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作者:柳内たくみ
イラスト:黒獅子
出版社:アルファポリス

本編
接触編
炎龍編
動乱編
総撃編
冥門編

外伝
南海漂流編
黒神の大祭典編
黄昏の竜騎士伝説編
白銀の晶姫編
特地迷宮攻略編

あらすじ

20××年8月、東京・銀座に突然開いた『門』(ゲート)からモンスターや中世ヨーロッパの騎士のような姿をした異世界の軍勢が出現し、多数の民間人を殺傷した。これがいわゆる「銀座事件」である。事件発生から7日後に敵勢力を撃退して異世界側の『門』を占拠した日本政府は、その向こう側に存在するファンタジー世界のような「特別地域」(「特地」)の実態調査と事件の再発防止のために自衛隊を派遣し、特地側の『門』を確保する。年期の入ったオタクであり、銀座事件での活躍(その動機は「このままだと夏の同人誌即売会が中止になってしまう!」というものだったが)により二等陸尉に昇進した伊丹耀司は偵察隊を率いて特地の奥深くへ進出し、そこで炎龍の被害を調査したことがきっかけで3人の美少女(魔法使い、ハイエルフ、亜神)と関わりを持つ。銀座事件の当事者である「帝国」に対して日本政府は補償を求めるが、人権や国際法といった概念を持たない相手との交渉は難航し、『門』のこちら側でも自衛隊の「侵略」に対する反対運動や特地の権益を狙う他国からの干渉などが起きる。一方、自衛隊の橋頭堡の近くにはドラゴンに襲われた村からの避難民達が住み着いたことで、自衛官達との交流を通じて日本(地球)の文明や文化が特地に広まっていく。

登場人物

特別地域
この地の人名は、その者が信仰する神に由来するミドルネームを持つという命名則がある。信仰する神を変えるとミドルネームも変える。
アルヌス
自衛隊協力者・アルヌス協同生活組合幹部
レレイ・ラ・レレーナ
コダ村に住むカトー老師のもとで魔法を学んでいた15歳の少女(3巻以降は16歳)。銃器の原理を独力で理解し、日本語を短期間で習得。ノイマン効果を利用した魔法の開発、自動車運転をマスターするなど頭脳明晰。特地では15歳が成人基準なので、一応「大人」の女性という事になる。基本的に無表情で冷静だが、伊丹に近寄る女性に嫉妬したり、対炎龍戦では饒舌になったりと無感情というわけではない。伊丹が勝手に炎龍退治に行こうとした際などは無言のプレッシャーをかけたりもした。カトーによれば幼少時から病弱な母親の世話をするために働いており、母と再婚した義父からも冷たくされた事から身内であっても「ギブ&テイク」の関係が必要と考えており、自分から他人に甘えたり他人を甘やかしたりという行動がとれない。そのため閉門騒動後の『門』再開通のための作業では「目的を完遂しなければ」と無理のし通しだった。キャラクターのモデルは、日本の著名なロボットアニメに登場する赤い瞳の少女であると『湯煙温泉編』で、表現されている。元々通訳・魔導士など、様々な形で自衛隊側・特地側双方で一目置かれる存在だったが、炎龍討伐メンバー唯一の「帝国生まれのヒト種」であることから帝国内で英雄に祭り上げられ、さらにハーディの思惑によって日本と特地の運命を左右するキーパーソンにまで押し上げられることになる。伊丹に対しては、伊丹が知らずにレレイに対し、特地で婚姻と同義の儀式行為(三日夜(三日三晩続けて同衾)をすることに依って、内縁関係の成立及び結婚したのと同義とされるのだが、とある作戦任務で三日間続けて夜を共に過ごしただけで、レレイは三日夜と同じ意味としてとっている。なお、漫画版では来日前日・利紗宅・湯煙温泉編の3日となっている(内2日は二人きりではないが、それで問題ないのかは不明))をしてしまったがゆえに、自分の事を「伊丹の配偶者」であることを自称しているが、ロゥリィ達からはその話が出るごとに、ことごとくスルーされている。自分の家で伊丹に手作り料理を振舞う(人体実験する)こともあるようで、その度に伊丹の食事の嗜好を研究する学術的な観察日誌をつけていたり、レレイの家にはどう見ても一人で寝るには大きいベッドがさりげなくあったりと、彼女なりに色々と努力しているようである。戦闘時は、地球側の技術を研究利用した画期的な「爆轟」と評される攻撃魔法を使用する。家庭用真鍮製漏斗を魔法で飛翔させ、敵に近接させた上で、上記ノイマン効果魔法でメタルジェットを発生させるというレレイが自ら編み出した成形炸薬弾のような爆裂魔法を駆使する。

用語

国家・地域
地球の国家・地域
日本
20××年8月に『門』が東京・銀座に出現したとされる以外に明確な年代は描かれていないが、本編4巻では尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件や東日本大震災、ウィキリークスの事件が過去に起きている事が示唆されている。この世界の政権は、現実世界の小泉内閣後期→第1次安倍内閣→福田内閣→麻生内閣→民主党内閣(宰相の描写のベースは、細かい描写がないので不明)がベースになっているような描写がなされている。

アメリカ
当初は来日したピニャらの拉致を試みるも、ロゥリィから手痛い反撃を受け失敗。その後は間接的な外交戦術に切り替える。日本には比較的協力的な立場ではあるが、見返りに特地権益の確保を狙っている。特地への派兵は、『門』の大きさや、外国首都の都心に『門』があることから大規模部隊の派兵は困難として事実上断念。日本に火中の栗を拾わせようという政策をとる。

中国
増えすぎた人口を特地に送り込み、資源・食料問題を一気に解決するため、特地に第2の中国を創ろうと画策。日本に左翼政治団体を利用した工作活動を積極的に展開し、『門』の国際共同管理を名目にそれ自体の確保を狙う。物語後半ではレレイを誘拐し、毎年15万人もの中国人民を特地ヘ移住させろと日本政府に対してあからさまな恐喝、脅迫、恫喝、詭弁を弄すなど陰湿な謀略を繰り返す。

露西亜
『門』による資源の獲得で資源大国である自国の国際的な発言力低下を恐れている。米・EUならともかく、中・露軍を特地に入れることに関しては柳田も警戒している。

EU
アメリカに近い立場を取る。

特地の国家・地域
『門』を介して地球と繋がった異世界。ヒト種やエルフ、さらに多種多様な種族が暮らす大陸・ファルマート。「帝国」を中心としていくつかの都市国家が存在している。1年は389.3日で1日は地球より少し短い。地盤が安定しており、火山性のものを除いて地震が滅多に起こらない(カトーは書物でしか知らず。ロウリィも経験したことが無く、地揺れが起きた際には「ハーディの仕業か」と怪しんでいた。発生後はあまりの恐ろしさにプライドの高いピニャも涙ながらに伊丹に同行を願うほど驚いていた)。地球のヨーロッパなどと同様に水質は硬く、入浴剤などを使用しないで洗うとかえって肌や髪が荒れる。そのため自衛隊が設営した入浴設備「アルヌス温泉」は非常に好評。全体的に支配階級や必要とされる職業を除いて識字率や低く、読み書きができない者は「自身を表す簡単な絵」を署名代わりにする。医療水準も庶民のレベルだと乳幼児や妊産婦、の死亡率が高く、傷病者も肺炎や敗血症などに症状を悪化させて亡くなることが多い。そのため、誕生後の数カ月を無事に過ごした赤ん坊には、ナッシダというお祝いを行い命名をするほか、その日を正式な誕生日とする風習がある。

