花雪

投稿日:2008/03/21(金) 02:00:59 ID:NC0qMos5
 
 
【花の雪散る 一巻き】
 
 
 葉月、まだ冬は遠い。
 
「青はそう言ったところが――」
「何を言う。無礼にもほどがあらァ。それに――」
「お、落ち着いてよ青田坊、黒田坊。扇風機が壊れたくらいで喧嘩しちゃ駄目だよ! 部屋が余計に暑くなるでしょ!」
 
 現在、和室では小さな騒動が起こっていた。
 和室にはリクオ、青田坊、黒田坊。そして布団で眠る雪女の姿があり、そんな雪女を囲むように男二人が言い争っていたのだ。
 リクオはそんな二人を必死で止めつつ、布団で眠る雪女の額に濡らした冷たいタオルを乗せる。すると眠っている雪女の表情が僅かに変わり、微笑んでいるように見える。
「青田坊、黒田坊。雪女が心配なのは解るけど、騒いだら意味ないでしょ。僕がちゃんと看るから」
「……ヘイ、若」
 リクオに言われれば逆らうことが出来ない青田坊と黒田坊。しぶしぶ頷きながらそっと部屋を退室する。
 途端に閑散とする室内、雪女の小さな寝息がよく聞こえた。
 リクオは眠る雪女の傍にそっと腰を下ろす。
「無理するからだよ、雪女。真夏に庭掃除なんてしたら、体調崩すに決まってるよ」
 眠る雪女に声をかけるものの雪女が返事をすることは無く、ただ気持ち良さそうに眠っている。
「また氷、持ってくるね」
 リクオがそう言って立ち上がろうとしたものの、ふとズボンの裾をくいっと何かに引っ張られた。リクオは足元を見る。
「わ、か、さま。わたし、だいじょうぶです」
 そこには頬を朱に染め、辛そうに肩で息をする雪女の姿があった。白く細い指はリクオのズボンの裾を掴んでいる。
「ゆ、雪女! 寝てなきゃ駄目だよ!」
 起き上がろうとする雪女を、リクオは必死で制する。
 すると僅かに起き上がった雪女が、ぴちゃ、という水音に気が付く。そして次に雪女の行動を制するリクオもその音に気が付いた。
「……あ、あぁっ! 私、なんてことを……」
 雪女が眠っていた敷布団はびちゃびちゃに濡れていた。
「とけちゃったんだよ! ど、どうしよう!! 痛いところとかない?」
「い、痛みはありません。でも、でも! こんなにお布団を濡らしてしまうなんて……きっと、畳にまで滲み込んでる……」
 雪女の瞳からぽろぽろと涙が零れる。
 リクオはそんな雪女の頭をそっと撫でながら、言う。
「泣かないで雪女。夏なんだし仕方ないよ。雪女が悪いわけじゃない」
「わ、かぁ……」
 雪女はそっとリクオに抱きつき、その胸板に顔を押しつけ、
「お優しいんですね、ずっと、ずっと」
 そう言い終わると、涙で濡れた瞳でそっとリクオを見上げた。
 何時もとは違う雪女の雰囲気にリクオは戸惑う。
「私は、そんなリクオ様のことが――」
 雪女はリクオの唇に指を這わせた。
 

