まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

603名無し募集中。。。2017/12/28(木) 20:01:13.770

小悪魔たちは、それからなにやらごにょごにょと話し合っていた。
漏れ聞こえる会話から、どうやら召還の手順について打ち合わせているようだった。
みやはできることもなく、体育座りで岩壁に寄りかかりそれをぼんやり眺めていた。

悪魔たちの中ではすっかり『愛し合う異種の2人」なんて構図ができている印象で
どんな回覧板が回っているのか知らないけど
ちょっと誤解もあるのかな、とみやは思う。
その違和感は、うまく説明できないんだけど。

別に、手に手を取って一緒に暮らし始めたわけじゃない。
ももにとっては、生き延びるための手段の一つだっただろうと思うし
みやにとっては、手痛い失敗を取り戻すための猶予だと思ってたところがあった。
まあ悪くないよね。そんな始まりだったし
知る程に馴染んでいったけど、胸の中に特別な想いを育ててきたんじゃないかなって
それは、そう思うんだけど
私たちは、何か確かめ合ったわけじゃないんだ。

ももとの間には、何もない。
びっくりするくらい、何もないんだよ。
みやは抱えた膝に顔を埋めた。

クリパに行かないって、ももは言った。
一緒にいようって言ったら、嬉しそうな顔した。
なのにどうして、こんな風に、信じられなくなるんだろう。

ももが出ていけないから、一緒にいる。
いつの間にか、みやにとってすごく大切だったはずの結界が
みやの気持ちに蓋をするようになった。
一緒にいたいから。じゃなくて、出て行けないからいるだけじゃん。
ももの気持ちを考えようとすると、いつだって、もう一人のみやが出てきて、そんなことを言う。
そしたらもう、みやは言い返せなくなって
よくわからなくなるから。

ももは優しいから、みやに気を使って行かないって言ってくれてるのかなとか
だけど熊井が迎えに行けば、ももは本性を取り戻して
みやのことなんて忘れて魔界に戻ってしまうんじゃないかとか。

「お待たせしました、方針が決まりました!」
梨沙の声に、みやははっと顔を上げた。

606名無し募集中。。。2017/12/28(木) 20:04:43.100

「やなふなが、人間界へお連れします」
梨沙がそう言うと、やなみんとむすぶは並んでうやうやしく礼をした。
「このような大任を賜り、緊張しますが、がんばります!」
「召還されても、そのニンゲンとは契約しないということに決定、ちゅうことは、逃げ足が肝心や、と……」
「掃除サボれるからだよ」ちぃが含み笑いすると
「えっそうなの!?」とまいがむすぶをガン見する。むすぶは仰け反ってプルプルと首を振った。

「何点か注意事項がありまして。空中にぱかっとゲートが開くので、そこから落ちるんですね。
やなふながしっかり両脇を抱えつつさっと羽を出し、一緒に召還地点に飛び降ります」
「そこに、人がいるってことになるよね」
「そうなんです。でも、今回はそのニンゲンの話を聞いているヒマはないので
その場から、素早く立ち去らなくてはいけません」
梨沙はそう言うと、やなみんを手招きした。
やなみんがさきほどのスマホのような機器を手に、駆け寄ってくる。
「今まさに、悪魔を召還しようというニンゲンが、私たちにとっても非常に都合のいい場所に。
こちらが、その、リアルタイム映像になります」
見せられた画面には、薄暗い部屋が映し出されていた。
上から見下ろしているような荒い映像、その中央に、女の子が一人、座り込んでいるように見えた。
背後からで、顔はわからない。
「ここに、落ちると思ってください」と梨沙が言った。

「そんな映像なんて出たっけ」とちぃが言う。
「このあいだのアップデートから、召還地点が事前にサーチできるようになったんですよ」
「やなみんえらいね。ちぃなんてゲームしかアップデートしてないわ」
「なんか……すごいね。悪魔界っていま、そんなことになってるんだ……」
思わずみやが呟くと、梨沙がニヤリと笑った。
「そのうち、悪魔バスターの個人情報解析アプリなんて、出来ちゃうかもしれませんよ?」