帝国
特地の覇権国家。知られている限りの国家、部族を従属させる唯一の「帝国」であることから国名を持たない。「攻め込んだ国・部族と一旦協定を結び、直後に反故にする」という騙し打ち的な戦略が常套化している(ピニャですら帝国の常套手段と認識しており、「根本的な戦力差が大きすぎる」日本と戦うまでは有効な手段だった。しかし、安全通商条約を結んだイタリカ・アルヌス間で条約を知らないボーゼスが伊丹を暴行してしまったことで、この戦略が絶望的な逆風となってしまう羽目になった(事実知らなかったとしても、帝国の常套手段だと切り返されると反論できず自衛隊のほうが圧倒的に強いので反故にもできない)。かつては共和制の小国だったが戦争で版図を広げ、その過程で一貫した政策を取れる帝政に移行した。中央集権制と封土制が併存し皇帝と元老院が統治している。軍事、風俗は中世ヨーロッパ似だが、歴史、政治制度はローマ帝国に似ている。ヒト種至上主義社会で亜人は差別されていた。侵略戦争が常態化しており、安定しすぎているが故に行き詰り、閉塞感を打破するためにろくな調査を行わないまま異世界(日本)に出兵した結果軍の大半を失い、逆に攻め込まれ存亡の危機におちいる。後に皇太子ゾルザルが謀反を起こし分裂。ピニャを皇太女に任命し、摂政に据えた正統政府勢力側が日本と講和し同盟を結ぶ。なお、この戦争による金銭的賠償額は日本の国家予算1年分を少し超えるという額だったが、それを現地通貨に換算した結果国中の金を放出しても足りないレベルだったため、ピニャは国そのものの死刑宣告だと判断するレベルで絶望した(実際は本当にそんな量の金銀を支払われても困るため、最初から別の便宜を求める予定だった)。戦後は国力の低下を補う目的で日本と正式に同盟国となり、日本に駐日帝国大使館を置くまでになる。

帝都
帝国の首都。人口100万の城砦都市。特地の情報と物資の集積地であるために自衛隊は密かに数か所の活動拠点を置き、更に「悪所」と呼ばれるスラム街にも事務所を置いて情報収集をしていた。

アルヌスの丘→日本国アルヌス州
特地側の『門』が存在する丘。丘とはいってもほぼ平坦。『門』を中心に自衛隊が駐屯地を築いている。以前にも『門』が開いた事があり、そのたびに様々な種族が入ってくる事で特地は様々な種族が溢れた可能性が語られた。自衛隊駐屯後はアルヌス協同生活組合によって難民キャンプが開かれていたが、手続きなどの煩雑な処理を簡略化するために購買を出店した結果、現地人や自衛隊が頻繁に利用するようになる。日本の品が良質だったこともあって需要に対応するために供給を増加させるとさらに需要が増えるという循環を繰り返した結果、商業街のような街に形成され日を追うごとに発展し、巨大な基地都市の様相を呈する事になった。後に帝国より戦後賠償として割譲され日本国領土に編入。アルヌスの『門』、即ち自衛隊駐屯地を中心に半径160キロの範囲が日本国アルヌス州という地方自治体になる(数値的には、兵庫県に近い面積。物語中の日本国都道府県州面積第13位になる)。日本の着物や扇といった伝統作品や化粧品・下着といった他者を突き放すレベルで着飾れる装飾品を一部の貴族が身に着け始めたことで話題が沸騰。貴族間の見栄の張合いもあって、その出所がアルヌスだと判明した後は前述の循環を加速させる一因となり、アルヌスで買い付けられるかが商人らの死活問題というレベルとなっている。閉門騒動後は、日本国と行政上分断されてしまったために、日本国憲法施政下でありながら日本国の司法・行政・立法機能がストップしている状態であり、自衛隊による事実上の半軍政下に置かれている状況である。従って冨田と結婚したボーゼスもあくまで式を挙げて「夫婦になった」という宣誓のみの状態であり、戸籍登録が出来ないため、法律上の夫婦とはまだ認められていない。作品中では、安全保障・外交・入国審査・立法機能を自衛隊が担っており、行政・自治機能を組合が担当、治安維持機能をロゥリィ神殿と自衛隊が担当している状態である。後にアルヌス州民自治会という政治団体のような物が出来、そう遠くない時に州知事選挙が行われる事も語られている。

イタリカ
フォルマル伯爵家の領地。大規模な穀倉地帯であり「帝国」にとっては重要な食料の供給地。先代の領主であるコルトが開明的な考えの持ち主で、本人の「趣味」もあって亜人達の庇護を掲げ領内に幾つかの亜人達の避難民の集落が作られているが、領内の住み分けはハッキリしており、アルヌスほどの自由度はない。亜人種に移住先として与える領地は、人間では居住が難しい不毛の土地ばかりだったが、ヒト種至上主義を掲げる帝国に属している以上、優遇しているように見せるのは危険だった事や、不毛の地と言う印象を利用して盗賊の襲撃を回避し、定住できるようにする為だったのではと思われる。そのため、各集落では収入を確保するための出稼ぎを行っており、フォルマル伯爵家などに(女性の多くはメイドとして)奉公に出ている。帝国内としては珍しい亜人のメイド・使用人がいるが、帝都などに派遣できる者はヒト種に限定される(ヴォーリアバニーやキャットピープルなど高い身体能力を持つ亜人は「護衛・戦闘メイドとしても有用」という部分や「領主である伯爵家だからこそ」とも言える)。諸王国軍敗残兵の盗賊に街を襲撃された際に自衛隊の協力で撃退して以来協力関係にあり、アルヌス協同生活組合に組合食堂やPXの従業員として人材を派遣したりしている。ちなみに、美人揃いだったことで自衛隊の来訪が活発になったのもアルヌスが巨大化した一因である模様。

エルベ藩王国
資源が豊富。炎龍の巣はここを通過する必要があるため、自衛隊戦力の派遣のネックとなっていた。藩主デュランも含めて貨幣として使われる金銀銅以外の価値を知らなかったため、デュランの復権支援の報酬としてそれ以外の採掘権が譲られるという契約が交わされた。

学都
ロンデル学問が盛んな都。学問の神エルランとラーに作られた。

ベルナーゴ神殿
ハーディを祀る神殿。

クナップヌイ
アポクリフと呼ばれる黒い霧が広まりつつある地域。特地側における『門』による悪影響の一つであり、アポクリフに覆われた一帯では草木や微生物などあらゆる生命が完全に死に絶えている。養鳴教授はこの現象を、接近したり離れたりするお互いの世界の時間軸の波が離れようとしている時に『門』で時空間が接続されてしまったが故に離れることができず、お互いの時空間に無理な負荷がかかり、空間に歪(ひずみ)が生じているのではないかと推測している。

