まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

248 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/17(土) 22:07:41.46 0

「みやちゃん、起きて」

肩を揺すられる感覚。耳元で誰かの声が聴こえる。まぶたが重くて開かない。
触れる手を払い、再び夢の世界へ戻ろうとするが、行く手を阻まれる。人が気持ちよく寝てるのに、邪魔する人はわるいひと。

「うるさい……」
「遅刻しても知りませんよ」

温もりが離れた。これでまた寝られる。そう思っていたら何やらいい匂いがしてきた。途端、徐々に頭が覚醒してくる。でもまだ、ベッドとお別れはしたくない。

「起きないと全部食べちゃいますからね」

これはきっと、トーストとスクランブルエッグの匂いだ。食欲と寝たい気持ち。天秤にかけて食欲が勝った瞬間、ゆっくりと起き上がる。
ベッドの上に座って、のびをした。ふと前を見ると、にへがテーブルの側に座っている。私の方を見て、クッションをぽんぽん叩いて隣へ座れと促してきた。
まだ働いていない頭ではなぜ目の前ににへがいるのか理解ができなかったが、ああそうだ、昨日泊まったんだと思い出す。

のそりと歩き出し、にへの隣に座った。匂いで想像した通りの朝食だった。プラス、コーヒーとサラダ。
いいお嫁さんになるよと心の中だけで思う。伝えたら調子に乗るから。

朝ごはんを食べ終わり、顔を洗って化粧をした頃くらいにやっと少しずつ目が覚めてきた。
ふと時計を見ると、もう出るべき時間で、慌てて着替えてバッグを掴む。

「気をつけてね、みやちゃん」
「ん、また後でね」

挨拶もそこそこに部屋を飛び出した。

にへとの逢瀬は、ももに引退を告げられたあの夜以降続いていた。
一回だけという約束が破られてしまったら、二回も三回も同じだという勢いで。ついに今日に至っては、初めてにへの家で朝を迎えてしまった。
誰かと過ごす夜を知ってしまったら、一人の夜には戻ることができなかった。寂しさに押しつぶされてしまうのが怖くて仕方がないから。
でも、終わった後は決まって虚しさでいっぱいになる。そう、分かっているのに、一人ぼっちになるのが怖くてまた会ってしまう。
不実な関係の終着点が、見えなかった。

249 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/17(土) 22:08:19.66 0

−−−−

早足で駅まで向かったら、なんとか乗りたかった電車に間に合って、ほっと一息。レッスンスタジオにも無事に予定通りに到着した。

楽屋が近付くにつれて、楽しそうな話し声が漏れ聞こえてきた。聞き慣れたその声は、今この場にいるはずのない人のもので。
確かめたい気持ちが体を突き動かし、足取りが速くなる。楽屋の扉に近付くにつれ、声は大きくなっていき、疑問は確信へ変わった。
扉を押し開くと、そこには想像していた通りの人物がそこにいて。

「あー!みやー!」

甲高い声が私を呼ぶ。千奈美は私を認めると、満面に笑みを湛えてこちらへ走り寄ってきた。私からも千奈美の方へ向かい、その勢いを保ったまま抱擁を交わす。

「ちょ、待って。なんでいんの?」
「surprise帰国なのです」

思ったままを口にすると、流暢な英語交じりの回答。結果は、千奈美の思惑通り。一瞬夢かと思ったくらい−−とは少々大袈裟か。
若干抱き心地が柔らかくなったな。なんて思いながら久々の再会への喜びを噛み締める。

千奈美は仕事のために一時帰国したとのこと。今日はオフだが、久々にメンバーに会いたいと現場に顔を出しにきたそうな。
驚いた顔が見たいからと黙って帰国するのはイタズラ好きの千奈美らしい。

250 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/17(土) 22:08:31.85 0

「あ、おかえり」
「ただいまー!I'm home!」

驚きのあまり言い忘れていた言葉を口にする。元来高いテンションが、海外仕様にアップグレードされているような気がする。
千奈美の笑顔を見ていると、自然とこちらも笑っていて、楽しい気持ちになる。太陽のような人だなと改めて感じた。

