最終更新:ID:721mfCsSmA 2017年07月09日(日) 00:12:10履歴
599 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/04(火) 23:39:24.82 0
あの一件以来、一日に最低一回はくるようになった連絡。
連絡しても以前より遥かに長い返事。
それに忙しいはずなのに時間を見つけては姿を見せるようになった。
かつてないほどまめ。
夜に迷惑じゃなかったら行っていいかと連絡が来る事も増えた。
深夜にふらふらと現れる桃子。
無理しなくていいよと言ってもみやに会ったら疲れが飛ぶ気がするからなんて。
最初それを聞いた時は本当に桃子か疑ってしまった。
「もも大丈夫?」
忙しすぎておかしくなった?と言ってしまいそうなのをぐっと堪えたのに十分伝わっていたようで。
心外だと言うかのようにむっとした表情。
「みやが思ってる以上にみやのことが好きなんだよ」
証明しようかと笑う桃子。
嫌な予感しかしない。
「今はいい」
「遠慮しなくていいから」
そのまま朝まで。
ベッドから起き上がれない自分とは違い妙に元気に仕事に行く桃子。
割と淡白だったはずなのに深夜に訪れると休みでもないのに朝まで付き合わされるようになった。
される方とする方では消耗の度合いが違うとはいえその体力に慄然とした。
まるで付き合いたてのような熱さ。
むしろ今まで付き合っていた期間で一番恋人らしいかもしれなかった。
600 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/04(火) 23:40:27.14 0
五月になり仕事で会う時間が増えたかわりに減ったプライベートで会う時間。
おかげで慢性化しそうだった腰痛からは解放された。
それは有り難かったけれど少し物足りないような気分。
そう思ってしまったことに一人で赤面してしまったところを桃子に見られからかわれたのは記憶に新しい。
仕事中でも無意識に近い距離。
少しでも動けば触れそうな程の顔の近さ。
気づけばどこかしら触れている体。
二人きりになると素知らぬ顔でに体に指を這わしてくる桃子。
放っていたら少しずつ怪しく動く指先。
「ちょっももっ」
手を掴んで止めると不満そうな顔。
「外でこういう事しないで」
「みやがいるのが嬉しくってつい」
全く反省の色の見られない桃子。
本当にどうかしたとしか思えない程に多いスキンシップ。
「みやはいや?」
「仕事中はダメ。休憩中でも」
はーいとわざとらしい返事。
「本当にどうしたのもも。忙しすぎておかしくなった?」
「そーかも。最近、みや不足が深刻で」
くたっと力を抜いてもたれかかってくる。
首筋に桃子の顔が埋まる。
チリっと僅かな痛み。
「ももっ」
慌てて桃子の体を押し退ける。
「これ以上は何もしないから許してにゃん」
「許しません。どうすんのこれ」
「さぁ」
無責任に笑う桃子。
この後の事を考えると頭が痛くなった。
601 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/04(火) 23:41:25.67 0
「みやちゃんこれ気づいてます?」
すっと首筋を撫でられビクッと反応してしまう。
「何?」
「ここ赤くなってますよ」
「…虫刺されかな」
「ベタすぎません?」
可笑しそうに笑うにへ。
「嗣永さんですよね?付き合ってるんですか?」
「何言ってんのにへ」
「違いました?」
ちらりと動いた視線。
ドアの先、何かあるのかとそっちを見ようとしたら肩を押された。
壁際に押しやられ俗にいう壁ドン状態。
「でもさっき見ちゃったんですよ。付き合ってないならいいですよね」
こんなのつけてるみやちゃんが悪いんですよ
ぺろっと桃子に付けられた痕の上を舐められる。
「にへっ」
「だって付き合ってないなら遊びってことですよね?なら私とも遊んでくださいよ」
「本気でそう言ってるの?」
「冗談です」
怖いくらいの真顔が180度変わる。
「ちょっとからかいすぎました。でもそれ本当に目立ちますから隠した方がいいですよ」
602 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/04(火) 23:42:33.26 0
六月に入ってからこの間までの熱烈さはなんだったのかという程に桃子からの接触がなくなった。
連絡はおはようかおやすみだけ。