組織
アルヌス協同生活組合
元々は、自衛隊が炎龍から逃げてきた一部の人々を保護した際の避難民達が、難民キャンプでの自活のために設立した組織が前身。アルヌスの戦場で遺棄された特地では大変な額の金になる貴重品(翼竜の鱗、蟲獣の甲殻など)を自衛隊の許可の下、自由に収集し、売買した資金で組織を大きくし、特地での最大規模かつ最初の総合商社のような企業的組織にまで発展させた。取り扱う主要品目は、日本から輸入した特地にはそれまで存在しなかった便利な日用品(洋紙・筆記用具などの文房具品・服飾品・酒類・食料品など)や、自衛官向けの土産物(携帯ストラップ・キーホルダー・地図・民芸品など(特地の地図は軍事機密扱いで公開されていない。精度は低いとは言え「特地側の地図」が売られていることに気付いたジャーナリストたちは全員で金を融通し合って購入した))他、日本の飲料や食材を売りにした食堂経営、警備・護衛任務の傭兵派遣、自衛隊への生鮮食料品の納入、日本への特地民芸品の輸出、特に日本のアニメキャラに偶然酷似していた、特地神殿の神像高級ミニチュアレプリカは伊丹が宣伝も兼ねてオークションに出して当初の想定を越えた高値がついた。伊丹がそれらの値踏みをした際、ロウリィの人形に安値をつけて悶着が起きた。実際はディテールも甘く出来が良くなかったためだが数日後、非売品と言いながら「2万円の値札」を付けた状態で伊丹の机の上に飾られていた。そして レレイ発案による特地初の画期的なスーパーマーケットないしはショッピングモール形式の商業施設「PX」の開設、地方支店(帝都、イタリカ、ログナン、デアビスetc.)営業を行うなど、後の日本国アルヌス州を支えるほどの莫大な利益をあげている(支店を開いたのは地球からの産品を求める商人があまりにも集中したため、その分散が目的だった)。雇用形態は日本の方式に準拠しているため、特地側の感覚からすると「度を越したレベル」での好待遇となっているが、メイアなどは当初有給休暇を理解していなかった。発起・後見人は伊丹(ということになっている(伊丹自身は、規則に違反し自分が保護した避難民を上官に自分で面倒を見ろと言われただけで、その管理監督で色々と避難民の便宜を図ってやっていただけの話であったが、いつの間にか地球世界各国の関係者の間で、避難民を自活させ、かつ企業経営まで発展させるプログラムを発案した人物と解釈され、戦災復興の画期的なアイディアの発案者として有名人になっていた))。組合創業幹部はレレイ(総務・事業計画・営業担当)、ロゥリィ(祭祀・宗教・治安維持担当)、テュカ(農林産業・都市計画担当)、カトー(児童教育担当。組合顧問)。後に傭兵部門統括兼都市計画補佐の中堅幹部としてヤオが加わる(各支店との往復を行う隊商を護衛するために雇われた傭兵たちは大半は裏の無い者だが、アルヌスを攻めた元・帝国兵や諸王国連合兵の生き残りも多い。それらも大抵の者は単に仕事の口として来ただけだが、中には単に素行が悪いだけから、意図的に送りこまれた間諜まで存在している)、(アルヌスは、自衛隊が実効支配し、後に日本国領に正式になるため、日本国憲法が適用される。従って、伊丹が形式上持つヤオの奴隷身分はアルヌス内では無効になる)。

アルヌス州民自治会
閉門騒動後、規模の大きくなったアルヌス州で、住民の利益を代弁する団体で、非組合系の商人で構成された組織。第2のアルヌス協同生活組合とも言われている。代表者はディアボ。

帝権擁護委員部『オプリーチニキ』
皇太子となったゾルザルが設置した組織。帝権干犯(つまりゾルザルに対して不満を持つ)した人間を投獄、弾圧する。いわば旧ソ連のNKVDのような物。部員はコボルトを象った兜を被り、箒を携帯している(裏切り者にコボルトのように噛み付き、国から掃き出すという意思の象徴)ため、民衆からは『掃除夫』と卑称されている。その名称はロシア帝国にかつて実在した皇帝分割資産部と同一で、こちらの部員は犬の頭と箒を馬の鞍に下げていた。その意味するところは同じ。

特殊作戦群
2004年に設立された実在する自衛隊の特殊部隊。有名な米国のグリーンベレー・デルタフォースやロシアのスペツナズに相当する部隊である。対テロ・ゲリラ作戦を主眼に置いた運用がなされているが、劇中では特地派遣によって初めて隊員が他国における偵察活動や特殊行動を行うことになる。かつて伊丹が所属していた影響で所謂オタク趣味が広まっており、隊員たちのコードネームや作戦名および作戦行動などは伊丹が布教したゲーム(彼らのコードネームの由来は、「著名な伝奇活ビジュアルノベル」と思しき作品を伊丹が布教した事に依ってつけられたことが、単行本第1巻で語られている。コードネームの由来は各人の名前と思われる)をモデルにしている。作戦行動は「ツーマンセル」で行われ、作中では指揮者を「マスター」、作戦行動者を「サーヴァント」と呼称するルビがふられている。対外的には勿論の事、自衛隊内、防衛省内でもその陣容や任務内容が公的に全く公開されておらず、完全に極秘な特殊部隊であり、作者も巻末で、この特殊作戦群の描写だけは完全なフィクションで、「おそらくこんな事をやっている組織だろう」という経験上の想像で描写していると語っている。

リンドン
派特地魔法学学派の一派。戦闘魔法を研究する学派。物語内で知られている導師号所有者は、レレイの師であるカトーと、レレイのみ。特地において、戦争で魔法を兵科として活用することは、かなり昔に廃れつつあった。これは特地における他の兵科の武器兵器類や用兵術が特地の文化水準で相応に進歩したからである。大掛かりな攻撃魔法を行う際には相応の行動時間が必要とされ、機動的な速応戦術に向かないため以降戦闘魔法はもっぱら一般兵科の攻撃補佐的な用途にしか使用されなくなった。これが自衛隊が特地に来るまでの特地内での戦闘魔法に関する一般的な常識であったが、伊丹がレレイに対炎龍戦で見せた自衛隊の戦闘手段の観察(伊丹は、対炎龍戦で、C4爆薬トラップを設置した際、トラップの周りに破壊効果を増大させるため、辺りに散乱していた剣や槍などの朽ちたガラクタをトラップ周辺に敷き詰めた。レレイはこれを爆発の威力でガラクタを吹き飛ばして破壊力を増すものだという事を察知する)がきっかけで、科学技術的概念が魔法学にもたらされ、レレイの研究によって効果的な戦闘魔法として開花する。通常、特地のそれまでの常識では、大きな破壊力を持つ攻撃魔法は、詠唱に時間がかかり、かつ詠唱中の攻撃方向の変更が難しく、移動物体に対しての直撃効果が得られにくい物であった。そこでレレイは自衛隊の成型炸薬式兵器の原理を独自に解析し、日用雑貨店ならどこでも売っている金属製の漏斗に予め魔法を臨界にした状態で仕込ませた上で、日本のリアルロボットアニメで表現される脳波感応型無線誘導兵器のように飛翔させ、それを敵に近接させた瞬間に漏斗を爆裂魔法で吹き飛ばし、ノイマン効果におけるメタルジェット現象を得るという手法を考えついた。この魔法の実現化によって、レレイやカトー達リンドン派の勇名を再び特地に轟かすことになる。

