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作者:谷瑞恵
イラスト:高星麻子
出版社:集英社 コバルト文庫

あいつは優雅な大悪党
あまい罠には気をつけて
プロポーズはお手やわらかに
恋人は幽霊(ゴースト)
呪いのダイヤに愛をこめて
取り換えられたプリンセス
涙の秘密をおしえて
駆け落ちは月夜を待って(短編集)
女神に捧ぐ鎮魂歌(レクイエム)
ロンドン橋に星は灯る
花嫁修業は薔薇迷宮で
紳士の射止めかた教えます(短編集)
紅の騎士に願うならば
誰がために聖地は夢みる
運命の赤い糸を信じますか?(短編集)
誓いのキスを夜明けまでに
紳士淑女のための愛好者読本(ファンブック)
すてきな結婚式のための魔法
魔都に誘われた新婚旅行
月なき夜は鏡の国でつかまえて
白い翼を継ぐ絆
愛しき人へ十二夜の祈りを(短編集)
永久の想いを旋律にのせて
愛の輝石を忘れないで
あなたへ導く海の鎖
情熱の花は秘せない
真実の樹下で約束を
恋よりもおだやかに見つめて(短編集)
オーロラの護りを胸に
祝福の子か夜の使者か
祈りよアルビオンの高みに届け
白い丘に赤い月満ちて
新たなるシルヴァンフォードにて

文庫未収録
伯爵家執事の新たな決意/2009年 『Cobalt』抽選カレンダー 収録
レイヴンの日記/コバルト2010夏のLOVE4フェア冊子収録(2013年サイン会にて再配布)
もう少し、やさしい夢の中で/ 『Cobalt』2012年11月号 定期購読特典書き下ろしプチノベル
ファーストキスの贈り物/ ありがとサマー2012 BOOK
鈍感なきみとぼく/ 『Cobalt』2013年1月号 応募者全員サービスドラマCD コバルトスタァ7 Étoile ブックレット掲載
よい子は早くおやすみなさい/ 『Cobalt』2013年7月号 定期購読特典書き下ろしプチノベル
悪夢の人形劇/ 『Cobalt』2014年7月号 定期購読特典書き下ろしプチノベル

単行本未収録 
日だまりの小悪魔、コミックコバルト2010年10月号掲載
伯爵家執事の新たな決意(文庫未収録作品のコミカライズ)コバルト2011年9月付録

あらすじ

19世紀イギリスヴィクトリア朝時代。産業革命により飛躍的に経済が発展し、鉄道が街中を走るようになったこの時代、人々は妖精が隣人だった一昔前のことなど忘れ去り、妖精はお伽話の中だけの存在となっていた。 妖精の姿が見え、話ができる少女リディアは、亡き母の後を継ぎ「妖精博士(フェアリードクター)」としてスコットランドの片田舎に看板を掲げるも、ろくな依頼はなく、町の人々にも変わり者扱いされる日々を過ごしていた。そんなある日、父と共に復活祭(イースター)を過ごそうとロンドンに向かう船の上で、船室に潜んでいた謎の青年エドガーに連れ出され、フェアリードクターとして彼の依頼を受けたことから、彼に関わる騒動に巻き込まれていくことになる。物語を通して次第に明らかになるエドガーの過去や彼を狙う組織との戦い、数々の妖精がらみの事件などを通し、二人は少しずつ絆を深めていく。

