779夏焼雅生誕祭企画＠無断転載は禁止2017/08/25(金) 02:35:05.880
「みや25歳おめでとう」
引退してから音信不通だったももからの電話。
ももの声の後ろはざわざわしていて、外だとわかる。
みやの誕生日、日付の変わったすぐ後だった。
「もも？ いきなりどした。誕生日当日に連絡くれるなんて珍しいじゃん」
「みや今日ってか昨日か、イベントでしょ？ 打ち上げ中？」
「今さっき打ち上げ終わったとこだけど？」
微妙に答えてなくない？
なんなの？
「もう帰るの？」
「ありがたいことにお仕事つまってるし帰るけど、本当にどうしたのもも」
「あーのさぁ……みやの家、行ってもいい？」
「は？ なに？ なんかあった？」
勝手に声は低くなってた。
ももがみやの家に来たいとかよっぽどのことじゃん。
誰かに何かされたの？
大丈夫なの？
頭は高速で回転し始める。
「ももさ、今何処にいるの？ 外でしょ？」
「音でばれるか。うん、外。みやは何処？」
「いつもの打ち上げの店を出たとこ。タクシー拾おうかなって思ってた」
「ももみやの家、行ってもいいの？」
「いいけど。一人なの？」
「多分15分くらいで行けるから。また後で電話する」
会話が噛み合わずに電話は切られた。
なんなんだろう、ももが変。
強引なのはももちらしいけど、嗣永桃子らしくはない。
あのももがももちを引きずるわけもないし、本当に何かあったのか。
とりあえず会ってみれば分かるし、今は急いで帰ろう。
781夏焼雅生誕祭企画＠無断転載は禁止2017/08/25(金) 02:39:23.780
自宅から少し離れた場所でタクシーを降りて、急いでマンションへ向かう。
ももはもう着いちゃったかも。
マンションのエントランス近くで見えた見慣れた後ろ姿にほっとする。
ぱっと見では外見は問題無さそう。
「もも」
時間が時間なので近付いてそっと声をかける。
振り向いた表情も特に異常は感じられない。
内心で首を傾げながらも平静を取り繕う。
「ごめん、待たせた？ ここじゃあれだし、部屋行こうか」
「今着いたとこ。ごめんね、イベント終わりで疲れてるでしょ」
部屋に入り、冷蔵庫から麦茶をついで渡す。
約一年前に来た時は引退するって報告だった。
今回はなんだろう、まさか、結婚するとか？
「で、何があったの？」
「何があったわけでもないんだけどさ」
言いながらへにょりと下がる眉。
情け無さそうな表情。
嘘ではなさそうだけど、何か隠してる。
「ももがみやの家に来たいって言うなんてほぼ一年ぶりじゃん」
「そうだけどさぁ、いきなりは言いにくいって言うか」
「心配したんだけど」
「え？」
「何かあったんじゃないかって心配した」
「ごめん。……引退してから、じゃないか。ずっと前から言いたいことがあって」
ちらりと寄越すどこか熱を感じる視線。
昔からこんな顔で見てくることがあったな、と思い出す。
「もも、引退したでしょ？」
「したねぇ。知ってるけど」
「もうアイドルじゃなくなったわけで、言ってもいいかなって思って」
「何を？」
ももちじゃなくなったのは知ってるけど？
今ここにいるのは嗣永桃子でしょ？
だから何？
なんでそんな睨むような顔すんの。
782夏焼雅生誕祭企画＠無断転載は禁止2017/08/25(金) 02:43:47.420
「みやが好き、ずっと好きだった」
「え？」
「みやにそれが言いたかっただけだから、もも帰るね」
ずっと諦めてた言葉を言われて驚いたら逃げられそうになった。
は？なにそれ。
言い捨てて逃げようとするなんて許さない。
逃亡防止のために腕をつかんだ。
「ちょっと待て。逃げんな嗣永桃子」
「用事終わったし。あぁ、言い忘れてた。誕生日おめでとう」
「さっき電話で言ってたじゃん。ありがとう」
「これで全部言いたいことは終わったんだけど。離してよ」
「ふざけんな。駄目に決まってるでしょ」
もがいてたけど、体格差もあるし逃がさない。
しばらくじたばたして諦めたらしい。
「離してよ」
「駄目。なんで今更言ったのか聞かないと納得できない」
「今なら言っても離れられるから気まずくなっても困らないと思って」
「みやの気持ちはどうなんの」
「みやはモテるし告白されて断るのなんて慣れてるでしょ」
「まぁどうでもいい人からの告白には慣れてはいるけど」
「だからももが告白したって困らないでしょ」
「いや、困るけど？」
ももは目を大きく見開いた。
そんなに意外なの？
「なんでよ！？ みやはももなんて好きじゃないでしょ」
「好きだけど」
「はぁ！？」
どうやら25歳の誕生日に恋人ができるっぽい。
ももは鈍感だよね。
みやがずっと好きだったことに全く気がついてなかったんだから。
end