少し寂しさは感じたが桃子でもさすがにラストに向けて余裕がなくなってるのだろうと。
それに自分自身が忙しくなってきていたせいかあまり気にしなかった。
たまに事務所で会う時も忙しそうなだけで何かおかしな様子も見せなかったから余計に。
ただプライベートで一度も会わなかったことだけが少し気がかりだった。
あっという間に6月30日。
打ち上げに少し遅れてきた桃子は最後まで残っていた。
その場ではあまり話せなかったけれど後でいいやと気にしなかった。
解散になりてっきり一緒に帰るものと思っていたのに一人で帰って行った桃子。
よく思い返せばあまり合わなかった視線。
嫌な予感がした。
翌日から一言の連絡も来なくなった。
直接会わないとと危機感を募らしていたところに桃子からの電話。
どちらの家でもなく珍しく外で会おうと言う桃子。
指定された人気の無い喫茶店。
既に桃子は来ていて外を眺めていた。
「ごめん。遅れた?」
「ううん。ちょっと早く来すぎただけだから」
桃子の前に置かれたカップの中は空だった。
ひとまず適当に飲み物を注文した。
店員が運んでくるまで無言のままどこか遠くを見ていた桃子。
「別れようか」
こちらを見る事なく告げられた言葉に耳を疑う。
「えっ?」
「別れよう」
聞き間違いじゃなかった。
約半年前、聞きたくないと思った言葉。
勘違いだった事にほっとしたのに。
610 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/05(水) 01:18:48.13 0
「いきなりなんでっ」
「声大きいよ」
静かに窘められる。
今日会ってから一度も変わらない表情。
「これからは今まで以上に生活がすれ違うと思う。だからそうなる前に終わらそう」
「そんな理由なら絶対いや」
「そんなってひどいなぁ。最近ずっと考えてたのに。それにもう私からの連絡なくても何ともないみたいだし」
「そんなわけないじゃん」
つい大きくなる声。
いくら人が少ないとはいえさっきから注目を浴びているのがわかる。
「出ようか」
ため息とともに立ち上がった桃子。
喫茶店からそう離れてない距離。
連れて来られたのは今まで桃子が借りていたのとは違うマンション。
「引っ越したの?」
「少し前にね」
そこで何故かすこし顔を歪ませる桃子。
「あんまり知られたくなかったんだけど」
「そんなにみやと別れたいの?」
「そんなにみやが別れるの反対するとは思わなかった」
「なんでそう思うの?別れたいわけないじゃん」
「そう?二瓶ちゃんとのほうがお似合いじゃない?」
くっと皮肉げに笑う桃子。
611 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/05(水) 01:19:47.07 0
最近すごく仲良いみたいだし。
二瓶ちゃんは仕事中でもいいんだよね。
この前もみやの腰に手まわしてたのすごく自然だったし。
そうつらつらと話す桃子。
「なんでいきなりにへなの?てかももイベント来てたの?」
黙ったまま何も答えない桃子。
あれ以来妙に増えたにへからの際どいスキンシップ。
意図がわからないそれを適当に受け流していたけれどこんな事になるならちゃんと拒否しておけばよかった。
「何?それが別れようって言った原因なわけ?」
ただ少し多いだけのスキンシップ。
それだけで別れるという発想に飛んでしまう桃子に脱力してしまう。
それと同時に少し嬉しくなる。
「もものそれ嫉妬じゃん。にへとはなにもないよ。それだけで別れるって言わないでよ」
「…なにもない?」
不機嫌そうな低い声。
「首筋にキスされてもなにもないんだ」
何を言われているのか一瞬、理解できなかった。
思い当たる出来事はキスマークを指摘されたあの時。
あれを見られていたとは思わなかった。
「あれはにへがいきなり。それにキスされたわけじゃないし好きであんな事になったわけじゃない」
「満更でもなさそうだったように見えたけど?みやはちょっと無防備すぎだよ」
強く抗議しても聞く気がない様子の桃子。
「二瓶ちゃんみやの事、好きみたいだよ」
「そんなわけないでしょ」
612 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/05(水) 01:20:37.57 0
「少し話す機会があってね。みやと付き合ってるか聞かれた」
「それで?」