登場人物

リディア・アシェンバート/ 旧姓:カールトン
年齢17歳→19歳。鉄錆のような赤茶色の髪(エドガーのみキャラメル色と表現)と、神秘的な金緑色の瞳を持つ少女。赤ん坊の頃に妖精のチェンジリング(取り替え子)に遭い、すぐに母親によって救出されたが、妖精界の空気に触れたリディアの瞳は現在の金緑色に変化していた(元の瞳の色は不明)。勝気で物怖じしない性格だが、根は優しく底抜けのお人好し。妖精の姿が見え、話ができる能力や、妖精に関する豊富な知識を活かし、古来より人間と妖精の仲立ちを担っていた『妖精博士(フェアリードクター)』になるが、故郷のスコットランドでは、能力を理解されず変わり者として敬遠されていた。ある日、父の住むロンドンに向かう道中で、アシェンバート伯爵と名乗る謎の青年エドガーと出会い、彼が本物の伯爵になるため協力を依頼される。無事に依頼を成功させ、正式に伯爵家当主となったエドガーからの要請により、リディアは伯爵家専属のフェアリードクターに就任する。エドガーからは日常的に口説かれていたが、当初は信用せずに頑なに拒否していた。しかし、様々な問題を彼と協力して解決していく中で互いに絆を深め、三度目のプロポーズを受け入れた。リディアの亡母アウローラの一族には、島々の危機に目覚めるという救世主“予言者”の伝説と、その予言者の“許婚”となる娘を一族の中から選出する慣習があった。自らも許婚であった母は、娘リディアへの影響を危惧し、予言者の棺を解放して繋がりを絶とうとしたが、この時腕に抱かれていた赤ん坊のリディアが、母亡き今は予言者の力に触れた唯一の存在となり、予言者以外の男の子供を身ごもることができなくなった、とダネルに告げられた。また、予言者の魔力の源であるブラッドストーンは、アウローラが棺から回収してニコへと託したが、のちに妖精から受けた傷の治療のためにリディアが飲み込んでしまった。結婚式を終え、晴れて夫婦となったエドガーとリディアは、エドガーの中に在る“災いの王子”を撃退する手掛かりを求め、伯爵家の領地である伝説の国「妖精国(イブラゼル)」を目指す。二人はそれぞれの目的のために一時的に別行動を取り、リディアは仲間と共に妖精国へ向かったが、プリンス組織に捕まったことで再びエドガーと行動を共にし、ついに妖精国へ上陸した。妖精国崩壊の一因であるドラゴンを妖精国の弓矢を使って鎮めることで、その魔力に繋がる“災いの王子”をも縛り付けることに成功するが、代償としてエドガーはプリンスに関わってからの全ての記憶を失うことに。エドガーが記憶を取り戻せば封印の力が弱まる危険があるため、妻であることを隠して友達として側にいることを決めたリディアは、一時でも苦しみから解放された彼の様子に安堵する一方で、彼との距離感を掴めずに困惑していた。また、最近の体調不良の原因として妊娠を疑うが、事実を告げられない今の状態でエドガーに知られてしまえば、独身で身ごもった女としてエドガーに軽蔑され、プロポーズも白紙に戻るのではと不安に思っている。結局、ある一件からエドガーに知られてしまったが、この不安は杞憂に終わった。しかし、子供が悪しき妖精の魔力を用いて身を守ろうとしたため、「出産すれば命を落とすかもしれない」とダネルに告げられる。しかし母としてわが子を産む決意をし、現在プリンスの力を引き継ぐエドガーとユリシスの遺体に宿って現れた我が子アルヴィンを見守っていたが、様々な事実を聞かされたアルヴィンの計略によってドラゴンの卵を使った毒を飲まされてしまう。苦痛は朱いムーンストーンの力で抑えられたものの、その命は少しずつ毒に冒されていくことになる。その過酷な状況下でもアルヴィンを信じ続け、最後はブラッドストーンの謎を解くことに成功する。本編終了後アルヴィンを無事に出産し、シルヴァンフォード公爵夫人となった。さらにアルヴィン誕生から5年後、男女の双子を出産している。

