及川氷麗の憂鬱
304 ぎゅっぽぎゅっぽしちゃいますからね! ◆uC4PiS7dQ6 sage 2008/08/23(土) 02:12:53 ID:d38qvvDa
1
夜空には金色の満月。後ろには傷付き倒れて行く下僕達。眼前には憎むべき至上の怨敵。
咲き乱れる戦火の炎がねじれ山を包み、最終決戦を迎える妖怪の退路を断つ。
焼け野原となった山の頂上には妖怪が三匹。
「雪女……おめぇの命、俺が預かるッ!」
三代目ぬらりひょんが妖怪の総大将、奴良リクオ。
「この体、この命、この魂……全ては若の為に」
その後ろには呪いの幻神にして氷の化身、雹月冷唱雪女。
対するのは一匹。
「カカッ! 愉しいねぇ総大将。最強の妖怪として力を振るえる……これ以上に喜ばしい事は、無いッ!!」
リクオと同じ容姿、力を持つ妖怪……『枕返し(まくらがえし)』。
夢を覗き、現象を操り、妄想を叶え、負の災厄だけを最悪な方法で再現する妖怪。
標的とする者が学校を休みたいと願えば、その親を殺して葬式により休ませ、
この街に凶悪な連続殺人鬼が居ると妄想すれば、凶悪な殺人鬼に姿を変えて人を虐殺する。
それが枕返しの悪行。今回もその一環なのだ。『若が一番強い妖怪になれますように……』。誰かが祈ったその願いを叶えているだけ。
だからリクオに姿を変え、妖怪を次々と倒し、満身創痍の身体で強さを誇示し続ける。
しかしだからこそ、この戦いで終わりなのだ。どちらかのリクオが倒れた瞬間、リクオの最強は無くなる。その瞬間に枕返しは消え、再び長い眠りに着く。
枕返しとは、決まった姿や形を持たず、特定周期で流行り病のように現れ、夢や妄想を叶えて、いつの間にか消えていく……そんな妖怪。
なれば尚更。リクオの瞳は怨恨節操に狩られ、どこまでも険しく流移する。
「そうかい? そんなもんはどうだって良いんだがよぉ……好き勝手に俺の下僕をケガさせやがって、もちろん覚悟は……できてるんだよなぁっ!!?」
枕返し、リクオ、その両方。右手に握られ、肩に担がれているのは一振り。
刀身の波紋は乱れ入り、
鮮やかな血色で染まり上がり、
持ち手の瞳までも赤く幻視させる。
赤(あか)い、
紅(あか)い、
朱(あか)い、
血(あか)い、
妖艶(あか)い、
錆付いて(あか)い、
人脂に塗れた(あか)い、
静地と名題された妖刀。
人を、妖怪を、千単位で斬り殺して来た『青江下坂(あおえしもさか)』。
「カッ、そんな怖い顔するなよ総大将。このぐらいで慌ててちゃ、全国統一なんか出来ないぜ?」
枕返しはリクオと同じ顔で、同じ声で、刀の切っ先を『本物』に向けてケラケラと笑う。
「なら、決着を……つけようか!!」
リクオも同じ。枕返しと同じに刀の切っ先を『偽物』に向けて短い金属音を鳴らす。
静か。次動が最後の攻防。互いの距離は二桁メートル弱で、ビリビリとした大気がねじれ山を喰らう。
それをブチ壊し、リクオの後ろで死合のトリガーを引くのは……
「若っ! 今こそ二人で完成させた、あの技を見せる時ですっ!!」
右手を握って親指だけを立て、首をカッ切るポーズをする雪女。
2
それが合図。
「「うおぉぉおおぉぉぉぉぉぉッッ!!!」」
二つの咆哮が重なり、地面を蹴り飛ばす体音が重なり、リクオと枕返しは『刀を投げ捨て』、月下の上空で交錯する。
枕将軍「はぁははぁぁぁぁぁッ!! 上を取ったぞぬらりひょん!! 喰らえい、地獄の断頭台ッ!!!」
雪女「わかぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
でーでー でででで♪
オレの闘志が ねじれ山を焦がすー♪ 今日の勝負は 並じゃないぜー♪
リクオ「なんのっ! 火事場のクソぢからぁぁぁぁぁぁっ!!!」
枕返し「なにぃぃぃぃぃぃぃっッ!!?」
他組の勢力に 負けたら最後ー♪ 奴良組が解散に 追い込まれるー♪
従える下僕(とも)の眼差しがー♪ 傷付くたび 倒れるたび 俺を救い出すー♪
雪女「若が地獄の断頭台を返したぁぁぁぁぁっ!!」
リクオ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁッ!! 完成・ぬらりひょんスパァァァァァァァク!!!」
(Kick!)陥没に脅えるー♪
(Chop!)ゆらのおっぱいー♪
さぁお遊びはー ここまでだ!