「みや25歳おめでとう」
引退してから音信不通だったももからの電話。
ももの声の後ろはざわざわしていて、外だとわかる。
みやの誕生日、日付の変わったすぐ後だった。
「もも？ いきなりどした。誕生日当日に連絡くれるなんて珍しいじゃん」
「みや今日ってか昨日か、イベントでしょ？ 打ち上げ中？」
「今さっき打ち上げ終わったとこだけど？」
微妙に答えてなくない？
なんなの？
「もう帰るの？」
「ありがたいことにお仕事つまってるし帰るけど、本当にどうしたのもも」
「あーのさぁ……みやの家、行ってもいい？」
「は？ なに？ なんかあった？」
勝手に声は低くなってた。
ももがみやの家に来たいとかよっぽどのことじゃん。
誰かに何かされたの？
大丈夫なの？
頭は高速で回転し始める。
「ももさ、今何処にいるの？ 外でしょ？」
「音でばれるか。うん、外。みやは何処？」
「いつもの打ち上げの店を出たとこ。タクシー拾おうかなって思ってた」
「ももみやの家、行ってもいいの？」
「いいけど。一人なの？」
「多分15分くらいで行けるから。また後で電話する」
会話が噛み合わずに電話は切られた。
なんなんだろう、ももが変。
強引なのはももちらしいけど、嗣永桃子らしくはない。
あのももがももちを引きずるわけもないし、本当に何かあったのか。
とりあえず会ってみれば分かるし、今は急いで帰ろう。
781夏焼雅生誕祭企画＠無断転載は禁止2017/08/25(金) 02:39:23.780
自宅から少し離れた場所でタクシーを降りて、急いでマンションへ向かう。
ももはもう着いちゃったかも。
マンションのエントランス近くで見えた見慣れた後ろ姿にほっとする。
ぱっと見では外見は問題無さそう。
「もも」
時間が時間なので近付いてそっと声をかける。
振り向いた表情も特に異常は感じられない。
内心で首を傾げながらも平静を取り繕う。
「ごめん、待たせた？ ここじゃあれだし、部屋行こうか」
「今着いたとこ。ごめんね、イベント終わりで疲れてるでしょ」
部屋に入り、冷蔵庫から麦茶をついで渡す。
約一年前に来た時は引退するって報告だった。
今回はなんだろう、まさか、結婚するとか？
「で、何があったの？」
「何があったわけでもないんだけどさ」
言いながらへにょりと下がる眉。
情け無さそうな表情。
嘘ではなさそうだけど、何か隠してる。
「ももがみやの家に来たいって言うなんてほぼ一年ぶりじゃん」
「そうだけどさぁ、いきなりは言いにくいって言うか」
「心配したんだけど」
「え？」
「何かあったんじゃないかって心配した」
「ごめん。……引退してから、じゃないか。ずっと前から言いたいことがあって」
ちらりと寄越すどこか熱を感じる視線。
昔からこんな顔で見てくることがあったな、と思い出す。
「もも、引退したでしょ？」
「したねぇ。知ってるけど」
「もうアイドルじゃなくなったわけで、言ってもいいかなって思って」
「何を？」
ももちじゃなくなったのは知ってるけど？
今ここにいるのは嗣永桃子でしょ？
だから何？
なんでそんな睨むような顔すんの。
782夏焼雅生誕祭企画＠無断転載は禁止2017/08/25(金) 02:43:47.420
「みやが好き、ずっと好きだった」
「え？」
「みやにそれが言いたかっただけだから、もも帰るね」
ずっと諦めてた言葉を言われて驚いたら逃げられそうになった。
は？なにそれ。
言い捨てて逃げようとするなんて許さない。
逃亡防止のために腕をつかんだ。
「ちょっと待て。逃げんな嗣永桃子」
「用事終わったし。あぁ、言い忘れてた。誕生日おめでとう」
「さっき電話で言ってたじゃん。ありがとう」
「これで全部言いたいことは終わったんだけど。離してよ」
「ふざけんな。駄目に決まってるでしょ」
もがいてたけど、体格差もあるし逃がさない。
しばらくじたばたして諦めたらしい。
「離してよ」
「駄目。なんで今更言ったのか聞かないと納得できない」
「今なら言っても離れられるから気まずくなっても困らないと思って」
「みやの気持ちはどうなんの」
「みやはモテるし告白されて断るのなんて慣れてるでしょ」
「まぁどうでもいい人からの告白には慣れてはいるけど」
「だからももが告白したって困らないでしょ」
「いや、困るけど？」
ももは目を大きく見開いた。
そんなに意外なの？
「なんでよ！？ みやはももなんて好きじゃないでしょ」
「好きだけど」
「はぁ！？」
どうやら25歳の誕生日に恋人ができるっぽい。
ももは鈍感だよね。
みやがずっと好きだったことに全く気がついてなかったんだから。
end
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