ニコ
灰色の長毛猫の姿をした妖精。服を着て二足歩行し紳士を気取っている。身だしなみと食べ物にはこだわりを持っている。猫扱いされることを極度に嫌い、「おれは猫じゃねえ」が口癖となっているが、猫のように撫でられると力が抜けたり、マタタビにも弱かったりと、習性は猫そのものである。エドガーにはそれら弱点を利用され、簡単に買収されたり、時には八つ当たりとして猫のように喉を撫でられることもしばしばである。かつてはリディアの母アウローラの相棒だった。リディアが生まれた時に、彼女が大きくなるまで見守ることをアウローラと約束したため、リディアの結婚後は故郷に帰ることも考えていたが、リディアの強い希望により彼女の側に留まることを決める。リディアが飲み込んだブラッドストーンに関する秘密を彼女に話せずに一人(匹)で悩んでいたが、レイヴンに促され、リディアに打ち明けた。妖精としての能力は決して高くはないが、自分の姿を消せたり、妖精や妖精界に関する知識でリディアをサポートしている。性格はお気楽で、危険を察知するといち早く逃げ隠れる薄情な部分もあるが、リディアを大切に思っており、彼女の本当の危機には誰より胸を痛めている。また、レイヴンとは少々ずれてはいるが、円満な友人関係を形成している。終盤でロンドン塔地下の妖精界に潜り、ファイアアゲートを持ち帰ろうとした際、テランの身体を利用していた悪しき妖精のフェアリードクターによって魔力を奪われ殺されかかったが、アルヴィンによってその直前に出逢い、彼らに利用される形で死んでしまった子猫の体に移し変えられた。そのため、本編終了直前から短毛の手足だけが白い黒猫(いわゆる靴下猫)の姿をしており、ネクタイなどはケリーにサイズを直してもらっている。

ケルピー
リディアの昔なじみの妖精。性格は横暴だが、リディアに対しては優しい。リディアをスコットランドへ連れ帰ろうと、ロンドンまで追いかけてきたまま、ずっと彼女の周辺に居ついている。人前では長身で黒い巻き毛の美青年の姿をしているが、正体は持ち前の美貌と魔性の目で人間を惑わし、水底に引きずり込んで、苦手な肝臓以外を食べてしまう獰猛な水棲馬。なお、「ケルピー」は水棲馬の呼称で、彼自身に名前はない。水棲馬は悪しき妖精(アンシーリーコート)の一種で、基本的には人間も食糧として見ていたが、人間に恋をした弟の一件でリディアと知り合い、水棲馬である彼を恐れず、種族ではなく彼自身を見てくれるリディアを気に入った。彼女と一緒に暮らす事を望み、求婚を何度も断られながらも、気にせず彼女の周辺にいついている。リディアの安全を最優先に考え、彼女の危機に度々駆けつけては救い出している。ただし、リディア以外の人間には基本的に興味がないため、周囲に他に人間がいても、迷わず見捨てる。彼自身がリディアを「水棲馬を手に入れた最初のフェアリードクター」として認め、その姿勢は彼女が結婚したあとも変わっていない。また、エドガーがプリンスを受け継いだことを知りながらも、リディアの意志を尊重し、結婚を反対せず見守っている。最近[いつ?]では、常にエドガーや仲間に囲まれているリディアより、その立場上単独での闘いを強いられているアーミンを気にかけ、度々彼女の前に現れては、窮地を救ったり助言をしている。また、ファイアアゲートを見つけ出した彼女の最期の願いを聞き届けた。リディアの出産後も彼女の近くで生活しており、5歳まで成長したアルヴィンにはやや怖がられているが、なんだかんだで面倒見の良さを発揮している。

