最終更新:ID:zgCadyal3Q 2017年04月22日(土) 21:07:52履歴
967 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/20(木) 17:25:27.68 0
およそ十年ぶりに会う遠い武の国の姫。
成人前に諸外国を周り見聞を広めるのが武の国の王侯貴族の習わし。
武の国の姫の滞在期間は一ヶ月が予定されていた。
ここ数ヶ月は準備の為に城中の空気が慌ただしかった。
幼い頃、あの時もおよそ一ヶ月滞在していた武の国の姫のミヤビ。
最初に会った時はまだお互いが幼かったせいで衝突ばかりでお付きの者達がハラハラとしていた。
武を尊ぶお国柄、やや脳筋より。
何の話題からかは忘れたがここ魔法の国は、後ろからセコいとか貧弱な肉体とか喧嘩を売られた。
それを黙って聞いているほど大人しい性格ではなかった。
魔法の国の王族の直系の第一子は基礎以外は何故か戦略級魔法しか使えない。
そのため自衛手段として第一子は武の国から招致した指南役から武術を習うのが通例。
第一子の例にもれず戦略級魔法しか使えない自分は相当鍛えられていた。
迷わず買った喧嘩は引き分け。
何故かその日から一緒に鍛錬する日々。
最後まで勝負は引き分けだった。
最終的には友情と言うべきか良きライバルというべきかそれなりにいい関係が築けた。
今でも年に数回は修行の成果のようなものが手紙で送られてきていた。
一番最近送られてきた手紙にはA級指定されていた魔物を単独撃破したとか。
それを見て思い出した幼い頃のミヤビの言葉。
ドカンと派手に威力の大きい魔法ならカッコいい。
武の国に生まれた人間は殆どが生活魔法以外は肉体強化にしか魔力を使えない。
王侯貴族はそれ以外にその血筋による特殊魔法が一種使えるのみ。
ミヤビも例にもれず肉体強化と特殊魔法のみ。
ちまちました魔法なら肉体強化で全てぶっ飛ばせるという思考。
実際それができるのが武の国の人間。
そのためミヤビのような思考は一般的といえば一般的。
久しぶりの再会。
何かお祝いに作るのもいいかもしれない。
そう思ったのが全ての失敗の始まりだった。
968 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/20(木) 17:26:31.19 0
豊富にある魔力と資材。
与えられている実験室にこもって作り上げた仕込み杖。
一見すればただのどこにでもある魔法の杖。
しかし魔石にふんだんに充填された魔力によって少しの魔力で地形が変わる程の一発を打ち出せるふざけた代物。
刀身は名匠に頼んだ至高の一品。
ただの剣としても十分に使える。
会心の出来。
ギリギリ間に合ったそれを手に自室に戻った。
嘆く侍女達の手により盛りに盛られたドレス姿に。
長く退屈な公式行事。
久しぶりに目にしたミヤビは変わらないようで随分と綺麗になっていた。
翌日、早速約束を取り付けてミヤビの部屋へ。
立ち上がって笑顔で出迎えてくれたミヤビ。
少しでも早く見せたくて挨拶もそこそこに箱に入れていた杖を取り出した。
「久しぶり。いきなりで悪いんだけどこれ受け取ってくれる?」
何故か受け取らないミヤビ。
何故か騒つく周囲。
「いらない?」
俯くミヤビの顔を覗き込むと何故か真っ赤で。
首を捻っているとポンと軽く胸にミヤビの左手が触れた。
離れない手にどういうことかと一瞬悩むがすぐに思い出された。
大分昔に廃れているがこれは決闘の申し込み。
承諾は確か同じように左手で相手の胸辺りに手を当てるはず。
左手に杖を持っているのも忘れてその動作をしてしまった。
自然と杖を押し付けるような形になった。
しっかりミヤビの両手に握られた杖。
これで決闘の約束はなった。
久しぶりの勝負に心が弾む。
「いつにする?今すぐでもいいけど」
「いますぐはムリでしょ」
真っ赤な顔のまま蚊の鳴くような声で呟かれた。
何故か部屋を慌ただしく出て行くお付きの者達。
「じゃあいつにする?」
困惑したような表情で無言で見つめ返される。
ちょっと潤んだような瞳にどこか落ち着かない気分になった。
流れる沈黙。