エムロイ
教団神官神官服は、基本的に黒を基調とした服で年齢が若いほど服に着くフリルの数が多くなり、また、逆に歳をとるごとにフリルの数が減っていき老齢になると、フリルの無いすっきりした感じの服になる他、ハルバートを必ず携えている(大抵の神官は自身の体力に準じたサイズ・重量のハルバートで、ロウリィほど巨大なモノを持っている者は少ない。ニーナは少々見栄を張って大きなモノを使っていた様だ)。

ロゥ・シタン
エムロイ教団内における秘密結社で、所謂ロゥリィの熱狂的なファンクラブ的存在でありエムロイ神官団の中でもかなりの割合を占めているとも言われている。この『ロゥ・シタン』はつい最近まで頑なに存在を隠し続けていた。

特地の種族
ヒト種
特地側の人類。『門』を通じて特地に漂着した種族の中では一番新しい種族と云われており、一番勢力があり人口が最も多い種族。元は遥かな昔に『門』を通じて一国家ごと漂着した人々の末裔。

ルルド
土地を持たない流浪のヒト種であり、帝国に服属しない所謂「まつろわぬ民」。大陸全体に分散して存在しているが、帝国内では近年、定住生活を余儀なくされている。レレイはこの部族の出身。

亜人
ヒト種の主観で「ヒト種と交配可能」で、「ヒト種と交流可能な文化水準と知性」を持ち、「ヒト種の意匠を一部に持つ知的生物」の総称。戦闘力や体力・生命力(デリラは柳田との戦闘で腰骨にかなりの銃弾を喰らい、手術でチタンプレートなどを埋め込む補強を受けたが、足を負傷しただけの柳田よりずっと早く回復した)もち、ヒト種の「魔法」に対して「精霊魔法」を使う種族も存在するなど、それぞれが種族特有の優れた能力を持つ部分もあるが、ヒト種と違って狩猟や採集によって生活しているためか種族それぞれの数は少ない。種族によってはヒト種や他種族との混血化も進んでいる(漫画版ではヒト種との混血具合によって獣人系だと「体毛分布の多寡or頭髪の有無など」が描かれているほか、リニエの様に「外見的にはヒト種と区別できない者」もいる)。普通に暮らしていたところをヒト種(特に帝国)などに奴隷として捕らわれる者も多く、こうした場合、耳など二か所以上ある(そして身体機能的には問題のない)種族的特徴部分の片方を切りおとされていることが多い。オークやオーガ、ゴブリンもヒトの意匠を持つが、知性が乏しく凶暴であるため、亜人には含まれず、「怪異」(所謂化け物、モンスター)の範疇で認識されている。

エルフ
ファンタジーに出てくるエルフに似た種族。特地における最古参の種族で、一万 - 二万年前に開いた『門』によって、特地に呼び込まれた。精霊種エルフは、あまり他の種族との交流を持つことを好まず結界を張った森に村を造って住んでいる事が多く、テュカの父の様に積極的に他の種族との交流を持つことは珍しいとされている。なお、旅をすることはあっても住処である森へは帰還するという性質がある。また、自分たち精霊種エルフは他のエルフより優れているという優越意識を持っており、普通のエルフを森エルフ、ダークエルフを土エルフと蔑んだ呼び方をしている。非常に長命な種族で、成長はするが、不老であるため親子ともに容姿が若い。従って正確な寿命はエルフたち本人にもわからず、エルフが特地に来た頃の「長老」と呼ばれる地位のエルフが物語中にも存命であるため、一説には無限とも言われる。死因は病死か事故死がほとんどで、長寿に飽いた者が自らを森の苗床としてしまう例すらある。森の守護者と呼ばれている。とにかく寿命が長いために、どのような技も技術も普通にやっていればいずれは完全に習得できるという感覚があるため、ヒト種のように物事に執着したり一生懸命に練習するという習慣がなく、むしろ物事に執着することは良くない習慣であるという文化がある。実際、色々な技や技術に非常に長けているが、自らは「頑張って練習した」「努力して身につけた」という感覚がまったくない。そういった文化であるため、ヒト種に恋をし、ヒト種の習慣を理解しているテュカは一族の中でもかなり特殊であると思われている。

ダークエルフ
本作品に登場するダークエルフは、一般的なファンタジー作品のダークエルフに見られる「闇の使い」や「暗黒面の妖精」といった類のものではなく、単に「褐色の肌をしたエルフ」という程度のもので、悪の存在というわけでは全く無い。ファンタジーに出てくるダークエルフに似た種族。エルフと違い褐色の肌を持つ。エルフほどではないが、ダークエルフも非常に寿命が長い種族である。エルフ種との種族的な違いとして、エルフ種よりも若干寿命が短い点、時として目的を果たすためならば相手に恨まれるような狡猾な知略も良しとする武人的な性格と文化を持ち、一方で自殺は逃避であるとして贖罪とは認めないなど非常に義理堅い戦闘種族的なところが挙げられるが、未婚者は性的には少々奔放だったり、ボンテージ風の皮鎧を纏うなど以外にエルフ種との違いはあまり無い。

ドワーフ
ファンタジーに出てくるドワーフに似た種族。小柄だが剛腕であり、大工や鍛冶などの技術に長けた職人種族。閉門騒動後に日本からの輸入が不可能になった、特地でも美味な高級酒として非常に人気のあるウィスキーを再現醸造するために尽力する。

ヴォーリアバニー(首狩り兎)
ウサギに似た耳を持つ亜人。アマゾネスのような生態系をしている。オスが生まれる確率が非常に低いため、他種族のオスと積極的に交わる一方、同族同士から生まれた純血のメスを尊び、女王として戴く風習がある。性質上「淫乱」とされているが、実際はつがいとなって別れるまでは他のオスに身を許すという訳ではないようである。非常に戦闘能力に長けた狩猟種族であるが、現在は帝国ゾルザル派との紛争に敗北した影響で、かなりの数がその容姿から愛玩奴隷として扱われ特地各地に散らばってしまい、部族コミュニティとしては崩壊した種族で、他の種族のように種族集落を持っていない離散種族となっている。ゾルザル派と紛争当時の部族長がテューレであった。