アーミン
エドガーの元従者。長身で誰もが認める美女だが、戦闘時に動きやすいよう常に男装をしている。レイヴンの異父姉だが、彼とは異なり肌は白い。レイヴンと共に奴隷としてプリンス組織に売られ、そこでエドガーと出会う。ほどなくして彼に恋心を抱くようになるが、エドガーを苦しめるためだけに彼の眼前でプリンスに陵辱され、心に深い傷を負った。数年後、エドガー達と共にプリンス組織から逃亡するが、彼が望み通り伯爵の地位を手に入れることで、ただの主従関係になってしまうのを恐れ、逃亡という形でも特別な存在として彼の側に居られる事を望み、しばらく見逃してもらう交換条件としてプリンスのスパイをしていた。しかしリディアの協力で、入手不可能と思われた宝剣に着実に近づいているのを感じたアーミンは、裏切りを告白した後で、プリンスとエドガーの繋がりを断ち切るため、エドガーが宝剣を手に入れるのを見届けずに、海に身を投げた。一度は命を落としたアーミンだったが、ユリシスの手によってアザラシ妖精(セルキー)として蘇り、リディア達の前に現れる。しかし、仲間でありながら裏では不審な動きを見せ、エドガーがプリンスになったのも、間接的には彼女の行動が影響していた。真意が見えないことから微妙な立場に置かれていたが、のちにそれらのスパイ活動は、エドガーを生き残らせるために示したフランシスの指示によるものだったことが判明する。アーミンがセルキーの命である毛皮をエドガーに託していることから、彼女がどこに身を置こうとも、魂は永遠にエドガーに属しているのだろうとリディアは感じている。現在でもエドガーやリディアをサポートするために単独行動を取ることが多いが、ケルピーには何度か窮地を救われる中で関わりを持つことが多く、特定の人間に対して同じ想いを持つ同志として、信頼し始めている。また、アーエスの指示でロンドンへやってきたマーメイド・ローザと妖精国での異変(ユリシスの遺体が何者かを宿して動き回っていること)を告げに来たメロウ・ジェットとともに、ブラッドストーンと対になるはずのファイアアゲートを探す旅に出ることになった。その過程でかつて世話になった老セルキーから話を聞き、そのことを知っているのがリディアの持つ「セルキーの心臓」の本来の主である可能性を伝えられ、ロンドンへ戻る。そしてセルキーの能力でリディアの持つアクアマリンから得た情報を基に、ロンドン塔地下の妖精界を捜索する一行に加わり、無事にファイアアゲートを見つけ出すも、地上で火事が起こったことをきっかけに崩落し始めた場所に取り残される。旅の間自分の毛皮を持ち歩いていたため、その心は次第に妖精へと近づいていたが、「最期は人として逝く」ことを、一緒に来ていたケルピーに頼み、後を託した。

ロタ
本名はシャーロット、イタリア語ではカルロッタで、ロタは愛称。コーヒー色の長い髪を、ロープでポニーテールに束ねている。祖父の代に崩壊したクレモーナ公国の姫君だったが、彼女が三歳の時、両親とアメリカへ向かう途中に船が難破。彼女だけは海賊に助けられ、その娘として育てられた。そのせいか男勝りの気性を持ち、操船にも詳しく、祖父と再会して大公の孫娘として生活している今でも、基本のスタイルは変わらない。エドガーとは、アメリカで彼が“サー・ジョン”を名乗っていた時に知り合った。お互い相容れない存在で、顔を合わせれば憎まれ口を叩き合うような関係ではあるが、彼のリーダーとしての資質は認めている。一方、どんな女性も淑女扱いし愛嬌を振りまくエドガーが、味方でありながら邪険に扱う女性として希少な存在である。更には、ロタがいるとリディアが自分を構ってくれなくなる、との理由から、吹雪の中に放置されるなど、エドガーからは理不尽な扱いを受けることも多い。リディアとはエドガーを通じて知り合ったが、竜の花嫁にされたロタの友人を救い出すために協力した縁で、親友同士になる。頻繁にリディアの元へ遊びに来ており、そのまま騒動に巻き込まれることも多い。リディアの危機とあらば率先して首を突っ込み、時には身代わりになろうとする、リディアに負けず劣らずのお人好し。本編終了後に祖父が老いと病が原因で体調を崩しがちになり、外出すら控えていたが、祖父が亡くなった際に生家である城のカギを託され、「アメリカ生まれのイギリス人でスレイドの養女」という身分証を得てかつてのクレモーナ公国を見に行く旅に出ることを選ぶ。