むすぶとやなみんに挟まれ、両腕を取られた。
「ちょっと高さはありますが、私たちがしっかり掴まえているので、安心してください」
「降りた!と思ったら逃げる!この召還ぶっちは失敗できん」
「……わ、わかった」
握る手に汗が滲む。みやは緊張しながら、2匹の言葉に頷いた。

「今回、私たちが協力したことは、お母さんには内緒にしておいてください」
向かい側に立った梨沙が囁く。
「え?」
「言わぬが花です」

「マーク完了しました!」横のやなみんが声を上げた。
「よし、行くで!」
巻き付いているむすぶの腕に、ぎゅーっと力の入るのがわかった。

611名無し募集中。。。2017/12/28(木) 20:09:45.620

足下が抜けるような感覚があった。落ちる!そう思った瞬間に
みやの目の前、視界が開けていた。
見回す間もなく、すぐ下に着地する。暗闇の中、どすん!と何かの上に落ちた。
両腕が解かれる。

懐かしい匂い。ここは。
立ち竦んでいると、むすぶに背中を叩かれ、促された。
暗い中、前を行くやなみんが重そうな引き戸を開けているのが見える。外は、夜だ。
「ちょっと!何!?」
背後から上がった知らない声は、やなみんを召還した、あの画像の女の子だろう。
「ごめんねっ!また今度!」むすぶが叫びながら、みやの背中をさらにぐいと押した。
細く開けられた扉の隙間から外へ出される。つんのめるように数段の石段を降りた。
振り返ると、やなみんが開いた扉を閉めているところだった。

体育倉庫だ。
頭の上で、ざざっと木々の揺れる音がした。見回すと、そこはよく知っている
駅までの道の途中にある、高校の裏庭だった。

「驚きが先に立ってすぐには追いかけてこないと思いますが、急いでこの場を離れましょう」
やなみんはそう言うと、さっとみやの手を掴んだ。
何故か恋人繋ぎで手を引かれ、先を行くむすぶを追うように、みやは駆け出していた。

走りながら夜空を仰ぐ。
戻って来た。
戻って……来れたんだ!
目の淵に何か滲んだ。少し歪んだ視界の先に、外へ繋がる裏門が見えた。

「おうちまでお送りしたいところですが、お母さんに見つかってもあれなので、私たちはこのへんで」
「よっしゃ大成功っ!やったねっ!」
むすぶにハイタッチを求められ、みやは手を合わせた。
「ありがとう。みんなにも、お礼を言っておいて」
「お礼なんて」
「そう。うちらがしたくて勝手にしたことや」
思わず頭を撫でていた。むすぶはくすぐったそうに笑った。

614名無し募集中。。。2017/12/28(木) 20:12:48.090

ちっちゃい2匹に手を振って別れを告げると
みやはおうちに向かう上り坂を走り出していた。
一体どれだけの時間、魔界にいたんだろう。
この人気のなさは、深夜だろうか。

ももは。そう考えて、みやの胸は詰まった。
ももは、怒っているだろうな。
外へ出るなと言われていたのに、まんまと連れ出されたみやのこと。
大掃除の途中で、ほったらかしにしちゃったし。
梨沙には言うなって言われたけど、どうやって戻ってきたのか、聞かれたら何て言おう。
下手な嘘ついてもすぐバレそうだし。
気を失って、次に気が付いたら道ばたにいたってことにしようかな。
うん。そうしよう。それなら追求のしようもないだろうし
気絶してたからわかんないって押し通せるかもしれない。

そういえばお腹もすいたし、時間わかんないけど
帰ったらご飯つくろう。
クリスマスの料理つくろう。
おいしいもの食べて、機嫌直してもらって、それから

ちゃんと、みやの気持ちを話してみたい。
これまで考えることから逃げてきた、ももの気持ちを聞いてみたい。
心から、正直に言ったら
きっとももだって、話してくれるよね。

門扉を開けると、玄関へのアプローチはなんだか、足音を潜めたくなった。
だってちょっと、ばつの悪い気分。
起きてるかな。不貞腐れて寝てるかもしれない。
最初に、何て言おう。
玄関のノブに手をかける。鍵はかかっていない。
そっと引いた。
家の中は真っ暗で、しんと静まり返っていた。

時刻は深夜の1時過ぎだった。クリスマスイブになっていた。
ももは、おうちのどこにも、いなかった。

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