キャットピープル
猫に似た亜人。高い身体能力を持つ。言葉の語尾は、お約束通りの「〜にゃ」と喋るのが特徴。女性はその容姿からヒト種からは性的欲望の対象として見られる事が多いため、ヒト種とは一つ距離を置くような態度をとる種族だが、一旦好意が深まってしまうと公衆面前の前でも好意の対象にまとわり付いて離れないという異性に対する独占欲が非常に強い種族で、倉田はペルシアと交際中にそのことを知ってか知らずか地雷を踏んでしまい、ペルシアから手酷い愛の制裁を受けている。漫画版では、ペルシアが「猫転送装置」にがっつりはまってしまい、動けなくなっていた(自分でも何故かは分からず、結界と誤解していた)。

メデュサ
ギリシャ神話のメドゥーサによく似た種族。蛇のような触手状の頭髪を使い人間の精気を吸い取ることで栄養を摂取し、その際には相手に例えようもないぐらいの快楽を与え、その記憶すら読むことができる。首を切られても頭部のみで生存することができ、頭髪で移動する事も可能で、その際に他の人間の精気を吸収することで首から以下胴体・四肢を再生させることができる。その時、吸収した精気の量で身体的に成長してしまう場合がある。このような怪異に近い性質を持つ知的種族であるため、特地では非常に忌諱され迫害された時代があり 現在ではその数も非常に少なく、絶滅危惧種族となっている。前述の生態もあって首から下は付属品的な感覚があるのか、羞恥心が薄い。

龍人族
青い肌と頭部に二本の角、腰部には尻尾、背中には皮膜状の翼があり飛行能力がある。肩や腰、肘、尻尾など各部に鱗(膝から下はブーツの様な鱗と蹴爪状の足)がある。作中の描写では龍を使役するのに優れた一面を見せている。イラストや漫画版では氏族や家系によるのか、差異のある刺青を施している。本作で種族として具体的に登場するのはジゼルのみであるが、ジゼルは既に亜神であるため種族特有の具体的な描写は特に無い。いくつか垣間見えるものとしては、ジゼルの本質の性格や、アルヌス食堂でコキ使われている時にはるか昔に死んだ優しかった母の事を思い出して涙する場面があるため、種族のその名称に比して凶暴な種族というわけではないようである。ただ、爬虫類系の亜人は冷徹なまなざしで見つめられるのがツボらしく、精霊魔法の影響でクレバーになった伊丹に対して「ちょっと踏んでくれないか」と頼んでいた。

六肢族
蟻を祖先に持つと言われ、黒い肌に二対四本の腕と高い臂力を持つ。剣と弓を同時に扱える優れた戦闘力を持つが、その分思慮に欠けると評価されている。

アクアス族
ファンタジーに出てくるマーメイドに似た種族。女性は上半身が人間で下半身が魚という姿だが、男性は水中で生活できる事を除けばヒト種と外見上の差異は殆どない。関西弁のようなニュアンスを持つ方言の特地語を話す。その種族の性質の通り、主に小規模漁業を生業として生活している。水中と大気中の両方で活動できる両生亜人であるが、多種族との文化交流の都合上、沿岸部に集落を構え生活をしている。そういった種族なので何かと不便も多く、特に内陸で産出される資源(木材など)の入手が難しかったり、金属資源が塩害のために活用しにくかったり、アクアス族が種族的に大好物である酒類の製造入手が困難であったりと、これらの事由のために種族特有の主だった産業が存在せず、亜人種としては慎ましい生活をおくる種族であった。しかし、ケミィたちの村は伊丹との交流のおかげで、伊丹がアクアス族に閉門騒動の影響で入手が不可能になった日本人に人気のある保存性の高い水産加工食品(かまぼこ・干物)の製造法を伝授し、効率的な漁獲方法をアドバイスしたおかげで、水産加工品を協同生活組合を通じて日本国アルヌス州へ輸出する目処を付けることができ、今後の種族の産業展望に期待が持てるようになった。

ケンタウロス族
人間の上半身に馬の胴体をもつ種族。典型的な狩猟民族であり、欲しい物は「奪ってでも手に入れる」意見を通すには「戦って勝つ」を前提としているマッチョ種族。

キュクロプス単眼(一つ目)の巨人種。
見た目は怪異と見まごうばかりながら、朴訥で温和な種族。作中では外伝4巻にフォルマル伯爵家のメイド・メイフラワーが登場している。

その他
物語中には他に、クラゲのような軟体生物の意匠を持つ種族、キャットピープル以外にもワーウルフのような犬系獣人種族、ハーピー、セイレーンのような鳥人種族、ピクシーのような小人型精霊種族など、おおよそファンタジーに登場するような様々な種族が存在しており、漫画版では更に虎やトカゲ、山羊や鹿など草食動物の意匠をもつ種族や淡水域の河に棲む両生類系の種族(デュランには「河の民」と呼ばれる)と更に多様な種族が描かれている。

ハリョ族
異種族間に生まれた混血児で構成される民族。混血児という出自ゆえ、どちらの親の種族にも受け入れられなかった者たちが身を寄せ合って作り上げた。怪異扱いされている種族(オーク、オーガー、ゴブリン)との混血も存在し、けして知能も低くないなど、偏見を抜きにすれば侮れない能力を持つ。もっとも、ヴォーリアバニーやキャットピープルのようにヒト種との混血が進んでも特に混血児を迫害するなど起こっていない種族も存在するため、親が亡くなるかした後「ヒト種側から迫害された」パターンが多いと思われる。だが、ヒト種の中でもルルドの民にはごく普通に受け入れられている者たちもいる。他の種族が『門』によって異世界からやってきたのに対し、自分たちは特地で生まれた種族であるという理由から、「自分たちこそ世界を支配する正統な権利を持つ」という劣等感からの優生思想を持つに至った。

亜神
神官の中から神の使いとして神託を受け、選ばれた存在。首を切り落とされようとも、細胞の一片になっても死なず、いくら食べても太らず、また痩せもせず、痘痕や、生まれつきの痣なども一切無く、文字通り完全無欠の不死不変の肉体と超人的な身体能力を持つ。唯一人間と異なる点は、子供を宿すことが出来ない(但し、これは固定された年齢故であるものか普遍的な亜神の性質であるかは不明)。このため、肉体を物理的に解体し、それらの部位を別々の場所に幽閉する方法も存在し、ジゼルによると何体かの亜神がその方法で陞神するまで閉じ込められたり、プロメテウスよろしく「獣に腸を喰われ続ける刑罰」を受けた例がある(かつて亜神となったばかりのロゥリィや「禍つ神」と呼ばれたほど素行に問題のあった者が受けた)。一般的に1000年程で肉体を捨て、陞神し 事象を司る精神体としての神(正神)となる。亜神が正神に昇神する際、他の神がまだ司どっていない事象を選択するか、信仰している神の司っている事象の一部を引き継ぎ、その事象を司る神になることができる(但し、前述ワレハルンのように例外も存在する)亜神は特地では畏怖される存在で、ヒト種がなるのは稀。外見は亜神になった時の姿で固定され、幾ら時を経ても外見が老いることは無い。作中では十二使徒と呼ばれ、12人いることが示唆されているが、本編に登場するのはロゥリィとジゼルのみ。外伝にて、メイベル・ワレハルン・モーター・グランハムという亜神が登場し、物語中確認されている亜神はこれら6柱のみであることが語られている。日本人が初めて遭遇した亜神がロゥリィであったために、神道的信仰の下地を持つ自衛官からは全然恐れられてはおらず、目の前で柏手を打たれたり、特地では「聖下」の敬称で呼ばれる存在にもかかわらず、呼び捨てで一緒に酒を飲んで酔っ払ってたりと親しみを持って接せられており、イタリカ防衛戦に参加した者に配布される作戦参加章ワッペンにはハルバートを持ったロゥリィの姿がデザイン化されており、マスコット的な意味でも愛されているが、地球での日本以外の各国で、特に一神教(キリスト教・イスラム教・ユダヤ教等)を国教としている国からは大変な反発があり、特地のこれらの亜神や正神を「神」と呼称することを酷く忌諱しており、これらの国々では人知外の特殊な生命体として認識されている。特地では逆に一神教の考え方がタブーで、過去に一神教を信仰する新興宗教組織と大きな戦争があり、一神教信仰の考え方が廃れたという事が語られている。