枕返し「ぐえぇぇぇぇッ!!?」
リクオ「ぬらりひょんスパーク、フィニッシュ!!」
(Attack!)ラスト五秒のー♪
(Fire!)逆転ファイター♪
オレは妖怪 ぬらりひょんー♪
枕返し「ぐはぁっ!? しかし、ただではやられん! 貴様等二人に呪いを掛けてやる! 数ヶ月後を楽しみにして、る……んだな。がくっ」
N・U・R・A・R・I NURARI!
N・U・R・A・R・I NURARI!
3・2・1・・・FUCK!
雪女「終わりましたね若……」
リクオ「ああ、だが俺達の戦いはまだまだこれからだ」
ぬらりひょんの孫 第一部
―完―
そんな戦いが終わってから数ヶ月後。みんなのケガもすっかりと癒え、平凡な生活が戻って来た……かに思われた。変化が訪れたのは暑い夏の日。私と若に掛けられていた呪いが、長い潜伏期間を経て、じっくりと、発病した。
『私がぎゅっぽぎゅっぽしちゃいますからね!』
〜 及川氷麗の剛直 〜
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夜空には金色の満月。後ろには傷付き倒れて行く下僕達。眼前には憎むべき至上の怨敵。
咲き乱れる戦火の炎がねじれ山を包み、最終決戦を迎える妖怪の退路を断つ。
焼け野原となった山の頂上には妖怪が三匹。
「雪女……おめぇの命、俺が預かるッ!」
三代目ぬらりひょんが妖怪の総大将、奴良リクオ。
「この体、この命、この魂……全ては若の為に」
その後ろには呪いの幻神にして氷の化身、雹月冷唱雪女。
対するのは一匹。
「カカッ! 愉しいねぇ総大将。最強の妖怪として力を振るえる……これ以上に喜ばしい事は、無いッ!!」
リクオと同じ容姿、力を持つ妖怪……『枕返し(まくらがえし)』。
夢を覗き、現象を操り、妄想を叶え、負の災厄だけを最悪な方法で再現する妖怪。
標的とする者が学校を休みたいと願えば、その親を殺して葬式により休ませ、
この街に凶悪な連続殺人鬼が居ると妄想すれば、凶悪な殺人鬼に姿を変えて人を虐殺する。
それが枕返しの悪行。今回もその一環なのだ。『若が一番強い妖怪になれますように……』。誰かが祈ったその願いを叶えているだけ。
だからリクオに姿を変え、妖怪を次々と倒し、満身創痍の身体で強さを誇示し続ける。
しかしだからこそ、この戦いで終わりなのだ。どちらかのリクオが倒れた瞬間、リクオの最強は無くなる。その瞬間に枕返しは消え、再び長い眠りに着く。
枕返しとは、決まった姿や形を持たず、特定周期で流行り病のように現れ、夢や妄想を叶えて、いつの間にか消えていく……そんな妖怪。
なれば尚更。リクオの瞳は怨恨節操に狩られ、どこまでも険しく流移する。
「そうかい? そんなもんはどうだって良いんだがよぉ……好き勝手に俺の下僕をケガさせやがって、もちろん覚悟は……できてるんだよなぁっ!!?」
枕返し、リクオ、その両方。右手に握られ、肩に担がれているのは一振り。
刀身の波紋は乱れ入り、
鮮やかな血色で染まり上がり、
持ち手の瞳までも赤く幻視させる。
赤(あか)い、
紅(あか)い、
朱(あか)い、
血(あか)い、
妖艶(あか)い、
錆付いて(あか)い、
人脂に塗れた(あか)い、