969 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/20(木) 17:27:28.95 0
バンッと普段なら考えられないような音を立てて宰相が飛び込んできた。
「勝手に重要な事を決めないでいただきたい」
高圧的な物言いにムッとする。
たかが決闘。
おそらく子どもの時の勝負の決着。
それがそう重要な事案とは思えない。
反発する心の動きを抑えられない。
「もう決めたのだから覆しません。絶対にします」
長い付き合いの宰相。
無言の睨み合いが続く。
「わかりました。ですが日取りはこちらで決めさせていただきます」
ミヤビに非礼の詫びと退出の挨拶をして足早に去っていく宰相。
「なんかごめんね、ミヤ。日取りは勝手に決められるみたい。それまでは待っててね」
「当然でしょ」
頬を赤く染めたままやや呆れたように返された。
「よかったねミヤ」
壁際に控えていたアイリがニヤニヤした顔で近づいてきた。
嬉しそうに小さく頷くミヤビ。
キャーキャーと黄色い悲鳴。
全く理解できない空気。
一人取り残された気分でその日は終わった。
翌日、父王に呼び出され何度も念押しされあまりのしつこさに思わず魔法をぶち込みそうになってしまった。
ごねる父を宥める母。
何故か祝福の言葉を送ってくる弟。
最後は涙目になった父にもうモモコも大人になったんだなとしみじみ言われた。
不思議な事に一週間でミヤビは帰国していった。
その日から怒涛の日々。
山と積まれる仕事。
何の公式行事があるのかその合間に採寸の嵐。
日付の感覚など忘れてしまった頃にその日はやってきた。
970 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/20(木) 17:28:59.32 0
何故か朝早く起こされとても決闘するのには向いていない華やかな礼装をさせられた。
侍女達の恐ろしい空気に飲まれて文句も言えない。
式典が行われる大広間へ連れて行かれる。
ズラリと並ぶ王族、貴族。
気のせいでなければ武の国の王族、貴族も。
全く理解できない状況。
開かれた大広間の扉からどう見ても花嫁衣装のミヤビ。
心の中で大きな悲鳴をあげた。
一体これは何?
流されるように進んでいく式典。
色々な式典の慣れから体は自動的に動くのに反して頭は大混乱。
厳かな空気の中、出てきたのは数日前作成した魔石。
魔石の交換が行われてやっとこれは自分とミヤビの結婚式かもしれないと自覚し始めた。
一体何がどうしてこうなったのか。
パレードのための衣装替え。
ミヤビと離れ、着せ替えられる。
あの日からずっとニヤニヤ顔でいるアイリ。
人払いしてアイリと二人きりになる。
「ねぇアイリぃこれってどういう事?」
「どういう事って覚えてないの?」
ニヤけたままの表情。
説明を求めるとあっさりとした答えが返ってきた。
「モモ、再開してすぐにミヤにプロポーズしてたじゃん」
いやあんな古式ゆかしいプロポーズ生で見れるなんてっとクネクネし始めるアイリ。
プロポーズ
その言葉から自分の行動を思い返す。
微かにひっかかる有名な物語。
実話を元にしたそれの中に出てくる今は廃れた風習。
国を跨いでの風習のために自然に消えていったそれ。
自分の使うのと同じ武具に魔石を入れて贈るプロポーズ。
了承するなら相手の胸に手を軽くあて、武具を受け取る。
武の国と魔法の国の間だけで成立するプロポーズ。
決闘の申し込みから転じたその様式。
全くその通りの行動をした。
何故気付かなかったのか。
ヒントはたくさん転がっていたのに。
頭を抱えているうちに時間がきた。
たくさんの国民が大通りを埋め尽くしていた。
笑顔を貼り付けてのパレード。
自分にとっては降って湧いたような結婚。
今更、勘違いしてましたとも言えない。
困惑したまま最後まで式典を乗り切った。
ぐったりと疲れた。
自室で王族にはあるまじきだらしなさでベッドに横たわる。
それも束の間、扉の開く小さな音。
隣で幸せそうに笑っていたミヤビは純粋に可愛いとも綺麗とも思える。
一週間の滞在期間中、不意に見せる表情や仕草にドキッとしたことは正直に言えばある。
ただ今の今まで友人と認識していたミヤビ。