その他の生物
ゴブリン
小柄な亜人。野蛮な人間をゴブリンに例えられることから特地での評価はあまり高くない。後述のオーク、オーガーとともに特地側の軍では消耗品扱いの先鋒として投入される。敵味方の区別も出来ないが、それゆえに無差別な殺戮を行う蹂躙戦には効果を発揮する。

オーク、トロル
巨大な獣人。棍棒の一振りで人間を押し潰すほどの力を持つ。上記ゴブリン以上に知的水準が非常に低く、「怪異使い」という特別な技能を持った技能者でなければまともに制御できない凶暴な種族。従って特地では亜人ではなく、怪異(化け物・モンスター)の扱いを受けている。上記ゴブリンと共に銀座事件で日本進攻の尖兵として暴虐の限りを尽くした種族で、事件後、特地のことをまだよく知らなかった日本政府は政治的配慮でこれら逮捕者(捕虜)を知的生物とはみなさずに世界各国へ隠密裏に研究生物として引き渡していた。

眼鏡犬(スコープドッグ)
自衛隊の機動化装甲兵器や、重火器に対抗するため、ゾルザル派軍が用意した重装甲化ジャイアントオーガーの自衛隊内でのコードネーム。その名称は、その容姿からきている。ジャイアントオーガーに分厚い鉄板でできた箱型の鎧を着せ、分厚い超大型の盾と、神殿の大理石柱のような特大の棍棒を持ち、スリットの開いたフェイスガード付きのお椀形の兜を被らせたその姿は、日本でかつて人気のあったリアルロボットアニメの人型機動兵器に酷似しており、そのアニメの主人公が乗っていた人型機動兵器の名称を日本語読みにしたものをコードネームとして使用している。対人用の小火器は通じないため、思いついたゾルザルは自画自賛していたが、帝国の歴史上でも既に試された手法であり、いかに知能が低いとはいえ怪異が「自分の方が強い」と気付けばすぐに逆らうようになると、ピニャはダメだししていた。

古代龍
所謂ドラゴン。四肢とは別に背中に翼を持つ。飛行能力と、ダイヤモンドのモース硬度10に継ぐ9の硬さを持ちながらタングステンの7分の1の軽さしかない鱗で全身を覆っている。強固な鱗は特地では貴重で高額で取引される(古代龍クラスになると脱皮で剥がれた鱗を拾うだけでも命懸け)。その防御力は空飛ぶ戦車と喩えられ、特地派遣隊の装備する自動小銃や12.7mm重機関銃では効果はなく、対戦車ミサイルや砲撃でしかダメージを与えられない。また、初見でパンツァーファウストを回避しようとするなど油断しない程度の知力を備えている。さらに機動性は「速力はF-4と同等以上」「旋回半径はWW1の複葉機以下」「機動力はハリアーか戦闘ヘリ並」という、平たく言えば優秀なAIで統括された軍事兵器の複合体とでも言うべき生物。これまでに数多くの勇者が退治しようとしてきたが、すべて失敗している。この戦力を逆説的にいえば、自衛隊の戦力は「古代龍の能力を部分的に再現・量産した武器」ということになる。長い休眠期をもつ反面、活動期に入ると野生動物だけではなくヒト種や亜人を襲って食料とするため一度暴れだせば、特地の既存の戦力、技術力では手がつけらない。そのため特地では天災と同義であり、対応策としては住処を捨てて逃げることしかない。

飛龍
小型の龍種。古代龍程ではないが、翼龍よりも強固な鱗をもち、発声は出来ないながら人語を解する知能をもつ。作中に登場したのはジゼルが従えている飛龍、「イフリ」と「エフリ」だが、幼少時のトラウマから、精霊魔法無しでは龍に乗ろうとしない伊丹をロープで縛りあげて連れていくほど賢い。

翼龍
所謂ワイバーン、。ヒト種によって飼い慣らされて竜騎兵として使役されている。知能は低いがその鱗は高い防御力を持つ。柔らかい腹部ならば12.7mmの徹甲弾でどうにか貫通できるが、7.62mm小銃弾は寄せ付けない。鱗や爪は武具の材料として用いられる。レレイの言によると、強さの等級は「古代龍(炎龍、水龍)>新生龍=成長した亜龍>飛龍」でその下に翼龍となる。アルヌス攻防戦で撃ち落とされた翼龍はそのまま放置され、価値を知らない自衛官たちからは練習用の的扱いされていた。そのため、鱗や牙は難民に無償で譲渡され、生活組合の基盤となった。

ダー
特地に生息する中でも有数の性質の悪い怪異。普段はヒト種や亜人種の幼気な子供に擬態しており、人語も解する。その姿でヒトや亜人の集団に紛れ込み、急病や怪我を装って心配したヒト・亜人が集まってくると、突如子供から変態して巨大化し、捕食するという恐るべき生態を持つ。犬笛のような特定の周波数の音波で擬態を遠隔地から任意に解除できる性質を持っているため、ゾルザル派軍はこの怪異を「怪異使い」によって利用し、自衛官の人権意識を利用したブービートラップとしてゲリラ作戦に投入した。その際、マスコミ関係者が犠牲になり、更にはアルヌス避難民収容施設も多大な被害を被っている。栗林はこの怪異に対しナイフと格闘術だけで対峙し 勝利するという功績を挙げているが、アルヌス避難民収容施設にてダーが大量に擬態を解除し猛威を振るった時は、第3偵察隊をもってしても苦戦する恐ろしさを見せつけた。

グリフォン(鷲獅子、翼獅子)
レレイやピニャの語る、日本という強大な戦力を持つ国に戦争を仕掛けてしまった事態の例えとして登場した。古代龍ほどではないが、特地でも「怒らせてはいけない部類」の筆頭的生き物。

鸚鵡鳩(オウムバト)
地球世界の鳩に似た習性を持つ特地の鳥類。鳩と同様に帰巣本能を持っている。パレスティー家は、富田の助言によりこの習性を利用した地球で言うところの「伝書鳩通信」を事業化し、成功させた。

