まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

553 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/03(金) 05:19:01.15 0

「ひどい顔」

行くあてなど他になく店に戻った。
閉店作業でちょうど外に出ていた店長。
開口一番に吐き出されたセリフはいつもなら食ってかかるがそんな気力も起きない。
手を引かれ中に入る。
中には店長の友人がまだいてヤッホーっと陽気に手を振ってくるが返す余裕はなかった。
それが伝わっているのか少し離れたテーブル席を勧められた。

「雅ちゃんと喧嘩でもした?」

対面に座り直球で聞いてくる店長。

「告白されました」

キョトンとした顔でこちらを見てくる店長。

「えっそれでなんでそんな顔してるの?」

付き合ってなかったのーと店長の友人から驚きの声が飛んでくる。

「断りました」

「はっ?」

心底信じられないと言わんばかりの表情。

「だって絶対勘違いですよ」

「ももちゃんばかじゃないの。人の気持ち勝手に決めつけるなんて信じらんない」

「だって好きになる理由がないじゃないですか。それに今、付き合ってる子がいますし」

完全に絶句してしまった店長。
はぁーと聞いた事のないくらい深く長いため息。
なんでそんな事になってんのと嘆くように呟かれた。

「付き合ってるって真剣に?」

「はい」

「だったら少し気まずいかもしれないけど普通にしてればいいの。それでももちゃんは高校生らしく清いお付き合いをする。はい、解決。さあ帰る」

入口を示されるも立ち上がれない。

554 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/03(金) 05:20:26.94 0

「遊びでもいいからって言われて泣かれて」

立ち上がっていた店長がもう一度、席に腰掛けた。

「そこまで言った相手の気持ち疑うとかバカなの?」

「だってあの日、たぶん去年の誕生日から好きだったってありえないですよ」

勘違いでも雅に好きと言われてどこか嬉しいと思ってしまった。
全く捨てきれていない雅への恋情。
一過性のものでも手に入れたいと心がぐらついた。
その心情を吐露すると呆れられた。

「だったら素直にその付き合ってる子に言って別れたらいいの」

相手の気が済むまで殴られたらと言葉を足される。
そう言われても別れるという選択肢は選べない。
友人との約束。
なによりあの後輩を泣かせることはしたくなかった。
それに自分が決めたことを一時の気の迷いで曲げたくなかった。

「それはできません。恋ではないですけど大事にしたい子なんです」

「とりあえずももちゃんはどうしたいの?」

「あの子が別れたくなるまではあの子を大事にしたいんです。雅さんはただの親戚のお姉さんと思えるように努力します。だから今晩だけここに泊めてください」

複雑そうな表情でまたため息。

「だったらそれ、捨てな」

指さされる胸元の指輪。
肌に馴染んだ金属の感触。
外そうと手を伸ばしても外す決心がつかない。

555 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/03(金) 05:21:58.80 0

「それすらできないならその付き合ってる子がかわいそう。全然、大事にできてないの。それなら別れた方がよっぽど大事にしてると思うの」

辛辣な言葉だがそれは確かにその通りで。
意思に反して躊躇う指先。

「上手く外せないので外してもらえませんか?」

本当にいいの?と念を押す店長に頷く。
首から外れるチェーンの感触。
さすがに自分で処分できないので甘えとはわかっていても店長に頼んだ。
店長のポケットに仕舞われた指輪。
未練たらしくも目で追ってしまう。
それに気づいて店長は呆れたように苦笑した。

「なんでそんなに雅ちゃんの事、諦めたがるの?例え勘違いでも本気になるかもしれないとは思わないの?」

「だって普通の幸せを手に入れられるのに一時の気の迷いで時間を浪費するなんて不幸じゃないですか。まあ何より自分が逃げたいだけなんです」

だってあっさり間違いだったとかって別れられたら自分がどうなるかわからないじゃないですか。
紛れのない本心。
できの悪い子を見るような目で見つめられた。
パンっと一つ手を打ち明るい声をあげた店長。
根掘り葉掘り聞かれる後輩との事。
今まで口を挟まず静かにしていた店長の友人が口を開いた。