「さっきからこのテンションでもう疲れちゃった」

キャプテンはそうこぼしながらも嬉しそうに笑っている。部屋に満ちるこの温かい空気感が、懐かしくて仕方がなかった。

「キャプテンは千奈美と違ってお仕事なんだから、疲れさせないでよ」
「うちも今日はオフだけど、これからはHello! Project adviserとしてのお仕事があるんですぅ」
「さっきからなんなのその発音」

やたらとあっちで身につけた発音を披露してくる千奈美に二人して笑っていると、聞き慣れた足音が近づいてくる。
あ、と思った5秒後、扉が開いた。

251 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/17(土) 22:08:51.30 0

ドアを開いて中に入ってきたのはやっぱり、ももだった。楽屋にいる千奈美の姿を見て、私のように驚く−−かと思いきや、嬉しそうに笑って。

「おかえり」

そう声をかける。優しい声だった。どう見ても、元々千奈美の訪問を知っていたかのような態度だ。
一気に頭の中にクエスチョンマークが浮かび、胸の中がざわついた。

「……ももは知ってたの?」

堪えきれず、疑問が口をついて出た。声が思いの外低くなってしまって、感情が表に出てしまっていないか焦りを覚える。
私の質問を聞いて、ももと千奈美は目を合わせた。千奈美が不機嫌そうな顔になったかと思うと、ももは打って変わってご機嫌な表情。

「……たまたま連絡取ってたときに、うっかり口滑らしちゃって」
「渋谷の有名なパンケーキ屋さんあるでしょ?そこが美味しいってメンバーが言ってたから、行きたいんだーって言ったら、『あ、そこ今度キャプテンと行くよ!』って。え、今度って何?ってなるよね」

おかしそうに笑って事の顛末を説明してくれるもも。そうなんだ、バカだねーなんて笑って応えてみるも、頭の中は上手く笑えているかどうかの心配でいっぱいだった。だって、何も面白くないもん。

「でもほんと、ちーちゃんってもものこと好きだよねー」
「はあ〜?調子乗んなよ嗣永」
「暇さえあればテレビ通話したりLINEしてきたりしたもんねー」

してないからとムキになって否定する千奈美の肩を小突く指先に視線が行く。やめろー、またまたーとじゃれ合う声が一気に遠くなった。
−−私は、ももと連絡なんてほとんど取らないのに。なんで、千奈美とは取るの。
胸の内がどろりとした感情に染まっていく感覚がして、指先がすうと冷えた。腹の底がざわついて気持ち悪い。
二人の戯れを見ていられない。どうしてだろう。現役時代は、こんなにも苦しくなかったはずなのに。
いてもたってもいられず、飲み物買ってくると適当な言い訳をして楽屋から出た。

252 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/17(土) 22:09:15.45 0

しばらく歩いた先に休憩所があった。そこのベンチに体を投げるように腰かける。
眩しく光る自販機を見るでもなく眺めて、胸の中のモヤモヤをため息と共に吐き出そうとした。が、心は全く晴れない。
千奈美のことは大好きなのに、憎しみに近い感情を抱いてしまうのが嫌だった。なんで千奈美が。千奈美はももの何なの。頭に浮かぶそれらを、振り払おうと立ち上がる。
飲み物買ってくるって言ったし、なんか買わなきゃ。せっかくだしみんなの分でも買おうかなと自販機へ近付く。お金を入れて、まずはキャプテンの飲み物−−とボタンを押そうとした瞬間。

「みや」

呼びかけられ振り返ると、ももが立っていた。驚いて、とく、と軽く心臓が跳ねる。そんな私の態度に気付くわけもないももは、徐々にこちらに近付いて、私の隣に並んだ。

「私も喉渇いちゃって」

自販機の光に照らされる横顔がとても綺麗で、見惚れそうになるのを振り切り、私も飲み物たちへ視線を移した。
ももはこれでしょと緑茶のボタン押そうとすると慌てて腕を掴まれる。たったそれだけのことで、子どもみたいに胸は高鳴って。ももへの気持ちを嫌でも思い知ってしまう。
結局、ももがこれと指差した桃のジュースを買ってやった。

253 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/17(土) 22:09:40.90 0

「みや……あんまり元気ない?」

キャプテンと千奈美と自分の分を買って、一つずつ手に取っていると、後ろから問いかけられた。一瞬動きがフリーズしてしまったが、不自然にならないようにすぐに動きを再開し、そんなことないよと口先だけで返事をする。