特地の用語
『門(ゲート)』
銀座と特地を結ぶ、文字通りの『門』。SF用語で言うところの「異次元ゲート」「次元回廊」の類に相当すると評されている。ハーディが作り出し、帝国の魔導士が石造りの魔法建造物によって固定した。『門』自体は一見して黒い穴にしか見えず、通り抜けるか首を突っ込んで覗きこまない限り向こう側を確認できない。『門』の最大の特徴として、同じ世界に複数の『門』を開けないことが挙げられる。その理由として、二つの円の接点は、常に一点でしかないという理由が語られている。また、かつて開かれた『門』は固定されず一定の期間で自然に閉じていたが、作中後半において、帝国が異世界同士を繋げた『門』を固定した事による反動が、両方の世界に地震や異常気象など様々な悪影響を及ぼしていることが判明したため、一旦封鎖される。その後後述の『穿門法』に従い、レレイの指揮の下「新たな門」の建設が進められるがレディの妨害で完成寸前に破壊され、進退窮まった状況に前述の異常気象で降り出した雪と氷を使って作り上げた『門』によって再開通した日本とは2年半の時差が発生していた(特地では1年半だったが、日本では4年の月日が過ぎていた。なお、伊丹本人を媒介にしたため『門』の開通先は某所だった)。

穿門法
『門』を開くための魔法技術。外伝では、これをめぐる騒動も描かれる。レレイがハーディより、あるアイテムとしてもらった超高度な魔法技術である。とはいえ、レレイにしか扱えない魔法というわけではなく、マニュアルがあるようで、方法さえ熟知していれば第三者でも使用可能。レレイは、本来超高度なその魔法を簡単に使えるアイテムとして唯一ハーディより授かっている。作中でも、この技術をもつレレイは多くの勢力に狙われたため、『門』の開通・閉鎖技術の確立後には権限をベルナーゴ神殿に譲渡する予定。本編において、地球の学者の物理学的見解では、一度閉鎖した『門』を再び同じ場所に開くためには、異世界双方に超高純度の特地で産出された結晶物質を設置することで、再び同じ世界に結合させることが可能であることが語られている。但しこの際どうしても異世界間で大きな時差が生じてしまう可能性のあることが憂慮されていたが、閉門騒動後に特地側での研究で「『門』を潜ろうとする第三者の非常に強い情念で、行きたい時と場所を念ずることで、時差を可能な限り縮小させて、同じ世界に『門』を開くことができる」という事が実証されている。他、外伝では、レレイの研究成果の一つとして、元来空間転移の性質を持つ穿門法の性質を利用して、近距離の空間転移を利用して相手を攻撃する魔法などの開発にも成功している。

魔法
特地の特殊な技術。レレイの解説を地球の物理学的見解で解釈した養鳴教授によると、4次元以上の高次元世界から、3次元世界へ何らかの干渉を行い(法理と虚理。魔力とイメージ)、3次元世界の事象(現理。所謂、物理法則)を操作する事のできる技術であろうとの事。実際に養鳴教授や他の学者たちはレレイがデモンストレーションで実演した、魔法という地球では想像だにできない現象をその眼で見て、大変驚愕している。これらの研究はロンデルという特地における学術都市で盛んに行われている。ロンデルではこれを学ぶ者は「学徒」と呼ばれ、地球同様、学士、修士、博士の学位がある。このさらに上に、最上位の「導師」があり、大変な難関として知られる。レレイによると、特地では「学士号」以上の学位を持つものを魔法の使用が出来る出来ないに関わらず、一般的に「賢者」と呼ばれるため、日本の大学校という巨大な学門機関で学び、卒業したものも「賢者」と呼んで差し支えないとの事(大学卒業者は「学士」の学位を持つため)であるため、新設の三流大学を卒業した伊丹も「賢者」ということになるそうである。レレイは、この魔法技術と日本で購入した文献などで得た科学技術を融合させると非常に革命的な技術になると気づくが、同時に非常に危険な技術であることにも気づき、自分の必要最低限の研究成果以外は公開しないように心がけている。レレイはこの科学技術を応用したノイマン効果攻撃魔法の成果をロンデル学会で発表し、導師号の称号を特地最年少の記録で習得している。そしてこの結果が外伝にて一騒動起こすことになる。

精霊魔法
主にヒト種以外の亜人(エルフやセイレーンなど)が使用する魔法だが、精霊魔法は、ヒト種の魔導師が限定的なのに対して、エルフやセイレーンなど精霊魔法を使える種族は多少の優劣はあってもほぼ全ての者が使えるほか、ヒト種にも使える者が存在する。基本的に精霊と呼ばれる不可視の存在と交感し、なんらかの取引が成立することで行使される。人間の持つ恐怖心などを抑えることも出来るが、それらの魔法を解除した際には感情の動きが少々大袈裟になるほか、ある種の薬物を併用すると、生命の危険を認識できなくなるなどの副作用がある。

その他
エール
特地で一般的に愛飲されるアルコール飲料の一種。どのような成分で醸造されているかは物語中で具体的に明記されていない。実在するアルコール飲料としてのエールとはビールの一種で、現在良く飲料される泡立つ低温長時間発酵のビールの事を「ラガー」と言い、対して常温上面発酵させたあまり泡立たないビールの事をエールと言う。

大祭典
閉門騒動から10ヵ月後に企画・開催された、日本国アルヌス州での大規模カーニバルの事。元々はボーゼスと富田の間に出来た子、「舞」のナッシダ(生後数ヶ月に行われる入信式。その子が入信する神の神殿に行き、ここで正式な名前を与えられて公に公表される。特地ではこの日を公式な誕生日とする習慣がある。)と呼ばれる「特地版七五三」と両人の結婚式を兼ねた式典であったが、そこに自衛隊の福利厚生(つまり娯楽)計画としての駐屯地祭と、更ににロゥリィによる亜神(特地神)の神殿誘致計画、帝国の炎龍退治功労者受勲式など諸々の式典やイベントがごちゃまぜで相乗りした結果、組合や他団体、宗教などを巻き込んだ超巨大規模の祭典に計画が発展し開催された。その内容もロゥリィのコネで、特地亜神全員がナッシダ儀式に招聘され、両人の結婚式祭司をロゥリィが勤めるといった時点で、特地の歴史上かつて無いほどの驚愕すべき歴史的事態であり、当初は1000人規模の参加人数を予定していた催しであったが、最終的に参加人数が10万人規模に膨れ上がる大祭典となった。実行委員は自衛隊側が江田島・伊丹、組合側がレレイ・テュカ・ロウリィ・ヤオ、非組合側(アルヌス州自治会)がディアボ。実行委員長は江田島が務めた。