【花の雪散る 二巻き】
 
 
「ゆき、おんな……」
 不思議な感覚――まるで雪女の濡れた瞳に吸い込まれるように、目を逸らせないリクオ。
「リクオ様」
 除除に近付いてくる雪女の顔、否、唇。
 リクオが言葉を発しようと口を僅かに開けると、それを見計らっていたかのように雪女がそっと口付ける。
 リクオは突然の行為に驚き、雪女から逃げようとするものの、気が付けば氷の手錠が手を拘束し動くことが出来ない。
 雪女はそっと唇を離し、驚いて雪女を見つめるリクオの耳元で、
「ひやしてまいろうか」
 くすくすと笑みを零しながらそう囁いた。
 氷の手錠は堅く冷たいがこの暑さだ、既にとけ始めている。
 リクオは雪女を暫し見つめていたが、
「雪女、調子が悪いんだよね。だからこんなこと、したくもないのにしてるんだよね。辛い、よね」
 違います――雪女はそう口にしようとしたものの、出かけたその言葉は雪女に呑みこまれ、発せられることはもう二度と無いのだろう。
「はい、若。体が熱くて、熱くて。私、どこかおかしいみたいです」
 総てはこの暑さのせいだと、都合のいいように言う。
 雪女は罪悪感で思わず心の中でリクオに謝るものの、口にしないかぎりリクオにそれが伝わるわけがない。
「そっか……大丈夫だよ、雪女。僕は此処にいるから」
 雪女を看る為にカナちゃんとの約束破っちゃったけど、というリクオの小さな呟きを雪女は聞き逃してはいなかった。
「若」
「どうしたの?」
「……有難う、御座います」
 あの子より私を選んでくれた――雪女は嬉しくてたまらなかった。 リクオは不思議そうに雪女を見ていたものの、ふとその着物が濡れてしまっていることに気が付くと、
「着物、持ってくるよ。濡れてると落ち着かないでしょ」
 リクオがそっと立ち上がり、苦笑交じりにそう言うと雪女は俯く。
「あ、はい。申し訳ありません、若……」
「いいのいいの。雪女は病人なんだから、今日くらい甘えたっていいんだよ」
 リクオはそれだけ言うと静かに部屋を退室した。
 部屋に一人残された雪女は、濡れた着物の帯をそっと解いた。
 
 
【花の雪散る 三巻き】
 
 
「雪女、着物と、冷やす為の氷も一応持ってきたよ」
 リクオはがちゃがちゃと音をたてながら氷を運び、襖の前で一度立ち止まり声をかける。だが雪女からの返事は無い。
 リクオは、調子が悪いから返事が出来ないのだろう、そう結論付けて襖を開け、沢山の氷が入っている水色のバケツを持ち入った。
 しかし、部屋に入った瞬間リクオは持っていたバケツを落とした。がらがらと音をたててリクオの足元に四角形の氷が転がる。
「あ、若ぁ。お待ちしてました」
 部屋の中には微笑む雪女の姿があった。
 しかし、雪女の姿は一糸まとわぬ、あられもない姿だった。
 先ほどまで着ていたはずの雪女の着物は、掛け布団の上に虚しく脱ぎ捨てられており、マフラーは畳の上でとぐろを巻いて眠っている。
「ゆ、ゆき、雪女ぁ!! な、なんでは、裸っ!?」
 リクオはその光景に驚き、雪女の身体を見ないようにする為だろうか、雪女に背を向けてそう言った。
 雪女はそんなリクオを見ればくすくすと愉しげに笑みを零し、そっと歩き出す。
「若、こちらを見てくださいな」
「む、無理無理無理! き、着物持ってきたから、それ着て!!」
 リクオはそう言うと、持ってきた着物を雪女がいるであろう方向に向かって差し出す。
 雪女はその着物をそっと受け取るものの、直ぐにそれを畳の上に落とした。
「ゆき、おんな? ちゃんと、着物着てる?」
「えぇ、勿論ですよ。若」
 嘘だ――リクオはそう思ったが口にすることが出来ず、ただ雪女に背を向けることしか出来なかった。
 しかし、ふとリクオは背に柔らかな何かがあてられていることに気が付く。
「雪女……? 何、してるの?」
 リクオが恐る恐る問いかけると、背後で雪女がくすくすと笑みを零しているのが解った。
「乳房を、リクオ様の背中に押しつけてるんですよ。解りますか、若? 若の背にあたる、私の乳房の感触」
 リクオは言葉を発することが出来ず、ただ唾を勢い良く呑みこんだ。
 
