笹原のお願い
「で、話ってなんだ？」
部室には、二人きり。笹原とワシ。いや、俺。
自分のなかでまでキャラを作るのが癖になっとるというのは、なんとも空しいのう。
「あの…夏コミのことに関してなんですけれど…」
笹原は、何故か俺に視線を合わせようとしない。
まあ、二人きりという、いつもと違う雰囲気から変な緊張をしているのかもしれん。
俺も、春日部さんとの時はひどい目にあったしな。
…なに赤くなっとんの？ ワシ？
「？ 斑目さん、聞いてますか？」
笹原が、不振な顔でこちらを見てきた。
いかんいかん、どうやら変な事を気にしすぎて上の空になっていたらしい。
「いやいや、聞いておるぞ。 で、夏コミがなんじゃ」
「ええ、夏コミなんですけれど、大野さんがコスプレをして売り子をしてくれるってことになっているじゃないですか。だけど、大野さんに全部任せっきりというのも、悪いと思うんですよ。大野さんだって、コスプレ広場にいきたいだろうし…」
たしかにそうだな。大野さんだって、田中と…。
…なにジェラシーもやしとんの？ ワシ？
「…というわけなんですけれど、どうでしょう？」
しまった、また余計な事を考えていて、聞き逃してしまった。
あわてて、「あ、ああ…いいんじゃないかな」と、適当な相槌を打ってしまう。
すると笹原は、先ほどまでの表情とは一転して明るい笑顔となり、俺の右手を両手で握り、ぶんぶんと上下に振りながら感謝してきた。
な、なんなのだ…これは。
ワシ、何か言ったか？
「じゃあ取ってきます！」
と笹原が出かけてしまったために、部室は俺一人になってしまった。
何を取りに行ったのやら。
………
笹原はなかなか帰ってこない。
手持ちぶさたに完成した原稿のコピーを見ることにした。
………
ウーム、久我山、なかなかやるよのう。
山田萌でないこのワシが、部室でもあろうに、禁断の扉を開けたくなる衝動にかられてしまうほどじゃ。
荻原さんの絵もなかなかにそそるものがあったりして…ってイカン！
息子よ、こんなところで発起してはイカン！
静まれ、しずまれぇー！
ッガチャ！
「お待たせしました、斑目さん！」
煩悩のさなか、唐突に笹原が部室に飛び込んできた。
「の、ノックくらいせんか！ここは紳士の社交場じゃ！！」
驚きのあまり、裏返った声であまりにも寒い事を言ってしまったが、笹原は「ハイハイ」なんていつもの苦笑でさらりと流してくれたのが、今回ばかりはありがたかった。
しかしやばいな。チンパンだから、妙に目立ってしょうがない。
さりげなく、鞄を膝におくことで一応の処置をとってはみたが、どうにも収まりそうにない。
うむむ、ワシってまだまだ若いのね☆
なんて、一人乗りつっこみＩＮ脳内をやっても、いっこうに収まる気配はない。
くそう、こうなったら寝たふりをして、収まるまで股間をガードだ！
俺は机に突っ伏して、ふて寝を決め込もうとした。
しかし。
「斑目さん、早速ですが、服を脱いでください」
さらりと、笹原はとんでもない事を言い出したのだった。
ぽかーん。
下の事情やら笹原の発言やらで、ワシはなーんも考えられなくなってしまった。
な、なんなのだ！ この状況は！！
「ほらー、早くしてくださいよー。もしも衣装があわなかったら、田中さんに頼まなくちゃいけないんですから」
は？ 衣装？ 田中？？
「まさか、斑目さん、今更になって嫌になったとか言い出すんですか？」
へ？ 今更？ 嫌になった？？
「えーと、えーと、ナンノコトデショウ？」
頭の中にも外にも？マークをたくさん浮かべて、無知な幼子のように笹原に聞いてしまう。
「斑目さんも男なんですから、一度ＹＥＳといった以上は、その責任はたしてもらいますからね！」
のっしのっしと足音をたてて、迫り来る笹原。
その手が俺に向けられて…
「はい、これ、着てください！」
衣装を渡された。
「ほらー、はやくはやく。衣装合わせですよ」
ようやく状況が理解できた。
俺は、どうやらコスプレすることを了承してしまったらしい。
上の空で返事をするものではないな。
まあいいだろう、春日部さんにやらせておいて…俺が断るってわけにもいくまい
「わかったわかった、そう急かすな。どれどれ…」
さすが田中の仕事だ。すばらしい縫製で、まるで既製品のようなスーツだ。
特にこの、スカート。タイトでロングなのに、妙なセクシーさをあおるスリットがって…
「おい、笹原！」
「はい、なんでしょう？」
「これはなんの冗談だ？」
「なにいってるんですか、斑目さん用の女装コスプレですよ。 ちゃんと、カツラもあるし」
笹原は、ごそごそと大きな袋のなかから茶色の豊かな髪をとりだし、それを無造作に斑目の頭にかぶせた。
「このカツラも田中さんのこだわりの一品で、斑目さんの骨っぽい頬をカバーするようにできてるんですよー」
すごいですよねー、とうれしそうに笹原。そして一喝。
「さっき、ちゃんと了承とったんだから、絶対に、着て、くださいね！」
最近身についた、妙な威圧感を如何なく発揮して、笹原は俺に死の宣告をしたのだった。
（未完？）
部室には、二人きり。笹原とワシ。いや、俺。