プリンスの組織
ウルヤ
褐色の肌に黒い瞳、長い黒髪をもつ中性的な人物。性別は女性だが、家を継ぐ男子が生まれなかったため、長女である彼女は結婚するまで男性として育てられた。レイヴンらと同郷であるハディーヤの出身で、彼らの王の子孫にあたる血筋。故郷の土地を取り戻すというプリンスに唆され、カールトン教授の教え子という立場からリディアに近づく。ブラックダイヤ“ナイトメア”の粉砕で解き放たれた夢魔を飼いならすため、魔力に耐性のあるウルヤは夢魔の器としてプリンスに利用される。ハディーヤ王家に忠誠を誓う精霊を宿したレイヴンを、透輝石を利用して意のままに操るが、エドガーが本当の主であることを思い出したレイヴンの手によって、最期を迎える。

キャスリーン
18歳。ハニーブロンドで抜けるように白い肌、不自然なまでに紅い唇、おとなしく儚げな微笑など、上流階級の娘としての理想を兼ね備えた容貌の持ち主。エドガーの生家シルヴァンフォード公爵家の親戚にあたるコリングウッド伯爵家の令嬢。彼女の両親は、プリンス組織の陰謀による公爵家屋敷の大火災に巻き込まれ、エドガーの両親ら一族と共に死亡したが、彼女自身は風邪をこじらせて屋敷へは来ていなかったため、災難を免れた。エドガーはその火災で死亡として扱われているため、公爵家の血縁者の中では、最も当時の公爵に近い存在とされている。女性であり、直系でもないキャスリーンに公爵位を継ぐ資格はないが、他に後継者がいない以上、彼女が男子を産めば、シルヴァンフォード公爵家の跡取りとなる可能性がある。そのため、彼女が名門出身のグランディ卿と婚約したことで、シルヴァンフォード公爵家再興を狙ったものではないかと、世間では注目された。シルヴァンフォードの相続権にかかわるキャスリーンに以前から目をつけていたプリンス組織は、両親を失い、親戚の家で肩身の狭い思いをしていた彼女に接触する。その際キャスリーンは、幼い頃に一度だけ会った初恋の人、公爵家の若君エドガーが実は生きていることを知らされ、彼が再び英国に戻った時の花嫁となるべく、プリンス組織からの教育を受け入れる。彼女はその組織が一族を殺害したことを承知で、エドガーのために一流のレディになろうと努力してきた。しかし、「運命の人」と信じていたエドガーは、再会する前にすでに結婚していたため、その憎悪は彼の妻リディアに向けられた。リディア排除を目論む派閥と結託し、リディアを陥れ、最終的には殺害まで企てるも、エドガーに阻止される。再びプリンス組織のもとへ戻されたキャスリーンは、「未来の王妃」として再教育される事となる。組織の実態をなにも知らないキャスリーンはテランにプリンスとして組織に君臨したエドガーの婚約者と決められたのを、「殿下」がリディアに飽きて自分の方が結婚相手としてふさわしいと気がついてくれたと思い込んでいた。