「その子ってすごく背が高い?」

「男性並みの身長ですね」

「くまいちょーって熊井って名字?」

「そうですけどご存知なんですか?」

嘘でしょと呟いた店長の友人は珍しく渋い表情で、頭痛を堪えるかのように頭を抱えた。
どこか虚ろな目で世間は狭いねぇと聞いた事のあるセリフ。

556 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/03(金) 05:23:05.35 0

「どうしたの?」

「それうちのバイトちゃん」

「社員とバイトと友人の親戚で三角関係って事実は小説よりも奇なりってね」

少し面白がっているような店長。
ジト目でそれを見遣る店長の友人。
予想外の事実に自分も頭を抱えたくなる。
まさか二人が知り合いだとは思ってもみなかった。

「二人、仲良いんですか?」

「姉妹みたいに」

言葉少なく返ってくる。
あー明日からどーしよと叫ぶ店長の友人。
同じ事を自分も叫びたい。
店長の友人と二人、小さく唸りながら頭を抱えた。

「とりあえず明日、あっ今晩か。今晩の雅ちゃんの誕生日のお祝いどうするの?」

店長のその一言にハッとする。
すっかり頭から抜け落ちていた。
二年連続で雅の誕生日を台無しにしている自分に嫌気がさす。

「どーしよー」

もはや思考しているとは思えない口調。

「あっ失恋を慰める会にするとか」

「バカなの?」

グダーッとテーブルに突っ伏している店長の友人。

「ももちゃんのばかー」

その通り過ぎて言い返す言葉もない。
二人でぐだぐだと言い合ってるのに口を挟む事もできない。

「とりあえずももちゃんは明日は来ないで」

さあ一旦帰るよという店長の声に促され店内から出た。

557 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/03(金) 05:24:20.84 0

翌朝、雅の出勤時間を過ぎてから家に帰った。
人の気配のない事に安心する。
自室にある綺麗にラッピングされた箱。
お互い誕生日が近い知人がいるからとあの子と一緒に選んだプレゼント。
自分のセンスであげるのは躊躇われて結局、買ったのはあの子と同じもの。
似た趣味の人だねと笑っていたのがまさか同じ人物にあげるものだなんて。
まさかそんなものを渡せるわけがない。
第一フラれた相手からなんて貰いたいとは思わないだろうけど。
机の上に置いていたそれをゴミ箱に放り込んだ。
本来は昼にバイトを入れていた。
夜は雅の誕生日を祝う予定だった。
急に空いてしまった予定に時間を持て余してしまう。
学生らしく勉強をしても身が入らない。
少し進めては手が止まる。
遅々として進まない時間。
諦めて寝てしまうかとベッドに寝転がった途端に雅の母親からの電話。
日を置かずに電話をしているせいか非常に珍しい。
慌てて電話に出る。
申し訳なさそうな口調で今から行っても良いかと聞かれた。
それに了承して電話を切った。
近くまで既に来ていたのか想定よりも随分と早く雅の母親は現れた。
手には雅の好物だという料理と小さなケーキの小箱。
誕生日だから何かしたくってと笑う雅の母親。
これ一緒に食べようと思ってと別に分けられた料理を持ち上げる。
予想外に一緒に昼食を共にする。
当たり障りのない会話が続く。
食事が一段落つき食後のお茶に移り雰囲気が変わった。
今朝あの子から珍しく電話があったんだけどと切り出されヒヤリとする。