自分のなかでまでキャラを作るのが癖になっとるというのは、なんとも空しいのう。
「あの…夏コミのことに関してなんですけれど…」
笹原は、何故か俺に視線を合わせようとしない。
まあ、二人きりという、いつもと違う雰囲気から変な緊張をしているのかもしれん。
俺も、春日部さんとの時はひどい目にあったしな。
…なに赤くなっとんの？ ワシ？
「？ 斑目さん、聞いてますか？」
笹原が、不振な顔でこちらを見てきた。
いかんいかん、どうやら変な事を気にしすぎて上の空になっていたらしい。
「いやいや、聞いておるぞ。 で、夏コミがなんじゃ」
「ええ、夏コミなんですけれど、大野さんがコスプレをして売り子をしてくれるってことになっているじゃないですか。だけど、大野さんに全部任せっきりというのも、悪いと思うんですよ。大野さんだって、コスプレ広場にいきたいだろうし…」
たしかにそうだな。大野さんだって、田中と…。
…なにジェラシーもやしとんの？ ワシ？
「…というわけなんですけれど、どうでしょう？」
しまった、また余計な事を考えていて、聞き逃してしまった。
あわてて、「あ、ああ…いいんじゃないかな」と、適当な相槌を打ってしまう。
すると笹原は、先ほどまでの表情とは一転して明るい笑顔となり、俺の右手を両手で握り、ぶんぶんと上下に振りながら感謝してきた。
な、なんなのだ…これは。
ワシ、何か言ったか？
「じゃあ取ってきます！」
と笹原が出かけてしまったために、部室は俺一人になってしまった。
何を取りに行ったのやら。
………
笹原はなかなか帰ってこない。
手持ちぶさたに完成した原稿のコピーを見ることにした。
………
ウーム、久我山、なかなかやるよのう。
山田萌でないこのワシが、部室でもあろうに、禁断の扉を開けたくなる衝動にかられてしまうほどじゃ。
荻原さんの絵もなかなかにそそるものがあったりして…ってイカン！
息子よ、こんなところで発起してはイカン！
静まれ、しずまれぇー！
ッガチャ！
「お待たせしました、斑目さん！」
煩悩のさなか、唐突に笹原が部室に飛び込んできた。
「の、ノックくらいせんか！ここは紳士の社交場じゃ！！」
驚きのあまり、裏返った声であまりにも寒い事を言ってしまったが、笹原は「ハイハイ」なんていつもの苦笑でさらりと流してくれたのが、今回ばかりはありがたかった。
しかしやばいな。チンパンだから、妙に目立ってしょうがない。
さりげなく、鞄を膝におくことで一応の処置をとってはみたが、どうにも収まりそうにない。
うむむ、ワシってまだまだ若いのね☆
なんて、一人乗りつっこみＩＮ脳内をやっても、いっこうに収まる気配はない。
くそう、こうなったら寝たふりをして、収まるまで股間をガードだ！
俺は机に突っ伏して、ふて寝を決め込もうとした。
しかし。
「斑目さん、早速ですが、服を脱いでください」
さらりと、笹原はとんでもない事を言い出したのだった。
ぽかーん。
下の事情やら笹原の発言やらで、ワシはなーんも考えられなくなってしまった。
な、なんなのだ！ この状況は！！
「ほらー、早くしてくださいよー。もしも衣装があわなかったら、田中さんに頼まなくちゃいけないんですから」
は？ 衣装？ 田中？？
「まさか、斑目さん、今更になって嫌になったとか言い出すんですか？」
へ？ 今更？ 嫌になった？？
「えーと、えーと、ナンノコトデショウ？」
頭の中にも外にも？マークをたくさん浮かべて、無知な幼子のように笹原に聞いてしまう。
「斑目さんも男なんですから、一度ＹＥＳといった以上は、その責任はたしてもらいますからね！」
のっしのっしと足音をたてて、迫り来る笹原。
その手が俺に向けられて…
「はい、これ、着てください！」
衣装を渡された。
「ほらー、はやくはやく。衣装合わせですよ」
ようやく状況が理解できた。
俺は、どうやらコスプレすることを了承してしまったらしい。
上の空で返事をするものではないな。
まあいいだろう、春日部さんにやらせておいて…俺が断るってわけにもいくまい
「わかったわかった、そう急かすな。どれどれ…」
さすが田中の仕事だ。すばらしい縫製で、まるで既製品のようなスーツだ。
特にこの、スカート。タイトでロングなのに、妙なセクシーさをあおるスリットがって…
「おい、笹原！」
「はい、なんでしょう？」
「これはなんの冗談だ？」
「なにいってるんですか、斑目さん用の女装コスプレですよ。 ちゃんと、カツラもあるし」
笹原は、ごそごそと大きな袋のなかから茶色の豊かな髪をとりだし、それを無造作に斑目の頭にかぶせた。
「このカツラも田中さんのこだわりの一品で、斑目さんの骨っぽい頬をカバーするようにできてるんですよー」
すごいですよねー、とうれしそうに笹原。そして一喝。
「さっき、ちゃんと了承とったんだから、絶対に、着て、くださいね！」
最近身についた、妙な威圧感を如何なく発揮して、笹原は俺に死の宣告をしたのだった。
（未完？）
2006年07月11日(火) 23:39:08 Modified by korewanetadesu