「みやが言ってないのに勝手に言うのも悪いと思ったから誤魔化したよ。そしたら二人とも答えられない程度の関係なんですねだって」
それとにへが好きがどう繋がるのかわからない。
「ねぇそれ…」
「だったらみやちゃん私がもらってもいいですよねって。何も答えられなかったよ」
聞きかけた言葉は途中で止まる。
まさかそんな事、にへが言うなんて信じられない。
「本当にそんな事言ったの?」
「うん。それと最初は確かに嫉妬してただけだけどね。二瓶ちゃんとの仲も疑ってたし」
「だからにへとは何もないって」
「うん。だろうね」
今までの態度はなんだったのかあっさり認める桃子。
「みやの態度見てたらね何もなんだろうなって」
「だったらもうこの話、お終いでいい?にへにはどういうつもりか聞いとくから」
別れずに済みそうな展開にほっとした。
電話を取り出しにへに電話をかけはじめる。
鳴るコール音。
すぐに出ないにへ。
「話しお終いじゃないよ」
静かに首を横に降る桃子。
「どう言う事?」
「それとは別にね別れようと思った。というか気づかされたのかな?」
珍しく話しながら考えを纏めているような桃子。
613 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/05(水) 01:21:35.41 0
「これからは全く違う世界で生活していくわけでしょ?すれ違いが多くなるだろうし結婚みたいに明確なものがないからいくらでもお誘いはあるでしょ。たぶん、すごく嫉妬すると思う」
まさか自分が連絡の回数を気にするようになるなんて思わなかった。
自嘲するように呟く桃子。
「こんなにみやの事が好きだったんだなって。今回の二瓶ちゃんの事で気づかされた。みやのこと縛りたくないし。些細なことで嫉妬する自分にも疲れそうだし。だからここで別れる方がいいかなってそう思った」
「それ意味わかんないんだけど」
「意味わかんなくていいよ」
「さっきも言ったけどそんな理由なら別れない」
お互い好きなのに別れるなんてそんなのドラマや漫画だけで十分。
自分がそんな立場になるなんて納得できないししない。
「みやがもものだってわかればいいんでしょ。知り合い全部にももと付き合ってるって言う?それとも海外に行って結婚する?」
「そんなの事務所が許してくれないよ」
「じゃあどうしたら…」
『あのーもしもーし』
突然聞こえてきた声に驚く。
二人でテーブルに置かれたスマホに目を向ける。
繋がった状態の電話。
「にへ?」
『あっやっと気づいてくれた。とりあえずスピーカーにしてもらっていいですか?』
言われた通りにすると途端に部屋に響くにへの声。
614 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/05(水) 01:27:24.90 0
『嗣永さん、この前はすみませんでした。あれ嘘です。ちょっと煽ってみたんです』
「はぁ?何それ」
思わず自分が反応してしまう。
『ごめんなさい。でもみやちゃん言ってくれないなんて水臭いじゃないですか。お二人ともバレバレなのに言ってくれないから』
にへが何を言ってるのかわかっているはずなのに理解できない。
『でもまさかこんな深刻な事になるとは思わなくて。お二人とてもお似合いですから別れないで下さい。見てるのが楽しいんです』
何か必死に言い募るにへ。
人から聞かされる自分たちの姿というのは恥ずかしすぎる。
何故他人に熱く自分達の事を語られているのか。
「もういいよ、二瓶ちゃんわかったから」
桃子も同じ気持ちなのかどこか気の抜けた声。
『わかってくれましたか。よかったです。もう、絶対に手出しませんから信じて下さい。みやちゃんは私が責任持って悪い虫から守りますから嗣永さん安心して下さい』
本当に申し訳ありませんでしたと最後に言って切れた電話。
にへの土下座する姿が目に浮かぶ。
完全に気の抜けた空気に変わった室内。
「別れなくていいよね」
少し強く言うと力無く頷く桃子。
脱力してべたっとテーブルに顔をつけた桃子に問いかける。
「なんで引っ越したの?別れるつもりだったから?」
「それは違う理由」
「じゃあなんで?」
のっそりと立ち上がると小さな引き出しから何かを取り出して戻ってくる桃子。
「みやと一緒に住みたくてちょっと広いこの部屋に引っ越したの。今の今まであんな話してたくせに虫がいいと思うだろうけどこれ受け取ってくれる?」
差し出された鍵。
「いつ、引っ越してきていい?」