「喧嘩でもしたの?」

「いえ、喧嘩はしてません。ちょっとした行き違いみたいなものがあって」

いつもは変わった事もないし普通に生活してると報告するだけの雅。
それが今朝はもし雅が家に戻ったら桃子がどうなるかを聞いてきたらしい。
どうしたのか聞いてももう出勤時間だからと電話を切られそれで心配になり様子を見に来たらしい。
本当の事を言うわけにもいかずどうにか誤魔化す。
最後は納得してくれたのか長居してごめんねとこれからもよろしくねと帰って行った。
なんとか笑顔でいたつもりだがチクチクと心が痛み表情が引きつっていなかったか気が気ではなかった。
冷蔵庫に入った料理。
雅にどう伝えるべきか。
それにこれからどう関わるべきなのか。
雅はどうしたいのか。
ちゃんと話し合うべきなのはわかっていても今はどうすればいいかわからない。
自分が信用できない。
するべき対応はわかっているつもりでも雅と二人きり。
その状況で万が一また雅に告白されたら本当に自制できるか自信がなかった。
考えても答えのでない事案に現実逃避した。

560 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/03(金) 07:04:56.56 0

連打されるインターホン。
あまりのうるささに目が覚めた。
ドアを開けると店長の友人と雅。

「おそーい。電話もしたのに」

その苦情は耳を素通りした。
それよりも雅の状態の方に意識が傾けられる。
意識があるのかないのか瞼は閉じられほとんど体重を店長の友人に預けている状態。

「なんてことしてるんですか。お酒、弱いの知っててここまで飲ましますか」

「やっぱり失恋はお酒でぱーっと忘れちゃうのが一番かなって」

店長の友人もお酒が入っているのだろういつも以上にヘラヘラした表情で悪びれずに言い放った。
何を言ってもおそらく無意味。
ため息まじりに上がって下さいと言うもあっさりと断られた。
下で待たせてるからじゃああとよろしくねーと雅を玄関に座らせ、そのまま帰って行った。
飲む度にこの状態になる雅。
本人ももう少し断るとか何か対策を講じるべきだろうと呆れとも心配ともつかない思いがよぎる。
うつらうつらとしている雅の腕を肩にまわして立ち上がらせた。
もはや慣れてきた酔った雅の介抱。
それでも至近距離にある雅の存在には心乱された。
雅を部屋に連れて行き、ヘッドボードに凭れかからせるように座らせる。
一旦、部屋から出て必要なものを持って戻った。
水をベッドサイドに置きメーク落としシートで顔拭う。
そのヒンヤリとした感触にか雅の目が薄っすら開かれた。
視線はどこもとらえておらずぼんやりとしている。

561 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/03(金) 07:06:08.14 0

「お水飲めそうですか?」

声に反応して視線がからむ。

「のませて」

その言葉に従って口元までコップを運んでも口は開かれない。

「少しでもいいから飲んで下さい」

拒否するようにコップを持っている方の腕を押された。

「ももがのませて」

腕が伸びてきて捕らえられる。
ゆっくり近づいてくる雅の顔。
避けなければいけないのに顔をそらすことができない。
重なる唇。
求められているのが伝わってくるキスに胸が締め付けられた。
泣きたくなるような幸福感。
誘われるままに深くなる口付け。
荒い吐息と水音だけが室内に響く。
雅の体に手を伸ばした。
ゴトンと鈍い音。
足にかかった水の冷たさに我に返った。
ひどい裏切り。
また同じ失敗をするところだった。
名残惜しがる心を意思の力で捩じ伏せて雅から体を離した。

「なんでみやじゃだめなの」

声も無くポタポタと涙をこぼす雅。

違う。みやがいい。

思わず口から出そうになったのは剥き出しの本心。
そんなこと言うわけにはいかなくて。
しがみつかれて泣く姿に堪らなくなる。
口を開くと溢れてしまいそうで唇を噛み締めた。
口内に広がる鉄臭さ。
それが溢れ出しそうな本心を留めてくれた。
それでも無意識に抱きしめていた。
雅が泣き疲れて眠ってもその側から離れ難かった。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます