刑事訴訟法

●競売入札妨害罪の公訴時効

「現況調査に訪れた執行官に対して虚偽の事実を申し向け,内容虚偽の契約書類を提出した行為は,刑法96条の3第1項の偽計を用いた「公の競売又は入札の公正を害すべき行為」に当たるが,その時点をもって刑訴法253条1項にいう「犯罪行為が終つた時」と解すべきものではなく,上記虚偽の事実の陳述等に基づく競売手続が進行する限り,上記「犯罪行為が終つた時」には至らないものと解するのが相当である。」
最決平成18年12月13日(平成17(あ)1153) 上告棄却/職権判断
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●書面による訴因変更請求と公訴時効停止の効力

出資法5条2項違反の罪が反復累行された場合は包括一罪になるとの見解のもとになされた書面による訴因変更請求が一旦許可された後,これを不適法として職権で取消決定がなされた場合,訴因変更請求に係る事実については,「訴因変更請求書を裁判所に提出することにより,その請求に係る特定の事実に対する訴追意思を表明したものとみられるから,その時点で刑訴法254条1項に準じて公訴時効の進行が停止すると解するのが相当である。」
最決平成18年11月20日(平成18(あ)590) 上告棄却/職権判断
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●刑訴法328条の弾劾証拠として許容される範囲

「刑訴法328条は,公判準備又は公判期日における被告人,証人その他の者の供述が,別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に,矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより,公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の減殺を図ることを許容する趣旨のものであり,別の機会に矛盾する供述をしたという事実の立証については,刑訴法が定める厳格な証明を要する趣旨であると解するのが相当である。
 そうすると,刑訴法328条により許容される証拠は,信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が,同人の供述書,供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。),同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られるというべきである。」
同条の証拠が自己矛盾供述に限られるというのが,東京高判平成8年4月11日高刑集49巻1号174頁ほか実務での運用であったが,それを確認。加えて,矛盾供述をしたこと自体は厳格な証明によること(矛盾供述者の署名・押印が必要となる)を明らかにした。
最判平成18年11月07日(平成17(あ)378) 上告棄却
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●窃盗罪の法定刑の変更と刑訴法上の「刑の変更」

「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成18年法律第36号)により窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役」から「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に変更され」たが、「懲役刑の刑期には変更が加えられておらず,選択刑として50万円以下の罰金刑が追加されたにとどまるところ,その改正の趣旨は,従来,法定刑が懲役刑に限られていた窃盗罪について,罰金刑の選択を可能として,比較的軽微な事案に対しても適正な科刑の実現を図ることにあり,これまで懲役刑が科されてきた事案の処理に広く影響を与えることを意図するものとは解されない。」
「当該窃盗罪の犯情,第1審判決が併せて認定した刑の変更のない他の犯罪の有無及びその内容等に照らし,上記法改正との関係からは第1審判決の量刑を再検討する余地のないことが明らかである場合には,刑訴法397条1項により破棄すべき「刑の変更」には当たらず,第1審判決を破棄する必要はないと解するのが相当であ」り、「刑訴法383条2号の刑の変更があったと認めつつ,第1審判決を破棄しなかった原判断の結論は相当である。」
最決平成18年10月10日(平成18(あ)1414) 上告棄却
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2006年12月16日(土) 00:59:30 Modified by streitgegenstand




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