棒倒し
防衛大学で開校祭に行われる実在する競技。防衛大学での名物競技で、旧軍時代から続く教練の一環として行われていたものである。本作では、大祭典の自衛隊側展示アトラクションとして企画されていたが、グランハムの眷属、ユエルが希望する伊丹との力比べの勝負と、メイベルとロゥリィの因縁の対決の決着方法の代案として、江田島がこの競技で決着をつける様に提案した。江田島はこれを利用して一般参加者を募り、亜神と、眷属をリーダーとする大祭典メインイベント競技として成立させてしまった。大会商品は、富田の花嫁のボーゼスで、勝った方がボーゼスを持ち帰れるとなっている(実際は、パレスティ公爵が家に連れて帰る権利を得るという万が一の事態に対処した江田島の配慮である)チームは、ロゥリィ・伊丹・狭間陸将率いるお馴染み伊丹関係者・自衛官・アルヌス住民・ピニャ配下の騎士団で構成された「ボーゼス結婚賛成死守チーム(黒軍)」と、メイベル・ユエル率いる帝国貴族・一部エムロイ教団員で構成された「ボーゼス結婚反対・やっかみ・嫉妬・ロゥリィ恐怖克服チーム(蒼軍)」に分かれて、壮絶な競技が展開され、特地の歴史に残る競技となった。ルールは肉弾戦のみ、魔法・武器に類する物の使用は禁止で、それ以外では棒を倒すためにはどのような方法を使用しても良い。本来は女性と格闘技経験者は参加できないが、その項目は今回は除外され、腕に覚えのある貴族女性や、ピニャ、ヴィフィータ、栗林も参加している。

謄写版印刷
特地において、コピー機のトナーやコピー上質紙等が閉門によって補給できなくなり貴重品となってしまったため、非常に初歩的な量産印刷方式である謄写版印刷機と、わら半紙の製造法を自衛隊がアルヌスのドワーフ職人に伝授。特地初の量産印刷技術となる。謄写版印刷方式とは、孔版印刷の一種で、その発展型が現在のスクリーン印刷として知られる。いわゆる一般的に知られるところの「プリントゴッコ」や、一昔前の学校でテストなどのガリ版配布プリントとして使われていた技術である。この印刷技術で大祭典のカタログを伊丹達は大量に印刷製本し、特地の関係者に配布したのである。かくして帝国では外国領となってしまったアルヌスの大祭典へ参加する帝国民への旅券発行が必要になるわけであるが、帝国では量産印刷技術が存在せず手書きで旅券を発給していたがために、大祭典に参加したい国民の旅券発給予定数が万単位となってしまいピニャ達はパニックに陥っていた。そこへ菅原が大祭典のカタログをピニャ達に持ってきたところ、カタログ印刷の秘密を問い、それが謄写版印刷技術の成せる業と知ったピニャは、旅券発給のために謄写版印刷技術を提供しろと文字通り半泣きで泣き付いた。菅原としてはアジア某国の技術を提供しても礼も言わない連中に対する外務省官僚特有のトラウマから提供を渋っていたが、ピニャの必死な半泣きパワーに押され、謄写版技術を提供してしまう。これが後に日本に対してあまり良いとこなしであった帝国初の日本に対する外交交渉勝利としてピニャの地位を高める事になり、後のピニャの回想録で「日本に対する交渉の仕方に目覚めさせた事件」と言わせてしまう事になる。余談ではあるが、閉門によって各種消耗品同様に補給できなくなったガソリンを始めとする燃料を効率的に確保するための大型製油設備の開発も難航し、鉄パイプひとつとっても特地と地球に存在する「技術差」を痛感する事となった。また、米の備蓄という日本人特有の問題(特地で一般的に栽培されているのはタイ米に代表される「長粒種」で日本米の様な「短粒種」は確認されていない)に関しても、生育サンプルとして持ち込まれていた種もみで現地生産する計画が提案されたが、実家が農家だという幹部自衛官からは「農薬や肥料という概念のない特地では病害虫の被害を抑えるのは難しく、想定した生産量は見込めない」とダメだしされた(また、トラクターや田植え機などの農耕用機器もないことから狭間陸将は「隊員たちが総出で農作業に勤しんでいる状況」を想像してしまい、それは困ると考え直した。その後隊員からアイデアを募集した際に奴隷を買い集め、「将来的には耕した土地を与えるという形で雇用する」という物があったが、却下された)。

特地側の特種な武器・兵器・魔法
血剣ディーヴァ
太古よりフォーン家の女性の体内に生成される光神ズフムートより賜った秘宝剣。この剣には、ズフムートの持つ神力「秩序」を司る権能があり、古の大国エデンは、この剣の力を用いて、平定されたという伝説がある。この剣は、王家の縁者しか所持する事が出来ず、また剣に「鞘」がないために耐久性が低く、早期に朽ち果ててしまう。従って、必要になる都度にフォーン家の女性体内から抜き出す必要があり、しかもこの剣は人間の心臓と血管をその素材として造成されるために、抜き出された人間は必ず死んでしまう。そのためフォーン家の人間(特に女性)の立場から見れば、呪われた剣となってしまっている。従って、フォーン家の女性は、その身を守るためにその象徴である蒼い髪を染めて身を隠す必要があり、また素性がばれ、邪な感情を相手に抱かせないために結婚もできない呪いがかけられているような宿命を背負わなければならなかった。

ロゥリィのハルバート
神鉄という神秘の金属を素材にし、匠精であり後に亜神となるモーター・マブチスによって鍛えられた戦斧。作中では柄に蛇が巻き付いた形の装飾があるとされている。最大の特徴は、その質量と耐久性にあり、その見た目に比して大人数人がかりでやっと持ち上げられる程の重量を持つ。ロゥリィはこれを片手で変幻自在に振り回せる腕力を持ち、ロゥリィと一体化したこのハルバートは、その挙動を視認できないほどの速さで亜神ですら遥か彼方に吹き飛ばす力を持っており、戦車並みの装甲を持つ炎龍をもそれを叩きつける事で脳震盪を起こさせる程の威力を発揮する。このハルバートをロゥリィ自身が手にしている間はその重量を「ロウリィが支えている」らしく、漫画版ではハルバートを所持した状態のロゥリィを伊丹が抱きかかえて走る姿も描かれている。

レレイのノイマン効果成型炸裂魔法
レレイが来日した時に、東京で大量に購入した科学書籍を参考に、特地の魔法技術に、地球側の科学理論(魔法学でいう「現理」)を応用した特地初の科学魔法。他重層の魔導式を連鎖反応させることで成型炸薬弾(HEAT弾)の効果を模するが、当初は一度魔導式を発動すると攻撃の方向を変えられないという欠点があった(そもそも並の魔導師では他重層式の展開が出来ない)。対炎龍戦ではその場に散乱していた刀剣を飛翔誘導させて攻撃、加速させるために利用した。その後、HEAT弾に必要な金属ライナー及び発動させる際の方向を任意に変更させる媒体として家庭用金属製漏斗で代用し、そのライナーを魔法で飛翔誘導させて爆裂魔法を擂鉢状に爆発させることで、ライナーよりメタルジェット効果を得るという魔法攻撃方法。レレイはこれをゾルザル軍が配備した重装甲化ジャイアントオーガ(自衛隊コードネーム「眼鏡犬」)に使用し、一撃で葬る威力を見せている。

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