まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

305名無し募集中。。。2017/12/14(木) 22:27:18.330

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6:24

 くしゅん。ずいぶん可愛らしいくしゃみに振り返ると、鼻の頭を赤くして手袋をはめた左手をひらひらかざす彼女がいた。ポケットの中で繋いでいる右手が甘えるようにきゅ、と動くのがくすぐったい。

「ねえ見て。先生の手袋、穴空いてる」

 今までだったらはあ、と曖昧な相槌を打つところだが、ぎゅっと腕にしがみつく身体の柔らかさを知ってしまった今、どういう顔をすればいいのかわからない。
彼女やその友人たちからは年上に見えないとからかわれ続け、でもそのおかげで彼女の両親から信頼を得ていたというのに、ただ今は頭が混乱するばかりだ。
「いらないなら、返して」
「やーだ。寒いもん」
 先生が両手繋いでくれるなら返してあげる、と笑う雅の肩を寄せる動きにすらまだどきどきしてしまう。

 ふわりと香る匂いがさっきまでちびちび飲んでいた甘酒のそれだと気付き、らしいなあと笑って指先でほんのり色づいた頬を辿ってみる。
「……ワガママだなあ」
 彼女からはいつも美味しそうな幸せの匂いがしていて、それが何なのか気になって仕方なかった。

 まさか手に入れられるなんて思っていなかったけれど、ずっと密かに恋い焦がれていた彼女は〈大事な人〉になり、その柔らかい右手は自分の手の中にある。そっと触れた唇は何度触れても飽きないし、無条件で甘い。
 
 
 初日の出を見てから帰ると言い張る恋人に負け、二つ手前の交差点を左に曲がる。この先の緩い坂を突き当たりまで行くと、高台に小さな公園があるのだ。
 信号待ちの間に今夜何度目かわからないキスをして、どちらからともなく笑う。誰かに見つかっちゃったらどうしよう、なんて物騒なことをぼそっと言われても自重できないのはお互い様だ。
「……ちゃんと内緒にできるかなあ、みやあんまり自信ない」
 青信号に代わり、歩き出そうとした彼女がふとそんな可愛いことを言うので、つい抱き寄せてしまった。あぶない、と首を竦めた身体を抱きしめ、そんな必要ないから、と告げると彼女はきょとんとして振り返る。
「……なんで?」
「なんでって、ちゃんと挨拶するつもりだし」
「え、挨拶って、それって」
「まあ新年早々パパさんに叩き出されるかも知れないけど」

 覚悟を決めた時点でそうするつもりだったので、いつもうまく言えない自分にしてはめずらしくするする言葉が出てきた。腕の中の雅は目を丸くしたまま、どんどん頬が染まっていく。
 まだぎこちないけれど、ずっと胸の中で繰り返してきた名前を呼ぶ。それだけでこんなに幸せになれるなんてほんの数時間前まで知らなかったのに、今の自分は間違いなく世界中の誰より幸せだと思う。

「私のこと、幸せにしてくれるんでしょ?」
 本当はあなたを幸せにする、と言うべきなのだろうけれど、これからのことを考えるとそれはまだ簡単に言えない。けれど、彼女を自分のものにしたい気持ちは本物だった。
 わざとひねくれた言葉を選んでいることに気付いた彼女は、一瞬眉を顰めた後満面の笑みを浮かべて頷く。

「みやは……毎日、365日、ずっとモモの隣にいるよ」
 それは彼女からの最上級の愛の告白だった。

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