「今日以降ならいつでもいいよ」
疲れ切ったように笑う桃子に笑ってしまった。
あの一件以来、一日に最低一回はくるようになった連絡。
連絡しても以前より遥かに長い返事。
それに忙しいはずなのに時間を見つけては姿を見せるようになった。
かつてないほどまめ。
夜に迷惑じゃなかったら行っていいかと連絡が来る事も増えた。
深夜にふらふらと現れる桃子。
無理しなくていいよと言ってもみやに会ったら疲れが飛ぶ気がするからなんて。
最初それを聞いた時は本当に桃子か疑ってしまった。
「もも大丈夫?」
忙しすぎておかしくなった?と言ってしまいそうなのをぐっと堪えたのに十分伝わっていたようで。
心外だと言うかのようにむっとした表情。
「みやが思ってる以上にみやのことが好きなんだよ」
証明しようかと笑う桃子。
嫌な予感しかしない。
「今はいい」
「遠慮しなくていいから」
そのまま朝まで。
ベッドから起き上がれない自分とは違い妙に元気に仕事に行く桃子。
割と淡白だったはずなのに深夜に訪れると休みでもないのに朝まで付き合わされるようになった。
される方とする方では消耗の度合いが違うとはいえその体力に慄然とした。
まるで付き合いたてのような熱さ。
むしろ今まで付き合っていた期間で一番恋人らしいかもしれなかった。
600 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/04(火) 23:40:27.14 0
五月になり仕事で会う時間が増えたかわりに減ったプライベートで会う時間。
おかげで慢性化しそうだった腰痛からは解放された。
それは有り難かったけれど少し物足りないような気分。
そう思ってしまったことに一人で赤面してしまったところを桃子に見られからかわれたのは記憶に新しい。
仕事中でも無意識に近い距離。
少しでも動けば触れそうな程の顔の近さ。
気づけばどこかしら触れている体。
二人きりになると素知らぬ顔でに体に指を這わしてくる桃子。
放っていたら少しずつ怪しく動く指先。
「ちょっももっ」
手を掴んで止めると不満そうな顔。
「外でこういう事しないで」
「みやがいるのが嬉しくってつい」
全く反省の色の見られない桃子。
本当にどうかしたとしか思えない程に多いスキンシップ。
「みやはいや?」
「仕事中はダメ。休憩中でも」
はーいとわざとらしい返事。
「本当にどうしたのもも。忙しすぎておかしくなった?」
「そーかも。最近、みや不足が深刻で」
くたっと力を抜いてもたれかかってくる。
首筋に桃子の顔が埋まる。
チリっと僅かな痛み。
「ももっ」
慌てて桃子の体を押し退ける。
「これ以上は何もしないから許してにゃん」
「許しません。どうすんのこれ」
「さぁ」
無責任に笑う桃子。
この後の事を考えると頭が痛くなった。
601 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/04(火) 23:41:25.67 0
「みやちゃんこれ気づいてます?」
すっと首筋を撫でられビクッと反応してしまう。
「何?」
「ここ赤くなってますよ」
「…虫刺されかな」
「ベタすぎません?」
可笑しそうに笑うにへ。
「嗣永さんですよね?付き合ってるんですか?」
「何言ってんのにへ」
「違いました?」
ちらりと動いた視線。
ドアの先、何かあるのかとそっちを見ようとしたら肩を押された。
壁際に押しやられ俗にいう壁ドン状態。
「でもさっき見ちゃったんですよ。付き合ってないならいいですよね」
こんなのつけてるみやちゃんが悪いんですよ
ぺろっと桃子に付けられた痕の上を舐められる。
「にへっ」
「だって付き合ってないなら遊びってことですよね?なら私とも遊んでくださいよ」
「本気でそう言ってるの?」
「冗談です」
怖いくらいの真顔が180度変わる。
「ちょっとからかいすぎました。でもそれ本当に目立ちますから隠した方がいいですよ」
602 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/04(火) 23:42:33.26 0
六月に入ってからこの間までの熱烈さはなんだったのかという程に桃子からの接触がなくなった。
連絡はおはようかおやすみだけ。
少し寂しさは感じたが桃子でもさすがにラストに向けて余裕がなくなってるのだろうと。
それに自分自身が忙しくなってきていたせいかあまり気にしなかった。