 
【花の雪散る 四巻き】
 
  
 リクオは顔を林檎のように真っ赤にし、ただ俯くことしか出来ない。
 恥ずかしさや戸惑い――それだけではない。
「ふふ、リクオ様ったら。耳まで真っ赤ですよ」
 そう言いながら、雪女はリクオの耳朶をそっと銜える。
「んんっ……! だ、だって雪女が……っ」
 リクオはとある違和感に気が付いていたが、それを口に出来る勇気など持ち合わせておらず、相変わらずただされるがままでしかない。
「私が、どうかしましたか?」
 背後には意地悪く笑みを浮かべる雪女の姿があり、ぐいぐいと相変わらず乳房を押し付けてくる。
「せ、背中に……なに、か……尖ったもの、あたってる……」
 リクオがそこまで言うと、雪女はリクオの背後でくすくすと笑みを零し、抱きしめるような形で背後からリクオの胸板付近に触れる。
 そしてその指先は何かを探っているのだろうか、もぞもぞとリクオの身体を弄る。
「く、くすぐったいよ……」
 リクオがそう言うと、雪女は小さく言葉を漏らした。
 しかし、その言葉はあまりにも小さな声であった為に、リクオは聞きとることが出来なかった。
 だが、リクオはあることに気が付く。
「ぼ、ぼたんを……」
 雪女はその白く美しい指先で、リクオの着ているシャツのボタンに触れる。そして一つひとつ、丁寧にはずしていく。
「雪女! そろそろ、いい加減にしろよ!」
 リクオは雪女の手を振り払い、背後にいるであろう雪女にそう言い放ったものの、次の瞬間には言葉を失った。
「わか、さまぁ。私は、私は病気で……」
 思わず振り返り見てしまった雪女の姿――雪女は口からたらりと涎をたらし、ふっくらと柔らかそうなその乳房は雪女の唾液だろうか、それとも身体がとけてしまったのだろうか、何やら濡れており輝いていた。
 そしてその先端の、桜色の突起にはたっぷりと液体が塗りつけてあり、雫が垂れている。
「ゆき、おんな……」
 リクオは自分の心の中で、何かが燻るのを感じた。
 そしてそれと同時に、自分の心の中で、何かが切れてしまうのを感じた。





【花の雪散る 番外編(129様のご要望に沿って/拙い文章ですいません)】
  
 
 草木も眠る丑三つ時――二人だけの秘め事は行われる。
 
「だ、め、ゆき、おんなぁ……!」
「ふふ、若ったらいけないですよ、こんなに溢れさせて……足でされるのが、そんなにイイですか? すけべなんですね、若って」
 新緑色の畳には白濁としたそれがぼとりぼとりと落ちる。
 
 リクオは畳の上に力無く座り込み、晒されている己の下半身を気にする余裕など無かった。
「ほうら、此処が気持ちイイんですね? 若」
 雪女は悪戯な笑みを浮かべながら、はあはあと肩で息をするリクオを見下ろす。
 雪女は先ほどから、晒されているリクオの陰茎を足で擦ったり、指先で擦ったりしているのだ。そしてその度にリクオのそれは大きくなり、白濁したそれを畳に滲み込ませる。
「んんっ……!」
「若……超可愛い」
 くすくすと笑みを零す雪女。
 リクオはそんな雪女にされるがままで、ただ迫りくるその快楽に犯されていた。
 雪女はそんなリクオの前で、そっと舌舐めずりをしてみせる。それもわざとらしく、唾液を舌にたっぷりつけて。
「若、どうされるのが気持ちイイのか、教えて頂けませんか?」
「…………く、ちで……舐め、て。ゆ、雪女っ」
「おおせのままに、リクオ様」
 
 誰にも知られることはない、二人だけの秘め事は夜な夜な行われる。
 


 
2011年05月31日(火) 00:11:36 Modified by ID:YQO7mb6raw




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