そのミヤビが今、薄着一枚で恥じらいながらベッドに入ってきた。
心の中で大絶叫した。
およそ十年ぶりに会う遠い武の国の姫。
成人前に諸外国を周り見聞を広めるのが武の国の王侯貴族の習わし。
武の国の姫の滞在期間は一ヶ月が予定されていた。
ここ数ヶ月は準備の為に城中の空気が慌ただしかった。
幼い頃、あの時もおよそ一ヶ月滞在していた武の国の姫のミヤビ。
最初に会った時はまだお互いが幼かったせいで衝突ばかりでお付きの者達がハラハラとしていた。
武を尊ぶお国柄、やや脳筋より。
何の話題からかは忘れたがここ魔法の国は、後ろからセコいとか貧弱な肉体とか喧嘩を売られた。
それを黙って聞いているほど大人しい性格ではなかった。
魔法の国の王族の直系の第一子は基礎以外は何故か戦略級魔法しか使えない。
そのため自衛手段として第一子は武の国から招致した指南役から武術を習うのが通例。
第一子の例にもれず戦略級魔法しか使えない自分は相当鍛えられていた。
迷わず買った喧嘩は引き分け。
何故かその日から一緒に鍛錬する日々。
最後まで勝負は引き分けだった。
最終的には友情と言うべきか良きライバルというべきかそれなりにいい関係が築けた。
今でも年に数回は修行の成果のようなものが手紙で送られてきていた。
一番最近送られてきた手紙にはA級指定されていた魔物を単独撃破したとか。
それを見て思い出した幼い頃のミヤビの言葉。
ドカンと派手に威力の大きい魔法ならカッコいい。
武の国に生まれた人間は殆どが生活魔法以外は肉体強化にしか魔力を使えない。
王侯貴族はそれ以外にその血筋による特殊魔法が一種使えるのみ。
ミヤビも例にもれず肉体強化と特殊魔法のみ。
ちまちました魔法なら肉体強化で全てぶっ飛ばせるという思考。
実際それができるのが武の国の人間。
そのためミヤビのような思考は一般的といえば一般的。
久しぶりの再会。
何かお祝いに作るのもいいかもしれない。
そう思ったのが全ての失敗の始まりだった。
968 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/20(木) 17:26:31.19 0
豊富にある魔力と資材。
与えられている実験室にこもって作り上げた仕込み杖。
一見すればただのどこにでもある魔法の杖。
しかし魔石にふんだんに充填された魔力によって少しの魔力で地形が変わる程の一発を打ち出せるふざけた代物。
刀身は名匠に頼んだ至高の一品。
ただの剣としても十分に使える。
会心の出来。
ギリギリ間に合ったそれを手に自室に戻った。
嘆く侍女達の手により盛りに盛られたドレス姿に。
長く退屈な公式行事。
久しぶりに目にしたミヤビは変わらないようで随分と綺麗になっていた。
翌日、早速約束を取り付けてミヤビの部屋へ。
立ち上がって笑顔で出迎えてくれたミヤビ。
少しでも早く見せたくて挨拶もそこそこに箱に入れていた杖を取り出した。
「久しぶり。いきなりで悪いんだけどこれ受け取ってくれる?」
何故か受け取らないミヤビ。
何故か騒つく周囲。
「いらない?」
俯くミヤビの顔を覗き込むと何故か真っ赤で。
首を捻っているとポンと軽く胸にミヤビの左手が触れた。
離れない手にどういうことかと一瞬悩むがすぐに思い出された。
大分昔に廃れているがこれは決闘の申し込み。
承諾は確か同じように左手で相手の胸辺りに手を当てるはず。
左手に杖を持っているのも忘れてその動作をしてしまった。
自然と杖を押し付けるような形になった。
しっかりミヤビの両手に握られた杖。
これで決闘の約束はなった。
久しぶりの勝負に心が弾む。
「いつにする?今すぐでもいいけど」
「いますぐはムリでしょ」
真っ赤な顔のまま蚊の鳴くような声で呟かれた。
何故か部屋を慌ただしく出て行くお付きの者達。
「じゃあいつにする?」
困惑したような表情で無言で見つめ返される。
ちょっと潤んだような瞳にどこか落ち着かない気分になった。
流れる沈黙。
969 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/20(木) 17:27:28.95 0
バンッと普段なら考えられないような音を立てて宰相が飛び込んできた。