たまに事務所で会う時も忙しそうなだけで何かおかしな様子も見せなかったから余計に。
ただプライベートで一度も会わなかったことだけが少し気がかりだった。
あっという間に6月30日。
打ち上げに少し遅れてきた桃子は最後まで残っていた。
その場ではあまり話せなかったけれど後でいいやと気にしなかった。
解散になりてっきり一緒に帰るものと思っていたのに一人で帰って行った桃子。
よく思い返せばあまり合わなかった視線。
嫌な予感がした。
翌日から一言の連絡も来なくなった。
直接会わないとと危機感を募らしていたところに桃子からの電話。
どちらの家でもなく珍しく外で会おうと言う桃子。
指定された人気の無い喫茶店。
既に桃子は来ていて外を眺めていた。
「ごめん。遅れた?」
「ううん。ちょっと早く来すぎただけだから」
桃子の前に置かれたカップの中は空だった。
ひとまず適当に飲み物を注文した。
店員が運んでくるまで無言のままどこか遠くを見ていた桃子。
「別れようか」
こちらを見る事なく告げられた言葉に耳を疑う。
「えっ?」
「別れよう」
聞き間違いじゃなかった。
約半年前、聞きたくないと思った言葉。
勘違いだった事にほっとしたのに。
610 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/05(水) 01:18:48.13 0
「いきなりなんでっ」
「声大きいよ」
静かに窘められる。
今日会ってから一度も変わらない表情。
「これからは今まで以上に生活がすれ違うと思う。だからそうなる前に終わらそう」
「そんな理由なら絶対いや」
「そんなってひどいなぁ。最近ずっと考えてたのに。それにもう私からの連絡なくても何ともないみたいだし」
「そんなわけないじゃん」
つい大きくなる声。
いくら人が少ないとはいえさっきから注目を浴びているのがわかる。
「出ようか」
ため息とともに立ち上がった桃子。
喫茶店からそう離れてない距離。
連れて来られたのは今まで桃子が借りていたのとは違うマンション。
「引っ越したの?」
「少し前にね」
そこで何故かすこし顔を歪ませる桃子。
「あんまり知られたくなかったんだけど」
「そんなにみやと別れたいの?」
「そんなにみやが別れるの反対するとは思わなかった」
「なんでそう思うの?別れたいわけないじゃん」
「そう?二瓶ちゃんとのほうがお似合いじゃない?」
くっと皮肉げに笑う桃子。
611 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/05(水) 01:19:47.07 0
最近すごく仲良いみたいだし。
二瓶ちゃんは仕事中でもいいんだよね。
この前もみやの腰に手まわしてたのすごく自然だったし。
そうつらつらと話す桃子。
「なんでいきなりにへなの?てかももイベント来てたの?」
黙ったまま何も答えない桃子。
あれ以来妙に増えたにへからの際どいスキンシップ。
意図がわからないそれを適当に受け流していたけれどこんな事になるならちゃんと拒否しておけばよかった。
「何?それが別れようって言った原因なわけ?」
ただ少し多いだけのスキンシップ。
それだけで別れるという発想に飛んでしまう桃子に脱力してしまう。
それと同時に少し嬉しくなる。
「もものそれ嫉妬じゃん。にへとはなにもないよ。それだけで別れるって言わないでよ」
「…なにもない?」
不機嫌そうな低い声。
「首筋にキスされてもなにもないんだ」
何を言われているのか一瞬、理解できなかった。
思い当たる出来事はキスマークを指摘されたあの時。
あれを見られていたとは思わなかった。
「あれはにへがいきなり。それにキスされたわけじゃないし好きであんな事になったわけじゃない」
「満更でもなさそうだったように見えたけど?みやはちょっと無防備すぎだよ」
強く抗議しても聞く気がない様子の桃子。
「二瓶ちゃんみやの事、好きみたいだよ」
「そんなわけないでしょ」
612 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/05(水) 01:20:37.57 0
「少し話す機会があってね。みやと付き合ってるか聞かれた」
「それで?」
「みやが言ってないのに勝手に言うのも悪いと思ったから誤魔化したよ。そしたら二人とも答えられない程度の関係なんですねだって」
それとにへが好きがどう繋がるのかわからない。
「ねぇそれ…」
