 FT-1/3誘導爆弾(飛騰1型/3型)
 各種爆弾/誘導爆弾
乗員2名

▼JH-7


▼JH-7A

▼開発中止となった並列複座型H-7の側面図


▼海軍航空隊(北海艦隊所属)のJH-7A訓練動画。低空侵攻、対艦ミサイル連続発射と着弾など


【参考資料】
軍事研究(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
別冊航空情報 世界航空機年鑑2005(酣燈社)
Jane's Defence Weekly
Kojii.net
Chinese Defence Today
航空世界
香香公主的BLOG「単価是蘇-30三分之一:中国新飛豹脱胎換骨性能大増!」

[1]亦秋「从航空飞镖比赛看海空新”飞豹”- 浅析海航歼轰-7A和空军歼轰-7A供廖慂執科技』2019/18号(兵工科技杂志社、56〜59ページ)
[2]徐臻豪「老兵新传 - 歼轰-7能否再次辉煌」『兵工科技』2019/19号(兵工科技杂志社、62〜66ページ)

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