「勝手に重要な事を決めないでいただきたい」
高圧的な物言いにムッとする。
たかが決闘。
おそらく子どもの時の勝負の決着。
それがそう重要な事案とは思えない。
反発する心の動きを抑えられない。
「もう決めたのだから覆しません。絶対にします」
長い付き合いの宰相。
無言の睨み合いが続く。
「わかりました。ですが日取りはこちらで決めさせていただきます」
ミヤビに非礼の詫びと退出の挨拶をして足早に去っていく宰相。
「なんかごめんね、ミヤ。日取りは勝手に決められるみたい。それまでは待っててね」
「当然でしょ」
頬を赤く染めたままやや呆れたように返された。
「よかったねミヤ」
壁際に控えていたアイリがニヤニヤした顔で近づいてきた。
嬉しそうに小さく頷くミヤビ。
キャーキャーと黄色い悲鳴。
全く理解できない空気。
一人取り残された気分でその日は終わった。
翌日、父王に呼び出され何度も念押しされあまりのしつこさに思わず魔法をぶち込みそうになってしまった。
ごねる父を宥める母。
何故か祝福の言葉を送ってくる弟。
最後は涙目になった父にもうモモコも大人になったんだなとしみじみ言われた。
不思議な事に一週間でミヤビは帰国していった。
その日から怒涛の日々。
山と積まれる仕事。
何の公式行事があるのかその合間に採寸の嵐。
日付の感覚など忘れてしまった頃にその日はやってきた。
970 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/20(木) 17:28:59.32 0
何故か朝早く起こされとても決闘するのには向いていない華やかな礼装をさせられた。
侍女達の恐ろしい空気に飲まれて文句も言えない。
式典が行われる大広間へ連れて行かれる。
ズラリと並ぶ王族、貴族。
気のせいでなければ武の国の王族、貴族も。
全く理解できない状況。
開かれた大広間の扉からどう見ても花嫁衣装のミヤビ。
心の中で大きな悲鳴をあげた。
一体これは何?
流されるように進んでいく式典。
色々な式典の慣れから体は自動的に動くのに反して頭は大混乱。
厳かな空気の中、出てきたのは数日前作成した魔石。
魔石の交換が行われてやっとこれは自分とミヤビの結婚式かもしれないと自覚し始めた。
一体何がどうしてこうなったのか。
パレードのための衣装替え。
ミヤビと離れ、着せ替えられる。
あの日からずっとニヤニヤ顔でいるアイリ。
人払いしてアイリと二人きりになる。
「ねぇアイリぃこれってどういう事?」
「どういう事って覚えてないの?」
ニヤけたままの表情。
説明を求めるとあっさりとした答えが返ってきた。
「モモ、再開してすぐにミヤにプロポーズしてたじゃん」
いやあんな古式ゆかしいプロポーズ生で見れるなんてっとクネクネし始めるアイリ。
プロポーズ
その言葉から自分の行動を思い返す。
微かにひっかかる有名な物語。
実話を元にしたそれの中に出てくる今は廃れた風習。
国を跨いでの風習のために自然に消えていったそれ。
自分の使うのと同じ武具に魔石を入れて贈るプロポーズ。
了承するなら相手の胸に手を軽くあて、武具を受け取る。
武の国と魔法の国の間だけで成立するプロポーズ。
決闘の申し込みから転じたその様式。
全くその通りの行動をした。
何故気付かなかったのか。
ヒントはたくさん転がっていたのに。
頭を抱えているうちに時間がきた。
たくさんの国民が大通りを埋め尽くしていた。
笑顔を貼り付けてのパレード。
自分にとっては降って湧いたような結婚。
今更、勘違いしてましたとも言えない。
困惑したまま最後まで式典を乗り切った。
ぐったりと疲れた。
自室で王族にはあるまじきだらしなさでベッドに横たわる。
それも束の間、扉の開く小さな音。
隣で幸せそうに笑っていたミヤビは純粋に可愛いとも綺麗とも思える。
一週間の滞在期間中、不意に見せる表情や仕草にドキッとしたことは正直に言えばある。
ただ今の今まで友人と認識していたミヤビ。
そのミヤビが今、薄着一枚で恥じらいながらベッドに入ってきた。
心の中で大絶叫した。
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