「そっか」
「うん。ももこそ最近忙しくて疲れてるんじゃない?」

話題を自分からももへ転換した。並んで歩きながらももの近況を聞く。忙しいけど、カントリーの子たちと過ごす時間が楽しいから平気。そう話す表情はなんだかとても大人びて見えた。
ふと、ももがこちらを向いて、視線がぶつかる。すると、そのまま顔を近づけてきた。驚いて少し距離を取ると、ももは少し首を傾げて。

「みやさあ……」
「っ、なに?」
「香水変えた?」

そう口にした。

一瞬、何のことか分からず、「え?変えてないよ?」と答えそうになった。発声しようとしたまさにその瞬間に、息を呑む。
−−今日、にへの家から来たからだ。
答えてしまわなくて良かった、とほっと胸を撫で下ろし、頭の中で言い訳を組み立てる。
変えたと言うと嘘になる。が、変えていないとしたら匂いが違う理由が説明できない。
回らない頭をフル回転させて、なんとか出来た答えを読み上げた。

「シャンプーのテスターもらったから、それ使ってみたんだ。それかも」
「へえ。いい匂いだね」

−−みやの香水の匂いの方が好きだけど。

その後に続く言葉を聞いて、耳を疑った。え、と驚いてももの方を見ると、いつもと何ら変わらない表情で。ももにとっては何気ない一言だと分かる。
たとえそうだとしても、思わず口角が上がってしまうくらい嬉しくなる自分は、呆れるくらい単純だ。

254 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/17(土) 22:10:32.94 0

−−−−

ベッドに体を投げ出す。我が家のように振るまう私に対して、家主は咎めるでもなく微笑んだ。
今日はBuono!でのリハの後、PINK CRES.でのダンスレッスンだった。レッスンを終える頃にはくたくたになっていた。
これは身体的な疲労だけではなく、今日一日、起伏が激しい感情の動きに翻弄されたからかもしれない。
やきもちを妬いて、些細な一言で嬉しくなって、また二人のやりとりを思い出して胸の中がもやもやして。そんなことの繰り返しで、抜け出せない迷路に迷い込んだみたいだった。

「みやちゃん、なんか疲れてますね」

そう言いながらにへは私の頭をくしゃくしゃと撫でる。その手のひらは心地よくて、されるがままになった。もつれ合った糸が解けるような感覚を覚える。

「なんかありました?」
「……んー」
「言いたくなかったら、いいんですけどね」

さらさらと行き来する指先のぬくもりを感じながら、言葉を探す。
私たちのきっかけは、にへにももへの気持ちがバレてしまったからだけど、あれ以降そこに触れることはなかった。
何か理由があってのことではなく、ただ機会がなかっただけなのだが、何故か心に引っかかりを覚え、言葉にしにくい。

261 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/17(土) 22:18:15.20 0

「そういえば今日、嗣永さんと会いました」
「へえ、そうなんだ」
「……徳永さんと仲良さそうに話してました」

にへの言葉を聞いた瞬間、二人のやりとりがフラッシュバックした。影を潜めていたどろどろした感覚が胸の中に広がっていく。徐々に満ちていくそれで、胸が張り裂けそうだった。
肩が引かれる感覚がし、体を起こすと唇が降ってくる。慣れた柔らかさを受け止めていると、かちりと視線がぶつかって。

「……私のこと、嗣永さんだと思って、いいですよ」

一瞬、意味を図りかねていると手を取られて、胸元へ誘導される。指先が柔らかさに触れた瞬間、頭に血がのぼる感覚を覚えて。
誘うような視線に惹かれるまま、唇を重ねた。柔らかさを味わいながら、徐々ににへの体を倒していく。
初めて見下ろす表情は、どこか寂しそうで。もしかしたら、にへも私と同じなのかなと思った。

躊躇いが、私の動きを一瞬止めたけれど。今日、目の前で繰り広げられた二人のじゃれ合いが頭の中に浮かんだ瞬間、また胸が苦しくなって。
その光景を振り払うかのように、にへの首筋に顔を埋めた。

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