論題:台湾は首都機能を分散すべきである 是か非か

首都機能とは、総督府、五院(行政院、立法院、司法院、考試院、監察院)を含むものとする。ここでいう首都機能の分散とは、首都機能の一部を新北市以外に移転することとする。

論題背景

台湾は、台北に政治・経済・文化・人口など、社会における資本・資源・活動が集中しているといえる。社会資本や資源を一極集中することで、台北の経済成長を促し、その国際競争力を押し上げ、台湾の経済成長の牽引役となってきた。一方で、一極集中化が進むに連れ、台北の都市問題の深刻化や地域間格差の拡大などの問題が顕著になってきた。2009年の行政改革により首都以外の直轄市への権限が付与され、台北への一極集中が緩和されつつあるが、それが解決されたとは言いがたい。特に、台北の災害時に対するリスクの高さは大きな課題となっている。2015年に英ロイズ保険組合とケンブリッジ大学のリスク研究センターが公表した世界各都市の今後10年間の事故や自然災害による危険度に関する調査リポートによれば、危険度が最も高いのは台湾の台北であり、「今後10年間の事故や自然災害での経済損失が1812億米ドル(約21兆7000億円)に上ると」予想されている*1 。この問題は、行政改革では解決できない問題である。首都機能の移転は、台北への一極集中をさらに緩和するとともに、災害時のリスクを分散させる効果があると考えられる。

予想されるメリット

  1. 台北への一極集中の是正(地方経済の活性化、人口集中緩和など)
  2. 災害対応力の強化(政治・行政・経済の中枢機能分散によるリスク分散、跡地利用などによる防災力向上)
  3. 経済・財政への波及(公共事業による経済効果や環境・情報等多分野における新たな基盤整備・跡地の売買など)
  4. 国政及び都市機能の改善(機能的な都市整備の実現や国政システムの改善)

予想されるデメリット

  1. 財政の更なる悪化(移転にかかる莫大な時間・費用の発生、さらに交通費・通信費のコスト増)
  2. 台北及び台湾の国際競争力低下
  3. 都市整備に伴う環境破壊と非効率性

五院について

  • 行政院は、中華民国(台湾)における「国家の最高行政機関」(中華民国憲法53条)。いわゆる内閣に相当する。2010年の行政院組織法改正により、2012年(民国101年)から順次再編されていき、最終的に従来の39組織(8部・2会・2局・1処・3署・21委員会)から14部・8委員会・2処・1行・1院・3独立機関の合計29組織が設置されることになる。
  • 立法院(りっぽういん)は、中華民国の立法府であり、「国家最高の立法機関」(中華民国憲法62条)である。定数113名。
  • 司法院(しほういん)は中華民国(台湾)の最高司法機関。現在は院長と副院長を含む15名の大法官により構成されている。最終司法判断を下す機関としては、日本の最高裁判所に相当する最高法院や最高行政法院がある。そのため、司法院は形式上、司法行政機関としての性格が強い。
  • 監察院(かんさついん)は中華民国の行政機関。最高の監察機関として公務員・国家機関の不正に対する弾劾権・糾挙権の行使、及び各種国家機関の財政状況および決算等の会計監査(審計権の行使)など、国政調査を行う。
    監察院は29名の監察委員で組織される。監察委員のうち1人は院長、1人は副院長に任ぜられる。任期は6年で、立法院の同意を経て中華民国総統が任命する。
  • 考試院(こうしいん)は中華民国(台湾)の公務員の人事に関する最高行政機関。日本の人事院に相当し、すべての公務員の採用試験や任用、管理等の人事管理を行っている。院長、副院長各1名,考試委員19名より構成され,考試委員の任期は6年で、立法院の同意を経て総統が任命している。なお、中華民国の公務員は全て考試院による採用試験と資格審査を受けることが法律で義務と定められている。

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