判例の分類

司法試験の合格レベルに達するには、一体、どの範囲の判例についてどの程度の理解が求められるだろうか。もともとの試験範囲がとても広いだけに、こういうところは、しっかり画定しておかないと、キリのない戦いになってしまう。
まだ本試験を一度も受験したことのない私が書いても説得力がないかもしれないが、一つの参考として、現在の私の方針をまとめてみる。

第1分類:論証を用意しておくもの ... 100〜200

だいたい「百選」レベル。ただ、「百選」といいながら、実際は“二百選”になっている科目のほうが多いので、実質200本。各科目この範囲の判例については、その射程の正確な把握(及びそのために必要な限度での事案の要約)と、簡単な論証をできることが求められる。
ただ、「百選」シリーズのchoice が適切かどうかは要検討。「百選」収録という基準ではなく、基本書で厚く書かれている、ということのほうが基準になると思われる。
各科目の出題傾向に応じて、判例の整理の仕方も変わってくると思う。例えば、考査委員のヒアリングによれば、商法や刑訴法の問題では、判例が定立した要件の趣旨を法分野全体の体系と結びつけて論ずることが要求されているので、それを確認。一方、民訴法や倒産法の問題では、反対説との見解の対立を当該事実関係の下で論ずることが求められており、「反対意見」「補足意見」もチェック、など。

第2分類:判旨を知っておくべきもの ... 500〜

かつての論点、ほとんどの学説が是認する結論については、そういうのが判例としても存在するということを知っていることで十分ではないだろうか。そういう点は、論文試験ではまず出ないと思われ、択一で出されたときに自信を持って切れる程度に知っておけばよいと考えている。
基本書で、結論が1〜2行程度で述べられているものは、この第2分類であり、その整理には判例付き六法を活用。

第3分類:事実の拾い上げを練習するもの ... 15〜30

これは、各科目ごとにタイプが異なるのであるが、その数としては、いわゆる“ケースブック”で演習する程度の数を目安と考える。
憲法:ある憲法問題に対して、上告理由・法廷意見・反対意見と続く議論の全体を把握しておくべきモデル的判例。憲法の論文は、X側の主張、Y側の反論、受験者の立場(裁判所の立場)の論証という3段での答え方が要求されていたが、それらは結局、上告理由・法廷意見・反対意見のいずれかに収まってくる。また、いずれについても当該事件の事実に依拠した主張になっているはずであり、問題文から事実に依拠した主張を展開することの練習にもなる。従って、有名な憲法判例について、事実の概要から反対意見までを整理しておくことが有用。
行政法:こちらは、憲法とは全く違った発想であり、論証よりも事件の解決が求められてくる。明確な基準はまだ分からないが、いわゆるエポックメイキングな判例はここには含めない(それらは第2分類)。それより、判例の事案で他にどのような訴訟提起の可能性があったかを、判解などの評釈を調べて把握しておく。
刑法:論点の論証よりも事実の認定のほうを丁寧に行なうことが求められているので、下級審の裁判例を中心に、いくつかの事例における事実認定を練習しておく。論文用参考裁判例はそのためのもの。
刑事訴訟法:刑法とは異なり、論証における論拠を丁寧に論ずることが求められているので、第2分類の百選判例のうち重要な論点の判例について、事実関係から詳しく読んでみる。
2007年01月07日(日) 14:56:36 Modified by streitgegenstand




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