まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

364名無し募集中。。。2019/05/06(月) 12:04:39.620

砂色の埃が舞っている。
雅は今しがた拾い上げたマジックペンのキャップをパキっとはずすと、その場に屈んだまま手近な石の上に線を引いた。
気の抜けたような音とともに、乾いた芯が石の上で滑る。
軌道の端から、さながらコピー機から出てくるプリントのようにへらへらとした物質が排出されて、地面の上でゆるく丸まった。
「もも」
と声をかけながら、雅が指先でつつくと、その物質は突いた箇所からあっけなく縦に裂けた。乾燥しきっている。
インクの切れたペン先から生み出される桃子は、掠れてぺらぺらだ。
チッ。
雅は舌打ちすると、端っこを指先でつまんで後ろに放り投げた。
折り重なった屋根瓦を飛び越える。道の先は霞んで見えない。
雅は再び当て所もなく歩き出した。
瓦礫を避けながら隙間隙間に注意深く目をこらし、數十分か。歩いたところでやっと、雅はまた落ちているマジックペンを見つけ、拾い上げた。
キャップをはずしたペン先は、さっきのものよりはまだいくらか水分を含んでいるように見える。
すぐ横のトタン塀にぎゅっと押し付けると、黒いインクが滲んだ。
雅は頰を緩め、真一文字に線を引く。
色がついたのは押し付けた一瞬だけだった。ペンはまた情けない尻尾を描き
端から、さながら麺棒で伸ばされた生地のような薄っぺらい物質が排出され、地面に落ちた。
屈んで触れてみる。
ぺらぺらではあったが、弾力があり柔らかい。
雅は少し考えてから、その桃子をマフラーのように首にかけた。これはキープ。
マジックペンを投げ捨てると、雅はまた歩き出した。
「みやびちゃん」
肩の上の桃子が声をかけてきた。ほんのりした温みを感じる。
「ん?」
「どこ行くつもり?」
「マジックのあるとこ」
「なんでマジックを探すの」
「おなかがすいたから」
桃子は黙り、会話はそこで途切れた。

365名無し募集中。。。2019/05/06(月) 12:05:01.510

辺りを見回すと、一面岩だらけだった。開けた視界の遠く、山並みが霞んでみえる。
あれきりマジックペンは1本も落ちていない。
「みやびちゃん」
「ん?」
「ここ山の上だよね」
「そうみたい」
「そもそもの話だけどさ、山の上にマジックとかあんまり落ちてなくない?なんでここに来た?」
そんなことを言われても、雅にわかるわけがない。気づいたらここにいただけだ。
大きい岩に腰掛けると、雅は桃子を首からはずして地面に置いた。桃子はうつ伏せに地面に伸びた。
もしかしたら、あれは最後のマジックペンで、これは最後の桃子なのかもしれない。
そう思うと、雅はにわかに緊張してきた。胸の奥がざわざわとする。
「こいつを食べるしかないのか」
「おいしいよ?」
「まずそう」
「食べたことないくせに」
言われてみればそうだ。
ふと思い出し、桃子をひっくり返すと、へそがあった。
そうだ。桃子は膨らませることができるんだった。
へそに唇を押し付けると、雅はふーっと息を吹き込んだ。ぺっちゃんこだった桃子が少しふっくらとした。
もしかしたらこれでいいのかもしれない。
すーはーしながらせっせと息を吹き込んでいると、膨らんだ桃子の腕が雅の頭を抱いた。
「みや」
呼ばれて顔を上げると、桃子が得意げに微笑んでいる。
ゆっくり抱き上げると、腕に重みが乗った。雅はその首筋に顔を埋めた。桃子の匂いがする。
「すごい。本物になった」
「感動した?」
「うん。感動した」
雅はそのままきょろきょろと辺りを見回した。もっと大きな岩はあっただろうか。
狼に見つからないように、隠しておかないと。
桃子を急き立てる。腕を引き、二人がすっぽり隠れるくらいの大きな岩石の影に、身を潜める。
空気をなるべく動かさないように、そっと背中を抱いた。
わかっている。これが夢なのはとっくにわかっている。
けれど、どうにかすれば、ずっとここにいられるかもしれない。
ペンから桃子を生み出せたんだから、夢から覚めない魔法だって使えるはず。
雅は優しく、優しく桃子の髪を撫でた。
指に落ちる毛先の感触に、雅は安心して目を閉じた。

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