863名無し募集中。。。2017/11/16(木) 22:59:40.070
設定:ももち→家庭教師(バイト)、雅ちゃん→ももちの生徒
「ねーえー。モモせんせー、おなか空きませんか」
テーブルに突っ伏して可愛い声を上げた生徒は、ちらりと目線をこちらに向けて先ほどと同じ言葉を口にする。
30分前にあれだけあったやる気はどこにいったんだ、と言いたくなるのを我慢して、シャープペンシルを放り投げた頭を参考書で軽く叩いてやった。
たいばつはんたい、と呟く彼女に反省した様子は少しも見られない。
「それ、10分前にも言ってたよね?」
「だって本当に空いたんだよ?」
そろそろママから声がかかる時間だし。そわそわしていたのはそのせいか、と思い当たった桃子は、わざと渋い顔を作る。
「いいから、早くこのページ終わらせて。ここまでやってからご飯にするって自分で言ったんでしょ」
ただでさえスローペースでしか進んでいない白いページを指先でとんとん叩くと、途端に不機嫌になった彼女は唇を尖らせる。
これで18歳だというのだから驚きだ。東京の女子高生は皆大人びた人ばかりかと思っていたが、今目の前にいる教え子に関しては見た目は大人、素顔は子供、という言葉がぴったりだ。
友人の佐紀に紹介されて訪れた夏焼家で初対面した清楚なセーラー服は、何日も経たずに化けの皮を脱いだ。
髪を茶色に染めた大人っぽい彼女の中にいたのは、一度口を開けば夢みたいな恋物語ばかりの恋に恋しているお子様だった。
自分とはタイプが違いすぎて最初の頃こそいくらなんでも二人きりは、と少しだけ躊躇していたが、最近はそんなことすら忘れかけている。テーブルに突っ伏した彼女相手にそんな心配はさらさら必要ない、と気付くのに時間はかからなかった。
同じやりとりを三回ほど繰り返し、結局折れたのは今日も桃子の方だった。うきうきとリビングに食事を取りに行く雅を見送り、一人残った雅の部屋で大きく伸びをする。
生まれて初めて出会った未知の生物に週二回勉強を教える代わりに、食事の面倒を見て貰うようになってそろそろ二ヶ月になる。
大学が忙しくなかなか定期的なバイトが入れられない上に食生活にまで気が回らない自分にとっては、願ったり叶ったりのバイト先ではある、たしかにあるのだが。
(私、こんなんでバイト代貰っていいのかなあ……)
赤点こそ免れるようになったものの、彼女の成績がぎりぎり低空飛行なのは相変わらずだ。
このままでは寺田大学の名が廃ると思い色々と策を練ってみてはいるのだが、気付くといつも彼女のペースに巻き込まれてなかなかうまくいかない。それどころか、彼女の不可解なペースに巻き込まれている自分もそれなりに気に入っているから困る。
ノックと同時に聞こえてきた声に呼ばれ、ため息を付きながら扉に向かう。
ドアを開けると、大きなお盆を抱えた彼女がおまたせしましたー!と満面の笑みを浮かべて立っていた。
「ありがとう、モモ先生」
「こちらこそ。今日はなぁに?」
なんだろ?とはぐらかされるのをわかっていて今日も訊ねる。
このやりとりがだんだん楽しくなってきただなんて、なんとなく認めたくない。
設定:ももち→家庭教師(バイト)、雅ちゃん→ももちの生徒
「ねーえー。モモせんせー、おなか空きませんか」
テーブルに突っ伏して可愛い声を上げた生徒は、ちらりと目線をこちらに向けて先ほどと同じ言葉を口にする。
30分前にあれだけあったやる気はどこにいったんだ、と言いたくなるのを我慢して、シャープペンシルを放り投げた頭を参考書で軽く叩いてやった。
たいばつはんたい、と呟く彼女に反省した様子は少しも見られない。
「それ、10分前にも言ってたよね?」
「だって本当に空いたんだよ?」
そろそろママから声がかかる時間だし。そわそわしていたのはそのせいか、と思い当たった桃子は、わざと渋い顔を作る。
「いいから、早くこのページ終わらせて。ここまでやってからご飯にするって自分で言ったんでしょ」
ただでさえスローペースでしか進んでいない白いページを指先でとんとん叩くと、途端に不機嫌になった彼女は唇を尖らせる。
これで18歳だというのだから驚きだ。東京の女子高生は皆大人びた人ばかりかと思っていたが、今目の前にいる教え子に関しては見た目は大人、素顔は子供、という言葉がぴったりだ。
友人の佐紀に紹介されて訪れた夏焼家で初対面した清楚なセーラー服は、何日も経たずに化けの皮を脱いだ。
髪を茶色に染めた大人っぽい彼女の中にいたのは、一度口を開けば夢みたいな恋物語ばかりの恋に恋しているお子様だった。
自分とはタイプが違いすぎて最初の頃こそいくらなんでも二人きりは、と少しだけ躊躇していたが、最近はそんなことすら忘れかけている。テーブルに突っ伏した彼女相手にそんな心配はさらさら必要ない、と気付くのに時間はかからなかった。
同じやりとりを三回ほど繰り返し、結局折れたのは今日も桃子の方だった。うきうきとリビングに食事を取りに行く雅を見送り、一人残った雅の部屋で大きく伸びをする。
生まれて初めて出会った未知の生物に週二回勉強を教える代わりに、食事の面倒を見て貰うようになってそろそろ二ヶ月になる。
大学が忙しくなかなか定期的なバイトが入れられない上に食生活にまで気が回らない自分にとっては、願ったり叶ったりのバイト先ではある、たしかにあるのだが。
(私、こんなんでバイト代貰っていいのかなあ……)
赤点こそ免れるようになったものの、彼女の成績がぎりぎり低空飛行なのは相変わらずだ。
このままでは寺田大学の名が廃ると思い色々と策を練ってみてはいるのだが、気付くといつも彼女のペースに巻き込まれてなかなかうまくいかない。それどころか、彼女の不可解なペースに巻き込まれている自分もそれなりに気に入っているから困る。
ノックと同時に聞こえてきた声に呼ばれ、ため息を付きながら扉に向かう。
ドアを開けると、大きなお盆を抱えた彼女がおまたせしましたー!と満面の笑みを浮かべて立っていた。
「ありがとう、モモ先生」
「こちらこそ。今日はなぁに?」
なんだろ?とはぐらかされるのをわかっていて今日も訊ねる。
このやりとりがだんだん楽しくなってきただなんて、なんとなく認めたくない。
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