その他の人物
アウローラ・カールトン/旧姓:マッキール
リディアが幼い時に亡くした母親であり、フェアリードクター。プラチナブロンドの髪に白い肌のはっとするほどの美女だったというアウローラに対し、リディアは自身が母に似ていないと気にしていたが、実際のところアウローラ自身も昔はそばかすだらけの顔にぼさぼさの頭、痩せっぽちで色気が無く、美しくなったのはフレデリックに出会ってからだとニコは言う。さっぱりした性格で、リディアはエドガーと少し似た所があると思っている。ハイランドの主要な氏族・マッキール一族の分家の娘として育てられたが、マッキール家ではフェアリードクターとしての能力を絶やさない為に慣習として取り換え子が行われていた為、実は彼女自身も取り換え子であり、妖精の血が濃く流れている。彼女が16歳の時に、調査目的で島に来ていた当時大学生だったフレデリックが妖精界で迷っているのを助け、彼に恋をした。その際に再会の約束をするも、人間界に戻ったフレデリックが妖精界での出来事の記憶を失っていたため、約束は果たされないまま年月が過ぎた。アウローラには予言者の許婚としての役割があり、21歳を過ぎても予言者が目覚めない場合は二番目の許婚である青年と結婚することが決まっていたが、21歳の誕生日直前で再び島に現れたフレデリックにプロポーズし、彼と駆け落ちをする。島やフィル・チリースとの関係が強かったため、誰かの手を借りなければ島を出ることはできず、島に戻る際も同じように誰かの手を借りる必要があった。後に生まれたリディアもまた、マッキールの慣習に従って取り換え子として連れ去られたが、アウローラは聖地に行ってリディアを無事取り戻す。更には取り換え子の流れを絶つため、予言者の棺を開け、棺に残された予言者の言葉とブラッドストーンを受け取った。棺を開けた時の強大な魔力を受け止めた影響で、健康だった彼女は少しずつ体を壊し、若くしてこの世を去ることになる。本人はこれを予想していたのか、夫に「リディアの夫となる男性の見極め」を、娘が幼い頃から頼んでいた。結婚当初は、自分に流れる妖精の血とフェアリードクターとしての知識を厭うかのように、普通のミセスとして妖精に関する知識を活用することはなかったが、幼いリディアと散歩中に出会ったある女性の話を聞いて力を貸してからは、リディアが「かあさまのようなフェアリードクターになりたい」と言ったことで、彼女に知識を伝えることを決めた。また生前、フレデリックが持ち帰るオニキスを気にしていたという。アウローラの家系の母から娘へ、代々受け継がれた“セルキーの心臓”はフレデリックを通してリディアに渡された。これが後にロンドンを救う鍵となるファイアアゲートのことを知るセルキーのものだったことが判明する。

ジーンメアリー・リーランド
エドガーの母親、シルヴァンフォード公爵夫人。革命を逃れて英国へ渡ったフランス貴族の流れを汲むボニー・プリンス・チャーリーの不義の子の末裔。輝くような金髪に青い瞳の、誰もを虜にする華やかな美女。その血筋は次代のプリンスの器となる男児を生み出すために目をつけられており、スチュアート家の血筋に連なる許婚がいた。許婚によって次代のプリンスの母親として理想的な花嫁にするため、フランスにあるカトリックの尼僧院の女学校で教育を受けさせられ、17歳のとき拝謁を終えた後に結婚するはずだった。しかし、彼女を見初めたシルヴァンフォード公爵が権力を使って彼女の許婚であったバークストン侯爵から無理矢理取り上げ、彼女にとっても許婚は「親が決めた許婚以上でも以下でもなかった」ため許婚を捨てた。先祖はアーエスと付き合いがあり、女学校で教育を受けているときに教師として近づいたアーエスから、自身の血筋の危険性と共に「男児を生んではいけない」と警告を受けていたが、その事を隠して公爵家に嫁いだ。そしてエドガーが13歳になる年、公爵の誕生日にプリンスの手の者に屋敷を襲撃され、エドガーだけでも逃がそうと夫と共に怪我を押して奔走するも殺害された。エドガーによると、公爵夫人と呼ばれる事に喜びを感じており、お姫様として扱われていれば満足していた典型的な貴族の女性で、苦言・中傷は一切耳に入らなかった。殊にエドガーの教育係たちから溺愛するエドガーへの苦言・苦情を口にされても、エドガーは勉学に関しては成績優秀であり、母親の前では品行方正に振る舞い、喘息を克服してからも病弱な息子を演じていたことから一切信じなかった。しかし、アーエスから伝えられた自身の血筋の危険性を認識してからはエドガーへの恐れと自責の念を感じていたらしい。

関連する宝石

スターサファイア/スタールビー(宝剣・矢)
初代青騎士伯爵が妖精国へと帰る際、永遠の臣下の証として当時のイングランド国王・エドワード一世から贈られた宝剣を飾るサファイアに、メロウが“星”を刻んだ。以後代々伯爵家の子孫は、妖精国へ帰る際にサファイアから“星”を抜き取って宝剣ごとメロウに預け、逆に受け取る際は、生まれながらに体のどこかにもつ“星”を血筋の証としてサファイアに刻む。宝石の“星”は三本の光が交錯しているのが本来の形だが、“星”を持たないエドガーが宝剣を手に入れるため、自らの舌に刻まれた奴隷時代の十字の焼印を“星”としてメロウと取り引きしたため、彼の持つ宝剣のサファイアに刻まれた“星”もまた十字である。宝石には妖精の力が宿っており、通常の青いサファイアはシーリーコートの力が働くが、宝石が赤いルビーへと変化する時、アンシーリーコートの魔力を発動して妖精をも斬れるようになる。初代青騎士伯爵は、魔力の秘密を受け継ぐ三つの家系の一つだったが、魔力を子孫が使わぬよう、宝剣のルビーの力を封印した。伯爵家の血筋ではないエドガーはサファイアの力を使えないばかりか、プリンスの後継者として魔力の秘密を引き継いだことで、ルビーの力のみ使えるという、歴代の青騎士伯爵とは逆の立場にある。

白いムーンストーン(弓)
初代青騎士伯爵の妃・妖精グウェンドレンの指輪であり、以降代々の青騎士伯爵の花嫁へと受け継がれている。メロウの宝剣にあるスターサファイアが星の矢、白いムーンストーンが月の弓となり、アンシーリーコートの魔力を浄化し、強力な魔除けの力を発する。現在扱えるのは、妖精国の妃である持ち主のリディアのみ。

赤いムーンストーン(弓)
妖精国のアシェンバート家に属する男子しか使えない、妖精国最強の武器。スターサファイアと白いムーンストーンが弓矢になって広範囲に守りの力を働くように、スタールビーと赤いムーンストーンが弓矢になった時、広範囲の攻撃が可能になる、とリディア達は推測している。アルモリカの王女アーエスから、妖精国から来たダイアナ(グラディス・アシェンバート)に返されたが、彼女は流産した子供の墓に隠し、フランシスに託していた。

ブラッドストーン
古くからマッキール家に伝わる伝説の“予言者”の魔力の源。魔力を継ぐ者が触れれば、淡い緑色に輝くと言われている。百年前に予言者となった人物が、聖地の棺に予言の言葉とともにこの石を残し、後にアウローラの手によって棺が開かれるまで、石は封印されていた。アウローラは石をニコへ託したが、妖精の刃によって負傷したリディアを治すため、エドガーが彼女に飲み込ませた。

フレイア(炎の蛍石)
アシェンバート家が所有する領地、ウォールゲイヴ村のみで採れるという炎に似た色の蛍石。昔は竜が吐く炎の結晶と信じられていた。「不死の石」と言われ、その力は魔術に通じた者でないと扱えないという。生者の魂を肉体から取り出して保管し、別の体へ移し替えることができると言われているが、実際保管できるのは“記憶”。プリンスの組織では、“災いの王子”の記憶と魔力を新たな体に移し変えるために欠かせない宝石。