「だったらみやちゃん私がもらってもいいですよねって。何も答えられなかったよ」
聞きかけた言葉は途中で止まる。
まさかそんな事、にへが言うなんて信じられない。
「本当にそんな事言ったの?」
「うん。それと最初は確かに嫉妬してただけだけどね。二瓶ちゃんとの仲も疑ってたし」
「だからにへとは何もないって」
「うん。だろうね」
今までの態度はなんだったのかあっさり認める桃子。
「みやの態度見てたらね何もなんだろうなって」
「だったらもうこの話、お終いでいい?にへにはどういうつもりか聞いとくから」
別れずに済みそうな展開にほっとした。
電話を取り出しにへに電話をかけはじめる。
鳴るコール音。
すぐに出ないにへ。
「話しお終いじゃないよ」
静かに首を横に降る桃子。
「どう言う事?」
「それとは別にね別れようと思った。というか気づかされたのかな?」
珍しく話しながら考えを纏めているような桃子。
613 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/05(水) 01:21:35.41 0
「これからは全く違う世界で生活していくわけでしょ?すれ違いが多くなるだろうし結婚みたいに明確なものがないからいくらでもお誘いはあるでしょ。たぶん、すごく嫉妬すると思う」
まさか自分が連絡の回数を気にするようになるなんて思わなかった。
自嘲するように呟く桃子。
「こんなにみやの事が好きだったんだなって。今回の二瓶ちゃんの事で気づかされた。みやのこと縛りたくないし。些細なことで嫉妬する自分にも疲れそうだし。だからここで別れる方がいいかなってそう思った」
「それ意味わかんないんだけど」
「意味わかんなくていいよ」
「さっきも言ったけどそんな理由なら別れない」
お互い好きなのに別れるなんてそんなのドラマや漫画だけで十分。
自分がそんな立場になるなんて納得できないししない。
「みやがもものだってわかればいいんでしょ。知り合い全部にももと付き合ってるって言う?それとも海外に行って結婚する?」
「そんなの事務所が許してくれないよ」
「じゃあどうしたら…」
『あのーもしもーし』
突然聞こえてきた声に驚く。
二人でテーブルに置かれたスマホに目を向ける。
繋がった状態の電話。
「にへ?」
『あっやっと気づいてくれた。とりあえずスピーカーにしてもらっていいですか?』
言われた通りにすると途端に部屋に響くにへの声。
614 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/05(水) 01:27:24.90 0
『嗣永さん、この前はすみませんでした。あれ嘘です。ちょっと煽ってみたんです』
「はぁ?何それ」
思わず自分が反応してしまう。
『ごめんなさい。でもみやちゃん言ってくれないなんて水臭いじゃないですか。お二人ともバレバレなのに言ってくれないから』
にへが何を言ってるのかわかっているはずなのに理解できない。
『でもまさかこんな深刻な事になるとは思わなくて。お二人とてもお似合いですから別れないで下さい。見てるのが楽しいんです』
何か必死に言い募るにへ。
人から聞かされる自分たちの姿というのは恥ずかしすぎる。
何故他人に熱く自分達の事を語られているのか。
「もういいよ、二瓶ちゃんわかったから」
桃子も同じ気持ちなのかどこか気の抜けた声。
『わかってくれましたか。よかったです。もう、絶対に手出しませんから信じて下さい。みやちゃんは私が責任持って悪い虫から守りますから嗣永さん安心して下さい』
本当に申し訳ありませんでしたと最後に言って切れた電話。
にへの土下座する姿が目に浮かぶ。
完全に気の抜けた空気に変わった室内。
「別れなくていいよね」
少し強く言うと力無く頷く桃子。
脱力してべたっとテーブルに顔をつけた桃子に問いかける。
「なんで引っ越したの?別れるつもりだったから?」
「それは違う理由」
「じゃあなんで?」
のっそりと立ち上がると小さな引き出しから何かを取り出して戻ってくる桃子。
「みやと一緒に住みたくてちょっと広いこの部屋に引っ越したの。今の今まであんな話してたくせに虫がいいと思うだろうけどこれ受け取ってくれる?」
差し出された鍵。
「いつ、引っ越してきていい?」
「今日以降ならいつでもいいよ」
疲れ切ったように笑う桃子に笑ってしまった。
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