静地と名題された妖刀。
人を、妖怪を、千単位で斬り殺して来た『青江下坂(あおえしもさか)』。
「カッ、そんな怖い顔するなよ総大将。このぐらいで慌ててちゃ、全国統一なんか出来ないぜ?」
枕返しはリクオと同じ顔で、同じ声で、刀の切っ先を『本物』に向けてケラケラと笑う。
「なら、決着を……つけようか!!」
リクオも同じ。枕返しと同じに刀の切っ先を『偽物』に向けて短い金属音を鳴らす。
静か。次動が最後の攻防。互いの距離は二桁メートル弱で、ビリビリとした大気がねじれ山を喰らう。
それをブチ壊し、リクオの後ろで死合のトリガーを引くのは……
「若っ! 今こそ二人で完成させた、あの技を見せる時ですっ!!」
右手を握って親指だけを立て、首をカッ切るポーズをする雪女。
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それが合図。
「「うおぉぉおおぉぉぉぉぉぉッッ!!!」」
二つの咆哮が重なり、地面を蹴り飛ばす体音が重なり、リクオと枕返しは『刀を投げ捨て』、月下の上空で交錯する。
枕将軍「はぁははぁぁぁぁぁッ!! 上を取ったぞぬらりひょん!! 喰らえい、地獄の断頭台ッ!!!」
雪女「わかぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
でーでー でででで♪
オレの闘志が ねじれ山を焦がすー♪ 今日の勝負は 並じゃないぜー♪
リクオ「なんのっ! 火事場のクソぢからぁぁぁぁぁぁっ!!!」
枕返し「なにぃぃぃぃぃぃぃっッ!!?」
他組の勢力に 負けたら最後ー♪ 奴良組が解散に 追い込まれるー♪
従える下僕(とも)の眼差しがー♪ 傷付くたび 倒れるたび 俺を救い出すー♪
雪女「若が地獄の断頭台を返したぁぁぁぁぁっ!!」
リクオ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁッ!! 完成・ぬらりひょんスパァァァァァァァク!!!」
(Kick!)陥没に脅えるー♪
(Chop!)ゆらのおっぱいー♪
さぁお遊びはー ここまでだ!
枕返し「ぐえぇぇぇぇッ!!?」
リクオ「ぬらりひょんスパーク、フィニッシュ!!」
(Attack!)ラスト五秒のー♪
(Fire!)逆転ファイター♪
オレは妖怪 ぬらりひょんー♪
枕返し「ぐはぁっ!? しかし、ただではやられん! 貴様等二人に呪いを掛けてやる! 数ヶ月後を楽しみにして、る……んだな。がくっ」
N・U・R・A・R・I NURARI!
N・U・R・A・R・I NURARI!
3・2・1・・・FUCK!
雪女「終わりましたね若……」
リクオ「ああ、だが俺達の戦いはまだまだこれからだ」
ぬらりひょんの孫 第一部
―完―
そんな戦いが終わってから数ヶ月後。みんなのケガもすっかりと癒え、平凡な生活が戻って来た……かに思われた。変化が訪れたのは暑い夏の日。私と若に掛けられていた呪いが、長い潜伏期間を経て、じっくりと、発病した。
『私がぎゅっぽぎゅっぽしちゃいますからね!』
〜 及川氷麗の剛直 〜
2008年11月17日(月) 18:53:08 Modified by ID:P3EJOw3Z0Q