ダイオプサイド(透輝石)
深い緑色をした透明感のある石。古の時代、三つの蛇頭を持った魔王が退治され、それぞれの首が三つの石へと変化した、という伝説の石。その後、ハディーヤ王家によって石に宿る魔物は改心させられ、王家に忠誠を誓う守りの力として、透輝石はハディーヤ王家の子孫に受け継がれた。そして百年前、最初の“災いの王子”は、「マハ」・「ネワン」・「モーリグー」というズキンガラスの姿をした精霊を利用してアンシーリーコートを集め、英国襲撃を企てていた。この精霊は、戦いの女神バウの化身であり、この女神が味方についた方が必ず勝つといわれるほど、強大な力を持っていた。時の青騎士伯爵であるグラディスは、親交のあったハディーヤからこの石を借りて三体の精霊を石に封じこめ、石には封じ込められた精霊の名前が刻まれた。その後、「マハ」「ネワン」の石はそれぞれ、ハディーヤの子孫へと受け継がれたが、残る一つの「モーリグー」だけは本来の石の形を取らず、精霊を閉じ込めた魔王の核そのものがレイヴンの目に宿っている。そのため、レイヴンの記憶の奥底では、ズキンガラスの姿をした戦いの女神の化身「モーリグー」と、魔王の化身である蛇が戦い、死闘の末に蛇が片目をくりぬかれながらもズキンガラスを飲み込む、という光景が繰り広げられている。また、この時に目をくりぬかれた影響からか、レイヴンの中の魔物には左目が見えず、それは魔物に支配された時のレイヴン自身にも影響する。なおダイオプサイドを薄く切り、透かして文字を見ると二重に見えるため、“ふたつの姿”と言われているが、戦いの女神の化身と魔物との二体を封じ込めた二つの石とレイヴンは、まさにその別名を表している。

アクアマリン(セルキーの心臓)
人間に近い性格をもつアザラシ妖精・セルキーが死ぬ時、特別に信頼していた人間に、友情の証として贈る、セルキーの心臓。セルキーは“心臓”を所持する人間を尊重し、たとえ理不尽な仕打ちをうけても反撃できないため、子孫まで信頼できると考える人間に贈られる特別なもの。リディアは母方の家系から受け継いだが、ユリシスはどこからか奪ってきた可能性が高い。

ホワイトダイヤモンド(デイドリーム)/ブラックダイヤモンド(ナイトメア)
しずく形の百カラットダイヤモンドで、二つのダイヤの持ち主は、世界の王になると言われている。イングランド王ジェイムス一世が即位した時に作られたが、ジェイムス二世が国を追われ亡命した時に持ち去ったと言われているため、二つのダイヤを持った者が亡命した王の子孫だと主張すれば、現在の王家と対立しかねないと危惧された。デイドリームはローマの窃盗団の隠れ家から発見されたため、ちょうどローマを訪問中だったエドガーの実父シルヴァンフォード公爵が持ち帰る役目を引き受けたが、裏でプリンスが手を引き、当時公爵の部下だったバークストン侯爵にダイヤを盗ませた。エドガーは亡き父の汚名をすすぐため、盗んだ本人にバッキンガム宮殿へと届けさせた。ナイトメアは元々プリンスの手中にあったが、昔エドガーがプリンスの元を逃げ出す際に持ち出した。プリンスは取り返しに来たが、ダイヤを守って死んだ仲間の少女が、ふくらはぎにダイヤを隠していることに気づいたエドガーは、少女の遺体と一緒にダイヤを隠し、英国に帰国後に棺ごとダイヤを取寄せた。その後、リディアやエドガーがゴブリンの迷宮から抜け出す際に、ケルピーが魔力の補助として使用したため砕け散り、ダイヤに封印された夢魔が解き放たれてしまった。

オニキス(ドラゴンの卵)
悪しきフェアリードクターがその意思を込めたもの。そのかけらは、魔力と接していた人間をテランが操るための毒薬にも混ぜられている。悪しき魔力ではあってもプリンスに由来する魔力ではないため、ロンドン橋の結界内に入り込むことも出来る。現在、リディアたちは「島のあるじ」のブラッドストーンと、フィル・チリースとドラゴンの魔力が融合した結晶であると推測しているファイアアゲートの魔力を合わせればその力に打ち勝つことが可能と考えている。

雑記



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